オシャレスポット・代官山でのK's JAPANプレゼンツのギター破壊イベント。対バンは、怒髪天、JAPAN-狂撃-SPECIAL、Limited Express(has gone?)。
「昨年のリキッドルームのDVテープを博報堂が貸してほしいようなんで」と劒マネージャーから電話があり、K's JAPANのサイトにもの子さんがギターを破壊する映像が掲載された。あのときのギターはの子さんがずっと愛用していたギターだけど、今回は"破壊用ギター"というものをK's JAPANが制作したらしく、そのお披露目イベントだった。
ライブハウスに入るとき、ラーメンを食べ終えたばかりの神聖かまってちゃんメンバーと偶然出くわす。の子さん以外。みさこさんは「開場時間まで私とランデブーしますか?」と、ちょうど入場しようと受付にいる僕に言ってきた。ちばぎんがこの日のイベントについて教えてくれた。
「金網が2メートルくらいあって、しかもビニールみたいなのがその上に張られてあって、客席が見えないんですよ。スタジオで練習してるみたいでした。なんで、今日あんまり動いたりしないです」
2メートル?
前情報では、1メートルくらいだと聞いていたけど、2メートルって一体。メンバー全員すっぽり金網に隠されるということか。"ギターの破片が飛んでこないように"ということらしいが、2メートルだなんて逆に安全すぎる。
ライブハウスに入ると、それはもうステージには巨大な金網が張られてあり、ステージと客席とが完全に隔てられていた。
イベント開始前にプレイベントが行われ、司会者が新商品"破壊用ギター"をプレゼンするような形で進行。フジテレビや日本テレビなど、多くのマスコミ関係のカメラが来ている。竹内カメラは来ていない。この日、イベントの都合で撮影が禁じられていた。新宿LOFTといい、最近はそういったことが増えてきた。なので、必死に目に焼き付けるしかなかった。
イルリメや、芸人の安田大サーカスといった名前の知れた方々がプレイベントを盛り上げ、怒髪天のメンバーがギターの破壊方法を伝授。
ここまで、神聖かまってちゃんが出る予感が一切感じられない。ほんとにこのイベントに出るんですか?と首を傾げたくなるくらい、場違いな雰囲気に思えた。いや、そもそも場違いではない場なんて今まであったのだろうか。
ちばぎんが「ほら、まちゃまちゃさん。インタビューされたんですよさっき」と教えてくれる。芸人のまちゃまちゃがMTVの番組で取材で来ており、神聖かまってちゃんも取材を受けたようだ。
プレイベントが終了し、本イベントの開始。第1発目の出演者は神聖かまってちゃん。
いつもの登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、2メートルの金網の中でメンバーが入場してくる。これはやばい。まるで動物園の檻のようだ。特にmonoくんは完全に酔っ払っており、動きがもはや完全に動物、金網には"糞を投げてくる恐れがあります"と書いていてもおかしくはない。言い過ぎた。しかし、動物園だ。1月に彼らが出演したイベント名"動物園"をそっくりここに持ってきても良いくらいだ。
の子、第一声が観客に向かって「帰れ!!」だった。
いくら状況がいつもと違っても、変わらない彼らの姿がそこにある。むしろ不思議な状況を楽しんでいた。「向こう側がまったく見えねえ!」と、の子は状況のおかしさを笑っている。監視カメラで見ているかのような感覚にもなった。しかし客席が照らされたとき、「あっ、見えるようになった」とmonoが喜ぶ。そして手を振る。
の子は何度も「早く帰りたい」と言う。それに対し、一人のお客さんが「だったら帰れ!」とかなりロックな野次を飛ばす。の子、どう返す?とドキドキしていたら、「じゃあ俺と一緒に帰りましょう!」と突然のお持ち帰り発言。なぜかフゥーー!といった歓声が上がる。この日のの子は、何か良いことがあったのかな?と思ってしまうほど上機嫌だった。
