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2011年10月2日日曜日

神聖かまってちゃん@六本木ニコファーレ

六本木のニコファーレにて、神聖かまってちゃんのライブ。

360度、LEDモニターで敷き詰められたの壁がステージと客席を取り囲んでいる。ニコニコ生放送のコメントがあらゆるところから流れることで知られる ニコファーレ。配信ありきのライブを毎回のようにしている神聖かまってちゃんにとって、まさにうってつけの場所です。彼らのためにあるような施設であるこ とは、この日のライブで実証されたようなものです。

ネットチケット、リアルチケットの2つがあった。ニコニコ生放送で視聴するためのチケットと、実際にライブハウスに足を運んで観るチケット。常にライブ を配信することを心がけているため、『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞の通り「遠くで/近くで/すぐそばで」を体験することができる神聖かまって ちゃんのライブ。ここではその真髄を見ることになる。リアルチケットは当然、即日ソールドアウト。一気にプレミア化していました

結果、インターネット上では7万人超の視聴者数があったという。さいたまスーパーアリーナの来場者数の2万5千人を軽く超えてしまいました。

撮影のため楽屋に着くと、何やら盛り上がっている。ちょうどNHKの音楽番組『MJ』に神聖かまってちゃんが出演している様が放送されていたようで、メンバーとスタッフで観ていたらしい。


いつものようにライブ前は楽屋で配信。の子さんは赤いモコモコとした服を着用し、最近では毎度おなじみの三つ編み姿。高級猫のような雰囲気だ。ゴキゲン な様子で配信中のノートパソコンに向かい、元気にすらすらとコメントを読みながら喋っていた。どこかに行こうと席を立ち、ちばぎんに配信を託す。そのとき 廊下で目が合い、「竹内さんじゃないですか!配信出てくださいよ!」と連れて行かれ、の子さんに紹介されて出ることになった。配信は貴重な時間に自分が出 てしまっていいのか、という気持ちで何も喋れないし出来ない。知り合って2年半になるけど、「僕らのことをずっと支えてくれた」などとの子さんが紹介し てくれたのは嬉しかった。彼は感謝の気持ちを忘れない人だ。だから成功するのだろう。風邪を引いていたのでマスクをしていたためか、「楽屋泥棒竹内」とい うコメントも。たしかに、マスクをしてもしていなくても不審者なので間違ってはいないのです。

劒マネージャーに案内してもらったステージ下手の袖でビデオカメラを持ち、開演を待つ。すぐ傍のステージ奥の壁には当然LEDが敷き詰められ、ネット上の視聴者によるコメントが大きな文字で右から左へ流れていく。遠くの壁にも、向こうにも。
時折、流れていくコメントに笑い声も。開演時間が迫り、「楽屋配信終わるぞ」「くるぞおおおお」というネット視聴者にしか把握できない状況がコメントで 流れ、リアル会場もそれを見て「うおおおお」とヒートアップ。客席は多くの人が一気に前に詰めかけ、ライブ前から熱気を充満させていた。「つめすぎw」と いうコメントも。
といいつつも、なかなか開演せず。「のこさっさとこいよー」という会場のお客さんの気持ちを代弁するようなコメントが。ステージ前の中継カメラが最前列のお客さんを映し、ネット上、LEDに大きく映し出されていた。恥ずかしがってうつむき始めるお客さんの姿に笑いが。

やがて登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、その名の通り目覚ましのように作用し、起き上がるかのごとく大歓声が響く。四方、壁中にも「き たああああ」「おおおおお」などと興奮の文字が勢いよくドバッと流れるも、SEがなぜか停止。「ええええ」と溜め息まじりの笑い声が響き、またもSEが 再生され、大歓声が。
たくさんの手拍子、コメントが流れる中、神聖かまってちゃんのメンバーが続々と登場。ツノのようなカチューシャをつけたみさこ、髪の毛がパーマ全開のちばぎん、『MOTHER3』のTシャツを着たmono、そして女の子のようなの子がステージに現れる。

の子は第一声から「お前ら、コメント読め!!」。

「の子かわいいー!」という客席から女の子の歓声に対し、「うるせえ!!」と返答。コメントでも客席でも興奮が言葉で埋め尽くされている。ネットとリア ルが近い空間とは、まさにこれ。「888888(拍手)」「のこのこのこのこー」「ちばぎいいいん」などと熱狂的に叫んでいるようなコメントもあれば、 「MOTHER3」とだけ書かれた冷静なコメントもある。

「あれ?さっきの(楽屋での)配信と違って、『鳥(みたくあるいてこっ)はオワコン』とかねーんだけど。NGワードか何かかな?運営さん、これ流して全然いいですからね!」

の子が言うと、『鳥はオワコン』という新曲をdisるコメントがさっそく。「そんな感じで神聖かまってちゃんです、よろしくお願いしまーす!」とどんな 感じか分からないけどちばぎんが開始の挨拶をし、みさこのドラムとちばぎんのベースでいつものデーーーーーーン。ここにもう一つギターなりキーボードの音 が乗ることは、まず無い。
「いくぞ!帰ろう!」との子が叫びつつも、monoとみさこの紹介でサポートバイオリンの柴由佳子さんがステージに登場。「びびさーーーん」というコメントが流れ、客席からも歓声が。

