氣志團のツーマンライブイベント『ツッパリHigh School Rock'n'Roll(不登校編)』に神聖かまってちゃんが出演。
神聖かまってちゃんは一見、氣志團とは似ても似つかぬ印象を受けるが、ツッパリという意味では近いかも知れない。現代のツッパリは家の中でパソコンをいじっている。80'sのバイクにまたがってブォンブォン鳴らしているのとは違い、パソコンのファンをヴォンヴォン鳴らしている。そのため、キレたらヤンキーよりも恐いことが古泉智浩先生によるイベントTシャツに表れている。
イベント自体はイラストのような狂気性はなく、むしろヤンキーがネットヤンキーを優しく撫でているようなものになった。
撮影のためリキッドルームに向かうと、そこには三つ編み姿のの子さんがいた。「僕はオナ禁の成果で、女の子になりました」と言った。表情が微動だにしなかったので、今日は少しダウンな気分なんだと思った。でもその落ち着き加減が、妙におしとやかな女の子像を形成している。氣志團がリーゼントならば、神聖かまってちゃんは三つ編み。80'sのヤンキーに守ってもらえそうな昔なつかし乙女のの子さんだったが、結果的にそのようなイベントになっていたように思う。
この日も神聖かまってちゃんはばっちり配信をし、なぜか『エクソシスト』のTシャツを着ている劒マネージャーがそのカメラマン役。そのため、の子さんが危険なことをしたら機材の直しに素早く入るのが、スタッフの成田くん。dry as dustのベーシストであり、パーフェクトミュージックのスタッフ。MC中も成田くんの笑い声が隣から聞こえ、癒される。神聖かまってちゃんのスタッフはライブ中あまり大声で笑うことがないから、楽しみながら仕事しているように受け取れる成田くんの存在にホッとする。そして毎回「ま○こ」で終わるエロしりとりもなぜか飽きない。
同じくスタッフのまきおくんはちばぎん側のステージ脇にスタンバイ。この日も配信で掛け算の九九ができるかどうか、試されていた。最近ビゲンで髪の毛を染めたとエピソードがツボ。神聖かまってちゃんは周囲のスタッフも個性豊かで、配信を通じてそのキャラクターが伝わり、どんどん愛されていく。これも配信がなければ、ありえなかったことなのかも知れない。
立派な垂れ幕をバックに、ライブ開始。氣志團側の寸劇の後、まずは神聖かまってちゃんの登場。
テンションがそれほど高くないながらも、の子はなぜかちばぎんのマイクまで歩いていって「俺が、ちばぎんだ」と宣言。「また後で来るぜ、の子って奴が」と言うと、monoが急いでの子のマイクで「の子、の子です」と応対。氣志團目当てで来たお客さんの1人くらいはだませたのだろうか。
三つ編み姿初披露となったライブということで、「かわいいー」という女の子の声援が。それでもいつも通り、ノートパソコンを片手にコメントを読んでいる。「早くライブやれ、うんそうだね。このまま40分経っちゃうからね。久しぶりだね、こうやってパソコン持ってライブするの。ではみなさん、最近NASAもなんか頑張っているらしいので、宇宙まで、なんか飛んでいってください」と割と低いテンションでアジテーション。
「の子ー!」という声援に、「俺はの子だよ、何度も言うなよ」と答える。「そんな感じで神聖かまってちゃんです!よろしくお願いしますー」とちばぎんが合図を出して、でーーーーん!!!とリズム隊が音を鳴らす。
mono「1曲目、行きたかったけど、行きたいなあってことで…」
の子「どこに?武道館なんて狭いよ。NASAが最近頑張ってるらしいんで、宇宙でライブするんじゃないの」
mono「ギター浮くんじゃねえか?」
の子「ふぁーー。いいねそれも。やりたいね」
なぜか最近NASAがブームなのかの子はmonoとゆったりとMCを続け、進行を促すかのようにちばぎんが『レッツゴー武道館っ!☆』のベースを弾き始める。
劒マネージャーがドラム付近に配信中のパソコンを近づけると、激しくドラムを叩いているみさこが笑顔で応える。観るたびにますます「走る!」「やーねー!」のコーラスがばっちりキマっていく。
の子「僕はね、けど分かってるんですよちゃんと」
お客さん「何をー?」
の子「"何を"って、聞くな。こう言っておけばちょっと知的に見えるだろ。僕はちょっと分かってるんですよ、マヤ文明のことが。そう突っ込むな」
三つ編みにしたことが話題に。見えてないから三つ編みを前にやったほうがいい、とmonoに提案されて三つ編みを見える位置に直すの子。なんだこのライブの光景は。
「今って夏休みなんですか?」との子が尋ねると、客席から「28才の夏休み!」という声。「俺だって26才の夏休みなんだよ。毎回ヒマなんだよ。曲作るかー、コンビニ行ってー、家帰ってー、んでもって2ちゃんのニュー速見てー、なんかまあほんと、それだけなんだよな」との子が言うと、「俺もほんとそうなんだよな」とmono。どうやら同棲を始めて、洗濯三昧だとか。主夫!
