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2018年6月17日日曜日

いつか暮れるすべてのものへ。 - 神聖かまってちゃん『33才の夏休み』MV



「僕の人生は教室で自殺しようとしたあの日で
 すべてが終わっているんだ
 そんな僕がここで人様の人生をねじまげるきっかけになれたら
 僕はちょっとだけうれしい
 人生1回しかないんだ
 人生ってのは1回でそれが終わったら
 なーーーーーんもねぇ!!!!!!!」

の子さんが10年前、2ちゃんねるにこのように書き込んでいた。
彼が一度人生を終わらせようとした“教室”は、人として生まれた以上誰もが避けられない場所。
そこにずっと居座る人もいれば、逃げ続ける人もいる。

ここを始まりとして、神聖かまってちゃんの10年間を描こうとした。
の子さんがこの教室でまだ“大島亮介”だった頃に体験した、誰かに嘲笑われているような幻聴と、ひとりぼっちの救いようのない閉塞感から、フィクションを通して一つのバンドのノンフィクションを映し出そうとした。

2ちゃんねるに書き込んだ頃、“神聖かまってちゃん”と名付けられたそのバンドは誰にもかまわれなくて、ライブハウスのステージの向かいには対バンのバンドメンバーとPAさんのみ。どんなに良い曲を作っても一生懸命にライブをしても、それを目撃してくれる人はほんの一握り。
そこで、の子さんは一つの武器を見つけた。それはインターネットだった。誰もが当たり前のように日常的に使用しているものを主戦場に置き、話題を集めるために配信しながら渋谷の交番に突撃したり、自ら編集したMVをYouTubeにアップしたり、当時どのバンドも手を付けなかった手段を飛び道具として利用した。

そんなインターネットでの活動が功を奏して、その姿は遠く離れた場所にいる人々の元へ届き、僕もその一人になった。
2009年4月。『ロックンロールは鳴り止まないっ』のMVが呼び起こす初期衝動に突き動かされて、仕事帰りにふと立ち寄ったライブハウス。今は無き下北沢屋根裏の受付で、「お目当てのバンドは?」と尋ねられて「神聖かまってちゃん」と答えた。会場のドアを開けると、僕含めて3人しかいなかった。やがて本番になっても、結局10人にも満たなかった。
しかし、そこでの子さんはまるで何千人もを相手にするようなパフォーマンスを繰り広げていた。

あれから9年の月日が流れた。SEKAI NO OWARI主催の『club EARTH 12th Anniversary』で、神聖かまってちゃんは2000人以上の観客に立ち向かっていた。

「僕はいつか 東京のど真ん中で 何千人の前で 存在をみせてやる」

あの頃教室で自殺しようとしたの子さんが、『いくつになったら』で歌っていたことを次々と現実にしていく。
僕は下北沢屋根裏で初めて彼らを目の当たりにした一ヶ月後からいつの間にか、の子さんが何度も振り落とすギターに、千葉ニュータウンを駆け走る女の子にカメラを向けていた。



神聖かまってちゃん「33才の夏休み」MusicVideo
https://www.youtube.com/watch?v=s7jVsMnNReE


神聖かまってちゃんと9年間付き合ってきて、ミュージックビデオを今回初めて作ることになった。
その『33才の夏休み』は、かつての夏休みだった23才からの10年間だけでなく、あの教室で自殺しようとした大島亮介くんが“の子”と名乗って、自己を解放されるストーリーから始めないといけない。神聖かまってちゃんが表現する喜怒哀楽の根源的な部分を絶対に無視できないでいた。
それが彼だけのストーリーに収まらず、やがてその衝動が音楽となり、多くの人の新たな衝動をネットでリンクさせていく様を描かないといけないと思った。

女の子がいじめを受けている。いじめっ子の佐藤に対して「死ね」と叫び続ける『夕方のピアノ』のデモ音源の最後に、物悲しく響いているリコーダー。『笛吹き花ちゃん』の「誰もいない教室でみんなは死んだと勝手に決めつけた」という女の子の口から、それを鳴らそうと思った。

今在るすべてのものを美しく切り取りたい。そのすべてがいつか終わるものであることを示したい。
そして10年の歳月を、の子さんが今も住む千葉ニュータウンで表したい。


ー千葉ニュータウンを美しくー



『ロックンロールは鳴り止まないっ』のMVでの子さんが腰掛けた桟橋は、釣堀のご主人によると2011年の震災で大半が沈んでしまったらしい。『僕は頑張るよっ』で蹴り込んだボールの向かう先にサッカーゴールはなく、今は撤去されてしまったという。

今年4月、の子さんがかつて自作のミュージックビデオで撮影した地をロケハンで回った。そこで10年の時の変化を手に取るように感じた。まるでカケラを拾い集め、パズルのピースを埋めるかのような作業だった。主人公の女の子の心情に寄り添うように、沈んだ桟橋は行き場がなく、姿なきサッカーゴールは受け手のない感情にロケーションが相応しかった。

春夏秋冬、晴れ雨曇り。風景は時の経過を感じさせる。街は建て替わり、人口が増えることで緑は削られる。それでも、千葉ニュータウンには変わらない景色が堂々とそこにある。
女の子がMDプレイヤーに出会って以後の風景は、10年前と変わらないロケーションを選んだ。踏切、公園、里山、森。そしてひょうたん山。それらは決して回顧でもイメージの連続でもなく、今この瞬間も生き生きと命を輝かせる風景を映し出すためだった。
そしてまた新たにこのバンドで出会う人たちが元となったMVを探したり、昔観たことがある人たちでも振り返って過去作を見返したりしてくれることを望んで、“10年”をこの作品だけに留めたくなかった。

その中心となるのが、『ぺんてる』のモデルになった櫻井商店だ。




ビートルズでいうリヴァプールのように、名作映画のロケ地でも訪れるように、“聖地”を持っていることがバンドの特性であり魅力の一つであることは、神聖かまってちゃんの活動を見てきた人なら誰もが知っていることだろう。
町の文房具屋さんである櫻井商店は今も多くのかまってちゃんのファンの方が訪れ、来店した人が自由に書き込めるノートまである。の子さんが少年時代を過ごした、いわば神聖かまってちゃんの原風景として愛されている。地元の人々にとって坊主頭の中学生男子が二人仲良く寄り添っていたり、ジャスコな街にイオンができたとしても昭和の時代から頼もしく在り続けているようだ。

「大島さんがよくここに文房具を買いに来てたのよ」とお店のおばさん。初対面でも気さくに中学生時代の大島亮介くんの話をしてくれた。「だいたい一人で来ていたと思うよ」と聞いて、ここを女の子の心情がステップアップする場所に相応しいと思った。
音楽で湧き上がるエモーションは目に見えないものでも、神聖かまってちゃんはヘルメットとサングラスが象徴として目に見える。だから、の子さんの“神”ヘルメットを被って櫻井商店の窓ガラスに半透明に映る姿を見ることにした。そこで初めて自分の姿を見つめて微笑むことで、自己を認めさせたい。あるいはおかしな姿になることで引いた目になり、自らの滑稽さを笑ってもらいたかった。

人間性を否定された者の心に人間から遠く離れたモンスターが宿り、刃物を向けて自らや誰かを襲うことが今もなお繰り返されている。衣食住に関係なく、無くても生きていけるはずの音楽の役割を今一度示したい。だから、誰かが認めてくれるのを待つのではなく、耳元で鳴る音楽が自分を認めることを手伝わせたいと思った。
かつてジャポニカ学習帳を手にした大島くんのように、女の子にここで大きなものを手にしてもらいたかった。




おばちゃんから「大島さんに何かお店のものを持っていってあげて」と、三色のボールペンを渡された。お金を払おうとしても「いいからいいから。私もそう長くはないんだから」と何度も拒まれた。
ここで一つの目的が生まれた。今から映し出すすべてがそう長くはないものであるからこそ、“残す”ことを心がけよう。櫻井商店を半永久的に留めるために美しく切り取ることを、ボールペン代の代わりにしよう。
そしてボールペンもまた、“残す”ために女の子の手前の机に小道具として使用した。いつかタイミングが来たら、の子さんに渡そうと思った。ボールペンはすぐに無くなるものだからこそ、大切に保管しておきたくもあった。


ー女の子を美しくー



意味もなくそこに在たりと雰囲気だけで済ませるような、イメージビデオにだけは絶対にしたくない。
傷ついた女の子がそこに在ることを力強く証明することで、同じ気持ちに打ちひしがれている、または過去にその経験を味わった人たちの元に届けられることができる。陰と陽の振り幅をお芝居で見せることで、神聖かまってちゃんの世界を体現できると思った。

その存在を放つことができる人を探していた。『ミスミソウ』『ライチ☆光クラブ』などで知られる内藤瑛亮監督の新作映画『許された子どもたち』の“ある視点撮影”という名のBカメで参加していた時に、ふと心に留まる存在があった。
それが今回のMVで主演を務めてくれた池田朱那さん。澄んだ瞳にどこかしら強い意志を感じ、大人びた表情をしながらも微笑むとえくぼが目立ち、口元に鮮やかな幼さが浮かぶ。子どもと大人との絶妙な境目が、神聖かまってちゃんのイメージにピッタリに感じた。また、最近観た映画を尋ねると韓国映画『息もできない』を繰り返して観たそうで、16才にしてこの感性は間違いないと思った。

とはいえ、神聖かまってちゃんと過ごした9年間のおよそ3,000日と、池田さんとこれから撮影で過ごす片手の指で数えられる程度の日数とが、被写体としての熱量に相違が生まれることを恐れていた。
でも、それは早々に杞憂に終わった。撮影初日、教室のシーンのファーストカットであっけなく吹き飛ばされた。廊下から机に供えられた花を見つめる表情で、確信に近いものがあった。




彼女が神聖かまってちゃんのライブと同じように、夢中になって撮影をさせてしまう女優であることに気付いた。
傷ついているけど傷ついていないフリをしてほしい。決して弱く見せないよう感情を誤魔化している、そんな気持ちで演じてほしい。教室のシーンのお芝居はしつこく何度もそう伝えて、それを池田さんは持ち前の勘の良さと鋭い適応力で、監督として何一つストレスを感じない飲み込みの早さで、撮りながら手応えしか感じられない素晴らしい演技で収めさせてくれた。

あらゆる選択肢を絞って、主人公の女の子役は神聖かまってちゃんを元々よく知らない、彼らとは普段から程遠い場所にいる必要があった。
打ち合わせの際に参考のつもりで、パソコンを床に叩きつけて破壊するの子さんの過去の映像を見せた。池田さんが「わっ」と驚いて身体を動かして、そこを重要に感じていた。バンドに特別な思い入れがないからこそ、新鮮な感覚で神聖かまってちゃんを見つめることができる。その存在をファンだけに留めず、初期衝動の器として普遍性を持たせられるから。

今まで長年付き合ってきて、神聖かまってちゃんをドキュメンタリーの視点でしか、生々しいライブの現場やメンバーの言葉を紡ぐことしかしていなかった。
だからこそ、そこを強みとしてMVには一つでもドキュメンタリーの要素を取り入れようと思った。それがギターとパソコンの破壊のシーンで、予期せぬ壊れ方や小さなアクシデントを心の奥底で期待していた。

でも、もっと素晴らしいドキュメントを池田さんは魅せてくれた。




このカットには嘘がない。池田さんが実際に『33才の夏休み』を聴きながら涙を流す姿をただ切り取ったものだ。
『33才の夏休み』のMVは当然ながらすべて構成したもので、女の子はお芝居で、かまってちゃんのメンバーの演奏は当て振りだ。ギターとパソコンを壊すのも、あらかじめ仕組まれた演出である。
でも、池田さんはこの曲を聴くことで純粋に心を動かし、涙を流してくれた。そのおかげで無作為なカットになり、今までに撮影してきたライブ映像と同じように歴としたドキュメンタリーになった。

千葉ニュータウンでのロケ日は予報では大雨だった。それが雲が早く流れてくれたおかげで、昼からピーカンで雲一つない天気に恵まれた。キラカードが貼られた背中に絶妙なタイミングで風が当たり、黒い髪が華麗に舞った。あらゆる奇跡に迎え入れられたけど、池田朱那さんが何よりも奇跡だった。
MDと出会ってからの表情の変化のグラデーションや、パソコンを壊す時のアクション映画さながらの躍動感。それらが想像通りかそれを超えるもので、もっとお芝居が見たくなったし、この人を主演にまた作品を作りたいなと思った。
思い返せば、人生には幾つか大切な決断があった。それは9年前に神聖かまってちゃんを撮影しようと決めたことと、自分にとって彼らの初めてのMVの主人公を池田朱那さんに演じてもらうこと。この二つに同じくらい大きな価値を感じている。

帰りの車中で「あーほんと、池田さんでよかった〜!」と大きな声で伝えてしまった。この撮影期間、緊張と高揚感のせいか布団に入っても一睡もできなかった。そこからの安堵感と達成感が入り混じったせいか、帰り道にイヤホンで『33才の夏休み』を聴いていると、自分も池田さんのように無作為な感情が溢れてしまった。




池田さんが神聖かまってちゃんをイラストに描いて送ってきてくれた。

メンバーそれぞれが愛おしく描かれていた。撮影を通してこんなに好きになってくれたことで、神聖かまってちゃんの音楽に突き動かされた女の子のフィクションがいつの間にかノンフィクションになった。


ー「みんな死ね」を美しくー



悪意のために供えられた花はいつしか枯れて、日が暮れるようにすべてものが朽ち果てていく。
7年前、震災直後に発表した『僕は頑張るよっ』で歌われた、「人間はいつか死ぬ」。それが絶望にも希望にも受け取れるように、暮れゆくものを残すことができるのが“撮影すること”であることを、神聖かまってちゃんを撮影しているとふと気付くことがある。
夕暮れ空がいつだって美しい断末魔を叫ぶように、壊れゆくギターとパソコンも終わりゆく姿を激しくも綺麗に切り取りたいと思った。

誰もいない教室でみんなにお花を供えて、過去のアルバムのタイトルのごとく「みんな死ね」とやりきれない感情が芽生えたとしても、その花は残酷なまでに美しく咲き誇っている。
やがてカンカンと枯れて、みんなあっけなく死んでしまう。
枯れゆく花と同じく床に散らばっているCDも、やがてMDのように過去のものとなり、ノスタルジーの中に放り込まれていくのだろう。それでもその盤面が誇る虹色の輝きを、漲る生命のごとく映し出したいと思った。振り下ろすギターが神聖かまってちゃんの過去作品を含めたそれらのCDを叩き潰すことで、激しさの中でバンドの過去より今を、今より未来を照らし出そうとした。

ケンカと解散危機を幾度となく経てきた彼らが今、お互いを尊重するようになったことで提示する“10年後”というものは、誰かにとっての過去や現在の負の感情をいつか笑い合えるような希望になると思っている。
現に今、の子さんのかつて教室で味わった孤独が原動力となり、あの頃の負のエネルギーが“人様の人生をねじまげるきっかけ”になっている。それは今世の中で起きているあらゆる悲劇も、その後の様々な可能性を示すものになるかも知れない。

映画や音楽や小説などの作品がこの世に在る、それを必要とする人がいる理由というものが、それらが一つの考え方を押し付けるものではなく、選択肢を作るからだと常々思う。自己にも他者にも「~べき」を作るのではなく、芸術作品は「こういう方法もある」と提示することができる。
『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞にある「遠くで、近くで、すぐ傍で、叫んでやる」は、インターネットで遠くの人の元に届き、ライブで目の前の近くにいる人に叩きつけ、いつも心のすぐ傍で鳴ることのように思う。
MVの中で女の子と神聖かまってちゃんを出会わせないようにしたのは、いつだって本物のヒーローは遠い場所にいて、そのくせ心がすぐ近くにあると思っているから。イヤホンを取っても鳴り止まず、自分でリズムを取りながら夕暮れ空を眺める女の子のその後に、甘酸っぱい可能性を秘めさせたいから。
若いミュージシャンに限らず、人気のユーチューバーや『進撃の巨人』や『恋は雨上がりのように』の原作者など、ジャンルの垣根を越えて神聖かまってちゃんが原動力となって活躍している人たちが最近ますます出てきていることを、女の子がの子さんと同じ方向を見つめる姿に込めたかった。




神聖かまってちゃんの演奏シーンの撮影の終盤のことだった。

ギターの破壊を無事に撮り終えて、その撮影を見ていたmonoくんがの子さんの熱量に必死に合わせようとしたのか、キーボードを叩き弾く表情がいつもと違って見えた。

の子さんがどうして幼なじみのmonoくんをリーダーに選んだのか。その理由がフツフツと沸き上がるような表情を撮りながら、破壊シーンを撮り終えた安堵感のせいか胸が詰まった。
よりによってmonoくんで。って思うけど、そう言えるようなキャラクターであるのがメンバーにとって何よりの癒しなのだろう。素直でストレートで誰かと誰かの間に居てくれる彼だからこそ、神聖かまってちゃんが10年間ずっと続けられているように思う。
それを裏付けるシーンを9年間で幾度となく見てきた。そうか、今初めて神聖かまってちゃんのMVを撮影しているんだな、となぜかその時初めて実感した。
たぶん、この日は9年前の下北沢屋根裏の時と同じような気持ちで撮影ができた。あぁ、誰かにこのバンドを知らせたいなって。

