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2009年5月27日水曜日

神聖かまってちゃん@下北沢屋根裏


映像同期。自ら持ち込んだプロジェクターとスクリーンで、映像と音楽を合わせる。真っ暗闇に照明を落としたステージには、の子が作った映像とグチャグチャとした音楽が繰り広げられていた。
視覚と聴覚を刺激する空間。あまり味わったことのない、目と耳が脅迫されたかのように強引に押し付けられた様子。拒絶反応を示すことなく、素直に大興奮しました。

夕方、下北沢をライブまでの時間つぶしに歩いているとバイナリキッドのヒロポさんから突然電話がかかってきた。
「今、の子さんが下北沢駅南口の路上で配信中ですよ」と。
急いで駅前に向かう。南口まで少し距離があるというのに、遠くからは聞き慣れた甲高い声が響いている。
やがて到着する。短い茶髪の男がノートパソコンを持ちながら叫び、喚いていた。恐らく待ち合わせのために立ち往生している人や通行人は彼を警戒するような目で見ていた。

「サブカルチャー! 俺はサブカルチャー!!おっさんかー!おばさんかー!貴様らいったい何才だー!!」

下北沢はサブカルチャーの本拠地といえる場所。だからといって「サブカルチャー!」とわざわざ叫ぶ人を初めて見た。
人々は待ち合わせ場所を変更するかのように、駅前を離れていく。その男は人々の流れを変えていた。彼を軸に人が離れていく光景が広がっていた。
もちろん、この台風の中心にいたのが神聖かまってちゃんのボーカル・の子である。
彼から目を離せなかった。
ノートパソコンを後ろから覗き込むと、多くのリスナーからのコメントが表示されていた。動画配信サイト・peercast界で有名なの子は、パソコンの向こう側にいるリスナーのために現在の状況を逐一伝えながら、歌なのか何なのか分からない言葉をマシンガンのように連射し、人々はそれを華麗にかわしていた。
下北沢には様々な路上パフォーマーがいると思う。しかし、パソコン片手に叫んでいる人は見たことがないだろう。
「それでは、今日できたファンの方と握手したいと思います!!」
彼は突然、目の前に立っていた男性と握手し始めた。
「僕、こういうの嬉しいんです!!普段社会に出ていないのでこういうのがすごく嬉しいんです!!ありがとうございます!!」
の子は握手したときになぜか異様に感激し、相手がギョッとビックリしてしまうような声量で叫びながら感謝の意を述べた。
ヒロポさんによると、「貴様らいったい何才なんだー!?」という問いかけに対して通行人が「お前は何才なんだよ!?」と返したとき、「僕は中2病です!!」と答えらしい。それは年齢じゃないだろう。

「ではこれからライブハウスに向かいまーす」と呟き、駅前を離れる彼。そんなの子の様子を少し離れた場所から見守っていたのが、キーボードでありリーダーでもあるmonoくん。この日のサポートベースのサンシロウくん。
来月の6月にFMおだわらの番組『象の小規模なRADIO』へのラジオ出演をパーソナリティ成川氏に代わって僕が催促し、みさこさんとはmixiを通じて連絡を取り合っていた。それを話題にすることで、話し掛けることができた。monoくんはYOUTUBEやニコニコ動画で見かけるよりも、紳士的で優しい人だ。「なんで俺がリーダーなのかっていう…」と自ら存在をつっこみ、「ほんとmixiでいろいろと書いてくれてるようで、ありがとうございます!」と、謙虚に接してくれた。サンシロウくんも優しい人だ。
「今日、ちょっと個人的に映像撮りたいって思ってるんですけど、いいですか?」
monoくんに尋ねると、「いいですよ!僕らネット上にたくさん動画落ちちゃってるんで、アップしてもらって全然いいんで」と承諾を得た。
テンションが上がった。
神聖かまってちゃんはどうしても撮りたい。
単純な話、ライブにはなかなか行けない人、行くほど興味がない人、全く興味がない人が見れる機会が欲しい。見せるきっかけを作れるのは、動画サイトだけなのだ。
成川氏も到着し、2人してライブハウスに向かうの子の後ろを追ってしまった。すると「あ!!」と何かを思い出したの子が振り返り、「ライブの告知するの忘れてたよ!!」と大声で焦りながらまた駅前に戻った。
律儀にわざわざ駅前まで戻り、「今日はこれから下北沢屋根裏というライブハウスでライブをやる、神聖かまってちゃんです!!」などと告知。そうか、この一連のパフォーマンスはライブ告知の意味もあったのか。