「これ、1500円払って観ている人はどんな感じなの?」との子。「それは自分で1500円払って観るしかないんじゃないの?」とちばぎんが答える。コ メントを指差したの子は、「だから成井さんの話はするなって!ちょっとごめんなさい運営さん、『成井』って言葉だけはNGワードにしてください!」とお 願いをする。「『の子クリスマス仕様だね』じゃねえよ、これは40万で、360万円が320万円になるように買ったんだよ!ツアーが始まるから!」と、赤 いモコモコとした衣装について語る。ライブ開始にも関わらず、普通に配信しているような状況に「MCが長いんだよ!」と自分で自分をつっこむ。
ちばぎんの曲紹介で、『白いたまご』へ。「早くやんないと、6曲くらいで終わっちゃうんで」との子。「これ(LEDに流れるコメント)すごいね。テンション上がるわ。お前ら、ちゃんとコメント読めよ。『オイ!オイ!』とかじゃなくて」と観客に難しい忠告を。

みさこのドラムスティックによるカウントにより、ニコファーレでのライブはスタート。
演奏中のメンバーが壁のLEDに大写しになり、その上にコメントが流れている。この、神聖かまってちゃんに取り囲まれた空間。ステージに顔を向けている 観客にとって横の壁は死角にもなるけど、見えない部分からの臨場感もじわじわと伝わってくるような、いまだかつて味わったことのない刺激的な空間であるこ とは間違いない。
宇宙を漂流しているかのような、星くずが横に流れていく映像が流れている。この日、曲の世界観に近づいているような映像が曲ごとに流れるもんだから、壁だけ観ているだけでも十分面白い。
物悲しくて切ないバイオリンのメロディが曲を全編盛り上げて、『白いたまご』が終了。いやもう、この1曲だけで相当なノックアウト感。今日の神聖かまってちゃんは、何か違う。そんな予感にゾクゾクした。

曲が終わると「888888」という拍手のコメントの嵐。「の子かわいいよー」「バイオリンを入れたのは正解」などといった感想が即座に入れ込まれる。「熱いー!」と客席から声が。「俺も熱い!」と赤いモコモコしたセーターを着込んだの子。当たり前だろう。
「俺はだいたい3曲くらいで疲れるから」との子が言おうとすると、「今日もノースリーブ?」と男性客から謎の歓声が。の子、「なんだお前?ノースリーブじゃねえ!」と正しい反応。

ちばぎんのベースが始まり、の子が語り始める。

「熱いとか関係ねえ。もっと熱くなれ。俺はもっと熱い。お前らは軽装で来てるんだろ。俺はもっと熱くなる。俺の熱さをてめえらに届ける。お前らは我慢できるだろ?けれども我慢できない。この後死ぬ。だけども、今ここで立ってるのがニコファーレ。いくぜ、いくぜ!」

思いついた言葉を並べていくが、この語りがキマりまくって快感。そして『レッツゴー武道館っ!☆』へ。「走るっ!」との子が叫ぶと、ちばぎんのコーラスに合わせるかのように「やーねー!」という声が客席から聞こえ、コメントでも流れていく。

「熱くねえな俺はこんなんじゃ!」との子が会場をますます煽る。演奏後は「888888」というコメントに包まれている。「『はやくやれ』うん、早くやります。みんなの心の声がここに反映されていると思うんで」との子が言い、『Os-宇宙人』へ。
これまた銀河の中を走っているような映像。宇宙人らしく、宇宙。「僕は中卒だからー」と歌詞を忘れた部分を即興の歌詞で補ったり、「あなたのことが好き」と言いながら中指を立てて煽ったり。
演奏後、「カメラ!」とカメラ目線でキメ顔をするの子。横のLEDに大写しされる顔。女性客の歓声の中、monoがゆっくりとコメントを読んでいく。「『イケメン』『イケてない』『の子かっこいいぞー』『顔面偏差値高い』だって。『顔面凶器』。俺かい」と。

「とりあえず僕とmonoくんは(渋谷)WWWみたいにならないようにしなきゃならない」との子が宣言しつつ、monoがパーカッションを「ポン!」と 軽快に鳴らしている。チューニングしているの子に「はやくー」と客席から。「こいつらが遅いんだよ!」といきなりメンバーのせいにし、ちばぎんが「すいま せんでしたー」とわざとらしく謝る。
monoの叩くリズムに合わせながら、の子が「あまーあまー、ぽいっぽいっぽいっあまー、あまー、ぽいっぽいっぽいっ」という謎の掛け声を発し始める。楽しそうにノリながら歌うも、「『前のほうしかノッてない』?うるせえ、死ね!」とコメントを指摘する。
こうして『自分らしく』へ。後半の盛り上がり、monoのキーボードのメロディに柴さんのバイオリンが加わって増大。星がキラキラしたような映像に、メンバーの顔が大写しに。みんないい顔をしている。