美しく切り取ろうとした千葉ニュータウンも、女の子も、神聖かまってちゃんも、「みんな死ね」という感情も、いつかはカンカンと枯れていく。
でも、その先にある可能性に胸をときめかさずにはいられない。
“今”を切り取ることでノスタルジーに留めず、この先のストーリーを続かせていきたい。神聖かまってちゃんに限らず、すべてのライブ映像は決して撮影することが目的ではない。その先にあるものがやりたくて撮影している。誰かが観ることで、瞬時に伝えることで、映っている人や景色の未来が少しでも変われば、その映像は映像の中だけで完結しなくなる。
現実を少しでも動かせるような映像を、映像作家としてこれからも残していきたい。

阿倍君へ、いつか暮れるすべてのものへ。

神聖かまってちゃん10周年、おめでとうございます。




2012年10月20日土曜日

の子@ロックの学園 "ロックの授業"文字起こし

仙台の『ロックの学園』で、神聖かまってちゃんのの子さんが担当した"ロックの授業"の文字起こししたものです。

「今日、先生をやらせていただくことになったの子です。
よろしくお願いします。
(携帯を見ながら)これはカンペじゃないです。これは僕がビジネスワーカーとして仕事がいっぱいいっぱいくるので、カンペじゃないです。
これから君たちには、殺し合いをしてもらおう。

インターネットのバンドとしての活用方法、及び成功術をみんなに教授してやろうと僕は思っています。
インターネットで成功するための僕以上の作曲能力、そして僕以上の魅力、そして尚且つ、僕以上の個性。これさえ持ち合わせていれば社会的に成功することができるのであります。僕の指導のもとに
もしも君らの中に、作曲能力がある、そしてちょっとした個性、僕の指導のもとに動いていただければ、社会的に億万長者にしてやる

その自信が僕にはある。
そういった授業の内容を真面目にしようと思っていましたが、君たちに伝えなければいけないことがある。
先生は今、精神病にすごく冒されている。
これはなかなか深刻なことで、今、がんばってがんばって、精神病院から抜け出してきてなんとか今ここにいる。
本音をいうと僕はこんなとこに来たくなかった。
ほんとに家で落ち込んで君たちのことを、この広がる空に、ずっとずっと、全員死ねばいいと呪いを日々込めているほど、病んでいます。
君たちには会いたくなかった。
これが本音です。
しかし僕はいま、ここでこうしている。
だからこそ、ここにいる限りは僕はちゃんと君たちに教えてあげたいこともちゃんと伝えます。

今までの講師をやってきた人いたんと思うんですけど、僕は僕にしかできない授業をあなたたちに教授したいと思っています。
インターネットを絡めた授業を今からいたします。

2013年を前にしてインターネットは現実社会に溶け込んでいる
君もあなたも誰もがやってる現代である。
僕はここでインターネットで煽られない方法を教授する。
日本人というものは繊細なもので、ひとつの書き込みもって傷つきやすいと思います。僕もそうですけど、考え方ひとつで煽られない方法を特別に教授したいと思います。
ネットとリアルの差なんて今や一切ない。
昔、たとえば2000年初頭。そのときはまさに僕も今でいうこれはニコニコ生放送なんですけど、僕は昔ピアキャストというもっとアングラな場所で配信していました。
そこはまさに、魑魅魍魎のクズ、それしかネットに存在しなかったのである。僕はそこには自分と似つかわしい奴がいると確信していた。
しかし今、ネットはどこもかしこもあの悪のるつぼと言われる2ちゃんねるさえも、のらくら生きてる大人ども、そして羊水が腐り果てた人妻、そして中途半端にのらくら生きてるガキどもが集まってる。
今2012年現在において、2ちゃんねるの総合評価は、中途半端に明るく生きる人間のただの社交場である。
それはまさに牙を取られたチワワそのものである。
牙を取られたチワワそのものである。
2ちゃんねるは、チワワ。
昔からインターネットに携わってきた僕としては、インターネットの成長にクズな自分がマジでクズな僕はいつまでも精神的に成長できない。僕はインターネットに、そして10代の頃にいた2ちゃんねるに裏切られた気分である。
僕は、インターネットに、むしろインターネットを裏切ってたのは僕のほうだと思ってたんですけど、しかしインターネットに裏切られたのは僕のほうだ。
僕はほんとに、これこそすごい悲しい気分に、おいてけぼりにされた気分になってる。2ちゃんねるに。インターネットに。
そして2ちゃんねるに"死にたい"などの不幸自慢をしてる輩の書き込みを見ると、僕は吐き気するもよおすようになってるのである
だってそいつ、だってそいつはさ、最終的に自分より幸せな人間だからね。

そして2ちゃんねるだけじゃない。
この中(ニコニコ生放送)にも罵倒罵倒っていうものがあるわけです。
罵倒罵倒罵倒がみんな怖くて、あとは社会的に仕事とかでめんどくせーって人もいると思うけども、その罵倒があるからして怖いってことで配信ができない人は確実にいます。
しかし、このニコニコ生放送。
こいつらの罵倒の中には、いや、中でもねえ、旦那にセックスの相手をさせられない奴、中途半端に生きてるガキの罵倒で溢れてる次第であります。
まさに団地妻、人妻、今ここに「独身です」とかあると思うけど、デヴィ夫人みたいな奴が、ク○ニ不足の愚痴で溢れかえっています
まさにこいつらの書き込みはAVのタイトルとほとんど同レベルである。この書き込み、この文章。誰か彼女を救ってやってあげてよ。そう、ク○ニ不足の彼女を。

しかしそう考えたらネットに煽られることなど、一切ない。
なぜかというと、我らは貴族。
皆さんひとりひとりが誇りを持って生きてると思うので、ク○ニ不足の書き込みなど屁でもないです。
鼻で笑う始末である。
諸君もインターネットで煽られた際には、貴族たる自分を静かに見つめればいい。

寝ずに考えたんだよこれ。
今、神聖かまってちゃんコミュニティって中でやってるからさ、人妻がいねーんだけどさ。
みんなが配信やり始めたらそれは罵倒罵倒の嵐になると思うんだ。
ツイッターとか2ちゃんねるとかそこで煽られない方法。
それは、欲求不満のク○ニ不足の人妻の愚痴だと思えばいい。」

2012年7月25日水曜日

神聖かまってちゃん@恵比寿LIQUID ROOM

岡村靖幸、B.B.クイーンズ、マキシマム ザ ホルモンに続き、またもや大御所とのツーマン。今回の相手は、電気グルーヴです。

『LIQUIDROOM 8th ANNIVERSARY 電気グルーヴ vs 神聖かまってちゃん』と題されたイベント。『vs』だけあって、その気合いは尋常ではない。ライブ前、殺気立ち、ピリピリしたムードのの子さんを久しぶりに見た気がする。
今年に入ってからの神聖かまってちゃんのライブは、の子さんのテンションが割と安定していたように思う。でも、この日は出会い頭に「俺、今日戦闘モードなんで。殺すつもりの勢いでやるんで」とギラギラとした目つきで笑っていた。
楽屋ではいつも通り配信。この日はライブ本番の配信は禁じられており、またもや"インターネットポップロックバンド"を自称しているのに"ポップロックバンド"として勝負に挑まなければならなかった。
配信では、monoくんが『黒いたまご』でiPadを使用するという初の試みが宣言されていた。一体、どのような形になるのだろう。みさこさんはメガネをかけており、このまま本番に向かうつもりらしい。思えばみさこさんがメガネでライブに出るのは神聖かまってちゃん史上初めてではないか。メガネ3人、裸眼1人のバンドになってしまう。みさこさんの服には『Bitch』と書かれており、なんだか色んな意味でさすがだなあと思った。ちばぎんはこの日から販売されるの子さんイラストのTシャツを着ており、ピンクが似合っていた。

本番になる。『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れる中、ちばぎん、みさこ、monoの順に登場。遅れての子が本気モードの表情で歩いてくる。それは擬音にするとドシッ!ドシッ!と堂々とした様子で勇ましい。

「人がいっぱいいますねー!こんなに人がいっぱいいること、初めて…じゃねえか」
第一声で笑いを誘うの子。「暑いですけど、あったまっていこうぜー」と呼びかけるmonoに、の子が「何言ってんのかわかんねー」といつもの調子でライブが始まる。

「全員虜にしてやる。かまってちゃんファンどころじゃなくて、全員虜にしてやる!若さをナメんじゃねーぞ!!」

の子の煽りから、このライブに懸ける気迫が伝わる。ちばぎんの曲紹介で1曲目は『知恵ちゃんの聖書』
まだライブで回数を重ねていないので新鮮に聴こえる。「ち、え、ちゃん」との子のボーカルだけになり、そこから終盤に向かう瞬間が気持ちいい。monoのキーボードとサポートバイオリンの柴さんの演奏がホーリーなメロディを作り、神聖かまってちゃんの世界観を爆発させている。

「やべ、テンションあがってきたうえはゃあー」「はい、何言ってるか分かりません」
呂律が回っていないの子にすかさずちばぎんがツッコミを入れる。「次の曲何だっけ?」との子が問い、ちばぎんが「イントロで思い出してください」と答えるが、の子は「"いいとも"?」と聞き間違い。「最近の27時間テレビってこと?」との子が続けると、ちばぎんが「イントロです!」ときっぱり。「うおっ、チッ、チッ」と愛嬌たっぷりに舌打ちするの子に笑いが起き、ファンじゃなくてもイントロで思い出せるメロディがmonoのキーボードから鳴る。『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。
客席には電気グルーヴのファンが大勢いるからか、飛び跳ねたり手を上げる人もそれほど多くなく、ここ最近のライブのような盛り上がりはない。それでもの子は目をひんずり剥き、間奏ではピョンピョン飛び跳ねて「バカヤローー!!」と叫んでテンションを保ち続ける。

「このままいくぜ!お前ら!最近俺は色々あって頭いっぱいで!死にたくなってんだよーー!!まあ、死なないけど……。そんな気持ちを次の曲でぶつけます。『天使じゃ地上じゃちっそく死』

スタッフのまきおくんがギターを抱え、monoとちばぎんの間でギターを演奏。髪の毛を若干振り乱し、この日はちょっと激しい動き。時折虚無感を漂わせるの子の表情、そして後半に向かうにつれて激しくなるみさこのドラムがかっこいい。monoはの子に合わせて「イヤだー!!」と叫んだり、テージ中央で空中パンチしたり。「死にたい」とは到底思えない、生のエネルギーが充満してるステージになっていた。
「あ゛ーーーー!!」
の子が絶叫して演奏は終了する。そのまま勢い余って転ぶ。「ごめん。ごめん。こけちゃった」とかわいげに呟き、立ち上がる。突然、「お前らーー!!」と叫ぶとマイクスタンドを直しにかかる劒マネージャーがその音にビクーッ!となったのが印象的でした。

「お前らーー!!どうなんだーー!?電気グルーヴのファンもいるんだろーー!?」
の子の問いかけに、monoが「反応しろよー!!」と便乗。「いや、まあ、それは人それぞれですからね…」となぜかの子がトーンダウンし、monoを戸惑わせる。こういったやり取りは神聖かまってちゃんのライブで多く見かける。気分が高揚したの子にmonoが調子を合わせると、逆にの子が静まる。の子はボケとツッコミの関係を持つというか、どこか冷静な部分を大切にしており、意識的にmonoとのバランスを保とうとしているように思う。

「いやー、電気グルーヴのファンの方も盛り上がってくれたら僕はピースフル…ピースフルみたいなクソみたいな言葉使わなくていいけど、楽しんでいってください。こんなバンドです」

初めてのお客さんに向けて話しかけ、少しはにかむの子。とはいえ「じゃ、休憩10分…」とかまってちゃんのライブ恒例のMCを。「よくそういう映画あるだろ」と、今回ばかりはエヴァンゲリオン(疲れたあまり休憩を求める際、の子が毎回口にする単語。『新世紀エヴァンゲリオン』旧劇場版の10分休憩のことを指しているのだと思われる』)の名前を出さなかった。

「いや、でもね、今日は俺テンション高いんだ。イライラすることがいっぱいあって。レコーディング中だからかも知んないけど。リハが、一番いいライブでした」

会場が戸惑いと笑いに包まれ、「そんなこと言うなよー!」とmonoとみさこがつっこむ。「だってほんとのことなんだもん!」と答えるの子であるが、かつて新代田FEVERで見た彼らのリハーサルを思い出す。の子はリハーサルで本番さながらに全身を使って歌っていたけど、本番ではその気力が薄れていた。何回も演奏をやり直し、観客を戸惑わせた。
「けど、それを凌駕するようなものを今見せてるつもりです」
その通り、あれから2年経った今、気力が薄れる様子が1ミリもない。の子は確実に成長しているし、プロ意識が芽生えている。
「配信とか全然できてなくてすいませんね」
謝りながらの子がギターの音を確かめる。「『白いたまご』いきまーす」と言うと、みさこがシンバルを叩き始める。まだ準備が出来ていない様子のの子は「待て…待てよこのやろーー!!」と怒鳴る。あれから2年経った今、やり直しは健在のようです…。
「こっちは色々あるんだよ!踏み踏み(?)するもんが色々ある!…チューニングずれてんじゃねーかこれ!」
ステージ袖の劒マネージャーを呼びかけるの子。その間、monoが場を繋げるように「電気グルーヴのファンの方はピコピコ音楽好きな人多いんじゃないですか」と喋ると大きな笑いが。ちばぎんが「monoくんのMCでこんなに笑いが起きたの久々じゃないかな」と添える。の子はチューニングにチッ、チッと舌打ちし、準備ができると『白いたまご』の演奏へ。

演奏後、そのまま間髪入れずに「友達なんかいらねーんだよこのやろーー!!チッ、チッ(舌打ち)、今の俺の心境だーー!!」と叫ぶの子。
先ほどのチューニングから若干イライラし始めている様子。「お前らも友達いらねーんだろー!特にここに集まってる奴らはよー!どうだ!違うか!違いますかー!?」と煽る間、ちばぎんが軽快なベースラインを奏でる。それに合わせての子が先ほどの苛立ちを忘れさせるように、「タンッタンタンタンタン…」と楽しそうに歌い始め、観客が手拍子を。の子が合図し、手拍子を打ち消すようにみさこがドラムを叩く。
『友達なんていらない死ね』は中盤からの子のギターのチューニングがおかしくなり、演奏中に劒マネージャーを睨みつける場面も。まさに「えっ!?まじっ!?うっそでしょ!?」といった様子だ。の子の演奏が中断するも、他のメンバーは間奏を続ける。の子は怒りのあまりギターを放り投げ、劒マネージャーがそのままスペアのギターをの子に渡す。その間、monoのキーボードのメロディが切なくて、スリリングな状況の中でこの曲の世界観を描いていた。
の子は「チクショーー!!」と怒鳴り、スペアのギターでそのまま後半の演奏を続ける。表情からは明らかに苛立ちがたちこめていた。

演奏後、「あーー!!くそーー!!おーーい!!あーーー!!くそーーー!!くそったれくそーーーー!!」と叫ぶの子。
少しばかりの緊張感が漂うステージに、客席からは「の子ー!」とエールが。「アゴなんとかしろー!」という男性客の声で空気が少し和む。「なんとかしろって…これがかまってちゃんのライブなんだから」とmonoが答え、みさこが「THIS IS かまってちゃん」と添える。
の子がブチギレた姿を久々に見た気がする。チューニングが狂ってる演奏は以前もあったけど、こんなに苛立つことはなかった。この怒りには、ライブへの意気込みが表れていたのかも知れない。
不穏な空気になってしまった会場を見て、の子が「はいっ。すいませんでしたーっ!」と謝る。一気に会場の緊張感が解けて、笑いが起きる。
この一部始終、昔では考えられなかったこと。
「電気グルーヴのファンの方は、少しでも僕らのことを覚えて帰ってください」
の子がギターをいじっている間、monoが繋げる。他のメンバーもmonoと一緒に時間を埋め、チームワークを感じる。
の子は「じゃ、ギター使わない曲やろっか」と機転を利かして、『通学LOW』へ。先ほどまでの怒りをすべてこの曲にぶつけるかのように、ボコーダーで高音になり、悪魔のような不気味な声質で「クッソーー!!」と叫んで演奏がスタート。このの子の狂気に負けていないのがiPadをいじるmono。フラフラと動きながら頭を振る。その動きが一定のリズムを刻み、とにかくヤバイ。なんだろうこの感じ。後半にかけてテンポが速くなり、の子の声がますます歪んでいく。怒りも苛立ちもすべてこの1曲に消化されていくかのようだ。

「すごかったろーう(LOW)」というの子の声に、「の子!」「天才!」などと女性客の声。「うっせえ!」と返事。「小学生か…!」とみさこがつっこむ。
「じゃあ、次は『聖マリ』をやります」とちばぎんが言うと、の子が「そういうこと言うんじゃなくって、いきなりジャーン!とやるのが良かったなあ…」とまさかのダメ出し。「まさか(次の曲を)覚えてるとは思わなかった…」とちばぎんが心の声をつぶやく。
「じゃあ、『聖マリア記念病院』という曲をやります」
打ち込みの音がブブブブ、と鳴り、ジャーーン!と景気よくギターが鳴る。宅録とはまた違い、ちばぎんのベースがこの曲により一層疾走感を与える。RADIOHEADの『There, There』を彷彿とさせる、monoの両手でスティックを振り下ろすパーカッション演奏。「母さんがゲームオーバー 父さんがオーバー」などと意味深な歌詞を延々と歌うの子。後半は絶叫。最後はホーリーなアウトロが流れる中、の子がステージの中央にあるイスに立ち、両手を広げる。が、イスから落下してしまい、ギターの音がムードを打ち消す。照れ笑いしながら自分のマイクスタンドに戻ってくる。