下北沢屋根裏に着く。
前回の4月よりも、少しだけお客さんが増えていた。僕が「絶対おもしろいから!良いから!」と強引に推していたことで、近所に住む友人もそのまた友人を連れて観に来ていた。公式サイトでダウンロードできる神聖かまってちゃんの楽曲のmp3を勝手にCD-Rにして渡していたからか、「いつも聴いてるよ。アルティメットレイザー!!」と完全にハマっている様子。無理もない。やっぱりかっこいいんだもん、曲が。
セッテイングはプロジェクターとスクリーンもあるからか少し時間がかかっていたようで、ようやくライブがスタート。
いきなり「さて、帰るか」と悪態をつくの子。
「お前ら、ヒマだな。ニートいっぱいいるだろ。ニートの人手あげて。(手を上げずに拍手する客に対し)拍手じゃねえよ!!」

1曲目は『笛吹き花ちゃん』
スクリーンにはの子の作った映像が流れる。そしてスクリーンに隠れてmono・サンシロウ両氏がまったく見えない。ステージにはの子とみさことスクリーンしか見えないようになっている。
花びらがくるくると回り、光が幾何学模様となって自由自在に変形していく映像。楽曲のすべての歌詞が音と同期して流れていく。
ステージの照明がまったく使用されていないので、スクリーンに映し出される光だけが屋根裏内を照らしている。
最後のあたりの歌詞は画面いっぱいに表示され、映像はほぼ文字だけと言っていい。
「たとえ教室のやつらなんか バカにされてしまおうが 吹き続けてやれ花ちゃん きっと君だからまた泣いてしまうこともあるかも知れんが 笛吹きの名に恥じぬように」
すべて明朝体で綴られていき、視覚的に歌詞が目に飛び込んでくる。

曲が終わるとお客さんが盛り上がり、歓声が。それに対し、の子は少し戸惑っている様子。
「え? え? なにこれ…こんなの初体験…」
これほど反応があるのは珍しいようで、うぶな女の子のようにかわいらしく照れていた。そして突然テンションが切り替わって「お前ら!!求めに来たのかぁああああ!?」と絶叫。
「の子!」
ひとりのお客さんが呼び掛ける。の子はキメ顔で「もっと呼べ。」と促す。
「の子ー!」
「の子っ!」
「の子ーーー!!」
男女問わず、お客さんが次々に呼び掛ける。
「待てー!俺の名前は、大○○介(本名)だー!!」
なんという展開。

次は『学校に行きたくない』
「皆さん、学校は楽しかったですか? 俺はつまんなかったです」
曲が始まると「ギュピガガギャピガガ!!」と、不快に近いようなノイズの機械音。しかしここでは心地よく、トリップ感がある。そしての子のシャウト。次に繰り広げられる光景は、猛スピードで赤や黒、白や黄に切り替わり続けるスクリーンだ。通称・ポケモンフラッシュのように激しいサブリミナル。子どもが見たら一発で問題視されるだろう。だけど狂った映像にも次第に陶酔していく。
曲の途中での子がステージダイブをし、何度も絶叫。
「計算ドリルを返してください!!」
ほとんどそれしか言っていないけど、妙に伝わってくる。「おかあぁああさぁあああん!!」と叫ぶところで妙な高揚感。赤、青、黄、緑とチカチカ光っているスクリーンの前に立つの子。洗脳されそうなほどぶっ飛んだ映像を見ていると、なぜか興奮のあまりビデオカメラを投げそうになった。投げなくて本当によかった。

曲が終わると、の子は完全に息が上がっている様子。
「まだまだだぜこんなの…帰りに肉まん買ったぐらいだぜこんな疲れ…そんなことを分かってくれる女の子が…サブカルチャー!!」
肉まん買うのも疲れるらしいの子であるが、疲れていることを理解してくれる女の子がサブカルチャーだとは思わなかった。
このライブはpeercastで配信中であり、リスナーの人に向けて「映ってますかー?」と尋ねるシーンも。
曲を演らずに喋り続けるの子に対し、後ろからサンシロウが「曲演んねー?」と。

「曲演るとすぐ終わっちゃうだろ…もっと見つめなさい。(マイクにディレイを使って)もっと見つめなさい。そう、あなたが信じるものはここにいますよ。さあ私の目を見て、信じなさい。神聖かまってちゃんというバンドを信じなさい。の子の子学会に入りなさい」

の子の声はまるで天からのお告げのようなエコーがかかり、戸惑い気味の笑い声が客席から響く。
「次何やるんだっけ?」「何だっけ?」「通学low?」
まるで練習スタジオでの会話のようなグダグダなMCの後、monoとみさこがキーボードとドラム交代。どうやら次の曲はみさこは叩けないようだ。「次はこの変なモアイヅラした奴がドラムを叩くんで」との子によるひどい紹介を受け、monoがドラムセットに移動。
そして『通学low』
の子が部屋かどこかでカメラ目線で身体を何度も伏したり上げたりしている不気味な映像をバックに、monoの力強いドラムが映える。ボーカルエフェクターによって子どものような声になり、「真っ黒な顔をして笑っている」と何度も呟くの子。映像も相俟って、かなりアングラなステージに。やがてドラムのリズムが加速していく。
「殺してあげたい君に微笑む」と言った後、マイクスタンドを床に叩き付け、その瞬間、映像に不具合が生じる。それでも続ける。もはやカオスでしかない。の子が客席に飛び込んできて、ステージに戻り、「うぅぅうううあああああ!!」と言葉にならない絶叫を。
monoドラムが男気溢れ、安定感のあるビートを刻んでいた。狂っていても、ちゃんと曲として成立している。その間、みさこはキーボードに座っていたがどうやら何もしていなかったようだ。

