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2010年8月8日日曜日

神聖かまってちゃん@SUMMER SONIC'10

サマーソニック2010の2日目。昨年は一般公募枠『出れんの!?サマソニ!?』に出演した神聖かまってちゃんが、遂に大きなステージへ。

数日前にの子さんから突然電話があった。なぜかmonoくんの携帯からだった。最初の10秒くらいはmonoくんだと勘違いして喋ってしまった。神聖かまってちゃんから一人サマソニに招待できるということで、「竹内さん、もし観たいバンドとかいたら」と電話してくれた。本当にありがたい。
「いやあなたたちが観たいんですよ!」
恥ずかしがりなため、そう正直には言えなかった。彼らからのありがたいバトンをすんなりと受け取った。自分でいいのか申し訳ない気持ちだったけど、思えばこの電話に昨年を思い出した。みさこさんから「の子さんが撮ってほしいみたいで」と電話があり、昨年は撮影に向かった。
あの日は一曲しか演奏できず、メンバーにとって不完全燃焼に終わってしまった。今年、その挽回となるだろうか。あの頃とは状況が違う。ワクワクが止まらないまま、千葉県の海浜幕張駅に向かった。
SIDE SHOW MARINE、その1年後はISLAND STAGE。サマソニの出演会場の変化は、この一年の彼らの大きな飛躍を表していた。キャパ4000人の大きなステージに、わずか365日で立つことができたのだ。

今回はサマソニ運営側の規制で、ニコニコ生放送での配信は出来ず。それでも楽屋ではいつも通り、配信をしていたようだ。
会場に着くと、とにかく日差しが強い。暑い。汗が出る。人が多い。すべてを敵に思えるほどの夏の熱気だ。

10時半過ぎ。
ステージは高い。セキュリティの柵に囲まれた客席最前。中央の一番前あたりに位置した。あの頃と違い、誰でも撮影できる環境ではない。ビデオカメラなんて持っていたら巨体のスタッフに連れて行かれる。佐藤さんがカメラを持ってステージ前に現れた。僕は客席でじっと彼らの登場を待っていた。
みさこさんがセッティングに現れる。夏の風物詩か、浴衣姿だ。さすがは紅一点、歓声が上がる。その後にちばぎんが登場。最近痩せたからか、凛々しくなったように思う。
monoくんも酔っ払った様子で登場。お客さんの声援に応えるが、滑舌が悪くて何を言っているのか分からない。その後、なぜか上半身裸になる。そしてキーボードで映画『菊次郎の夏』の久石譲の音楽を奏で始め、歓声が上がる。
その後、ちばぎんはmonoくんの代わりにキーボードの音をチェックし、恐らく楽屋で配信に夢中のの子さんの代わりにボーカルエフェクターも確認していた。どうしようもない子どもたちのために働く、父親のような佇まいだった。

そして11時頃。
サマーソニックの会場で大音量で流れる『夢のENDはいつも目覚まし!』。何度も聴いた登場SEだが、この会場で聴くと格別に思う。鳥肌が立つ。神聖かまってちゃんの出囃子に何千人もの観客が大きな歓声を上げ、SEのリズムに合わせて手拍子をする。
の子が一瞬ちょろっと現れて、すぐ引っ込み、みさこ、ちばぎん、monoがたくさんのライトを浴びて登場。

「どうもーこんにちわー神聖かまってちゃんですー。こんなに人いると思わなかったよー。どうもー。肝心のの子がいないなー。まったく、どうしたって言うんだよー」

monoが寝起きのようなテンションで言う。「一瞬見えた気がしたんだけどねー。すぐいなくなっちゃった」と、みさこがほのぼのと喋す出す。

mono「色々と何かやろうとしてんじゃねーの、あいつは。知らないけどー。意気込んで。こういった(まったく聞き取れない)」
みさこ「滑舌が悪すぎる…」
ちばぎん「なんすか?」
mono「は?なんだよ」
みさこ「滑舌が悪すぎて何言ってんのか分からない」
mono「ばかやろー知ったこっちゃないんだよー!」
ちばぎん「(無視)神聖かまってちゃんです、どうもこんにちわー!」