「なんだよ、なんか面白い話しろよ。なんかないの?最近の、巷の」との子が話しかけ、「お客さんに言ってんの!?」とちばぎんが戸惑う。monoが最近ニュースになった"オスプレイ"の話題を持ちかけると、「オスプレイってなんか俺、BL系かと思った」との子が笑いを誘う。「飛行機がね、海外から来たんですよね」とmonoが続けると、「それ今する話?」とちばぎんが絶妙なツッコミを。

「最近ほんとに落ち込んでしょうがないんですよ僕は。家に帰ってすることは、朝起きて、で、寝て、曲を作ろうかなって思ったら、セブンイレブンの枝豆食べたいなあ、ってなって、それでセブンイレブンに行って、買って…それで僕は曲作り全然できてません。枝豆ばっか食ってます。はい。神聖かまってちゃんのファン、今、こういうことだ」

の子が枝豆な近況を語る。女性客から「頑張ってー」「枝豆以外もちゃんと食べてねー」などとお母さんみたいな声援が。

レコーディングの話を始め、「『雨宮せつな』って曲やってるんですけど、monoくんがボコーダーやってるとなんかエスキモーみたいな格好だから俺ずっと爆笑してて、レコーディングがまったく進まないです、はい」との子が語る。

「の子さん、立ち位置こっちです」とちばぎんがセンターのキーボードへ案内。『黒いたまご』が始まる。
ここでmonoのiPad演奏が炸裂する。壊れたおもちゃのようにクネクネと動き続け、なぜか口が半開きで、目がイカれている。この存在感は計り知れない。神聖かまってちゃんのライブで、かつてこれほどまでの狂気があっただろうか。の子がどれほど叫んでも辿り着けない狂気。家帰ってこんな人が部屋にいたらブログに書きたくなるレベル。思わず実家の母に連絡したくなるレベルである。しかし、肝心のiPadをどこをどう操作して演奏に参加しているのかまったく分からない。

「今、monoくんどうだった?初めての試みだったから…ちゃんとコイツできてた?」
の子の問いに、一人のお客さんが「モノマネが上手かった」と謎の返答。これは一体どういうことなのか。

「血気盛んなんだよ今。落ち込んで、まあ、ライブのステージでかっ飛ばそうと思います。若い力で。俺は若くなって若くなって若くなってタイムトラベルするんだよ。何言ってんかわかんねーって思うだろ?でも次の曲を聴けば分かる。『22才の夏休み』

『22才の夏休み』はの子がアドリブでギターソロを弾き、勢いたっぷり。最後は「ぺたっぺたっぺたっぺたっと、背中に、叩きつけてやるっ!!」と叫び、演奏が終わっても一人でギターを弾き続け、「22才の夏ぅーでぇーすぅー」と歌い、余韻を残す。
「今の『22才の夏休み』は今までで一番よかったな!」
すかさず言ったの子にちばぎんが笑う。「この曲、ライブでやるといいね!」と、前半の苛立ちが嘘のように楽しそうに話し始めるの子。ちばぎんが『いかれたNEET』のベースを始め、「何この曲?あ、俺の曲か?」ととぼける。
「お前、『サイタマノラッパー』やってんだろ?ラップ聴かせろよ。お前今度結婚するんだろ?バンドはまだ続いていくからなーーっ!」
リズムに合わせての子が喋り、「ニートの気持ちを忘れないまま、お前結婚しろよ」と言った後、ちょうどちばぎんとみさこの演奏が止まり、monoの「なんだよー!」という声だけが残る。ここから再び『いかれたNEET』へ。

喉が張り裂けんばかりの声で「ニィィーーートォーーー!!」と何度も叫び続けるの子。これを3年近く続けているのだから、どれほど強靭な喉をしているんだろう。最後、monoのキーボードとちばぎんのベースだけになり、の子がギターを振り回しながらステージ中央へ。イスに乗ろうとするが、バランスを崩して転倒する。
高い場所、出来る限り真ん中。自分が目立つ場所を子どものように目指すの子。ギターを振り落とそうとするが、ためらった様子でmonoを見る。それがまるで「止めないのか…?」と言っているかのようで、制止されるのを待っていた。イスから落ちそうなの子に、みさこが「monoくん助けてあげて!」と指示。なんだか心が和むワンシーンです。

「早いものですが、次の曲で最後になります」
ちばぎんが言うと、客席から「やだーー」の声。「ばかやろーー!!」との子が吠え、いつもの「金返せー!」が始まると思いきや、「やだーーとか言うんだったら次来ればいいんだよ!」とまさかの正論。の子は続ける。

「普通に、今ここで最後の、お前のイデオロギー…イデオロギーじゃねえや、エネルギーを全部ここに叩きつければいいんじゃねーかなー!電気グルーヴファンの人もそう思わない?どうすかねーー?いくぜ!!若さをナメんじゃねーぞこのやろーー!!」

最後は『学校に行きたくない』
monoがステージ中央の最前に立ち、両手を上げてフニャフニャと動いている。彼がフラワーロックのようにゆるい動きをする中、の子がステージ中を飛び回る。
「計算ドリルを返してください!計算ドリルを返してください!」
ボコーダーで子どものような声になったの子が吠え、monoも同じように叫び続ける。後半は「お前らがさあ!!」と客席に目がけて何度も叫び、キーボードの近くにある台の上から思いっきりダイブ。揉みくちゃにされながら歌い続け、「おかーーさーーーん!!」と叫びながらステージに戻ってくる。そしてまたダイブ。
再びステージに戻ってきたの子は、「うおーー!」と叫んだ後にマイクをぶん投げ、近くにあったマイクスタンドを床に叩きつける。
客席最前に歩み寄り、多くの声援を受け止めるの子。ステージに戻るとなぜかズボンが脱げ、パンツが丸見えになっていた。「BANになるよー!」とお客さんの声。
ステージ中央の台の上に立ち、の子が挨拶する。

「この後、電気グルーヴがあると思いますが、それはすごい、俺の熱意で、神聖かまってちゃんの熱意で、電気グルーヴさんを、凌駕するような、したいような、ライブを、叩きつけましたーー!!俺らが、"今"のバンドだーーーっ!!」

マイクを放り投げ、「また来てねーーっ!!」と両手を振ってステージを去るの子。神聖かまってちゃんのライブはこれにて終了。

前半、ギターのチューニングに苛立ち、ライブの先行きが一瞬不安になる感覚は久々だった。
今年は安定したライブばかりだったので、『友達なんていらない死ね』はすごくスリリングである意味貴重な瞬間。その後気分を持ち直し、最後は若さと勢いで神聖かまってちゃんらしさを十分に魅せつけていた。
ライブ前から漂っていた殺気は、最終的にはメンバーとの子の人間力により、かっこいいライブに消化されていった。

その後は電気グルーヴのライブが始まる。VJの映像が後ろのスクリーンに映し出される中、さすがの貫禄と安定のエンターテイナー。
「富士山!富士山!」とこれほどまで山が連呼され、山崇拝の空間はない。この日物販に売り出されていたTシャツを、自ら「これ着てクラブとかに来ないでよ!」と訴える石野卓球。最初から最後まで笑いと興奮に包まれて、とにかく踊らされました。

この日の神聖かまってちゃんのライブ映像は、約2年ぶりにアップロードすることになりました。
の子さんの強い希望もあり、関係各所に了承と確認を得て、7曲をアップしました。これは自分にとってかなり大きな出来事でした。
権利関係など事情もあり、もう二度とアップできないと思っていた。それでもの子さんが「大丈夫っすよ!」と半ば強引に背中を押してくれて、劒さんに関係各所に連絡してもらって、GOサインが出た。公開するときの高揚感といったら…

2年前を思い出した。撮影したからには多くの人に見せて伝えたいし、それができないからこういったライブレポートでライブの記録をほぼ文字起こしに近い状態で書き記している。
アップすることに関して、かつてのの子さんとのやり取りを思い出してしみじみとなった。「昔を思い出しました」との子さんは言ってくれたけど、神聖かまってちゃんはやっぱり明らかに進化している。あれから神聖かまってちゃんは大きなステージ、たくさんのお客さんの前に立つことになったけど、何も変わらないことがある。
2年前の下北沢屋根裏での、の子さんの「また撮影したいとき、ひょっこり撮りに来てくださいよ。ひょっこりひょうたん島で」という言葉は忘れられない。
バンドが大きくなるにつれて、僕が撮らなくても伝えてくれる人はいるだろうし、多くのメディアが彼らの姿を大きなステージで映してくれるだろうと思っていた。だから撮影を離れた。でも、何度かライブを観ていくにつれて、やっぱり撮影したくなった。神聖かまってちゃんのライブ、の子さんの"今"は、すべてが貴重に思った。
やがてアップロードに関して厳しくなっていた。元々は伝達のつもりで撮影していたけど、アップができなくても、記録になればいいと思っていた。
やっぱり神聖かまってちゃんを撮影したい。このバンドは、一分一秒、何かしら記録に残さなければならない。撮影できる身分であれば、撮影するべきだ。

インターネットでの活動をアイデンティティとする彼らだけど、色んな事情でライブ配信が制限されるときがある。今回、配信が禁じられていた中で、僕が撮影した映像のアップロードはなぜか許された。
この日のライブがインターネットに生き続けると思えば、"インターネットポップロックバンド"に少しでも協力できたかも知れない。
これこそが"今"のバンドがやるべきこと。
それは光栄なことだし、むしろこうあるべきだと思っています。

アップロードを許していただいた関係各所の方々に、そしてメンバーとの子さんに感謝します。

2012年7月25日 恵比寿LIQUID ROOM
<セットリスト>
1、知恵ちゃんの聖書
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、天使じゃ地上じゃちっそく死
4、白いたまご
5、友達なんていらない死ね
6、通学LOW
7、聖マリ
8、黒いたまご
9、22才の夏休み
10、いかれたNEET
11、学校に行きたくない

2012年6月11日月曜日

神聖かまってちゃん たけうちんぐライブレポート


誰にもかまわれなかったバンドが、いかにかまわれるようになったか。
小さなライブハウスから始まり、大きなロックフェスティバルまで。
「僕はいつか 東京のど真ん中で 何千人の前で 存在を見せてやる」
いまや、彼らの歌の通りになった。
流血、ギター破壊、パソコン破壊、ケンカ、そして配信――
彼らに一体、何があったのか?
世界初の"インターネットポップロックバンド"の歴史を、ここに記録します。



 
2009年4月23日 下北沢屋根裏 「裸になって何が悪い!」
 の子が最初から全裸。一曲終わるごとに一着身につけていくというライブ
2009年5月27日 下北沢屋根裏 「の子の子学会に入りなさい~」
 この日のために制作した映像を流しながらのライブ
2009年6月25日 渋谷屋根裏  「人生が中途半端♪」
 の子VSmonoのフリースタイルラップバトル
2009年8月7日 SUMMER SONIC2009 「ロックンロールしかできねーんだって」
 『出れんの!?サマソニ!?』に出場。一曲しか演奏できず
2009年8月7日 渋谷LUSH 「サマ・ソニ・失・敗!」
 サマソニ挽回のライブ。の子がダイブ
2009年9月4日 下北沢屋根裏 「パンダ見るよりはマシだろ!」
 初のテレビ局(SPACE SHOWER TV)取材
2009年9月21日 東高円寺UFO CLUB 「血を流したことは、ずるい!」
 の子、流血ライブ。失神者続出
2009年9月27日 渋谷LUSH 「イギーポップだよぉおおおお!」
 『夕方のピアノ』の演奏中、ちばぎんが暴れすぎてメガネを落とす
2009年10月24日 渋谷LUSH 「チャットモンチーの奴、俺と対バンしよう!」
 DJで出演のチャットモンチー・福岡晃子に絡む。「(対バン)したくなーい!」と返される
2009年11月3日 渋谷duo 「クソガキチェルシーなんかに負けるかコノヤロー!」
 トライセラトップスや黒猫チェルシーと対バン。の子、ライブ前にマイクなしでラップを披露
2009年11月21日 下北沢BASEMENT BAR 「清掃に行ってたんだよコノヤロー!」
 ねごとや住所不定無職と対バン。みさこが遅刻し、リハーサルなしのライブに
2009年11月26日 渋谷O-nest 「ついにくるりの片足を掴んだんですよ。岸部の」
 monoが初めて酒に酔っ払いながらライブ
2009年12月11日 恵比寿LIQUID ROOM 「まだまだロックは終わらないのです」
 の子、ギターを床に叩きつけて破壊
2009年12月23日 吉祥寺MANDA-LA2 「死ねよジョニー何が誕生日だ♪」
 水中、それは苦しいのジョニー大蔵大臣のバースデイイベント。『夕方のピアノ』の替え歌を披露
2009年12月24日 渋谷LUSH 「の子 ロックしています」
 初のニコニコ生放送ライブ。最後は配信中のノートパソコンを床に叩きつけて破壊




2010年1月22日 新代田FEVER 「88万円っすわ…」
 の子がドラムセットを蹴りまくり、髪を掴まれてステージ脇に連れこまれる
2010年1月24日 渋谷duo 「涙じゃねーよ!鼻水っつってんだろさっきから!」
 monoの口癖がすごい。『黒いたまご』初披露
2010年1月31日 渋谷LUSH 「俺は今日、38.9℃の熱がある」
 バイナリキッドとのツーマン。GAINAXの社員がライブを観に来る
2010年2月8日 新宿LOFT 「お前らマジメにやれよ!帰るよ!」
 ライブ中、の子とmonoが殴り合いのケンカ。お客さんが怒鳴って帰る
2010年2月18日 渋谷O-nest 「やっぱお前がいなきゃダメなんだよ!」
 の子のケンカ、失踪、欠席後の仲直りライブ。最後はの子とmonoが戯れる場面も
2010年2月23日 代官山UNIT 「あれ?俺が壊すって話じゃなかったっけ…」
 ギター破壊イベント。みさこが『黒いたまご』でギターを床に叩きつける
2010年3月9日 渋谷eggman 「アルバムは買わないでください!」
 Coccoらと共演。ライブ後、の子がYUIに絡む
2010年3月11日 渋谷O-east 「の子に無理強いはさせんなよ!」
 MySpace主催のイベント。入場時、の子とmonoが追いかけっこ
2010年3月14日 の子 ファッション誌『KERA』撮影 「そして輝くウルトラソウル!」
 Daredevilにての子が初めてのコーディネイト。アイラインの魅力にとりつかれる
2010年4月4日 渋谷HMV 「真っ昼間ボーイズのことは言うな。あれは俺だ!」
 ライブ前に店外で"アウトストアライブ"を。ライブ後はサイン会が開催
2010年4月8日 渋谷タワーレコード 「俺は踊り子なんだよ!ミネアなんだよ!」
 の子、路上ライブ配信中に交番に連行される。ちばぎんが体調不良でうずくまる
2010年4月15日 渋谷屋根裏 「酔っ払いのキャラでいくんだよ俺は!」
 『友だちを殺してまで。』リリースパーティ。の子に促され、monoがダイブ
2010年4月16日 下北沢屋根裏 「200人入るキャパじゃないでしょどう考えても!」
 初のワンマンライブ。収容人数を遥かに超えた会場は常に酸欠状態
2010年5月13日 原宿アストロホール 「僕、下まつ毛3本くらいしかないです!」
 楽屋レポート。の子が初めての女装。ちばぎんは熟睡
2010年6月11日 渋谷LUSH 「ちばぎん、名前変えるぞ。"ヘドロ"とか」
 前野健太とのツーマン。の子が喉のために冷房を切り、汗ダラダラのライブに
2010年6月25日 渋谷クラブクアトロ 「これが"そして5年後"とかになるんだよ」
 andymoriとのツーマン。最後、ステージに神聖かまってちゃんが招かれるがの子は来ず
2010年7月18日 埼玉県坂戸市七夕まつり 「おばさん!!」
 の子、andymoriの小山田壮平の弾き語りライブに飛び入り参加
2010年8月8日 SUMMER SONIC2010 「サマーーソルトキーーーック!!」
 本番では配信が禁止されていたが、の子がノートパソコンを持って強制突破。没収される
2010年8月12日 恵比寿LIQUID ROOM 「アゴ、お前彼女おるんけ?」 
 ミドリとの対決ライブ。monoに彼女ができたことをミドリの後藤まりこに暴露される
2010年9月19日 渋谷AX 「ディス・イーズ・ヒストリィィイイーー!!」
 初の自主企画。LEDの大画面を使用してのニコニコ生放送ライブ。の子が局部を出して強制BANに
2010年10月15日 下北沢GARDEN 「僕のアゴおもしろいでしょー?」
 戸川純らと共演。ライブ前に路上ライブ配信
2010年10月30日 恵比寿LIQUID ROOM 「今日のライブはどんどん2ちゃんで叩いてください」
 HALCALIや鳥肌実と共演。の子の呂律が回らなく、久しぶりのグダグダライブ
2010年11月6日 早稲田大学学園祭 「うるせえよ!…あ、俺か」
 【ロックの学園】でDragon Ashらと共演
2010年11月19日 渋谷WWW 「ケンカなんかしょっちゅうなんだよ」
 WWWこけら落としライブ。ニコニコ生放送が大画面に。ライブ中にの子とmonoがケンカ
2010年12月3日 代官山UNIT 「こんなね、途中で曲やめて笑ってくれるお客さん、いないよ?」
 向井秀徳が配信に登場。monoが手にギプスを装着したままのライブ。最後はの子が一人で弾き語る
2010年12月4日 新宿LOFT 「ここでこの曲を持ってくることが、逃げ!」
 謎に包まれたイベント【謎の日】。CAROLやOasisをカバー
2010年12月8日 の子 音楽雑誌『GiGS』自宅取材 「歴史です」 
   の子の宅録機材取材。ビデオカメラやPV編集ソフトまで紹介してもらう(文字起こしVer.)
2010年12月22日 恵比寿LIQUID ROOM 「お前とケンカしたくないんだよ前みたいに!」
 『つまんね』『みんな死ね』発売日。ワンマンライブ
2010年12月27日 恵比寿LIQUID ROOM 「これからもの子を見守ってやってください」
 ワンマンライブ追加公演。史上最高のライブ