「よし次いこうか!」とちばぎんが進行させるが、「もうちょっと語ろうよ。だってあと1時間40分あるんでしょ?」との子が余裕をかます。「ないないない」とmonoがつっこみ、『美ちなる方へ』の演奏に。「じゃみなさんもなんかー」と言いかけたときにみさこがドラムを始めるというかみ合わなさもありつつ、そのままの子が従ってちゃんとギターを弾き始めたのに妙な安心が。
「この中で、氣志團ファンと、神聖かまってちゃんファン、手をあげて!」
恐らくそれぞれ別々にアンケートの意味で手を挙げてもらおうと思ったようだけど、「どっちが手を挙げればいいの?」とちばぎんにつっこまれる。戸惑いながらもちゃんと手を挙げてくれている観客もちらほら。
その後、別々でアンケートをするとどちらも同じくらいの人数ということが分かり、「いい感じ!」と三つ編みをいじりながら答えるの子。
「じゃあ3曲目は新しい曲を…」とmonoが曲紹介するが、「新しくねーよ!」と遮る。「とりあえずチューニングしているから待てよ!」との子。「新しいアルバムに入る曲を…」とちばぎんが言葉を添え、monoの最近の生活(洗濯・松屋・コンビニ)を紹介しつつ、この日が初披露となる『グロい花』の演奏へ。
「精神薬」「刃物ふりかざして」「みんな殺してやる」などといったインパクトのある歌詞が含まれており、「美しくなれたらいいな」というサビとのコントラストがくっきり。終盤の天使の囁き声ような音が何重にも聞こえる部分が、の子の描く世界観のひとつである“ホーリー”を醸し出している。どうしようもない自分自身と世界に贈る、切ない曲だった。
「まあさっきリハで練習したんですけど、そんなこと、言うんじゃなかった。かっこ悪いから。止めろよ」と無愛想に語りつつも、「まあ、久しぶりに新しい曲をやったって感じです」と若干の達成感があるようだった。
原曲の『ののの物語』を「あの曲は名曲だと思ってる」とmono。「そんなことここで言うんじゃねーよ。俺ん家に来て言えよ」との子が返すと笑いが起こる。
相変わらずmonoに対して「何言ってんのー?」というお客さんの野次。「滑舌なおせよ」との子が言うが、「歯を入れたら余計に滑舌悪くなるって知ってるでしょ?」とmono。「知らねえよ」との子が一蹴。
「リーダー、次の曲は何ですか?」とちばぎんが尋ねると、monoが「予定通りでいくと、の子はギターを置いてくれ」とギターなしの曲が始まる予感を醸し出す。客席からも歓声が上がり、の子も律儀にギターを置くが、「あ、ごめん!置かない置かない!」と思いっきり曲を間違えていたようで、の子がmonoに歩み寄って頭を叩く。
「今のは(力が)3分の1だからな!本気だったら地面にめり込んでいる」
の子がつっこみ、monoが平謝り。
ということで思いっきりギターが必要な『天使じゃ地上じゃちっそく死』が始まる。冒頭のの子のギターもばっちりキマり、「死にたいなー」に突入する前のみさこのドラムが気持ちいい。ちばぎんのコーラスとmonoのキーボードでスケールが壮大になっていく後半の展開は、この日一番の鬼気迫るものになっていたように思う。
「みさこー!」「みさこかわいいー!」「マイミクありがとうー!」といった声援に応えるようにみさこが立って手を振りつつ、ちばぎんがベースをさりげなく弾き始め、の子がギターを置く。
キーボードのマイクで喋り始め、「おう、俺はヒップホッパー。フルヤにも負けないヒップホッパー」といつもの調子でアジテーションしている間にmonoが後ろから優しくの子の頭にヘッドマイクを装着する。
「リリックが、俺の食物だ。俺のこの手を見ろ、俺のこの5本の指を見ろ、俺のこの5本の指を見て、お前らはたちまち…」
こうして始まる『黒いたまご』。たちまちどうなるんだろうかという不安は置いておいて、「どうしようもないだろうね」の高音がとてつもなく不気味で、だけど悲しくて切ない。いつものように『夜空の虫とどこまでも』から続かない分、キーボードを操作するの子の姿が映えていた。
「いやいや、朝食べたコーンフレークが出てきそうだったよ…」との子。ヘッドマイクを外そうとするmonoに、「なんかmono君、手つきがやらしい…」とみさこが腐女子全開。