「まだまだ寒いな」との子が客席を挑発。「『カメラアングルがいい』?違う、俺の顔がよかったんだ」と自信満々のの子、MCはやっぱりコメント読みに徹 してしまう。みさこは鼻水が出ていることを指摘されている。これは普段のライブではドラムは客席からは遠いため、指摘されないこと。どうでもいいことだけ ど、鼻水の指摘は中継カメラとニコニコ生放送のコメントが連動されることにおける現象のひとつです。
ちばぎんが「熱い!」と言うが、の子は「いや、寒いな」とまだまだ挑発。「インターネット回線の向こうのみんなはクーラーきかせて寒いだろうから、お前 らがもっと熱くしてやれこのやろー!」と。「『寒い』?クーラー止めろよ!『暖房きかせている』?それはすみません」と、すらすらと会話のようにコメント を読んでいくの子。ただでさえグダることの多いライブであるため、曲がなかなか進まない不安もあるけど、この空間だったら仕方がない。それでもスムーズに 曲を演奏していく姿には、少し感動を覚える。他のバンドだったら当たり前のことだけど。
「汚い!今、ペッとしたでしょ!」と、タオルに唾を吐いたの子をちばぎんが指摘。客席の女の子から「タオルほしいー!」というなんだか物凄い声が。「あ げるわけねーだろ!って誰が言ってんのかわかんなかった。そこの男が言ったんだと思った。そこの男にあげますわ。『きもっ』?」と返答。

「普段の配信よりコメントが少ないじゃねーか!」との子。どうやらニコファーレに流れるコメントは、ずっと延々と右から左へ流れていくものばかりではな く、途中でフェードアウトして消えるコメントもたくさんあるらしい。「あれか、『成井さん』ワードが引っかかってるのか?」と、の子によるほとんど成井さ んコメント大量説。
2万7千人が見ていることについてのコメントに、その数に驚く客席。「2万7千人くらいで驚くな!さいたまスーパーアリーナに行けないぞ2万7千人くら いじゃ!俺はさいたまスーパーアリーナにいつかお前らを連れていってやる!」との子が宣言。夏のさいたまスーパーアリーナでの神聖かまってちゃん出演時の 『アニサマ』の来場者数は2万5千人。ちばぎんが「行けます」とさりげなく返答していた。

続いて『天使じゃ地上じゃちっそく死』。緑色のバグったような映像が流れる中、の子が歌うのに合わせて「しにたいなー」という文字が大量に流れては フェードアウトしていく。言葉だけでなく、文字からも悲鳴が響いているような景色。負のエネルギーが充満しつつも、の子は途中マイクスタンドを勢いよく蹴 り倒しながらも延々と「しにたいなー」と連呼。

「つるぎさーん」という歓声が止まない中、マイクをセッティングしている劒マネージャーのすぐ傍でなぜかの子が突然自分の顔面を殴る。その姿に戸惑う劒マネージャー。ATARI TEENAGE RIOTのTシャツを着ている。まだまだ止まない劒コール・劒コメントに、みさこがのほほんと「何人か泥ガールがいます」なんて発言。

の子、疲れた様子で「死にたい」と呟くと、客席の女の子から「生きろ!!」と喝を入れられるも、「うっせーばか死ね」と即答。ちばぎんが笑う。「生き ろ」というコメントがちらほらと流れていく。「『の子、こんなんで楽しいか?』いや、死にたいんだよじゃあ、もうちょっとリア充な曲いきます」と言う と、客席から歓声。ところがの子からは「お前らほんと死ねよ」と予想外の反応が。
「じゃあ『ベビレニ』」と言って会場が盛り上がるが、「ちょっと待ってチューニングが」ともはやお決まりのパターン。そして、一度曲紹介をしたのにも関わらず、結局演奏するのは『夕方のピアノ』。客席からは大歓声だが、「ええっ!」と戸惑うメンバー。
客に向かって「ほんと死ね、くそ」とまだまだ挑発を繰り返す。「最近荒ぶっているんだよ、というか不安なんだよ。不安定な時期のほうがいいライブってことで。これでダメだったらファンやめろ」との子が呟きながら、monoのピアノのメロディが始まり、演奏へ。
途端に壁のLEDには夕暮れ空が映り、大歓声が響き渡る。四方、あたり一面が夕暮れに。そこに「しねー」というコメントが大量に流れ、の子がかつて作っ たPVが物凄い臨場感で再現されているかのようだ。夕暮れ空をバックに演奏するメンバーの姿には、込みあげるものがあった。

『夕方のピアノ』の「死ね」は攻撃的というよりは、切ない意味で聞こえてくる。の子の宅録音源で聞き逃してはならないのは、終盤、の子の叫び声がリコー ダーの音に変わる部分だ。彼の楽曲には『笛吹き花ちゃん』『花ちゃんはリスかっ!』でも歌詞の中にリコーダーが登場し、かつて誰もがランドセルを背負って いた記憶を蘇らせる瞬間がある。自分は花ちゃんのような存在だったか。佐藤のような存在だったか。意味はなくとも、脈絡はなくとも、誰かの記憶を辿らせる 歌詞であることは間違いない。