2011年2月25日 渋谷AX 「映画化されるらしいが観なくていい。俺自身が映画だからだ!」
 HMV企画のももいろクローバーとのツーマン。『バグったのーみそ』初披露
2011年4月17日 日比谷野外音楽堂 「ライブが滑ってるのか床が滑るのか、どっちだ!?」
 リリー・フランキー主催の【ザンジバルナイト】 に出演
2011年4月23日 渋谷クラブクアトロ 「俺は武士~♪」
 【フリーライブツアー】の子がハゲかけてることについての即興曲をmonoと一緒に
2011年4月24日 日比谷野外音楽堂 「言っとくけどな、これが俺の300%だからな!」
 エリオをかまっちゃん名義で出演。monoメインボーカルの『学校に行きたくない』披露
2011年5月19日 川崎クラブチッタ 「神奈川に僕が来たのは木村カエランド以来です」
 【フリーライブツアー】 演奏した曲を何度も忘れてしまうの子
2011年5月26日 恵比寿LIQUID ROOM 「俺が拳でバンッて地震を止めるから!」
 【フリーライブツアー】の子、ステージドリンクに味噌汁を持ちこむ
2011年5月28日 ROCKS TOKYO2011 「鳴り止まねえじゃねえ…」
 雨の中のロックフェス。の子がダイブし、泥まみれに
2011年6月29日 仙台CLUB JUNK BOX 「僕の気持ちが復興できたよ」
 【フリーライブツアー】最終日。 ライブ冒頭からアゴについての即興曲を披露
2011年7月27日 恵比寿LIQUID ROOM 「俺はこういうの嫌なんだよ!」
 氣志團とのツーマン。『グロい花』初演奏
2011年8月7日 WORLD HAPPINESS2011 「2011年のモーツァルトをなめんなよ!」
 坂本龍一が配信に登場。抱きついて血を吸おうとするの子
2011年10月2日 六本木ニコファーレ 「僕、みさこさんなんかと違って、泣いちゃったよ!」
 【26才の夏休みTOUR】ニコニコ生放送ライブ。最後、の子とみさこが涙を見せる
2011年11月13日 恵比寿GARDEN HALL 「誰かチューニングできる人はいませんかー!?」
 【26才の夏休みTOUR】『聖マリー・アントワネット』『友達なんていらない死ね』初披露
2011年12月8日 渋谷WWW 「俺たちがピックアップゴールドだ!」
 【謎の日】ピックアップゴールドがまさかの再結成ライブ
2011年12月13日 新木場STUDIO COAST 「複雑骨折っすわ…」
 【26才の夏休みTOUR(追加公演)】巨大LED使用のニコ生ライブ。まさかのケンカ勃発



2012年2月24日 新木場STUDIO COAST 「いやー、わかんねえけど、ハッピー…楽しい」
 【岡村ちゃんとかまってちゃん】岡村靖幸とのツーマン。『2年』を初披露
2012年4月10日 Zepp Tokyo(編集中)
 【夢のENDは鳴り止まないっTOUR】B.B.クイーンズとの対バンツアー
2012年4月15日 さいたまスーパーアリーナ 「俺が一番楽しかったわ」
 【EARTH×HEART LIVE2012】の子がフィッシュマンズのゲストボーカル。サカナクションとのツーマン
2012年5月27日 ROCKS TOKYO2012 「日本にもこういうバンドがいるんだバカヤロー!」
 2年目のROCKS TOKYO。ベイサイドステージの夜、トリを飾る
2012年6月11日 新木場STUDIO COAST 「ちぃぃいばぎぃぃぃいいん!!!」
 【マキシマム ザ ホルモン"オヤジ狩られTOUR2012"】ダイブする観客が過去最多


2012年5月27日日曜日

神聖かまってちゃん@ROCKS TOKYO2012

神聖かまってちゃんが野外ロックフェスでトリ。昨年に続き、東京の新木場・若洲公園で開催されたROCKS TOKYO2012に今年も出演した。

この日の朝、の子は8ヶ月ぶりとなる新曲『おっさんの夢』をYOUTUBEにアップロードした。スーツ姿でサラリーマンに扮したの子がB'zの『love me, I love you』の稲葉浩志ばりのカメラ目線と動きで、大人になっても夢を追い続けることを歌っていた。

彼の状況は、この数年間で劇的に変化している。サイト『子供ノノ聖域』を立ち上げ、『23才の夏休み』などのPVを制作していたあの頃のような、趣味や衝動だけで音楽活動はもはやできなくなったのかも知れない。近頃の配信でも、自分一人のためだけにはやれないことばかりであると告げていた。楽曲を制作することが、自分だけでなく、メンバー、取り巻く人々、家族にも影響することをはっきりと自覚していた。
新曲は、彼が今"子どもの聖域"と大人の現実の狭間にいることを日記のように伝えているかのようだった。
それでも、彼の最近の発言で印象的だったものがある。

「最近のバンドは大人のすごさばっかりで、子どもの恐ろしさ、子どもの脅威、子どもの未知の凄さ、そういったものを見せつけられるバンドがいねえのよ!」

の子は父親に止められていたという自宅での配信を行ない、口の端っこに泡を溜めながらリスナーと会話していた。そして浴槽にまでノートパソコンを持ち込み、"風呂配信"をする。そこで股間が映ってしまい、BAN(ニコニコ動画の運営から配信を禁じられる)になってしまった。
これは大人のすごさとは真逆のことだろう。まるで子どものように一つのことに熱中し、ノートパソコンに向かって途切れることなく喋り続ける。メンバーとのケンカも、他のバンドへの挑発も、上へ上へと向かう野心も、子どものように大胆不敵に見える。
神聖かまってちゃんの活動は冒険活劇のようなものだ。まるでマンガのようなキャラクターがライブでも配信でもテレビでも暴れ、話題を作っていく。ここまでユニークなサクセスストーリーは珍しいだろうし、次のページをめくるのが楽しみになってしまう。

の子には新曲で歌われているような夢、やりたいことがまだまだたくさんあるのだろう。
その証拠に神聖かまってちゃんは最近、ニコニコ生放送だけでなく、YOUTUBE配信に手をつけ始めた。海外からのレスポンスも少なくはなく、より多い閲覧者数が見込める。先日のスタジオ配信も、外国人のリスナーを意識したような始まり方だった。ヘルメット姿にバズーカのようなものを抱えたの子が「ヘロー!ヘロー!アイアムランボー!アイアムランボー!アイアムランボー!オーウ!アイアムランボー!ウィーアーファッキンジャップバンドシンセイ・カマッテチャン!レイプ!オウ、レイプトカソンナンシチャダメ!ウィーアーファッキンジャップバンドシンセイ・カマッテチャン!アイアムランボー!アーユーラインボー?アイアムランボー!オーウオーケーオーケー!アイアムランボー!」と叫んでいたのだ。
より外に向けて配信するツールを選んだところから、まだまだ上に昇りつめようとする彼の意識の高さが伺える。また、今年のROCKS TOKYOは海外からPRIMAL SCREAMと、OasisやMy Bloody Valentineらが在籍したレーベル「クリエイション・レコーズ」の設立者アラン・マッギーも出演する。だからこそ、の子の野心はこの日もメキメキと芽生えているに違いない。

本番前もYOUTUBEで配信し、ノートパソコンの前でリスナーのコメントを読んでいく姿はもはや恒例。
の子は楽屋近くで『ス-パーサイヤ人になるの子』というタイトルでエナジードリンク・MONSTERを飲み、上半身裸で「俺は今、スーパーサイヤ人だーー!!」などと異常なテンションで叫ぶだけの配信を行なう。悲しいくらい、子どもの恐ろしさだ。
偶然近くにいたROCKS TOKYOプロデューサー・鹿野淳氏に「俺は今、サーバーサイヤ人3だーーー!!」などと絡み、「気円斬!(クリリンの技)」と叫んで鹿野氏を倒そうとするが、あっけなく突き倒され、投げ飛ばされて負けてしまう。余裕で勝利の鹿野氏はダブルピース。子どもは何の脅威にもならなかった。andymoriが演奏する音が聞こえる中、まるで子どもの遊びに大人が付き合ってあげているような日曜日の憩いの時間が流れていた。
その後もメンバーと交互に配信し、ライブ本番は昨年同様に配信できないことから、出演時間が近づくとノートパソコンを楽屋に放置したままステージに向かう。こういうときはいつも、ちばぎんが配信をきちんと締めてくれる。

andymoriのライブが終わると、ベイサイドステージの客席は人数が一気にまばらになった。みんな、ウィンドステージのPRIMAL SCREAMや食事に向かったのだろうか。
空いた客席をいいことに前方に向かうと、うんこくさっ!そこにはなぜか牧場のにおいが漂っており、海の近くとは思えない環境がそこにあった。なんでこんなにおいがするのか。なんでうんこなんだ。もはやかわいい女の子のにおいを嗅ぐことで耐えるしか方法はなさそうだ。

18時過ぎ。神聖かまってちゃんのセッティングが着実と進んでいる。
ステージでは"男"と大きい字がプリントされたTシャツを着ている劒マネージャーとスタッフ・まきおくんが2人並び、"男"と"男"が真剣な表情で機材を見ていてなんだかすごく男らしいステージになっていた。

神聖かまってちゃんの出番は19時20分から。それなのに18時半すぎには大きな歓声が聞こえ、ステージにはメンバーが登場。まだ人が集まりきれていない会場が一気に湧く。
「まだセッティングだから…」とちばぎんがなだめる。それでもの子が登場すると、一気にライブが始まってしまう。
「今日はみんなの力を借りてやっていきましょう!」
いつもの真っ赤な服を着ているの子が宣言。歓声に対し、「当たりめーだー!」と叫ぶ。「当たりめーだろほんとによ」とmonoが同調し、なぜか和みのムードへ。
「いやいや、ちょっとサウンドテストをやります。こんなに集まっていただいて、ほんとにありがとうございます。ROCKS TOKYOで念願のトリを飾ることができて、皆様のおかげでございます」
monoが丁寧に挨拶していると、隣での子が「メガネかけてねーと、ボーカルエフェクター見えねーじゃねえか…」と呟く。「ボーカルエフェクター見えねーって問題じゃねえか…」とmonoが返すと、キーーン!とハウリング。「あれ?俺のせいか?失礼しました」と、今日はやけに喋る。が、酒が会話の潤滑油になっていても、その滑舌は相変わらず危うい。
「酔っ払ってますか?今日日曜だから酔っ払って家帰って寝て、明日また元気に仕事行ってくれたらいいと思います。ニートの人も大学生もいるかも知れないけど、ROCKS TOKYOを楽しんでいただけたらいいと思います」
monoの隣で黙々とチューニングしているの子。「の子さんだってチューニングするんですよ」と呟き、笑いが。「チューニングしなくても、ここに来れるんです」と目をカッと開いてキメポーズ。これまでのライブでも、ちばぎんや劒マネージャーがの子の代わりにチューニングする光景がしばしば。チューニングする姿が珍しいギタリストが見れるのは、神聖かまってちゃんのライブだけだ。
「だから今、バンド目指している人は頑張ってください。ま、メロディがすべて」
チューニングができなくても、ROCKS TOKYOのトリを飾れるらしい。メロディメーカーとして自信にあふれる発言で、まだ本番が始まっていない会場を盛り上がらせる。
そしてチューニングしたてのギターを弾き、即興で歌い始める。

「今回は雨じゃ~ないですね~ 去年のROCKS TOKYOは雨だったのさ~ だけど今回は雨じゃないのは~ これは神のおとしめし~ そんなことは知らないけど~ 今は流れにまかせて~ 僕は流れにまかせて~ そんなこと知ったこっちゃないけど~ 初めて観た人もこれまで観た人も~ この一瞬を確かめてください~」

「おとしめし」って一体何だろう。「お召し物」?「貶めし」?思いついた言葉を綴って歌うのは昨年の本番前と同じ。今年は晴天バージョンとして、暮れゆく青空に似合っていた。
「やべえ、おしっこ行きてえ…」
当然かっこよく続けるはずもなく、笑いを誘う。「音合わせ1曲やる?何やろうか?」との子が言い、『ベイビーレイニーデイリー』の演奏を決める。
「お前ら、分かるだろ?ちゃららちゃらら、いくぞ!」
本番さながら、の子が観客を煽る。会場にはまだ十分にお客さんが集まっていないけど、みさこの掛け声の後、観客の「ちゃららちゃららー!」という声は青みがかった空に響き渡った。
「雨が降ってなーい~ ROCKS TOKYOでも~ 今年は僕は~ 去年のようにやってやる!」
こちらも晴天バージョンであるかのように替え歌し、それと同時に宣言していた。
時間の都合もあってか、途中で演奏を止める。「今日はノリノリだぜ」との子が楽しそうに振舞う。「とりあえず今日は…」と話し始めるの子に、ちばぎんが「え?下がんないの?」と止める。
「バカヤロッ。立ったからには下がる武士がいるか!」
の子の返答に、ちばぎんがプフッと笑う。「あ、そうか俺、トイレ行くんだ。ハハッ」との子も笑い、ステージの雰囲気がすごくいい。近頃の配信でもそうだけど、ここ最近のメンバーの雰囲気はかなり穏やかに思える。それがセッティングの姿でも十分表れていた。
「まー最後なんでみんなはっちゃけてカモンカモンカモンー!イヤッハーイ!」
すこぶる調子の良さそうなの子の叫び声に、みさこがパシャーン!とシンバルを鳴らして盛り上げる。

「アラン・マッギーいるかい?アラン・マッギーかどうか知らねーけどもほんとによー、そんなイギリスか世界か知らねーけども、日本にもこういうバンドがいるんだバカヤロー!」

Stickam、peercastを経て、ニコニコ生放送、Ustream、そして最近ではYOUTUBE。配信が一般化される前からひたすら配信活動に身を投じてきた神聖かまってちゃんというバンドのスタイルは、世界で他に存在するのだろうか。"インターネットポップロックバンド"と自ら名乗る独自性を見せつけるにも、この日は配信を禁じられている。ステージでは"ポップロックバンド"として勝負することになる。
それでも「叩きつけてやるぜ!よろしく」とクールにキメてその場を去るの子から、確信が持てる。自意識と自我と自己顕示と自信といった自ブランドすべてで挑み、インターネットという彼らの最大の武器がなくても、音楽だけで正々堂々と勝負することに。世界に叩きつけるのだろう。アラン・マッギーが観ているかは分からないけど。
世界は関係なくとも、ロックフェスは神聖かまってちゃん目当てではないお客さんの目と耳にも入る機会。の子がそういう場で自分を存分に発揮しないわけがない。

やがて19時20分になる。太陽は完全に沈み、空には月の光だけが目立つ。転換中のステージの照明が落ちると、辺り一面は真っ暗に。歓声が沸き立ち、登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れる。
たくさんの手拍子を前に、メンバーが再び登場する。みさこがSEのリズムに合わせて、軽快にドラムを叩く。

「やってきた!この夜中、テンション上がるぜ。マジで。鹿野ありが…鹿野とか言っちゃった。鹿野さんありがとうございます!ただ、ありがとうございますって言うのは最後だ」

ROCKS TOKYOのプロデューサーである鹿野淳氏に感謝の意を表するの子。夜の光景に感動している様子で、辺り一面を見渡している。
「見せつけてやる。アラン・マッギーだかボビー・ギレスピーだか観てるか知んねーけども、そんなことはどうでもいい。集まってくれている方ありがとうございます。ありがとうございます、マジで」
「めっちゃ後ろまでおるで!」
観客の多さにちばぎんが関西弁で感動する。「最高の夜にしようぜ」との子が言い、即座にちばぎんが「そんな感じで神聖かまってちゃんです!よろしくお願いします!」と恒例の進行を始め、リズム隊が重低音を鳴らす。
こうして神聖かまってちゃんにとってのロックフェス初のトリ、"見せつけてやる"ライブがスタートする。