「次の曲がまったく決まっていないという」とちばぎん。「『バイトなんかでへこたれないぞ』!」という客席からの声に、「バイトなんかでー!」と歌い始め、みさこがドラムを始める。「お前、だからやめろよ!ここから先、誰も知らないんだからさ」との子が自ら止める。
その後は珍しく『芋虫さん』。イントロが始まるが、の子の準備がまだだったのか「はえーよバカ死ねよ!」という声が響いた中でのスタートで「死にたいな」という始まり。終わり方、シンセの音が寂しく鳴り残ったように聞こえていたのが印象的だった。
「の子かわいいー」という声援に対し、の子が真顔。「もっと別のボキャブラリーで。もっと配信であるようなボキャブラリーで」と注文。
「今日のファッションのポイントは?」という質問に、「でも今日が初めてなんですよ。だからこそ僕は今日気合いが入ってるんですよ。とりあえずこれからどうするのか分かんないんですけど、明日解散するか!」と会場の誰もが予想しなかった話の展開に。
次にやる曲もまったく決まっていない状態ということで、客席からリクエストが続々と。一瞬、無言になったときに「僕はこの無言の空気というのが好きなんですよ。言ってしまえば友達同士というものは、無言の中で生まれますから」と発言。「無言になっても一緒にいられるって関係だよね」とmono。「だからこのまま30分一緒にいられたら、大親友」ということで、『いかれたNEET』へ。
ちばぎんが静かにベースを弾き始め、なぜか不穏な空気で曲に入る。毎度のことながら、最後、の子がギターを振り回す場面では周囲のスタッフのざわめきがハンパなく、そのときにカメラマンの佐藤さんがすかさずベストショットを撮影しようとの子付近に歩み寄る勇気もハンパない。後ろからその光景を撮るのが好きなのです。
「あと2曲だそうです」というちばぎんに対し、「えーーーっ!?」という悲鳴が。
「今日、楽屋に氣志團さんのセットリストが貼ってあって、曲が何分何秒で何の曲をやるかっていうのがビッシリと書かれていたけど、かまってちゃんのところは真っ白っていう」
ちばぎんが氣志團と神聖かまってちゃんとの違いを告げる。
予定調和を拒む、というロックの現場ではかっこいいと捉えられる行為があるが、神聖かまってちゃんはそれを通り越しすぎて、しかもちょっとは予定していてほしいと願うことばかりで、このへんの微妙にうまくいってない感じが見ていてハラハラする。ライブの常識を覆している。でも「常識を覆している」と言葉にするとなぜかかっこいい。間違えてはいないし。
若く見えるか若く見えないかという話をMCで続けるの子とmonoに、ちばぎんが「そんなにその話興味ないんだけど」と進行を促す。の子が若く見えるということで「羨ましい」と言ったmonoに対し、「じゃあダイブしてみろよ」との子。「こういう、何もないときにダイブしたらいいのに。“何が起こった?アゴ”ということになるんで」と続ける。
「あと5曲くらいやりますので」との子がムチャなことを言うが、ちばぎんもちょっとめんどくさそうに反応しない。そして『あるてぃめっとレイザー!』は演奏中にの子がギターを抱えながらダイブ。演奏後、「ギターが(お客さんに)当たったんじゃないかって、大丈夫だったかな…」と心配する一面も。
「10分ほどチューニングします」とまたもや会場をどよめかせつつ、ペットボトルの水を飲むちばぎんに対して「欲しいー!」と女の子のお客さんが叫ぶ。苦笑いでペットボトルを投げると歓声が上がり、「僕が恥ずかしいんでやめてください」とちばぎん。みさこが「みんな、どこまで欲しいの?尿は?」とハードルを上げる。「最後の曲の前に尿の話をするの?」とちばぎんが戸惑い、「じゃあ、あと2曲やりましょう」とムチャを言う。
「千曲やって!」と同じくムチャなことを言うお客さんに対し、「はい。じゃああなた千曲やってください」との子。「やる」と返したことで、「本当にやってくださいね、うん、千曲。ここに来てください。はい。やってください。千曲やるんでしょ?」との子が執拗に迫り、ちばぎんが「どうするんだよこの空気!」となだめる。「だって、千曲やるって言ってんだもん」と続けるの子に、ちばぎんが「じゃあとりあえず1曲やって、それから千曲やろっか!」とナイス進行。
「『通学LOW』やったみたいな…」との子がぼそっと呟き、「じゃあとりあえず『通学LOW』やろっか!」とちばぎん。ということで、千曲の前の『通学LOW』へ。