「死ね!」の部分では感情が高ぶったのか、「お前を殺したい!殺したい!殺したい!殺したい!」と何度も繰り返していた。「僕はお前のことが夢に出てく るんだ。このニコファーレとかニコニコしてんな、死ね!」と叫ぶと、客席から歓声が響き、大きな盛り上がりへ突入。ちばぎんも激しいアクションをし、みさ こがドラムスティックを大きく振りかぶってシンバルを鳴らし、monoだけが黙々と姿勢と表情を変えず、背景の夕暮れ空に(MOTHER3の橙色のシャツ が)染まりながらキーボードを弾いている。
アウトロではの子が「死ねーー!」と叫ぶと後ろに後退してギターを掻き鳴らし、またマイクに近づいて「死ねーー!」と叫んでは後退し、を繰り返していた。

「の子かっこいいーー!」という女性客の声に、「うるせえ!死ね!」とさきほどからまったく同じ調子で返す。「の子謝れ」というコメントに対し、「あや まらないっぽいあやまらないっぽいなんまいだー」という謎の即興ソングを披露。 「『ベビレニ』やって。あそうだ、忘れてた」との子。ちばぎんが「やり ますか?」と尋ねるが、「やんない」と返事。

「ちょっと初めてライブをやる曲を、ちょっとやって、ザビってるような曲を、ちょっと髪が生えていないような感じで、俺ら練習不足だから」との子が曲紹 介をしているが、ちばぎんが「ごめん、ザビってる曲って何?」と戸惑う。「ごめん、チューニングを」との子が呟くと、「チューニングしている最中に忘れ るだろうから、先に言って!」とちばぎんが焦る。
で、やっぱりチューニングが自分でできないの子は「なんでギタリストなのにチューニングができねーんだよ!」とちばぎんに怒る。「なんで俺が!?」と戸惑う。焦る。戸惑うの繰り返し。

劒マネージャーにチューニングしてもらい、バイオリンの柴さんがスタンバイしたところで、「じゃあ『コンクリートの向こう側へ』」との子が曲紹介。ライ ブでは初披露となる。「照明、ダウン!」との子がキザに指示するとライブハウス内が薄暗くなり、カッ、カッ、カッ、カッとの子がリバーブのかかったギター のカッティングで歌い始める。が、妙な不協和音が轟くため、演奏中断。劒マネージャーに対し、「チューニングずれてる」との子。いいムードだったので、 「えーーーっ!?」と客席が悲鳴を上げる。
「ちょっと待てよ!今、かっこよくやったのに!あんたスパイか!?」と劒マネージャーに不満をぶつける。「自分でやれよ」「ひとのせいにするな」という、ごもっともなコメントが流れていく。
 

チューニングをし直し、「照明、ダウン!」とまたもやの子がキザに指示し、薄暗くなったライブハウスで「コンクリートの、向こう側へ~」と歌い始める。「おい」と合図を出し、の子以外のメンバーが演奏に入る。
キラキラとした光が下から上へ浮かんでいく映像がLEDに映し出され、幻想的な雰囲気に。どこからともなく聴こえてくる天使のような声のコーラスとバイ オリンも手伝い、の子が作ったデモ音源とはまた違う味わいを放っていた。コメントでは「ノイズは作曲者の意図です」と、5月にNHKのドキュメンタリー で放送された際のこの曲に関する注意書きが再現されていた。

monoがコメントを読み、「『眠たくなってきた』じゃねーよほんとに」と呟くと、の子が「じゃあ起こさせよっか」とかっこよく発言。みさことちばぎ んが「おっ」と反応すると、「おっ、じゃねえ」との子が照れ笑いする。「mono君、風邪ひいてるの?ぶん殴ってやろうか?」と話題をそらすも、 「おっ、て言うけど、僕はちゃんと天の上から空気を読みますから」と。
ネット来場者数が4万人突破したことがコメントで知らされる。「もっと上を!」とメンバーが言う。普通の会場がソールドアウトしたワンマンライブではまずありえない、観ている人がますます増えていくドラマチックな展開を楽しんでしまう。

「4万人の割にはコメントが少ない」とmono。「来場者数とか気にしてちゃダメですよ。じゃあ『ねこラジ』って曲で!」との子。イスを整えるmonoの姿に、の子が「貴族か!」とつっこむ。
「ひぃ、ふぅ、みぃ、にゃっ」との子がかわいらしく呟き、バイオリンが加わった演奏が始まる。「いってきまっす!!」という掛け声に、多くのお客さんが拳を突き上げる。

「(曲を)何やったかやってないか、ペケしてる?」との子がセットリストの紙を持ちながらメンバーに尋ねると、「このままバイオリンいるから、『スピード』とかどうすか?」とちばぎんが提案する。
「『生足最高』当たり前だ。昨日千葉ニューのイオン行ったら千円の五枚剃りのやつ買ったからな」と、昨日すね毛を処理したことを白状するの子。曲を始めようとするも「じゃあ、とりあえず五枚剃りじゃねえや」と言い間違え、メンバーが戸惑う。