その瞬間、の子がノートパソコンを片手に猛ダッシュで登場。「楽屋までは配信OK」ということだったらしいが、なんとステージまで強行突破。の子らしい登場に、歓喜するISLAND STAGE。すぐに劔マネージャーとサマソニスタッフが止めに入り、パソコンは没収。の子は憤慨する様子を見せるも、スタッフに両手で肩を優しく押さえられてなだめられ、なぜか笑顔になる。

mono「ニコ生できなくてザマァねぇなぁ」
の子「うるせえバカヤローコノヤロー!!お前ワケわかんねーつまんねー配信しやがってよ!!」
mono「俺は今を生きてるんだよ!」
の子「俺だって今を生きてるんだよ!!黙れこの酔っ払い!!」
mono「うるせーバカヤローコノヤローチクショー!」

突然のケンカ。いつも通りの展開だ。monoがなぜか上半身裸のままなのが特別な感じがするが、特にありがたいわけではない。
「夏なんで、そんな曲をやります」
の子の紹介によって始まった曲は『23才の夏休み』。25才の夏休みの彼が歌う。23才のニート生活の頃の日記を歌う。
こんなに大きな会場で、こんなに早く聴けるとは思わなかった。「ギアをあげて今ーをー 過ごしていーまーす」だなんて。ギアがガンガンにかかりすぎていた一年間だ。サビの部分はなぜかボーカルが妙な不協和音に見舞われており、セキュリティのお兄さんも心配してステージを振り向くくらいの事態だ。それでも気に留める様子もなく演奏を続ける神聖かまってちゃん。ライブのたびに試行錯誤を繰り返してきたこの曲。完璧な演奏とは思えなかったけど夏を感じた。の子がサビの歌詞をオリジナルとは違う言葉で歌いまくるので、コーラスするちばぎんが何度も戸惑う場面が。

の子「サマーソニックで神聖かまってちゃんを観に来た人たちが大好きです僕は!」
mono「おめぇが(聞き取れない)」
の子「はぁ?お前何喋ってんのかわかんねーんだよ」

お客さんの一人が「あっちぃ!」と叫び、の子が「あっちぃのがいいんだよ!!」とアジテーションに使う。盛り上がる客席。
「60人くらいを(手のひらで)コロコロさせてやる!おっしゃ行くぞーーー!!」
の子が吠えると『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロのピアノが。
待ってましたと言わんばかりの大きな歓声に、会場に小さな地震が起きる。震源地はステージ。神聖かまってちゃん。その後、ドカドコと鳴るみさこのドラム。そしてちばぎんのベースとの子のギターが始まる。「オイ!オイ!オイ!オイ!」とリズムに従って叫ぶ観客。今までは曲のやり直し、チューニング不完全、機材不良、テンション不調で「おいおいおいおい…」なライブもあった。
「昨日の夜ー」
の子が歌いだすとき、心の中で何かが沸騰した。これは僕だけではないはずだ。目の隅っこから何かが流れた気もするが、放っておこう。そんなものに視界をぼかしたくはない。しっかりと彼らの姿を目に焼き付けたい。
ただでさえドラマチックな歌詞と曲展開の『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞には、葛藤が含まれている。
"何がいいんだか全然分からない"ものが、いつの日か、なぜだか全然鳴り止まなくなる。昨日の夜と、夕暮れ時の部活の帰り道。誰もが知ってるTSUTAYAさんが提供した、ロックンロールの入口への再入場。ワールドクラスの大御所が出演するこのサマーソニックは、の子が部屋で作曲し、制作したPVが具現化されたような会場。サマーソニックはあの映像の中に映っていたようなアーティストも出演するような会場だ。
初めてあのPVを触れたときの気持ちを、まるで昨日の夜のことのように思い出す。彼らはロックンロールの衝撃を受けた部活の帰り道を、サマソニの会場に持ってきたのだ。
「なんでだ全然鳴り止まねぇっ!!」
今はロックンロールより、神聖かまってちゃんが鳴り止まないっ。