その割には「昨日、1人で酒飲んで泣いてたんだよ」とも言う。まったくもって掴めない人だ。
1曲目から『いかれたNeet』は珍しい。最後に演奏することが多いというのに。
の子はまるで中学生の夏服のような白シャツを着ており、「ニィィーーートォーーー!!」と喉が張り裂けそうなほど叫んでいる。monoの酔っ払い度数はライブアクトに比例する。彼の動きが大きければ大きいほど、彼は酔っているということだ。
その次は『ロックンロールは鳴り止まないっ』。ビデオカメラで撮影することに慣れているせいか、最初のピアノからmono→ドラムが始まるとみさこ→ベースが始まればちばぎん→みさこ・mono→「昨日の夜」と歌い出すとの子という順に観てしまう。やっぱり、撮影しないで体験する神聖かまってちゃんのライブは新鮮に思う。
『夕方のピアノ』はいつも以上にメンバーが激しい動きをしているのが、金網越しでも分かる。メンバー全員、いつの日か、誰かに対して"死ね"という感情を抱いたことがあるのかも知れない。ちばぎんが特にそう思う。ちばぎん、「あんまり動かないです」と言っていたことがまるで嘘のように動いている。
昨年12月のリキッドルームでのライブでは、この曲での子が突然ギターを床に叩きつけて破壊した。誰もが驚いた瞬間だった。それは当然、予定調和ではなく感情の赴くままに取った行動という意味でロックに思えた。しかし今回、"ギターを破壊します"という大前提のイベントなのである。観客の"いつ、どのようにして壊すのか"という期待のハードルを持ってしまっている。そのハードルをどう抜けるのか。上に飛び込むか。下にくぐり抜けるか、まるで大喜利のような緊張感がある。
客層は当然、神聖かまってちゃんファンだけではない。
"JAPAN-狂撃-SPECIAL"と背中にプリントされた革ジャンを着ている、いかついニイちゃんもいるのである。このニイちゃんにも「の子、ロックだぜ!」と思わせることが求められているのだ。ちなみにこのニイちゃんにはイベントが始まる前にバーカウンターで足を踏まれた。「すいません!」とすぐに謝ってきた。めちゃくちゃいい人でした。
そして、ついにギターが破壊される。それは意外にも、ギターを一切使わない『黒いたまご』の演奏中だった。
曲の最後、ドラムが鳴り止み、男性メンバーだけが演奏しているときにみさこがドラムセットからひょこひょこと飛び出してきて、目にゴーグルを装着する。そして手には破壊用ギターを装備。ネックの部分を持ち、ギターを床に叩きつける。
ガシャーン。ガシャーーーン。ガシャーーーーン。ガシャーーーーーーン。
ところがギターは壊れない。先程のプレイベントの安田大サーカスのときも、巨体のメンバーが床に叩きつけてもなかなか壊れなかった。みさこであれば余計に壊れない。何度か叩きつけ、ようやくボディの部分が欠けた。
さすがにリキッドルームのときような衝撃もなく、驚きもない。それはやはり、誰もが壊すことを知っているからだ。
ある程度壊れた後は、の子にギターをバトンタッチ。昨年同様、床にギターを叩きつける。が、他の機材まで被害が及びそうな危険な動きをしていたため、劒マネージャーが急いで止めに入る。
予定調和な展開はとても"ロック"と形容できるようなものではないけど、強いて言えば、ギターを床に叩きつけてからゴーグルを装着したの子は結構"ロック"なのかも知れない。意味がない。
「あれ?俺が壊すって話じゃなかったっけ…?」
monoが戸惑う。どうやら予定調和ではなかったようだ。やっぱり神聖かまってちゃんはロックだ!(なんか違う)
最後は『ちりとり』。の子はギターを破壊した後、装着したゴーグルを金網の上にポーンと投げ、客席に飛び込んでくる。
この日の演奏は素晴らしかった。
過激なことも、衝動的なことも一切無い。ギター破壊イベントであるのに、普通にかっこいいライブをする彼ら。自覚はないと思うけど、こういうひねったところがまたたまらない。