「じゃあ、コメント、読みます。僕のスピードがあれば、コメントなんか全部読みます。お前らには読めないだろうが。むかついたら、ぶん殴っていいんだぜ」

「の子かっこいいー!」
一人の女の子の歓声に、の子が物凄い笑顔で無言で対応。「めっちゃ笑顔!」とちばぎん。そのまま間髪入れずに「得体の知れない~」と歌い始めるが、ハウリングがキィィーンと鳴り、「はぅあっ」とゆるく後退するの子。それを2回繰り返した後、無事演奏へ。
バイオリンが常に切ないメロディを奏で、その中でメンバーがいつもの演奏をする。「誰にも見えないふにゃまちま~」との子が適当に歌うと、「ふにゃまちま!?」と戸惑ったコメントが右から左へ流れていく。
「たまに走ったりするのですー疲れてないバカヤロー」
終盤、ブレイクするところでの子が歌いながらコメントに反応する場面も。
「スピードで」とちばぎんのコーラスが繰り返されるところ、みさこのドラムが本当にかっこいい。演奏されるたびにパワーアップされていくところだと思う。最後の「走れ、走れ、走れ、走れ、走れー!」の高揚感は、何度聴いても飽きることはない。


「ごめんなさい、ちょっと暑すぎて、息が上がってますキーボードなのに息が上がってます」とmono。「monoくん、一番疲れない位置だよね」と、 座っている上に歌うことがないmonoをちばぎんが指摘。みさこが「monoくん、いつも汗ひとつかかないのに」と上乗せ。そしての子が「ニュートリノは 本当に存在するの?」と限りなく脈絡のない会話の入り込み方をし、更に「monoくん、ボケてみて?」とムチャ振り。「えーっとニュー」とmonoが 頑張ろうとするが、の子がコメント読みを続ける。
「ボケカウントがあったとしたら、俺が49だったら、お前は3だよ」と突然のmonoディス。相変わらず、の子のMCの展開は読めない。

の子が「これが150%?」というコメントに「いや30%」と答えていると、ちばぎんがベースを弾き始め、「オナニーしている毎日を、思い出して、俺 は、そう、そのときの自分を歌い続けるいかれたNEET!」とリズムに合わせての子が歌い、そのまま『いかれたNEETへ。の子、歌いだしのタイミング が急。メンバーの戸惑った表情もあったけど、そのまま上手いこと演奏が乗る。の子の叫び声とともに「にぃぃいとぉおおお!!」などと、たくさんのコメント が叫んでいる。の子の叫び声が弱くなってくると、「疲労島」との子を指摘するコメントも。
ライブに熱狂しているコメントもあれば、冷静に状況を解説したり、指摘するコメントがある。この熱くも冷たくもあるコメントの温度は、普段のライブでは決して味わえない。
最後は台の上にのぼり、ギターを危なっかしく振り回す。パーカッション機材を手で「ポンッポンポンッ」とかわいく叩くの子。

「大島、頭やばいぞ」と、の子の髪型を指摘するコメントを読んで髪型を整えていると、「ザビってんじゃねーよ!」と女性客の叫び声が。「どこだてめーこ のやろー!ザビってんじゃねーよって、親父が今観てんだから、親父が真っ赤になってんぞ!」と笑いながら返答。「ザビってる=(ザビエルのように)ハゲて いる」ということであり、の子はお父さんの遺伝により将来ハゲることを憂慮しているらしい。
「親父は立ち見」というコメントが流れ、笑いが。

「渋谷のWWWではラップするとかあったけど、どうした?」との子がmonoを挑発するが、「やめてやめて」と拒否。「あとで考えておいて、演奏してい る間!」と命令するも、monoが抵抗。「呂律が回んねえ」と悲鳴を上げるが、「なんだ、『ウルトラまあんねえ』って」と、の子には聞き取れていない様 子。ほんとに呂律が回っていなかった。

「せっかくのレコ発ツアーですから、(アルバムの)1曲目とかやりませんか?」
ちばぎんの提案により、歓声が。1曲目とは『グロい花』。「この曲、まきおさんがギター弾くんですよね」とちばぎんが紹介すると、神聖かまってちゃんの 名物スタッフ・まきおがステージでごそごそ準備している姿に注目が。照れ笑いをしながら頷くまきおに、まきおコールが巻き起こる。まきおだけに、まきおこ る。「頑張ります」と応えるまきお。
「まきおさんがギターを持っただけで、『おっ』という黄色い歓声が」とちばぎんが言葉を添えると、まきおがますます照れる様子。WORLD HAPPINESSのTシャツを着たまきおの出番が遂に始まる。まきおが曲を始めるタイミングを計ろうとの子を見るが、の子が劒マネージャーに頭につけた カチューシャを探してもらっているという意外な光景が。「映して」と鏡代わりに中継カメラに映し出されるの子の顔。手にアゴをあてて、キメ顔。「ナルシ ストー」と客席からの声。
「まあ、美しくなりたいじゃない」
巧妙に曲紹介に繋げたの子。天使のような囁きから演奏に入り、monoが弾くキーボードの切ないメロディが映える。まきお、ギターを抱えたまましばらく 何もしない。間奏でようやくギターが披露され、大きな歓声が。「まきおおおお」というコメントもたくさん。ちょっと失敗してしまったのか、少しばかり照れ 笑いを浮かべていた。
 赤を基調にした映像の中に、の子の瞳孔の開いた目が大きく映し出される。曲の世界観に合わせたLEDの仕掛けには、毎度毎度感動してしまう。ほんと、ニコファーレが神聖かまってちゃんのためのライブハウスに思えてきた。