ボーカルエフェクターで宇宙人のようにも子どものようにも、女のようにも聴こえるの子の声。「真っ黒な、顔をして、笑っている」が不気味に響き渡り、緑、青、赤色に輝くライトがカラフルにも関わらずアンダーグラウンド感を一気に演出。神聖かまってちゃんのアングラ感が『通学LOW』に集中。の子の三つ編みが女の怨念を演出。ジャパニーズホラー映画に出てくる亡霊の女にも見えてしまう。monoは相変わらず踊ってばかりいる。
演奏が終わり、千曲をやらずにメンバーが退場していく。の子だけ残り、「それでは『ちりとり』という曲を…」と言いかけるが劒マネージャーが制止し、無理矢理の子の身体を持ち上げて機材のように運ぼうとする。それをすり抜けて、ステージ前方に歩いていくの子。
「はい、それではイギーポップさんがフジロックでやったように…」とステージにお客さんを上がらせようと試みるが、賛同者なし。再び劒マネージャーとまきおさんがの子を取り囲み、ステージ脇に誘導。「待て!俺は瞬間瞬間を!」と配信中のノートパソコンを持ちながら叫び、消えていく。
氣志團のイベントとはいえ、やりたい放題な神聖かまってちゃんのステージを十二分に発揮。とことんまで自由だった。
神聖かまってちゃんの次は、氣志團。
ボーカルの綾小路翔が「俺らはネタでやっていたけど、の子くんはマジだもん!」と、以前『紅白歌合戦』に出演したときにステージからなかなか去ろうとしないことをネタでやっていた氣志團。神聖かまってちゃんが『紅白』に出るすれば、一体どうなってしまうんだろう。
『ワンナイトカーニバル』の合唱をお客さん全員に促すとき、「みんなで歌わないと、みんなの大好きなみさこちゃんの、郵便ポストの中に、弱ったハトを、2羽入れちゃうぞ」と脅迫。「ちばぎんくんは優しいからハトをなんとかしてくれそうだけど、の子くんはすぐパタンと閉めそう」と神聖かまってちゃんのメンバーの印象を伝える。あれ?monoは…?
最後の最後は神聖かまってちゃんのメンバーもステージに招きいれ、氣志團が演奏する『23才の夏休み』を神聖かまってちゃんのメンバーと一緒に歌う。
が、みさこ、ちばぎん、monoの3人しかステージに現れない。綾小路翔が「みんな、信じよう!」と苦し紛れにの子の到来を夢見る。andymoriとの対バンのアンコールで一緒に歌う
ときも一切現れることがなかったの子。今回も現れないだろう。と、物凄くキーの低い『23才の夏休み』をメンバーそれぞれが分担して歌っている中、突然、姿なき声が。
途端に「の子ーー!」という歓声が上がる。氣志團、神聖かまってちゃんのメンバーも「えっ!」といった様子でステージ脇に視線を送る。そしての子の登場を促すと、「ふざけんなこのやろー!俺はこういうの嫌なんだよ!」と、姿なき声はそう叫んで去っていった様子。
それでも、ステージ脇まで歩いてきたと思うと、かなり珍しいという印象。
みさこ「ありがとうございました!」
mono「ありがとうございました!」
ちばぎん「の子が来なくてすいませんでした!」
メンバーそれぞれが挨拶。これにて、イベントは終了。
きゃりーぱみゅぱみゅさんや、大槻ケンヂさんが来たり、神聖かまってちゃんの楽屋は豪華だった。僕が荷物をまとめていると、の子さんに「じゃあ、5000円置いてけ」とカツアゲされた。最近はカツアゲがマイブームなのか、その後の打ち上げでも綾小路翔さんに「1万円くれ」とカツアゲをしていた。そもそも、神聖かまってちゃんが打ち上げに参加すること自体、気持ち悪いくらいに珍しい。
食事を取りに行くとき、の子さんと一緒になった。「あいつら、何者なんですかね?」とメンバーでもスタッフでもない打ち上げに参加している女性にイラッとしていた。
金属バットで殴ることもなく、平和に打ち上げも行なわれるというイベントになった。三つ編みはこの日から定着されていくのだろうか。
2011年7月27日 恵比寿LIQUID ROOM
〈セットリスト〉
1、レッツゴー武道館っ!☆
2、美ちなる方へ
3、グロい花
4、天使じゃ地上じゃちっそく死
5、黒いたまご
6、芋虫さん
7、いかれたNEET
8、あるてぃめっとレイザー!
9、通学LOW
([氣志團]アンコール)
23才の夏休み(w/氣志團)
ライブ配信
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