の子の呟きが終わった後、ステージが沈黙し、観客が大歓声。
その後、静かにmonoのピアノが再開し、余韻を与えてくる。そしてちばぎんの「ありがとうございます」の声と同じタイミングでみさこのドラムだけがリズムを作り、観客が拍手でそのリズムに参加し、の子がステージ中央のパーカッション機材までカニ歩きで近づき、チョップするような手の形で音を鳴らす。ポーン!と。
「日だまりの夢見てー ふるさとの香りー」
こうして『自分らしく』がスタート。
大盛り上がりの会場で始まったこの曲の出だしは、この日のハイライトになったかも知れない。だけど、演奏中に何度もハウリングなのか分からないがキィーーン!と耳を突き刺すような異音が響き渡る。
「男らしく女らしくキィィーーーン生きてけと皆が言う でも僕はキィーーーンそんなことはできなーいキィーーーーン」
特別ゲスト・キィィーーーンかと思うくらいの目立ち様だが、メンバーは演奏を続ける。せっかくかっこよくキマった曲の出だしなのに、この事態はもったいない。だけど神聖かまってちゃんには珍しくはない光景。ある意味、自分らしく。神聖かまってちゃんらしく。
「男の子になった 女の子になった」の部分ではの子が「納豆巻きを、ねぎトロ巻きを」と替え歌を。そしてこの曲で一番盛り上がるタイミング。monoがパーカッションからキーボードに移り変わる瞬間の到来だ。曲が一気にPOPになる瞬間、持っていたスティックを客席にぶん投げるmono。上半身裸で先ほどまで変態みたいだったが、いきなりかっこよくなる。のはいいが、スティックを投げる時間のせいで肝心のキーボードに移る最初の部分が全く弾けてなくて、本当に惜しい。

「これから何を観るんだい!!」
の子が観客に問いかける。
これはちょうど一年前のSIDE SHOW MARINEと同じ質問だ。「これから何を観るんだいキミたちは!!」と繰り返すの子。こういうセリフをいちいち覚えていたのだろうか。最近になって昨年の動画を見返したのかも知れない。観客が応えていくが、の子は聞き取れずにいる。
「ジャンキー?ジャンキー観るのか?俺?俺はジャンキーじゃねえよ!俺はジャンキーじゃなくて精神薬ジャンキーだ。精神薬ジャンキーを絶ちつつある」
少し苦笑いの声が会場に響く。
「一気に一気に弾け飛ぶ。そんな躁の思いを、一気に叩きつけてやる!」

そして『学校に行きたくない』が始まる。
「計算ドリルを返してください!計算ドリルを返してください!計算ドリルを…」
途中、の子が歌うのをやめてステージから降りてくる。相撲部屋の親方のような巨体のセキュリティが制止する。の子の身体の3倍くらいはあり、物凄い迫力だ。強引にステージに放り上げられるの子は、また降りてくる。相撲部屋の親方が来る。降りる。そしてまた相撲部屋。そしてまた降りる。また相撲。
そんなの子とセキュリティとの攻防戦。
そのやり取りの一部始終に釘付けになる観客は、ステージでこっそり暴れまくっているmonoを一切見ていなかったかも知れない。かわいそうだ。いつもは「お前らがさぁ!お前らがいじめるからさぁ!!」と叫ぶ部分で、の子はこう叫んでいた。
「僕はさぁ、僕は心の中で傷を持ってんだよ。僕は心の中で傷を持ってんだよ!!!」
なぜか鳥肌が立つ。本当のことだからだろう。そして再び客席のど真ん前に降り立ち、の子の叫び声が響き渡る。
「おかあさーーーーーーーん!!!!おかあさあぁーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」
盛り上がる観客。バッシバシ鳴るドラムとベース。疲れて果てている上半身裸のmono。
そしての子が会場を煽情する。
「ピーポー、ピーポー、宗教じゃねえんだよピーポー、計算ドリルをピーポー、ここでサマーソニックでピーポー、ここで、発散させればいいと僕は思っています!!」
圧巻のステージだった。間違いなく、その存在を叩きつけていた。

の子「皆さん、これから出るバンドは強者ばかり出ると思いますけど、これからもサカナクションとか、えー、サカナクションとか、お魚とかいっぱい、出る…」
ちばぎん「何言ってんだかわかんねーよ」
このタイミングでこの日初めてのちばぎんMC参加。
mono「何言ってんのかわかんねーよ!」
の子「お魚とかが…」
mono「お魚さんが出るんですか!さかなさかなさかなー、さかなーを食べるとー♪」
の子「(無視)俺にはこんなもの、咬ませ犬にしか過ぎない。みんなのテンションをただ単に上げるために来た。だから、いちにのさんで…」
観客に一斉に声を出すように促すの子。