「では1曲目聴いてください。『美ちなる方へ』!」

清々しくスムーズに曲紹介し、演奏を促すの子。しかし、monoがミスをする。演奏中断。これは神聖かまってちゃんにとってはお決まりの展開ではあるが、この絶好調なテンションでのまさかの失敗に「えええーっ…」と戸惑う観客。
monoが両手を合わせて謝り倒す横で、他の音が鳴り止んでもギターを弾き続けるの子。それに合わせてちばぎんもベース、みさこもドラムを再び鳴らし始め、の子はそのまま歌いだしの「なるべく楽しいふりをするさ誰だって~」を歌い、なるべく楽しいふりをする。いや、本当に楽しいんだろう。薄ら笑みを浮かべながら、即興で歌を続ける。

「きっとこんなこともあるんだ~ 仕方ないのさ~ お前のせいだけど俺はお前のせいにはしないぜ~ フェスってのはこーゆーもんなのさ!何があるかわかんねー!はははっ!」

笑い声を吐き出したところで、ちょうどmonoのセッティングが完了。ちばぎんがすかさず「『美ちなる方へ』聴いてください!」と入れ、無事に演奏が再開。monoが観客の心の隙間を埋めようとしたのか、「うええい!うえええい!」と謎の雄たけびを上げる。キーボードから離れ、ステージを自由に舞う。一番失敗した人が一番楽しそうに踊っている。
後半のリズム隊がうねうねと心地良い低音を響かせ、客席では一挙にモッシュゾーンが作られる。の子が2つのマイクを使い分け、地声とボーカルエフェクターの合わせ技が炸裂。それはまるで、人々が日々対面する"リアル"との子の世界観でもある"ホーリー"を行き来するかのようで、monoがミスしたことなんてすぐに忘却の彼方へ。彼らの今日のチームワークの見事さに、1曲目から早くも心を奪われてしまう。
「オーケー!」との子が叫び、演奏が終わる。大歓声に包まれるベイサイドステージ。

「間髪入れねえ、間髪入れねえ。お前らの精神を解き放て、この夜に!」
ベースとシンバルがの子の煽りを盛り上げ、ステージはすでに最高潮。「じゃあ、いくぜ。一緒に『あるてぃめっとレイザー!』だ」と言うと歪んだギターを轟かせ、間髪入れずに『あるてぃめっとレイザー!』へ。

ここでもmonoはキーボーディストという概念を吹き飛ばし、精神を解き放つようにステージ上で暴れまくる。彼がこのバンドのリーダーであることを思い出させるほど、の子以上に目立つ。初見の人の感想が最も気になる部分だ。だって、演奏するメンバー3人の真ん中で酔っ払いがフラフラと1人暴れているんだもの。
「おしっこがー!おしっこがー!」と叫ぶの子。そういえばここにはうんこのにおいがあった。もはや、おしっこどころかうんこが漏れそうなほど解き放たれている。このにおいはそういう意味だったのか。うんこは空気を読んでいたのだ。
途中、みさこのドラムがいつもと違い、予期せぬアドリブでドキドキさせる。間奏ではの子がギターを振り回し、マイクスタンドをなぎ倒す。急いでスタッフが直しに入る。間奏が終わるとmonoがキーボードを演奏し、この日ようやくミュージシャンとしての一面を見せる。
最後はの子がステージから落下し、姿を消す。「あ゛ーーーーっ!!!」と姿なき絶叫が、夜の東京の空に響き渡る。

「夜空が、キレイだね…これちょっと、B'zの稲葉が言ってたから僕も言いたかっただけなんだけど。星空がキレイだね…星がねーじゃねーかコノヤロー!」

月は美しく輝いているけど、星が一切見えないのがやはり東京の空。ちばぎんがベースでリズムを取り、それに合わせてmonoがパーカッションを鳴らし、みさこがドラムを叩き始める。そしての子が思いついた言葉を吐き出していく。

「自分らしく、いけばいいのです、学校で、バカにされても、バカにされても、このライブステージでは、お前みたいな明るさを出せない奴も、ここでは、自分らしくいこうじゃないか!」

それは観客に向けているようで、自分のことを言っているかのようだ。だから彼の吐き出す歌詞が多くの人の心を突き刺すのだろう。その証拠として、大きな歓声の返事があった。
「日だまりの夢みて~」からパシャーン!とシンバルが響き、始まった『自分らしく』。いつもよりスピードが速い。の子の歌詞は間違え気味で危ういし、時折日本語として成立しない。それでも妙に説得力があるのはなぜだろう。ちばぎんの「1、2、3、4」というコーラスの直前に、の子が珍しく「はい!」とフォロー。ちばぎんがコーラスするとき、の子が若干ちばぎんを見るのが印象的だ。
後半はサポートバイオリンの隼人さんとmonoの奏でるメロディがばっちり絡み、の子がライブ前に言っていた「ま、メロディがすべて」の説得力がここに。しかしながらやはりの子の歌詞は危うく、ちばぎんが原曲通りの歌詞でコーラスするが噛みあわない。恒例のことだけど、戸惑う様子もなくコーラスを続けるちばぎんはさすが。自分らしすぎるの子についていき、テンション持続させようとするメンバーの姿は決して無視できない。
「やべー!いい感じに暗くなってきた!」
子どものように景色に感動するの子。ちばぎんが「いい感じに暗くなってきましたねー」と添える。

「どんだけ後ろのほうまで(お客さんが)いるんだよ。神聖かまってちゃんはもっともっと上にいくぜ。もっと違うステージに行くんだよ、来年。俺はな、もっともっと上に行きたいんだよ。こんないかれたニートだけど、そこから這いつくばっていくような奴がよ、この中にもいるだろ!」

ちばぎんが『いかれたNEET』のベースを鳴らしている中、観客を煽るの子。ROCKS TOKYOでは昨年と違って、今年はトリ。同じステージだったけど来年はどうなるのか。それはこの日のライブが一つの答えを出しているのかも。
「いかれたニィィイイーーーートォオーーーーー!!いかれたニィィイイーーーートォオーーーーー!!」
喉が潰れるような歌い方で何度も叫ぶの子。この曲のPVを思い出す。の子とmonoが近所で撮影し、作った映像。千葉の片隅に、どこにでもいるようなフリーターとニートの若者2人。その2人の前で大勢の観客が拳を上げ、指を差す。たんぽぽが寂しく揺れ、ティッシュが風に舞うだけの約4年前の映像とは明らかに違った光景が目の前にある。
歌は、何年経っても同じ言葉で歌われる。だけどその時々の状況はまるで違う。の子の中で心境は変わったのだろうか。本当にニートだった頃と、ミュージシャンとしてお金を稼ぎ、仕事をしている今。この数年間で、これほどまで状況が変わった人は珍しいだろう。
最後、ベースと鍵盤が余韻を与える中、の子がギターを振り回す。ピンクの蛍光色のギターは夜に映える。それはポーンと飛び、ステージ下に落下していく。
「ここはどこだ?」と現在位置を確認するの子。「ロックストーキョー、ロックストーキョー」とmonoがカタコトの英語の発音で返す。今、2人はあの映像の中にはいなくて、ROCKS TOKYOにいる。

ちばぎんがベースを鳴らし、『夜空の虫とどこまでも』のイントロが。このロケーションに最適、最高、最重要な曲がきた。キーボードの前に向かうの子。怪しく光る緑色のライトに照らされながら、観客に語り始める。

「いやあ、夜空だねえ。今はもう、トリップになってもいいんだぜ?音楽で。ドラッグなんていらねえ。ドラッグなんかそんなんクソだ。ドラッグなしでトリップになろうぜ」

「俺が恥ずかしい踊りをしてやるから、みんなも踊れ!」と言い、ブレイクダンスなのかなんなのか分からない踊りでやはり一番トリップしている。神聖かまってちゃんのライブは、の子が楽しい気分でいると観客も楽しくなる。これはまるで父親、母親のような心情なのかも知れない。それでも、子どものようでありながら、時折ギョッとするようなかっこよさを見せつけるの子。
「お前、ちょっとだけラップやってろ」
の子が突然monoに促し、monoが困りながらもラップを始める。かつては必死に拒んでいたが、この日はささやかながら披露。
「YO、YO、YO…」と呟くと、客席から「YO!YO!」と大きな反応が。「神聖かまってちゃんを知ってるかーい?俺の名前はmonoだよー」とゆるーく自己紹介。
最近では映画『サイタマノラッパー』に出演したり、そのイベントに出てDJをしたりと、エミネムをリスペクトするmonoならきっと究極のライムを見せつけるはずだ。鹿野淳氏は神聖かまってちゃんを"グランジの日本的解釈"と表現したが、レペゼン千葉としてmonoはエミネムの千葉的解釈を叩きつけるはずに違いない。
「俺はモーノ フロムトーキョー より遠ーいよ このかいじょーう」
なぜか東京出身になっていた。
「酔っ払ってるからあんまほふほふほふ…」
しかも聞き取れない。
「monoくん、夜空の虫と、どこまでも、そう、俺はそう、どこまでも虫になる、このROCKS TOKYOで、むしろお前らに火をつけてやる」
の子がリズムに合わせながら、monoに語りかける。思えば、『夜空の虫とどこまでも』はmonoが名づけたタイトルらしい。インスト曲のイメージを夜と虫に定着させた功績は、今、夜空を目の前にして明らかになった。
が、またもmonoが決定的なミスをする。曲に入るところで「ポンッ、ムホッ、ポンッ」とmonoのキーボードがマヌケな音を鳴らし、さすがのの子の戸惑う。その場ですかさずmonoの頭を叩き、monoがまたまた謝罪。一番キメるべきところで見事なテンドンをかましつつも、無事に演奏がスタートする。

緑色のライトが無数にステージを照らし、深緑の森の中にいるような、大自然を味方につけたかのようなステージ。ボーカルエフェクターによって高音になり、「らー、らー、らー」とこだまするその声は、どこかしら小学生の合唱にも聞こえるという懐かしさもある。森の中で思いついたメロディであると、の子が配信か何かで語っていた。
この日のハイライトとも言える、歌詞を一切必要としない、感覚だけが頼りの表現。ここでのの子はよく言われている、誰かの代弁者でも、社会不適合者の心の声でもない。メロディだけで十分説得力のあるミュージシャンとして、堂々とその存在を見せつけていた。
一度演奏が終わりを見せたが、の子がリズムに乗りながらみさこに振り返り、指で演奏を指示。そして約7分間にも及ぶロングバージョンの『夜空の虫とどこまでも』がどこまでも続いた。夜と虫を味方につけていたのだ。
最後はの子のキーボードからサックスのような管楽器系の音が鳴り、ホーンホーン…と余韻を与える。虫の命は短い。息絶えるように乱れたメロディであるが、それがまるで音楽でのダイイングメッセージに思えてくる。

「いやあ、この時間やべーな!どんだけトリップしてんだ。みんなどーだい?その、クルクル具合はどうだい?クルクル具合はどーだいみんな!」

"クルクル具合"という独特な表現に戸惑いつつも、反応する観客。そして「このまま流れでいきたいんだよ、神聖かまってちゃんは、流れというものを覚えたんだよ」ということは、やはり。打ち込みの音がドンッドンッとリズムを刻み、そのまま『黒いたまご』へ。
青い照明がクルクルと回転し、メンバーが時折シルエットになる。ステージでは輪郭だけが動き、神聖かまってちゃんをタダモノではない存在にさせる。1番から2番までの間のmonoのピアノが切ないメロディで、サビの「どうしようもないだろうね」の声が混沌としている。
演奏後のの子は歌詞のように黒々と笑うことはなく、真っ白く、純白にさわやかな笑顔を見せていた。本当に気持ち良さそうだ。

「ほんとにすごいたくさん人いるなー」とmono。の子は「豆粒みたいになってんぞおい!」と、米粒ではなく豆粒なのかと。「暑い」と言うの子に、「季節も変わりますからねえ」とmono。「バカヤロー!季節なんか関係ねー。夏よりも今のほうが熱くないと意味ねーんだよ!」と、の子らしい返事を。
「みさこー!」という歓声に、monoが「みさこー、お前喋ってなくねー?」と振る。「もうすぐお祭り終わっちゃうよ?こんなんでいいの?どんどん盛り上がって汗かいて、みんなぶっ倒れるくらいの勢いでいきましょうよ!」とみさこが珍しく煽り、そして珍しくの子がみさこに同調する。
「ほんとだぜ!一回きりなんだからなライブは。二度とねーんだ!この瞬間は!だからお前もこの瞬間で、むかつく奴に対して吐き出してやってください」

『夕方のピアノ』が始まる。ステージが真っ赤な照明に染まり、夕方になる。
キンキンに高くなった声で「死ねーーー!!!」がROCKS TOKYOの会場に響き渡り、monoの鍵盤の高音連打がまるでスーパーマリオがコインを大量に取ったかのようなラッキーなサウンドでブチ上がらせる。終盤はちばぎんがベースを大きく振り降ろし、みさこが普段のふわりとした印象を覆す殺気溢れるドラミングでギャップを与える。
「死ねよクソッ!」との子がマイクをぶん投げ、monoのピアノが寂しく鳴り、演奏が終わる。ロックフェスを下校時間に変えてくれた。の子は再びギターを鳴らし、「死ねよ佐藤、死ねよ佐藤…お前、そろそろ死んでんじゃね?ハハッ」と不敵な笑みを浮かべる。歌で復讐していた。あの帰り道に見た夕日ではなく、無数の照明のバックに。ランドセルではなく、ギターを背負っていた。

「さすがROCKS TOKYO…やっぱROCKS TOKYOが合うのかな。皆さんのおかげでもあると思います。俺のこと嫌いな人もいっぱいいると思うんですけど、俺はそれを信じられないんだけどねーっ!まあどうでもいいんだけど、来てくれて本当ありがとうございます」

の子が礼儀正しく挨拶し、「セッティングするから漫才しといて」と他のメンバーにムチャ振り。当然のごとく戸惑う3人だけど、その5秒後にはの子が「じゃあいきまーす」と次の曲を促す。最後は『ぺんてる』

monoがステージ中央の前方に立ち、完全にフロントマンと化している。ジャーン!とギターが勢いよく、タイミングよく鳴り響き、の子の「ぺんてるに、いきました」という声とともに観客が拳を上げる。
歌詞はいきなり間違えておばちゃんのくだりを歌っていたが、いつも規則正しく正確に歌うことばかりがすべてではなく、そんなことも歌詞の通り「どーでもいいー」くらいに気持ちいい空間だった。
「大人に、なりました」の瞬間、monoがマイクを客席に向けた。そこから繰り広げられる打ち込みのキラキラした音と、mono、ちばぎん、みさこの演奏と、の子の語り。ぞくぞくっと鳥肌が立つのは海辺の会場の気温のせいではないはず。
1学期、2学期、3学期に収まらず、4学期、5学期、6学期との子の日々は続いている。誰しも大人という称号をきちんと与えられる機会はない。煙草を吸ったら、ビールを飲んだら、20歳になったら、子どもができたら。それぞれ感覚として"大人"を捉え、大人のふりをするしかない。だけど、の子は明らかに1年前や2年前のの子ではない。それは今朝アップされた新曲『おっさんの夢』からも汲み取れるように、あの頃から確実に時間は経ち、年をとっている。
「ぺんてるに、ぺんてるに、」と、真っ直ぐと前を見つけて歌い続けるの子の姿は印象的だった。ぺんてるという場所は、帰る場所なのか、進むべき場所なのか。

「ぺんてるにまた僕は行きたいのです」
の子がボソッと呟く。「ありがとうございます神聖かまってちゃんでした!」とちばぎんが即座にグレートエスケープするかのごとく挨拶し、デーーーン!!とリズム隊が鳴らしてライブの終わりを告げる。
「バカヤローまだ終わってねーだろ!」との子が歯向かうが、どうやら時間らしい。の子が帰りたがらないのはお決まりだ。劒マネージャーが止めようとすると「劒うるせえっ!」と抵抗するも、警備の集団に捕まえられて強制退場させられた昨年と違い、今年は自ら退場しようとする。そして、礼儀正しく挨拶する。
「後ろのほうにいる方もありがとうございます」
これが「大人に、なりました」ってことなのか。
神聖かまってちゃん像として、自由に、子どものように、破天荒にやることが神聖かまってちゃんらしいと思う人も当然いると思う。だけど、の子は明らかに次のステップに進もうとしている。プラスチックの牙((c)フットボールアワー後藤輝基)をときに取り外し、ミュージシャンとして確実に成長していくように見えた。思い通りにならないことに怒りや苛立ちに身を任せるだけではない。不屈な精神と卑屈な精神は大きく違う。神聖かまってちゃんは生き物で、常に進化していた。
だからこそ、『ぺんてる』はこれまで以上に説得力を増している。大人になることへのちょっとした寂しさも、受け止めるべき現実も、この1曲に表れていた。
これほどまで、曲がそれを歌う人の精神と結びつくことそう多くはないと思う。の子が歌うと、昔書いた日記を読み返すような作業にはならない。いつだって"今"になる。

メンバーがステージから去ると、鹿野淳氏がマイクで挨拶をする。「ベイサイドステージ、これにて終了です」と言うと、客席から「ええーーっ…」とため息が。「ごめんなあ、時間の都合もあって」と説明があり、ROCKS TOKYOのベイサイドステージとともに、神聖かまってちゃんのライブが終了する。