「これが、アレンジだと思ったろ? アレンジでは、ない。正直どうしようかと思った…」
の子は先程の不具合を正直に説明する。

「はい、次の曲で最後です。みなさんこのまま仕事行くなりセックスするなりそんな適当な人生送ってんだろー。はいこの曲終わったらさっさと帰ってそれかまあ僕のこと生意気なこと言ってるから殴るなりなんでもしてもいいんで。はーいあとまあ神聖かまってちゃんについてはググってもらったらいいんですけどね。ググる!ググる!2009年!何をしている!」
ギターのピックがないからといって、なぜか100円玉でギターを弾こうとするの子。

「えっと、みなさんは下北沢は近いんですか。僕は千葉ニュータウンから来ました。みなさんは何をしてるんですか? いま呼吸をしてますか? 大丈夫ですか? 普通にここから離れてるとこ住んでなきゃいいですね。こんなライブ観た後ため息ばかりで、呼吸困難陥って死ななきゃいいですね。」

最後は『ちりとり』
「ねぎトロ巻きねぎトロ巻きねぎトロ巻きねぎトロ巻きが、いる」と不可解な即興歌を披露した後に「じゃあ、聴いてくれ。俺のラブソング」といきなりかっこよくキメて、演奏がスタート。
映像は、右には学校の教室が映し出され、左には映画のエンドロール風にテロップが下から上へ流れていく。キャストやスタッフといったところだ。その名前のほとんどがの子の本名で埋め尽くされており、映像も曲も全部自分が作ったということが痛いくらいに伝わる。ボーカルが始まるとそのスタッフロールが歌詞になり、エンドロールという意味でもライブの最後にふさわしい映像に。
最後はテロップで、
『楽曲提供 神聖かまってちゃん エンディングテーマ「ちりとり」 の子 mono みさこ サンシロウ』
と出て、右にはの子が撮影したとされるメンバー全員が集まった姿がセピア色で映し出されている。妙にキュンとなってしまう演出。このライブのためにこれらの映像をすべて作ったのかと思うと、駅前で叫んでいたことも、ライブでダイブすることも、すべて色々考えてやったのかと感動してしまう。
『ちりとり』の最後のピアノのメロディは、小学校の卒業式で流れるような、なぜか懐かしくなるようなもの。ギターとの混ざり具合が美しく、あんなにとち狂ったような映像をたくさん見せられたのに、グッときてしまう。
ハチャメチャながらも、やりたいことを正確にやろうとしている。
そして楽曲が誰からも愛されるようなメロディ。クセになる歌詞。これはもう、他ではなかなか体験できないこと。
やっぱり神聖かまってちゃん、最高です。

終演後はフロアを出て、屋根裏の階段へ。
の子がプロジェクターの上にノートパソコンを置き、peercastの配信をしている。今日のライブの反省のようなことを呟いていた。近くにいたmonoくんに案内され、楽屋へ。みさこさんと初対面。小さい。ほくろの位置がいい。そしてまた、ものすごく謙虚で優しい。
peercastのリスナーにも促され、FMおだわらのパーソナリティとして成川氏が顔を隠して配信に出演。神聖かまってちゃんにとって初のメディア出演となるだけあって、リスナーの好奇心も高かった。成川氏はの子さんの勢いに押されていた。その後、の子さんはみさこさんに配信をバトンタッチする。みさこさんの後ろに映っていた対バンのライフガードというバンドの男の子にリスナーが興味を示す。そしてライフガードの男の子が大人気。意外にも年齢が低いという点が。
その脇で、の子さんと初めて会話。「もっと色々広めてください」と言われる。彼の目つきは鋭く、駅前やライブのテンションとは違い、声が低かった。本当は冷静沈着で、計算高い人ではないかとそのとき思った。

帰り、南口のマクドナルドで成川氏と一緒にたけうちんぐが撮った映像を見て楽しむ。「『通学low』はやばかった」「もはやテンションが大物バンド並み」などとまるで十代のように興奮していた。
帰宅後、すぐさま動画をYOUTUBEにアップ。
これが初めて神聖かまってちゃんの動画をアップした日だった。反応は皆無に等しかったが、撮影をし、アップロードをした喜びがあった。

2009年5月27日 下北沢屋根裏
〈セットリスト〉
1、笛吹き花ちゃん
2、学校に行きたくない
3、通学low
4、ちりとり

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