神聖かまってちゃんのライブ後は、かまってちゃんのライブには必要不可欠な僕にとっての癒し系男子・森くんと「今日のは良かったね」と感想を言い合う。劒マネージャーはニヤニヤしながら会場を歩いており、「今日は最高でした」と独り言を呟きながらうろうろしていた。
JAPAN-狂撃-SPECIALのライブを初めて観た。
関西弁全開。「アホボケカス」が口癖のロックンロール。JAPAN-狂撃-SPECIAL目当てのお客さんが暴れまくり、よく神聖かまってちゃんの空気に耐えられたなあ…と思った。神聖かまってちゃんの客席はいつも大人しいため、この空気の違いには妙なギャップを感じた。だからこそ、JAPAN-狂撃-SPECIALのライブが余計に熱く感じた。
「今日はなんか、ギターを破壊しないといけないみたいで。お小遣いもらえるみたいやから、しゃーないから壊したるわ」
ボーカルが言い、ギターが破壊用ギターを手にして、破壊。このライブの勢いでいくとそのまま床に叩きつけるのがベタだけど、違った。なんとペンチみたいなものでギターの弦を1本1本切っていった。これはギャップ。惚れた。このバランス感覚。やっぱりギター破壊はある意味、大喜利なのかも知れない。
その後はちばぎんとみさこさんに、いつも通り思う存分身体を触られまくる。monoくんは楽しそうに女の子と一緒にどこかに姿を消してしまう。神聖かまってちゃんファンの方々と談笑する。物販コーナーのあたりで、見知らぬ方がちばぎんやみさこさんと楽しそうに会話している。人気マンガ『モテキ』の作者・久保ミツロウさんだそうな。神聖かまってちゃんの大ファンだという。
ソファに座りながら森くんと話していると、階段を降りてきたの子さんと目が合う。ニコニコしながら近付いてきて、「ようやく知ってる顔が…」と安心したように話しかけてきた。
どうやら初対面のファンの方や業界の方と挨拶などをしていると疲れてしまったようで、森くんと僕の姿を見てホッとしたらしい。小動物のようにビクビクしており、ソファと壁との間に埋める身体。こんな小さな身体から、あれほどのエネルギーが発散されているとは。
しばらく世間話をしていると女の子ファンから「あっ、の子さんだ!」と見つかり、話しかけられるの子さん。今や大スターだ。次々と話しかけられていく。音楽雑誌に限らず、『サイゾー』や『KERA』などにも掲載される彼。もはやこの状況は当たり前なのだ。
演奏する曲の話になり、「俺、自分ではどの曲をライブで演ったらいいのかわかんないんすよ」と言っていた。『いくつになったら』と『男はロマンだぜ!たけだくんっ』を推した。「竹内さんとそういう話あんましたことないっすよね。そういうの、言ってください」と言われたので、言っていきたい。この2曲はやっぱり聴きたい。本当は『りぼん』も『あるてぃめっとレイザー!』も『トンネル』も演ってほしい。というか全部やってほしい。『帰りは雨』も一度ライブで再現してほしい。難しいのだろうか。結局、の子さんの宅録音源をすべてバンドで聴いてみたいわけなのです。
怒髪天のライブが終わったのか、お客さんがたくさん上の階に雪崩れてくる。の子さんは危険を察知したのか、別の場所に消えていった。
この日、女優の坂井真紀さんもライブを観に来ていたという。神聖かまってちゃんが大好きらしい。坂井さんのブログにもこのような記述が。
http://sakaimaki.jp/blog/2420
神聖かまってちゃん、一体どこまで行くんだろうか。ますます飛び火していく彼らのストーリーに、目が離せない。
最後に、竹内が描いたmonoくんのイラストを公開します。
2010年2月23日 代官山UNIT
〈セットリスト〉
1、いかれたNeet
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、夕方のピアノ
4、黒いたまご
5、ちりとり
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