気がつけば、うんこのにおいもしばらく忘れていた。同じ悩みを抱えた人はいるだろうと思い、ツイッターで「ベイサイド うんこ」「BAYSIDE うんこ」「かまってちゃん 牧場」などと検索するが、出ず。帰宅後、ツイッターで同調してくれる人がいてくれて安心した。
どうでもいいか。神聖かまってちゃんはうんこのにおいをも吹き飛ばすほどの、次のステップへ向かうライブをした。
この日、5月27日は下北沢屋根裏で初めてライブを撮影した日からちょうど3年だった。あの頃とは比べ物にならないほど、彼らの目の前の光景も、彼ら自身も変わってきた。それでも変わらない何かを確実に持っているからこそ、その先の光景を見ていきたいのです。

終演後、再び楽屋で配信するメンバー。
ちばぎんがすかさず「ありがとうございます神聖かまってちゃんでした!」 と潔く引き下がったのは、アンコールができると思っていたかららしい。
andymoriのボーカル・小山田壮平氏も配信に登場する。「みさこを抱いてやれ」というコメントに対してmonoが「そんなもったいない、こんなゴミクズ」とひどいことを。の子と一緒に『Blackbird』を歌うシーンもあり、2010年の埼玉県坂戸市の夏祭り以来の出来事が。
の子は他の出演者を配信に呼ぼうと考えるが、スガシカオがすでに帰ったことに「空気読めねえなあ」とプラスチックの牙をむき出した。やっぱりまだまだ子どもの聖域にいるかのように、の子の発言はいつまでも自由だ。ライブ直後の彼は疲れている様子で、「一郎(サカナクション)を呼んでくる」と言い、その場を去る。

結局山口一郎氏を連れてくることなく、みさこが1人で配信を続け、スタッフのまきおくんにバトンタッチし、のほほんとした雰囲気のまま神聖かまってちゃんのROCKS TOKYO2012は暮れていく。

2012年5月27日 ROCKS TOKYO2012
<セットリスト>
1、美ちなる方へ
2、あるてぃめっとレイザー!
3、自分らしく
4、いかれたNEET
5、夜空の虫とどこまでも
6、黒いたまご
7、夕方のピアノ
8、ぺんてる

2012年4月15日日曜日

フィッシュマンズ(ゲストボーカル:の子、原田郁子)@さいたまスーパーアリーナ

さいたまスーパーアリーナで『TOKYO FM & JFN present EARTH×HEART LIVE 2012』が開催。
フィッシュマンズとサカナクションという"魚"にちなんだ名前のバンドによるツーマンライブです。

フィッシュマンズに神聖かまってちゃんのの子さんがゲストボーカルとして参加。
1999年にボーカル・ギターの佐藤伸治さんが亡くなってからゲストボーカルを迎えたライブが何度も行なわれ、過去にはUA、忌野清志郎、七尾旅人、ハナレグミ、やくしまるえつこ(相対性理論)などそうそうたるミュージシャンが出演。だからこそ今回、の子さんがフィッシュマンズ側から指名されたなんて大変な名誉です。
神聖かまってちゃんの『いかれたNEET』なんてタイトルから真っ先にフィッシュマンズの『いかれたBaby』を連想させるし、昨年のフリーライブツアー仙台でも、リハーサル後に閉所恐怖症でライブハウスから飛び出したの子さんが気を落ち着かせて楽屋に戻ったときに「『ゆらめきIN THE AIR』歌ってよ」とmonoくんにリクエストするシーンを目撃したことがある。
「は?俺歌えねーよ。お前が歌えよ」
あのときのmonoくんの返答通り、ついにこの日が来たのです。

会場に着くと、人、人、人。さすが2万5千人も収容できるさいたまスーパーアリーナ。要塞のような会場の近くで、見慣れた姿を目撃。ノートパソコンを持ちながら歩くmonoくんだ。絶賛配信中のその傍に、の子さんの姿はなかった。一人外で配信している彼の姿はレアだったが、驚くほど誰も近寄ろうとしなかった。
物販コーナーの近くで少女が地面に倒れていた。その周囲をたくさんの大人たちが取り囲んでいた。事件性を感じて近寄ってみると、くるみちゃんだった。の子LOVEな5才の女の子。うつ伏せに寝転がり、くらげの絵を紙に書いていた。ここは自分ん家か。自由すぎるその姿に、なぜかの子さんの面影が薄っすらと。

席に着く。『Aゲート/200レベル/235・236扉/1列/758番』という複雑な座席指定は、当然迷路のように辿り着くのが困難だった。それほどまで広大な会場で、チケットに記されてある"4月15日"を振り返る。の子さんにとって、2年前のこの日は渋谷屋根裏でライブだった。そのまた2年前はパソコンの前だった。あの頃では想像もできないような現状は、神聖かまってちゃんの『2年』の歌詞に説得力を与える。
「2年後に 今のぼくらを 笑い飛ばせるように」
この日、の子さんは2年も経たないうちにステージで笑い飛ばしていた。
楽屋では『フィッシュマンズ ライブ前楽屋 突然UST』が行なわれており、ライブ前の緊張感漂うフィッシュマンズメンバーの姿がUSTREAMで映し出されていた。の子のサカナクションへの対抗意識丸出しの発言も。

開演前、ステージ上・両サイドの巨大モニタではこのイベントの紹介映像が流れていた。『震災後の放射能による海の影響や、海洋生物の生態系の調査支援、被災地の沿岸地域の復興支援』をスローガンに掲げているからなのか、開演すると"海"をイメージしたような青を基調とした照明がふんわりとステージを包み、フィッシュマンズのメンバーが登場する。

ステージに置かれているピンクの蛍光色のギターは、この日のためにあるかような色をしていた。照明にも頼らず、暗闇の中で煌々と存在を見せ付けていた。それはの子自身の性質を表すかのような自己アピール。まさに武器だ。それを手に持ち、ふらふらと歩き、高いステージから観客を煽情するポーズをキメる。
黄色いパーカー、黒いジャージ。完全に部屋着スタイルだ。
茂木欣一(ドラム・ボーカル)、ゲストボーカルの原田郁子(キーボード)らが揃い、ギターが鳴る。そして茂木ボーカルによる『SEASON』から、いよいよライブがスタートする。
落ち着いた様子で演奏するメンバー。その中で一人明らかに様子のおかしい人が楽しそうにギターを掻き鳴らす。それがの子である。ステージの後方で『ムーミン』のニョロニョロを彷彿とさせる動きをし、一流ミュージシャンたちによる神々しいステージに独特な愛嬌を添えていた。
「GET ROUND IN THE SEASON」と囁く原田郁子のボーカルも加わり、歓声を上げる会場。だけど、どこか澄んだ空気と妙な静けさ。おかげでギターの音の輪郭が分かりやすく、リフが耳にこびりつく。

「フィッシュマンズ!スーパーアリーナ!」
茂木が叫ぶと、の子ボーカルの『土曜日の夜』へ。の子はギターを置いてマイクを掴む。そして「聴き慣れた声で」と本当に聴き慣れたいつもの声で歌いだし、全身を余すことなく使い切るかのように動く。
音に合わせて止まったり動いたり、そのテンションは神聖かまってちゃんのライブで見せるいつものものだけど、この日は何かが違ったように思えた。とにかく楽しそうなのだ。だけどそれは決して単純にピースフルといったものではなく、何かを挑発するかのような楽しさである。
「今日、日曜だけどなー!ハハッ!」
その笑い方にすべてが表れていた。ボーカルに徹するガチな姿勢と、小生意気にも聞こえる笑い声。その楽しさは、彼なりの野心に満ち溢れていた。
「確かにな、今日日曜だからな」
演奏後、の子の声がエコーして「だからな、な、な、な」と轟き、笑いが。「気持ちいいな…これからもっと、気絶して、け」と煽り、少し間を置いて歓声が上がる。なんとなくの子の扱いに慣れていない会場全体の雰囲気。若干のアウェイ感は否めないけど、最近の神聖かまってちゃんのライブでは感じることのできない雰囲気は特別に思える。
茂木が今回のイベントの説明をすると、「おーーい、いくぜー。もっとダブっていこうぜーー」とふらふらと歩き、喋り出すの子。「今回の子くんと初めて絡んでるんだけど、スリリングだねえ…」と茂木が声をもらすと、「そんなもんみんな当たり前だ。ここに集まってる限りよ。だからもっとみんなダブってこうぜ!」との子が更に煽る。

『あの娘が眠ってる』も引き続きの子ボーカル。途中、ギターを思いっきり掻き鳴らして焼け焦げるような音を響かせる。存分に鳴らしたと思いきや、そのギターをステージに叩きつける。また一発。もう一発。ガンガン叩きつける。その姿が巨大モニタにも映し出され、ギターが壊れる様子を会場全体が把握。原田郁子の軽快なピアノのメロディが流れる中での破壊的なパフォーマンス。そのアンバランスさが印象的で、妙にかっこいい。
「あの娘が、眠ーってる。起きろーー!起きろ起きろーーー!!」
観客に訴えかけるように歩き回るの子。「起きろ起きろ!解放させろ!」などと叫ぶ。歌の中でひたすら眠ってる女の子がまるでニートであるかのように、神聖かまってちゃんのステージと化していた。だからこそ「起きろ!」にはこの曲へのの子的解釈を感じ、ステージと客席との隔たりを潰そうとしていた。

「の子!」と原田が紹介。なぜかの子も「の子!」と返事。相手を紹介することもなく、どこまでもの子のの子的なの子にしかできないステージになっている。
「ああ、いい天気だねえ…」
の子が息遣いを荒くしたまま呟き、青空が広がるかのような爽やかなシンセの音が会場を包む。原田ボーカルによる『Weather report』が始まる。何度も繰り返される「アイシングウェザー」。原田の語りかけるような歌声。海だと思っていた青のライトが青空に思えてくる。なんでもない何気ない日常の中の一日がドラマチックになる。キラキラとしたギターの音が鳴り止み、『JUST THING』へ。
ゾクゾクとするようなの子ボーカルに、茂木が添えるように歌声を乗せ、後半の盛り上がりへ。怪しくも美しく、の子のシルエットがくねくねとステージで踊る。
「ハハッ…」
の子の不気味な笑い声だけが残る。

シンバルが力強くリズムを刻み、オルガンのようなシンセが鳴り、『頼りない天使』へ。原田ボーカルは子守唄のような安心感を与える。なんて優しくて悲しい歌なんだろう。「なんて素敵な話だろう こんな世界のまん中で 僕ら2人ぼっち」という表現。ここで歌われてる"天使"って一体何だろう。天国からの使者でもあるし、死をも意味する。だからこそ「遠い夜空の向こうまで連れてってよ あの娘の天使のとこまで連れてってよ」という歌い出しには胸がつまる。

フィッシュマンズをリアルタイムで観れなかった身としては、佐藤伸治が遺した楽曲を後追いで知るしかない。この日、やはり後追いで観ることになると思っていた。だけどそこには後も、昔も、以前も、過去さえ感じられず、"今"しかなかった。だって今、瞬間・瞬間をぶつけるボーカリストがステージでゆらゆら揺れているんだもの。
その張本人は先ほどまでの演奏の余韻をぶち壊すかのように、間髪入れずに喋りだす。
「どんどんかましていけばいいんだよほんとによ。ライブってのは一回きりなんだぜみんな知ってると思うけどもよ。一回きりのお前らの解放を次で見せてもらいたい僕は。もっともっと解放できるだろ?ロックだろちょっとくらいはよ」
返答として歓声を上げる客席。だけど「俺はロックってものが大嫌いなんだよ」と言葉を添える。
「そんなもん関係ねーんだよー!ハハハッ!」
本当によく笑う。アンチヒーローにも思えてくる。「それじゃ、後半いきます。みんな楽しんでる?」と尋ねると「楽しんでる!欣ちゃん行こうぜ!」との子。『MELODY』へ。
「ミュージック!カモンロッカーズ!」
の子の煽情MCがそのまま歌になったかのように、流れるミュージックは暗いメロディーの側面を一切見せないように、陽気に、だけど少し寂しく鳴り響く。の子ボーカルは若干歌詞を間違えてるはずなのに、それがすべて正解にも思える。シャウト混じりの歌声は説明も、理屈も、理論も、すべて吹き飛ばす。
「ロックてのはよー!ロックてのはよーー!!」
の子が観客に訴えかける。「足りねー!足りねーーよ!!」とまだまだ叫ぶ。茂木と原田のコーラスは規則正しく、されど熱く繰り返され、その中での子が自由に叫び続けていた。「ロックンロールだぜーー!!」というひねくれたものが一切ない言葉が飛び、鳥肌を立たせる。この人には"今"しかない。それを何年も前から貫いている。その姿勢が音楽にマジックを呼ばせる。誰に何を言われようが嫌われようが、知ったこっちゃない。ただ今のその存在をぶつけるだけしかできないし、限られたフィールドの中で全開で披露しているのだ。
ステージを下り、客席の前を歩く。巨大モニタは彼の姿を映し出していた。スタッフに担ぎ出され、ステージに戻ってくる。
「気持ちいいぜ。ざまあみろ、マジで」
その「ざまあみろ」には彼の一本筋の通ったものを感じる。いつだって彼は「ざまあみろ」でやってきたように思う。
彼自身の過去、体験に対してなのか。目の前にいる観客に対してなのか。挑発はまだまだ続いている。

茂木ボーカルの『すばらしくてNICE CHOICE』、そして『ナイトクルージング』へ。
ステージが照明で真っ青に彩られ、「UP&DOWN」といった気分の浮き沈みもなく、ただUPしていくだけのステージがたまらない。涙なのか何なのかよく分からないものが頬をつたう。の子はクロールなのかバタフライなのか判別できない動きをする。海の放り出されたら致死確実の泳ぎ方だ。彼もまた地上の海で溺れ、もがき、息継ぎをしながらここまで来たんだろう。
時刻はまだ17時。夜になるには少し早い。日曜の今日を土曜日の夜にし、夕方の今を夜にする。フィッシュマンズにはそんなマジックしか感じられない。夜を泳ぐようにの子が歩いている。音と同化したかのようなその動きは、滑稽なはずなのになぜか感動的だった。悔しいくらいにドキドキした。これは、彼をライブで初めて観たときからひとつも変わっていない感情だろう。そんな人はたくさんいるはずだ。

「ありがとう、最後の曲です」と茂木の挨拶から『100ミリちょっとの』へ。茂木、原田、の子がそれぞれボーカルをとり、中盤の「チュッチュッチュッチュ」と何度も繰り返す部分ではの子が本当に音楽を楽しんでいるとしか思えない姿を見せていた。音楽の前では子どものように純粋だった。歌詞のとおり、新しい明日しか見えてこないほどポジティブな光景になっていた。
「ありがとう!ありがとう!フィッシュマンズ!」
の子が両手を広げてステージ前方に立つ。茂木のメンバー紹介が終わり、「センキュー!」と叫ぶ。「おい、飛ぶぞ!」と演奏に合わせてジャンプする。

「俺が一番楽しかったわ。ハハハッ!また来るぜ、この後また来るぜ。ハハッ!皆さんありがとうございます、本当に」

何度もお辞儀をするの子。メンバー全員が横に並ぶと、一人だけ小柄ななのがよく分かる。これほど小さい身体であんなに存在感を発揮していたのかと感慨に耽ることもなく、近くにいたお客さんの「ちっさ!」という悲鳴に共感する。

「フィッシュマンズ最高!これはちょっと、次がやりづらかったらゴメンねー!ハハハーッ!ありがと」

煽情にも挑発にも受け取れ、サカナクションへの対抗意識さえ感じさせる彼らしい言葉でフィッシュマンズのライブは終了する。

良くも悪くもの子の目立ちすぎるオンステージといった内容だけど、彼を知ってちょうど3年目になる身としては、存分に"自分"を発揮してアピールすることを貫き通すその姿は感動以外の何者でもない。曲の合間合間、僅かだけど幾らか「の子ー!」という歓声があった。その中に「の子もっとやれよ!」と男性客の野太い声援もあった。
"自分"を貫くことは、いかに勇気が要るのだろう。行儀良くこれまでのフィッシュマンズ通りにちゃんと歌うことがベストなのか、神聖かまってちゃんのの子らしく歌うことがベストなのか。この日まで相当考えた挙句のパフォーマンスだったのは言うまでもない。色んな期待がある中で、の子は自分が一番楽しむことを選んだ。結果、賛否両論は当然だろう。だけど、ここまで色んな意見が飛び交うライブは珍しいはずだ。それだけ多くの人がの子のことを思い、考えた。存在をアピールする点においては大成功している。
の子に関して、ロックだとかロックじゃないとか、フィッシュマンズらしいからしくないかを議論することはそれほど重要ではない気がする。ただ、一人の人間が1万人を前にして己の存在を叩きつけた。それに感動するかしないかの単純な話だ。
自分が一番楽しんだの子のように、それを一番楽しめるかどうか。
いつだって、瞬間・瞬間。
彼の「ざまあみろ」といった挑発がすべての答えであると思っています。