「早いもので、あと2曲だそうです」とちばぎん。いつも通り『笑っていいとも』のごとく「えええーーっ!?」という反応。コメントでは視聴者数が5万人 との報告。「5万人が1500円払ったってことでしょ?すごくね?」とちばぎん。LEDには「7500万円!?」とさっそく掛け算したコメントが流れてい く。
「いや、もっと凄くなってくるからついてこいよ」
の子の発言に、キャーー!といった歓声が。「いや、これは笑いじゃなくて。僕の欲望は果てしないから」と続けるが、お客さんの一人の表情が気になったのか「あ、うんざりした顔してるね。『またかよ、の子』みたいなごめんね」と謝る。

「テクノっぽいコメントを流してくれ!」とインターネットの向こうのお客さんに指示し、キーボードの前に立つの子。『黒いたまご』へ。ステージ天井のラ イトがあちらこちらに光を放ち、ニコファーレをクラブのように仕立てている。「どうしようもないね」「どうにもならないだろうね」という歌詞が書かれたコ メントがたくさん流れていく。
「どうにもならないことがあるのさ、金持ったって地位持ったって、どうにもならないことがあるのさー、そんなことを僕が今ここに叩きつけるのさー、僕はどうにもならないねー、僕はどうにもならないねー」
余韻を残すの子の呟きがまたたまらない。
神がかり、という表現はこのためにあった。とまで言ってしまいたいくらい、感極まってしまう光景を目の当たりにした気がする。映像と文字と光と音に包ま れたとき、どうしようもないし、どうにもならない興奮がそこにあった。黒いたまごが黒ではなく、カラフルに彩られていた。陰鬱な世界観はちゃんとそのまま で、まるでダンスフロアのようだった。

「残りがあと1曲になりました」という声に、またもや「ええーーっ!?」と。もうすでに90分が経過し、予定時間を越えようとしている。
一瞬、ステージ上の誰も喋らず、会場が無言になる。の子、「あのさあ、シーンとするのが怖いんだよ分かる?インターネットの前の君たちならよく分かる と思うんだけど、人といるときさ、会話が途切れると気にするんだよ。それがここで起きてるんだよ。だからお前ら喋れって」とメンバーに要望を告げる。

「まだまだやるんで、寝ないでくださーい」と配信を見ている視聴者に言い、「じゃあ、さっきやろうした曲を」と『ベイビーレイニーデイリー』へ。
「さあ、用意をするんだ!!」との子の指示により、曲の冒頭でみさこが叫ぶ「ちゃららちゃららー」をコメント上に書き込むように促される。タイミングを 合わすために「いっせーのーで」を言おうしたが、なぜか「いっしょうけんめいー」と言ってしまったことに自分でウケるの子。monoが「一生懸命頑張りま す」と添える。
「じゃあいくぞ!!」
「ちゃららちゃららーー!!」
客席からの歓声と、コメントの歓声が見事に合う。とはいえ、若干のタイムラグでずれてはいるけど、叫んだ後に「ちゃららちゃららー」という大量のコメン トが360度映し出される快感はなかなか味わえない。演奏中、その光景に歓声が巻き起こる。草原、青空などのショットが壁に映し出され、六本木の地下とは 思えない日常ののどかな風景にグッときてしまう。

興奮したの子は「2曲連続やる!」と言い、まきおにマイクを持ってくるように指示するの子。「『延長』?延長させろ!」と言う。「運営さん、延長を3時 間くらいしてください…3時間もすんじゃねえ!休憩があれば、3時間お願いします」と言いなおす。そして「えーっと、チューニングします」といつものパ ターンへ。
2曲連続っていうのがわからない何やるんだろう」とちばぎんが素朴な疑問をぽつりと。
ちばぎんが「やるなら、曲やろうぜ!」とライブを進行させようと促し、『美ちなる方へ』の演奏に。
PVの「出かけるようになりました」の部分を彷彿とさせる、青空の映像が映し出される。そこには雲らしきものがあるけど、どう見たって煙が噴出している ようにしか思えない。でも、この映像を選んだことでより一層、曲の世界に没頭できる。感激のコメントがたくさん流れ、メンバーはどのように思いながら演奏 したのだろうか。
途中、の子がmonoに何かしらを促し、monoが少し乗り切れていない様子でも立ち上がり、両腕を大きく振る。そして後半に突入する瞬間がとにかくかっこいい。

運営側によって延長することになり、「終電大丈夫?」の問いに「帰らない!」というお客さんの声も。ちばぎんが「最終的には帰ってください」と冷静に返す。コメントでも「終電大丈夫!」とあるが、monoが「そりゃお前は大丈夫だよ」とつっこむ。
「(視聴者数)10万いこうぜ」というコメントに、「まあまあ、さいたまスーパーアリーナまでいこうぜ」との子。「こだわりますね、さいたまスーパーアリーナ。いきたい?」とちばぎんが問うと、「ああ、俺はでかいステージが似合う男だから」とかっこいい発言を。

「男ってものは、うん、『自画自賛』とか言うやつもいるかもしんないけどさ、『たけだくんやって』うん、そういうことだよ」

このキマりすぎの曲紹介。そんでもってステージ脇ではスタッフ・まきおが柴さんのステージに入るタイミングを誘導しているが、「男ってものは」との子が 言った瞬間に柴さんにステージに入るように案内する、仕事のデキる感じ。というか、勘がビンビン働いていて見事な判断でした。