「サマー、ソルトキーーーーーーック!!!!」

失笑まじりの笑いが客席から。いつものことである。

mono「おめー1人だけで盛り上がってるだけじゃねーかこのやろー!」
ちばぎん「(無視)それでは最後の曲です神聖かまってちゃんでした!」
かわいそうなことに、monoへの無視は容赦なく続いていた。
mono「みさこー、おめーせっかく浴衣着てんだからちょっとくらい披露しろ!」
みさこ「何?何言ってんだかわかんない」
mono「浴衣姿披露しろよ!」

大歓声に応えるかのように、ドラムセットから離れ、ステージ前方で浴衣を披露するみさこ。なぜかセキュリティの男性陣もこっそりステージを振り向いていた。monoがスカートめくりのようにみさこの浴衣をペラッとめくり、みさこがドラムスティックでmonoを叩き、monoの乳首を突くといった反撃を。

mono「じゃあ最後の曲は『夕方のピアノ』かー」
の子「『ちりとり』」
みさこ「『ちりとり』?」
ちばぎん「え?『夕方のピアノ』?『ちりとり』?どっち?」
観客「ぺんてるー!」
の子「ぺんてるーぺんてるー」
mono「これどうする?アンケ取る?」
の子「どうするどうするって、他人任せかお前は!『ちりとり』やる!」

ちばぎんが「ありがとうございました。今日1日楽しんでください!」と律儀に挨拶をし、『ちりとり』がスタート。
の子はいつも以上に丁寧に歌っているように思った。monoはいつも通りに自分の演奏のないところでは踊り、ちばぎんとみさこのリズム隊のブレイクしてまたジャーーン!と始まる所の動きがいつも以上にキマっていた。
「放課後僕とキミ 掃除当番同士少し喋りました 優しくしようとして"先、帰っていいよ"…バカヤローが。僕はもっと優しくしていたら、良かったのかなぁ」
の子は途中、歌詞を変えていた。
小学生の頃の、まだ恋という感情であることなのか判然としない頃の、ワケのわからない気持ちが蘇る。
「何なんですかこれはーー!!!」
"好き"やら"愛"やら"恋"という言葉を一切使わない、神聖かまってちゃん唯一のラブソングだ。誰もが経験したであろう、小学生時代の掃除当番。誰もが使ったことのあるちりとり。昼下がりか、夕暮れ時間の空気感を思い出す。の子の歌が人々に共通する記憶を探り出す。そして、たくさんの心をちりとっていく。

「掃除当番あなたとやれて良かったと思います。このサマーソニックであなたに会えて良かったと思います。あなた、あなた、あなたあなたあなた、あなたあなた!僕はみんなに…僕はあなたのことをちりとりたいのです。僕はちりとりたいのです。ちりとりたいのです」

このとき、多くの人が"好き"やら"愛"やら"恋"という言葉を一切使わない、ワケのわからない感情を神聖かまってちゃんに抱いてしまったのではないだろうか。
なんなんですか、これは。あなたたちに言いたいよ。
夏の声が1階から3階へジャンプするように、僕の心の声も、客席からステージにジャンプしたように思った。いや、ダイブくらいはしたのかな。
「邪魔だバカヤロー!散れ!」
ステージの前でカメラを構えているカメラマンたちに怒鳴るの子。

の子「このあとも、スティービー・ワンダーとか観て帰ってください。僕は観ないで帰る。mono君!ここでスティービー・ワンダーを歌ったらどうだい!?」
mono「ファイヤー、ファイヤ~」
の子、ステージを去る。
mono「…うぉい!!」

計5曲の演奏、計4度のmono無視の、神聖かまってちゃんのステージが終わった。

この日のライブが完璧なものだったかどうかは分からない。けれど、一年前の記憶と照らし合わせてしまった個人的な思いは無視することはできず、しかしそれが神聖かまってちゃんの活動の歴史を表すことになればと思い、このレポートにも思いを綴りました。
何よりも、こんな見事なステージを見せてくれてありがたかった。僕は神聖かまってちゃんというバンドに本当に感謝している。

サマーソニックに出演することは、バンドにとって一つの到達点だろう。しかし、彼らはもっと先を行く。そんな予感がした。この日のステージでのメンバーを見る限り、いつも通りな雰囲気で、ここがゴールだとは一切思っていないようだった。
神聖かまってちゃんにはゴールというものがないのだろう。の子という執念に満ちた野心家がいる限り。

2010年8月8日 サマーソニック2010 ISLAND STAGE
〈セットリスト〉
1、23才の夏休み
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、自分らしく
4、学校に行きたくない
5、ちりとり

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