その後は、転換中の映像にさかなクンやアナログフィッシュなど、やはり"魚"にちなんだ人たちが出てきては客席を賑わしていた。

トイレに行こうと席を立ち、売店近くでmonoくんに遭遇。長い付き合いのの子さんが一人ステージに立つ姿、彼にはどう映ったのだろう。「え、あ、良かったと思いますよ」と結構当たり障りのない感想だった。通りすがりのお客さんに「私、サカナクションのファンなんですけど、神聖かまってちゃんも聴きます!」と声をかけられていた。

サカナクションのライブが始まる。『ルーキー』や『アルクアラウンド』、『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』 など代表曲が聴けた。ある曲でメンバー5人が横一列に並び、キーボードらしき機械をいじっているのがかっこよかった。MCではボーカル・山口一郎がフィッシュマンズとの共演を感激していた。
ちょうどそのとき、の子さんは楽屋で配信を行なっていた。「山口一郎は今歩いてんだよ!」と叫んでいた。そして彼の後ろにはくるみちゃんがいた。彼女も配信に登場し、「俺の子。の子の子」と紹介されていた。
子どもような大人と、子ども。そもそも大人って何だろう。『ぺんてる』の「大人になりました。」という歌詞を思い出す。神聖かまってちゃん、そしての子の世界観には切っても切れない"子ども"があり、彼のストーリーが『週刊少年ジャンプ』で連載されるような冒険活劇にも思えてくる。10人にも満たない客席から、1万人の客席へ。やってることは何一つ変わっていない。
地面に寝転がって絵を描くくるみちゃんと、パソコンの前でひたすら喋り続けるの子さんの姿が見事に被ってしまった。

終演後、スタッフの阿修羅くんに案内していただき、楽屋を訪ねる。ちょうど中打ち上げが行なわれていた。

たくさんの音楽関係者ら業界人がの子さんに挨拶し、彼はそれに丁寧に応じていた。こんなところに自分がいていいものかと思いながらも、恐らくここにいる人たちの中で最も古い関係であるからこそ、ちゃんとの子さんに挨拶をしたかった。
「おおっ!ようやく知ってる人が!」
大きな声を上げて反応された。
かつてのライブ後の空気は、様々なものだった。重たいときもあれば、爽やかなときもある。「88万円っすわ…」「複雑骨折っすわ…」といった迷言もあった。ところがこの日は「やー、知ってる人がいると安心っすわ…」と穏やかな「っすわ…」が聞けた。
「今日、どうでした?」と尋ねられたので、ライブの感想を伝えた。口下手なので「良かった」としか言えなかった。だけど、それがすべてだ。そもそもこんなに長々とレポを書く必要なんてない。ただ単純に「良かった」のだ。
「や、けどネットでは賛否両論あると思いますよ。でも、それこそが、それでいいと思ってますけど」
彼の答えは明確だった。潔くて、スッキリしていた。そこには「複雑骨折っすわ…」といった後味の悪さもなく、『Weather report』の青空の下にいるかのようだった。ライブ後はほとんどの確率で骨折を訴えるからこそ、一切の弱音を吐かない彼が特別にかっこよく思えてしまった。
少々昔話に花を咲かせ、会場をあとにする。

くるみちゃんは楽屋のホワイトボードに大きな絵を描いていた。
この日、の子さんがフィッシュマンズのゲストボーカルに呼ばれたのは実はくるみちゃんのおかげでもあるらしい。くるみちゃんのお母さんがTwitterにくるみちゃんがの子さんに没頭している様をツイートし、それを見たフィッシュマンズのエンジニアのZAKさんが興味を持ち、そこからオファーの流れができたという。
どこかの小さな想いが、人の繋がりにより、大きな出来事に発展する。これは神聖かまってちゃんがこれまで歩いてきた道筋と同じ。奇跡のようなめぐり合わせばかりだ。
これからも何かが起きるに違いないのです。

ZAKさんがTwitterに上げていた、くるみちゃんと破壊されたギター。かっこいい写真!



そして、後のちばぎんの単独配信で、の子さんがこのとき足の指を骨折していたことが知らされた。

ついに本当の骨折っすわ…。

2012年4月15日 さいたまスーパーアリーナ(フィッシュマンズ)
<セットリスト>
1、SEASON
2、土曜日の夜
3、あの娘が眠ってる
4、Weather report
5、JUST THING
6、頼りない天使
7、MELODY
8、すばらしくてNICE CHOICE
9、ナイトクルージング
10、100ミリちょっとの

2012年2月24日金曜日

神聖かまってちゃん@新木場STUDIO COAST

あの出来事から、早2ヶ月。場所は同じ新木場STUDIO COAST。この日、岡村靖幸とのツーマン、NEXUS presents『岡村ちゃんとかまってちゃん』が開催された。

COASTの入り口を通ると、2ヶ月前の光景が思い浮かぶ。ライブでのケンカ後、気まずい雰囲気が漂う中、「複雑骨折っすわ…」と告げ、煙草を吹かしながら担架で運ばれていくの子さんを。煙草という余裕と、担架という危機。その両極端を同時に体現した彼の足は無事、大事に至らなかった。
monoくんがの子さんを殴り、みさこさんが怒鳴り、ちばぎんが体調不良。多くのファンが心配した。「これこそがかまってちゃん」「最低なライブ」「ロックだ」「こんなのロックじゃない」と、賛否両論。そしてニコニコ生放送のケンカの動画は再生回数を伸ばした。

そんな中、客席にいた一人の5才の女の子が「の子は、今、ひとりぼっちだと思うよ」と呟いた。

その子のお母さんのTwitterで知った。の子さんのことが大好きで大好きで、彼になりきったという写真が本当にかわいらしい。思いの丈を綴った手紙を直接渡すつもりだったけど、ライブ後はそんな空気ではなかった。すぐに諦めて、の子さんの心配をしたらしい。
状態として言えばそのとき、ひとりぼっちではなかっただろう。monoくんと一緒に病院に運ばれ、病院の廊下では「なんかこれ、一年ぶりだな」「…おう」といったヤンキー漫画みたいな会話でもしていただろうし、逆にmonoくんの殴った手のほうが以前骨折した手だったため、腫れて危険だったという。
でも、真相よりも、あのライブを観た一人の女の子の気持ちが妙に心に留まった。
の子さんの表現は、元々ひとりぼっちだった。
宅録音源もすべて一人で制作し、配信も一人で始めた。一人で2ちゃんねるに書き込みをし、一人で世界と向き合っていた。近頃の配信でも「配信を見てる人はだいたい一人で見てるんだよ。こっちがみんなでわいわいやってたらむかつくだろ!」と言い、バンドであっても、目の前に大勢のファンがいても、常に一人であること、一対一の関係を重んじているように思えた。ライブで配信中のノートパソコンの向こうに話しかけるのに必死な姿も、まさにそれを体現しているかのようだ。
女の子は、彼の心を見ていた。ひとりぼっちな気持ちを知っていたのだ。

あの日のステージは、ステージ上のの子さんがひとりぼっちに見えたかも知れない。
だけど2ヶ月後、ひとりぼっちには見えなかった。大勢の観客に向けて、メンバーやスタッフと一緒に、一人で作った世界をぶちかましていた。

撮影のため、ビデオカメラを背負って入る。入り口には劒さんとワーナー野村さんが。映画の話題になる。劒さんは『北の国から』になにかと絡めようとしていた。劒さんファンの女性に僕を紹介するとき、「この人は青ひげです!」と言った。夕方なので確かに青ひげになっていた。
ライブ前に楽屋へおじゃまする。いつもより楽しい雰囲気に感じた。イベントの都合上、配信はなく、メンバーもスタッフも常にリラックスしている印象だった。
スタイリストのスエタカさんが「の子くんが、『竹内さんにはお世話になってるから、監督した映画、仕方ないから観てあげようかな』って上から目線で言ってたよ!」と言うと、の子さんがイスから立ち上がって笑顔で首を横に振った。「まあ、言いましたけど」と言葉を添えた。monoくんが「あいつはジブリ映画とたけし映画しか観ないですからね」と告げ、みさこさんが「監督!握手してください!」と手を差し伸べ、ちばぎんは「俺、今日、異常に緊張してるんですけどどうすればいいすかね」と聞いてきたので脇腹を触った。
雰囲気がよかった。今年初ライブ前の楽屋は、穏やかな空気が流れているように思った。少なくとも前回のライブ後とはえらい違いだ。

劒さんに案内してもらい、誰もいないステージに向かう。カメラの位置を確保する。客席には大勢のお客さん。最近、下北沢屋根裏で彼らがライブしていた頃の夢を見た。あの頃からすると、意味が分からない。いまだに信じがたい光景だ。今、この状況のほうが夢のように感じる。
そして夢から覚ませるかのように、登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れる。メンバーがステージに登場する。笑顔で元気いっぱいに駆け走るみさこ、バイトの先輩のような雰囲気で歩いてくるmono、落ち着いた様子でニコニコとお辞儀するちばぎん、そしてスタッフの阿修羅くんに肩車されたまま、鼻にティッシュを突っ込んだ状態のの子が。

こうして、神聖かまってちゃんの今年初のライブがスタートする。

「今日お集まりの岡村ちゃんファンの皆さんも、神聖かまってちゃんファンの皆さんもありがとうございますー!」
の子が肩車されたまま挨拶すると、大きな歓声が。続けて「時間が短いからお前ら凝縮させて全部発散させろ!」と観客に言うが、これは明らかにバンドがやることだ。ピョンピョンと飛び跳ね、歓声を受け止めるかのように両腕を伸ばす。スリッパを脱ぎ、裸足になる。今日のの子は最初からテンションが高い。だけど「じゃ今日はほんとに時間が短いので、100%でいきましょう」とちばぎんが言い、お客さんが演奏を促すと、「チューニングしてんだよ!」との子。いつもの調子でもある。子どものように無邪気に笑いながら、手をくねくね動かす。誰がどう見ても、大勢の観客を目の前にして楽しそうなの子の姿がそこにある。
「お前ら自身が主役だからな!えーと、『こねらじ』いきまーす…『ねこらじ』いきまーす!」
絶え間ない「の子ー!」という歓声。「うるせえ!喋りかけられてると演奏始めらんねーだろ!ライブ終わった後、飲みに行こう!」と嬉しそうに答え、「ひぃーふぅーみぃーニャー!」と掛け声を上げ、演奏がスタート。
冒頭からバッチリすぎる演奏。サポートバイオリンの柴さんが弾くメロディがドラマチックに彩る。演奏中もの子はステージの前に歩み寄り、手で観客を煽る。これほどまで手に感情が込められたミュージシャン、他にいるのだろうか。

「いいね、この調子でどんどんいくぞ。今日は岡村さんとやるってことでちゃんと挨拶したんですけど、いやーそれはもう、眼光がお互いガッてガッてして…負けてらんねーんだよぉーう!」
照れ笑いながら喋るの子。大きな歓声と拍手が響く。「まあ、色々ファンは分かれてると思いますけど、俺の力で巻き込んでやりますよ」と自信発言。イベント前のコメント動画ではほとんど喋らなかったが、ライブ本番では弾けまくり。
「で、次の曲なんだっけ?」との子が問い、ちばぎんが「『あるてぃめっとレイザー!』です」と答える
と、すぐにの子がイントロのギターを弾き始める。みさこがバシン!とドラムを叩く。曲紹介、そして演奏。こんなにサクサクといく流れは珍しい。

演奏途中、の子が勢い余ってギターを抱えたまま客席にダイブ。曲が終わる頃までずっと客席の中に埋もれたまま。やがてお客さんとスタッフによって担ぎ出される。みさこのドカドカドカドカ!と激しいドラムが続く中、ステージに舞い戻ってくるの子。その表情はニカッとした満面の笑みで、『カミスン!』でSMAPの中居正広と絡んだときに似た、なぜか狂気じみた目をしていた。
「いいですねー!まだ足りねー!もっともっとこい!」
時間さえあれば何回もダイブできそうなほど、テンションが上がりきっているの子。ステージをうろうろとする。「いやー久々のライブだから、初心を思い出してやべーな!」と叫ぶ。
メンバーそれぞれに歓声が上がり、それに答える3人。「劒!劒ソード!エクスカリバー!チューニングされてねーぞこれ!」といつも通り、マネージャーにチューニングさせる。更に「どうなっちゃってんだよ劒!人生頑張れ!」と声をかける。

「配信できなくてごめんね」との子。「ここで言うことじゃないよね」とみさこがつっこむ。間を埋めるかのように、monoが「今年も頑張るぜ!」と言うとみさこがドラムで盛り上げる。「ちょっと待ってくださーい」との子が準備をしながら、「お前ら急げよ!時間ねーんだぞほんとに」とこっちのセリフを呟くが、ちばぎんが「そうなんですよ、時間がないんですよ」とうまく拾う。
「お前らもう奥まで全員、関係ねえ。言語とか関係ないから、ピョンピョン飛び跳ねろ!岡村さんのファンの方も、岡村さん自体も!」
の子がクスッと笑い、次は『ロックンロールは鳴り止まないっ』
途中、「もっとくれ!もっとくれ!お前ら、もっと、衝動を、くれよ!」とアジテーション。どこまでもどこまでもアガりきる。この曲と出会って3年になるが、飽きることが一度もない。聴く場所、状況でまた印象が違うのだ。
「ロックンロールは、鳴り止まないっ!」
叫んだ後、ギターを思いっきり振り回し、マイクスタンドをなぎ倒すの子。マイクがちばぎんの近くにまで飛んでいくほどの勢い。ちばぎんにぶち当たらなくて本当によかった。最後、「鳴り止まないっ!」と叫んだ後の余韻。monoのピアノだけが残り、そこにの子のギターがギュワアアンと響き渡る。大きな爆発が起き、煙が上がったかのような迫力だった。

「まだ全然!…あれ?もう(ライブが)終わり?」
の子の呟きに、メンバー、観客ともにつっこむ。「次はあれなんだよね、ライブでやるのは初めてなんだよね」とちばぎんが告げる。
「ちょっとチューニングするから、つまんない話していいよ」との子が振ると、「monoくんの、つまんない話!」とまるで番組のコーナーのようにみさこが更に振り、monoが話し始める。「つまんない話、あるんだ…」とちばぎんが戸惑う。貯金が9000円であることの話。「僕はもう、バイトしよっかなーとか思って…」などと言うが、「monoくん何言ってんのか分かんねーよ!」とお客さんがいつも通りの野次を飛ばす。
「ほんとだよな!ま、そういったmonoくんの気持ちにもリンクするような曲なんですけど、まあ、バイトを探さないと、という曲です。『2年』
の子の曲紹介に、どよめきが。未発表曲として知られている『2年』が初披露。が、みさこのカウント後、の子がセッティングを忘れ、中断。「えーーー!」という歓声に対し、「や、今のも曲のうち。オルタナティブミュージック」と説明するの子に笑いが起こる。仕切りなおしに。

『2年』は、の子が前身バンド・びばるげばる書店~神聖かまってちゃん結成頃の間、音楽配信サイトにMP3ファイルを置いたものが2ちゃんねるでファンに発掘され、それで知られるようになった曲。本人は気に入っていないようだけど、ファンの人によってPVが作られるほど人気は高い。
「2年後に 今の僕らを 笑い飛ばせるように」
歌詞の通り、2年後とは言わず、早くも2ヶ月後にあのときの神聖かまってちゃんを笑い飛ばせるかのようだった。聴く人それぞれの様々な2年前を笑い飛ばさせるほど、ポジティブな気持ちが向けられた曲。「負け組っ!」と言った後の高音のギター、「ホホウッ!」といったの子の裏声がファンキー。
「俺この曲大っ嫌いだったんだけど、なんか、ライブでやったらイイって思った」
ずっとやってほしかったとは、多くの人が思っていただろう。「イイヨ!」というお客さんの声。いつか、音源化してほしいです。

次は『天使じゃ地上じゃちっそく死』。先ほどの前向きな歌とはうって変わり、「死にたいな」を連呼する。スタッフのまきおくんがギターで参加し、男4人が並ぶ中、後ろでみさこがドラムを豪快に叩く。後半に進むにつれてどんどん激しい叩きっぷりになっていき、普段はふわふわにこにこしているみさことは思えないほどかっこいい瞬間がたくさんある。ちばぎんのコーラスも終末感たっぷり。
最後は「死にたいっ!」と叫び、マイクをぶん投げるの子。monoのマイクを奪い、また叫ぶ。そしてまたマイクをぶん投げる。演奏が終わってもの子の「あ゛ーーーー!!」という叫び声だけが残る。
「あ、ありがとうございます」と素に戻る。なぜか親指を立てたりと、死に向かう予感がまったくない絶好調な自分を観客に見せびらかしていた。

「すごい、この、白い(客席の上に浮かんでいる湯気のようなものを差して)熱気が、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンみたいな…どう?」
マイクスタンドを直している劒さんに話しかける。気づかない劒さん。昨年のROCKS TOKYOでもあったように、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンの例え話が再来。「そんなもん超えてるよ!」というお客さんに声に、「甘えんなーー!!」という返答。それがアジテーションとなり、「おーーーっ!!」と歓声が上がる。続けて「ギネスいくぞ!」と謎の挑戦に、戸惑い気味に「おーーーっ…?」と歓声が。「やかんが沸騰してカップラーメンができるくらいの…」と更に戸惑わせる。