「男ってのはロマンなんだよ。くたばるときまで、男のロマンに金と時間を費やそうぜ。じゃあ、聴いてください。かっこいい俺、歌います。『男はロマンだぜ!たけだくんっ』」

これノックアウトされた女の子がたくさんいるんだろうな、と思ってしまうくらいの発言。珍しく最初から最後までかっこよくキマった演奏への入り方だった。
柴さんのバイオリン、そしてまきおのピアニカも参加。楽器がどんどん増えていく。このままいつか、オーケストラで神聖かまってちゃんの曲が再現されない だろうか。そんな期待も膨らんでしまう『男はロマンだぜ!たけだくんっ』の演奏。視聴者数が6万人を超えたことを告げるコメントが。最後の終わり方もバイ オリンがばっちりキマり、もうなんだか、凄い。今日の神聖かまってちゃんは間違いなく、凄い。誰も文句は言えないような、サービス精神と、説明不要なかっ こよさに満ち溢れていた。

本編最後は『ちりとり』。もうなにも言うことない。この曲の最後のあたり、いつもアドリブで思い出を振り絞るように綴っていくの子の叫び声、呟き。星空の映像をバックにこういうことやるんだから、グッとこないわけがないでしょう。

メンバーが退場し、大量の「8888888」の文字が流れていく中、ギターの鈍い音を轟かせながらの子が興奮さめやらぬ状態でマイクを持って喋る。「あ れ?誰もいなくなった」と冷静になった途端、劒マネージャーが近づいて耳打ち。の子は「アンコールとか分かってるよ!」とその後の展開を爽快にバラし て、一度ステージから去る。

会場の照明が暗くなり、LEDに映し出されるコメントがキラキラと鮮明に浮かび上がる。「アンコール」「早くでてこい」「のこー」「会場もっと盛り上がれ」などのコメント。

ステージの照明が明るくなり、メンバーが続々と戻ってくる。の子は本編途中から脱いでいた赤いモコモコとした服を再び着ていた。「さっき早くやれって言 われたからストリートファイトしてきた。それで血まみれになって」と赤色を説明。「かっこいいよ!」という男性客の声援に、「当たり前だバカ!」と返答。
「配信で待っている方もすいません。てことで23才の夏休み』やります!インターネットのみんなは光ファイバーで頼むよ!俺はニュートリノの速度でやるよ!」

アンコールはみさこの軽快なドラムから『23才の夏休み』でスタート。
8月と9月に生出演した音楽番組『カミスン!』でのようなパフォーマンスは一切なく、ギターを弾きながら真っ直ぐ歌っているの子の姿があった。それでも 「死して屍!!」と何度も叫び、会場は完全に共通認識。知らない人は誰もいない様子で、客席は笑顔で溢れていた。サビの、の子のボーカルに乗っかるみさこ の高音コーラスがこれまた爽快。

「『死して屍』でコメントが埋まった」とみさこ。「『死して屍』ってコメント読んでたらそのままになっちゃった」との子が白状する。

そして「monoくん!」との子が呼びかけて、『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロのピアノが。いつ聴いてもテンションがおさまらないスター トに、客席は大いに盛り上がり、縦に揺れる。途中、ギターを弾かずに人差し指を突き出して叫ぶの子。前かがみになってリズムをとりながら弾くmono2 人の姿が大きな画面に映し出され、それは今までに視覚効果として使われた宇宙、夕暮れ、青空、星空などの映像とは比べ物にならない、素晴らしい映像だった ように思う。
最後、の子はステージと客席の間に降り、ギターをステージに放り投げる。そのときのギュワアアンという鈍い音がたまらなかった。

ちばぎんが聞き覚えのあるフレーズをベースで奏で、みさこがパシャンパシャンとシンバルを鳴らし、におわせる。におわせて、におわせて、きた!と興奮せざるをえない、『学校に行きたくない』
ギターを置いて、マイクに徹するの子。シャドウボクシングのようなダンスに徹するmono。二人が自由に暴れる。火花が散るような真っ赤な映像の中、 「学校に行きたくない」「計算ドリルを返してください」の二言だけが延々と繰り返される。弾幕となり、不登校児の精神世界が具現化されたようなニコファー レ。
中盤、monoが野太い声で何度も「おかーーさーーーん!!」とうずくまって叫ぶ。の子はパーカッション機材が置かれた台に上り、ステージ中央で視線を 一気に集中させる。そしてダイブ。客席の波に乗り、客席の中に降り立ったの子。「の子を返してください」というコメント。多くの人がの子を見失い、終盤で は客に持ち上げられて再びステージに帰ってくる。衝動に満ち溢れていた。
最後は所属事務所パーフェクトミュージックの新しいスタッフ・阿修羅(身長・190cm)に抱かれながらステージに戻されるという姿で笑いに包まれる。「お姫様だっこされてるじゃないですか!」とちばぎん。