「えーっと、次は『花ちゃんはリスかっ!』です」とちばぎんが進行させると、またも大きな歓声。の子が「これはお前らが歌え。俺が歌詞覚えてないとかじゃなくて、それはな、ザクッといってる奴が、マジで。別にザクッていってなくても、心のザクッとか、仕事でも、上司を叩き切る感じの、うん」と言葉を添える。
セッティングにもたつくの子。「の子しっかりしろ!」というお客さんの声に、「俺がしっかりしたら、このバンドどうなっちゃうんだよ。分かるっしょ?」と返答。ごもっともでもある。それでも「任せとけ」と呟き、バイオリンとキーボードが怪しく切なく響き渡り、『花ちゃんはリスかっ!』へ。
悲しみを狂気に乗せたような疾走感。『笛吹き花ちゃん』の花ちゃんが成長し、笛の代わりに刃物を手に入れた。「咲き誇れ」と言わんばかりに、ステージが照明により花びらみたいなピンク色で覆われた。美しいようで、まるで腕を刃物で裂き誇った血であるような。「非国民英雄花子!」の瞬間の高揚感といったら。終盤に向けての盛り上がりがたまらない。最後はギターをステージ上にぶん投げ、またもやダイブ。
monoのキーボードが鳴る中、の子が客席の上で浮いていた。紫色の照明の効果もあって、ゾクゾクする光景だった。

狂気に包まれた演奏であったにも関わらず、ステージに戻ってくるとパンツ姿になっているの子。笑いが起きる。「全部脱げよ!」というお客さんの声に、「やめて!そんなこと言っちゃダメだから!喜んで脱いじゃうから!」とみさこが焦る。
「なーに入れてんだよ!」との子が着ている服のフードから、あるものを取り出す。
「抹茶ようかん入れてんじゃねーよ!」
なんと、ダイブしたときにフードの中に抹茶ようかんを入れられていたの子。「こんな甘ったらしいもん入れてんじゃねーよ!そんなに食べてほしかった?」と戸惑う。

「ワンマンじゃなかったらあっという間に終わっちゃうから、まあ、ワンマン来てくれたら、もっとやろうぜ。岡村さんのファンの方も気に入ってくれたら、はい」
の子がセッティングしている間、ちばぎんがベースをゆるく弾き、みさこのファッションチェックが。着ている白いワンピースはティッシュをイメージしているらしい。
「お前、そんなんじゃなくて、もっと原始的なMCを。原始時代の、原始の源の、原始のDNA部分を彷彿とさせるような。うん。次の曲はそんな曲です」
誰もが理解できない曲紹介をするの子。『自分らしく』のドラムとパーカッションが始まると、リズムに合わせながら軽快に「男は!"ウッホッ、ウッホッ"!、女は!"いやーん"!」と掛け声を要求する。手拍子と歓声に包まれ、そのまま曲へ。
の子の歌が始まると、monoがパーカッションを叩かずにスティックを持ちながら両手を上げて踊り、ステージを歩き回る。それを見たみさことちばぎんが笑顔になり、とてつもなくピースフルな雰囲気の演奏に。歌の合間にはの子が「ウッホッ!ウッホッ!」と掛け声を促し、みさこはずっとニコニコしている。monoはウィスキーを飲む。ちばぎんもの子の元気良さそうに歌っている姿を横目に笑う。こんなに楽しそうに演奏しているメンバーは珍しいくらい。もはや12月の新木場と全然違いすぎて、笑いがこみ上げるくらい。2ヶ月前の僕らを笑い飛ばしすぎ!
ちばぎんの「あーはんあーはん」コーラスタイムが終わるとき、monoがパーカッションからキーボードに移行。この瞬間がいつもたまらない。しまいにはミラーボールが回り出し、STUDIO COASTの壁を小さな光が乱反射する。キラキラとした光景に包まれ、なんなんだこの幸せな空間は。ここまであらゆるものが相乗効果となって輝きまくってる神聖かまってちゃんのライブは、ひょっとすると初めてかも知れない。
演奏が終わると、「レッツゴー!」と叫ぶの子。終わったのにレッツゴーとは、さすがです。

ちばぎんが『いかれたNEET』のベースを始めると、「え?もう最後?はえーよ!」との子。ペットボトルの水を頭からかぶり、それを見てmonoが笑う。
なんだなんだ、このピースフルな雰囲気。まだまだ止まらないぞ。ちばぎんがニコニコしながらベース弾いてるよ。みんなが笑っているよ。お日様も笑いそうなほど、ここまで『サザエさん』のオープニングのような神聖かまってちゃん、いまだかつてあっただろうか。あったかも知れないけど、その記憶を更新させるくらい、この日のライブは気持ちいい。
立ち上がり、ふにゃふにゃした動きでキーボードを弾くmono。最近は酒を飲んでもそれほど気分が乗らないように見えていたけど、気持ちよさそうに演奏している彼の姿が印象的だった。向こう側の照明が太陽、monoの顔の輪郭が月のようで、皆既月食に見える瞬間も多々あったが、それほど物珍しくて美しい光景だった。
ベースとキーボードだけになる部分、いつもはギターを振り回して暴れるの子だけど、このときは大人しくずっとマイクスタンドの前に立ったまま「いかれたニィーートォーー!」と叫び続けていた。いつもは危険を察知してステージ脇にスタンバイするスタッフの方々も拍子抜けするくらい、何も起きなかった。これがこの日、最も印象的なシーンだった。激しいアクションをする必要もないほど、すでに歌と演奏、場の空気でテンションが表現されているかのようだった。

「いやー、わかんねえけど、ハッピー…楽しい」

演奏後、本当に楽しそうに、笑顔で喋るの子。このときばかりは、彼は確実にひとりぼっちではなかった。

「えっとー、次の曲で最後ですー」
ちばぎんが告げると、お決まりの「えーーーっ!」というどよめきと、の子の「はえーよ!」。「みさこー!」という歓声に対しても「二曲ー?」と、どう聞き間違えたらそうなるのか、の子の"もっとやりたい病"が発症中だ。「実は、次が最後ではないんです」と紳士的なボイスで言い始める始末。思えば前回の新木場は、こういったまだまだやりたい気持ちが災いした。
だけど、の子はそのまま「次の曲は『ぺんてる』」と自ら演奏を促した。自分だけでなく、メンバーも観客もハッピーで楽しい気持ちを持続させるかのように。

最後は『ぺんてる』。再びミラーボールが回り出し、会場全体が光で彩られる。の子がステージの前のほうに歩き出し、歓声を受け止める。すると一人のお客さんを見て、「あれ?お前、2年前くらいに俺のことぶん殴ろうとした奴じゃね?」と言い、笑いを誘う。そこからのジャカジャーーン!が気持ちよくキマり、何の陰りもない、一寸の不安もない演奏になった。
みさこが気持ちよさそうに目を閉じて顔を振りながら叩き、monoとちばぎんが俯きながら丁寧に弾き続け、そこにの子の「大人に、なりました」という言葉が。

「僕は、大人になりました。どうしようもない風に吹かれて、今も、現在進行形で、大人になってしまっているのです。だけど、俺は、あのときのこの曲を作った頃の俺を思い出すために、あのときに帰れる気がするのです。俺はだから、そう、」

の子の語りはいつだって自分のことである。だけど、なぜか聴く人の記憶や思い出の中にまで入り込んでしまう。『ぺんてる』を聴いたときの気持ちを思い出す。音楽を聴くとき、いつだって風景がある。それは街だったり、部屋だったり。誰かと一緒にいたり、いなかったり。イヤホンで音楽と向き合うと、いつだってひとりぼっちだ。の子の歌は、ひとりぼっちで作ったものだからこそ、ひとりぼっちの誰かに響く。ライブ会場は人がたくさんいるけど、いつだってひとりぼっちにさせてくれる。一対一の会話なのだ。

僕は、演奏中のの子の顔をズームアップで撮っていた。ズームをゆっくり引いていくと、ミラーボールで彩られた会場、たくさんの観客、メンバー、スタッフの姿が映っていく。の子がだんだん、ひとりぼっちじゃなくなっていく。それは4年前の彼では想像できなかったことだろう。4年後に、あのときの自分を笑い飛ばすかのように、の子の「ぺんてるに!」と叫んでいた。死にたいと思っても、腕を切り刻んでも、自殺しちゃうぞと叫んでも、ハッピーで楽しい気持ちはいつか来るかも知れないということを、それを希望にも勇気にも変えてくれることを証明するかのようだった。
の子の後ろで、ちばぎんと向かい合って演奏しているmono、その二人を見ているみさこ。時にどうしようもなく、どうにもならない4人だけど、最高の瞬間がある。それは観ている人にとってもそうであるように、誰にとってもあり得ることだ。
神聖かまってちゃんはいつだって人間くさい。最低なときも最高のときもあるからこそ、この日のライブを素晴らしく思える。当たり前のことだ。誰もが日常で体験するような陰と陽が、12月と2月の新木場で繰り広げられていた。

演奏後、メンバーがステージから去っていく。一人だけ残ってギターを弾き続けるの子。
「今日はすごい、なんか盛り上がりました」
そして歌い始める。聴いたことのない曲だった。未発表曲を一人でギターをかき鳴らし、歌っていた。しっとりした曲で、寂しげな歌詞。途中、ぼそっと呟く。
「こういうときが一番、こういうときが一番、ひとりになれるから、俺は大好き」
誰がどう見ても、気持ちよさそうな"ひとりぼっち"だった。本当に一人きりで、部屋にいるような雰囲気で、ひたすらギターを弾いて歌っていた。の子らしい、の子にしかできないステージだった。

「ごめん、チューニングずれた」との子が言った隙に劒さんが止めに入る。「また今度ね」と素直に応じ、ステージ前に歩み寄るの子。「いくぜ、いくぜ」と言い、キレイな弧を描いてダイブするの子。多くのお客さんに担がれ、楽しそうな表情のの子。まだまだテンションが収まり切らないようで、幕が閉まったステージと客席の間でお客さんと触れ合う。ちばぎんも止めに入る。

こうして、神聖かまってちゃんのライブは終了。

最初から最後まで、ハッピーで楽しいライブでした。

神聖かまってちゃんの後は、岡村靖幸のライブ。
ベースの低音が会場全体を揺らし、ステージの中央で踊り、シャウトし、歌う岡村靖幸のエンターテイナーっぷりはなんなんだろう。突き抜けていて、一人の人間でこれほどまで表現できるかと思うほど、圧倒的な力を感じた。遠くから観ていたけど、すぐ近くでやっているような、そんな迫力でした。
かまってちゃんのメンバーも岡村靖幸のライブを観ていた。バイオハザードの洋館の一室みたいな部屋で、カーテンに首を突っ込んで観ているちばぎん。部屋からはお尻と足だけしか出ていなかったので、ものすごく後ろからカンチョーしたかった。の子さんはなかなか楽屋に姿に現さないほど、岡村さんのライブを見入っていたようだ。

この日、ずっと会いたかった人がいた。
くるみちゃん。「の子は、今、ひとりぼっちだと思うよ」と呟いた5才の女の子。そのお母さんと連絡を取り合い、ロビーでお会いする。前回はの子さんに直接会って手紙を渡せなかったので、今回こそ、の子さんに会ってほしいと思っていた。

神聖かまってちゃんの世界観は観点、部分、印象、様々あるけど、"子ども"という部分は重要だと思っている。『ぺんてる』も『ちりとり』も『夕方のピアノ』も、あの頃の記憶を蘇らせる。「なんなんですかこれは」といった言葉にならない感情は、大人になった今、なかなか思い出せないもの。
だからこそ、くるみちゃんが抱く神聖かまってちゃんへの気持ちがものすごく気になる。視点が鋭いのだ。お母さんがTwitterに書いていた、くるみちゃんのかまってちゃん論にも心をうたれた。これは僕なんかがこういうブログで長々と書くのとは比べ物にならない。くるみちゃんにしか表現できないもの。何よりも説得力がある。想像でもある。それはまるで、小さな事実なんて簡単に変えてしまえるほど、大きな気持ちではないかと思っている。

お母さんに声をかけ、お父さんを紹介していただく。お父さんは演出家、美術家の飴屋法水さん。初対面のくるみちゃんは僕を見るなり、「わーー」「ぎゃーー」などと笑って親しく接してくれた。怪獣とでも思ってくれたのだろうか、割と戦闘態勢の絡み方だった。そして怪獣は倒された。くるみちゃんが天使すぎたからだ。地上じゃちっそく死するはずのない天使。大きくてつぶらな瞳。小さいのに妙な存在感。小さな巨人だった。
「の子はどこにいるの?」
素朴な声で尋ねてきた。そして猫のぬいぐるみを差し出してきて、「ネオニー!」と叫ぶ。これはやばい。ネオニーだこれは。なんたるかわいさ。この子は心の底からの子さんのことが大好きだ。なんたって、初めて書けるようになった字が『のこへ』らしい。
の子さんはずっと岡村さんのライブを観ているようで、楽屋にはいなかった。「今ね、の子さんはどっかに遊びに行ってるよ」と答えた。後でワーナー野村さんに告げ、案内してもらい、ついにくるみちゃんはの子さんに会った。バイオハザードの洋館の一室みたいな部屋で。
どうしても映像に収めたかったので、ビデオカメラを取りに戻った。後から部屋に入ることになった。するとすでにの子さんがサインを書いており、その傍でくるみちゃんがピョンピョン飛び跳ねていた。そこにmonoくんが高音を発しながら一緒にピョンピョン飛び跳ねており、怪獣VS天使みたいな寸劇になっていた。みさこさんは「かわいいいい」と悲鳴を上げ、の子さんはずっと落ち着いた様子で丁寧にサインを書いていた。スタッフの成田くんが「これはいい光景ですよー。ハイロウズがバックで!」と言っており、STUDIO COASTの会場内はなぜかザ・ハイロウズの『青春』が流れていた。

くるみちゃんはの子さんにも「ネオニー!」と猫のぬいぐるみを渡した。「あ、じゃあこれ、ネオニーの友達として持って帰っていい?」と冗談を言うと、「いやー」と奪い返した。「かわいい…」との子さん。くるみちゃんはあっちこっちに飛び跳ねる。まるでこの日のステージ上でのの子さんみたいだ。しかし、の子さんとうまく目を合わせられない。ずっと恥ずかしそうにしていた。
「ありがと。また会おうね」
の子さんが優しく語りかけ、くるみちゃんの頭を撫でる。このとき、先ほどまでのステージのの子さんが子どものようで無邪気だったのを完全に忘れてしまった。
「前回の新木場も来てくれてたんだけど、それどころじゃなかったんで」とワーナー野村さんが言葉を添えると、みさこさんが気まずそうに笑った。くるみちゃん、お母さん、の子さん、みさこさんが一つに収まったカメラの画面。なんだか、胸いっぱいの気持ちになった。

機材が撤収されていく会場。神聖かまってちゃんは関係者に挨拶をしていた。帰り際に挨拶をしようと思い、飴屋さんご一家に会いに行く。すると、くるみちゃんが僕の後をついてきた。「ふぃー!」と楽しそうに絡んでくる。「の子は?の子は?」と聞いてくる。「また会いたくなった?」と尋ねると、こくりと頷く。「またの子に会いたい。の子はどこにいるの?」なんて言ってくる。
楽屋に戻ると、そのままついてきた。お母さんにくるみちゃんを任された僕が「ついてきちゃいました…また会いたいみたいです」と言うと、くるみちゃんの頭を撫で、頬っぺたをぷにぷにしてあげるの子さん。そこにちょうど撃鉄の天野ジョージ氏が挨拶に来て、の子さんが「俺、子どもできたんすよ」とくるみちゃんを紹介。天野ジョージ氏は「えっ、結構大きい…」と冗談に冗談を重ねた感想を述べていた。
せっかくの子さんに会っているのに、うまく感情が表現できないくるみちゃん。持っていた笛を突然ピー!ピー!と吹き始め、言葉にできない気持ちを表そうとしているようだ。それを見て笑うの子さん。吹き続けてやれ、笛吹きくるみちゃん。笛吹きの名に恥じぬように。
結局何も出来ず、落胆した様子のくるみちゃん。それを近くにいた阿修羅くんに言うと、ものすごく優しい笑顔でくるみちゃんを見つめていた。「お母さんとお父さんに会いたい」と言うので、呼びに行く。
去り際、切ない目をしたくるみちゃんが印象的だった。

なんだか、一度しか会ったことがないのに言うのもなんですが、くるみちゃんには圧倒的なパワーを感じる。一体なんなんだろう。この日のことは、あと10年、20年以上もずっと忘れずに覚えておきたい。きっと大切な記録になるでしょう。

行きは晴天だったのに、帰りは雨だった。
の子さんに去り際、「竹内さん、『スター・ウォーズ』を超える映画を期待していますよ」となかなかいじわるなことを言われ、劒さんに「青ひげさん、雨が降ってるんで気をつけて!」と言われ、STUDIO COASTをあとにする。

神聖かまってちゃんの今年初ライブ。"ハッピーで楽しい"は、今年中続くのだろうか。正直、良い予感しかしないライブでした。

2012年2月24日 新木場STUDIO COAST
<セットリスト>
1、ねこらじ
2、あるてぃめっとレイザー!
3、ロックンロールは鳴り止まないっ
4、2年
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、花ちゃんはリスかっ!
7、自分らしく
8、いかれたNEET
9、ぺんてる
10、(未発表曲)