「ケガとかしてないですか?大丈夫ですか?」とちばぎんが言うと、の子が急いでマイクを掴み、「大丈夫ですか?僕は楽しかったですけど」と笑顔で伝える。大歓声で盛り上がる。

「ありがとうございます!みんなコンビネーションいいな!コンビネーション良くて、泣いちゃった。泣いてないけどな!泣きそうになった

の子、感激のままステージでうろうろする。「またニコファーレやるんで!来週!僕らはまた別のところでも、おっきいLED使ってこういうライブやりたいですね」という声に拍手が巻き起こる。

「今日は1500円払ってもらって『なんだかんだで味しめてるな』うん、味しめてるけど。またニコファーレやるかわかんないけど、僕の前みたいな LED使ったのやります。そのときは1500円いらないだろ、みんな。お客さんに何よりありがとうって感じで。リスナーのみなさん、ありがとうございま す!」

最後は、エンディングにふさわしく『ぺんてる』
「みさこ泣くな!」という男性客の声に、「いやあ、汗が目にしみたんですよ」とみさこ。説明もなく、まきおがギターを抱えている。そして演奏が始まり、 いつもはmonoが弾くギターをスタッフ・まきおが弾く。monoはというと、終始踊っている。「ぺんてるはmono終始ダンスに徹する」という解説のよ うなコメントが流れる。踊りようのない曲だけあって、踊りのバリエーションに困っている瞬間もあり、こちらとしてはそれがまた一つの楽しみになってしまっ ていた。
しかし、これは。歌詞や感激のコメント、冷静なコメントが流れる中、轟音の中での子が呟き、360LEDに映し出されるメンバー全員の姿。
なんなんですか、これは。
そんな光景が目の前に広がり、視界を遮るものが一切ない空間。まわりにたくさん人がいても、一人になれる。神聖かまってちゃんと一対一になれるような瞬間。ライブの面白さ、楽しさ以上のものが、この日のステージには詰まっていたように思う。
衝撃的とか、放送事故だとか、リア充とか非リア充とか、いじめとかニートとか、ひきこもりとか、全然関係なく、神聖かまってちゃんはとてもかっこいいロックバンドだった。
分かっていることだけど、目の前に突きつけられた姿には、感情に従うしかない。

「ぺんてるに、ぺんてるに、ぺんてるに」とギターを弾きながら続けるの子、そのまま弾き続け、大量の「8888888」というコメントと拍手に包まれて、26才の夏休み』が始まる。

歌い続けるの子。ベースで支えるちばぎん。泣いているのか、少しばかり眉をハの字にさせているみさこ。終始うつむいて何もしないmono
それぞれの26才の姿がステージにも、映像にも、インターネット上にも映し出されていた。ありふれているのかも知れないし、当たり前なのかも知れない感情の中、の子は日記のような歌詞を歌い続けていた。
26才の夏休み、ヒゲを剃ることからまず始めてみる」

歌い終わった後、の子は低い声で「ありがとうございます」と言った。その声のトーンこそがの子の本当の姿なんじゃないかと思った。ナルトを貼り付けることも、警察とやりあうことも、頭を傷つけて流血することも、忘れてしまった。
あれは素の姿だった。彼もまた感情に従っていた。
「ありがとうございました!神聖かまってちゃんでした!」
みさこの挨拶、そしてデーーーンとドラムとベースが鳴り、締められる。
「僕はなんかあれ、みさこさんなんかと違って、泣いちゃったよ!」
の子が照れ笑いしながら言う。「今日はいいライブができました。お前らは知らないけど、僕はいいライブができました」という声。観客からの大きな歓声は、答えになっていたと思う。誰から見てもいいライブだったのではないか、と。
「俺にあとで(ニコニコ生放送)見せろよ!俺が自分で感動するから!」
台に上り、何度もお辞儀して挨拶をする。

「次の配信はいつかわかんないけど、インターネット空間で会おうぜ」
そんなセリフを残し、マイクを放り投げてステージを去るの子。もう、この日は何もかもがキマっていた。最高のステージでした。
 

ライブ後、ビデオカメラを直しに楽屋に入ると、汗だくのの子さんが爽快な笑顔で入ってきた。
「今日ほんとよかった。泣いちゃいました」
この人の笑顔を見ると本当に安心するなあ、としみじみと思い、感動に浸ってしまった。

『学校に行きたくない』で爪を内出血してしまったmonoくん。「指に一本長い毛がちょろっと生えてる」となぜか僕に見せてきたみさこさん。その指には血がついていた。ちばぎんは倒れて横になっていた。
神聖かまってちゃん、一体どこまでいくんだろう。
この日、歴史に刻み込まれる瞬間を目撃してしまいました。


2011年10月2日 六本木ニコファーレ
〈セットリスト〉
1、白いたまご
2、レッツゴー武道館っ!☆
3、Os-宇宙人
4、自分らしく
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、夕方のピアノ
7、コンクリートの向こう側へ
8、ねこラジ
9、スピード
10、いかれたNEET
11、グロい花
12、黒いたまご
13、ベイビーレイニーデイリー
14、美ちなる方へ
15、男はロマンだぜ!たけだ君っ
16、ちりとり
〈アンコール〉
1、23才の夏休み
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、学校に行きたくない
4、ぺんてる
5、26才の夏休み

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