神聖かまってちゃんのフリーライブツアー、渋谷クラブクアトロ編。
両国国技館のライブが地震の影響で無くなってしまい、急遽フリーライブツアーが決定。今月18日の大阪・心斎橋クラブクアトロから始まったツアー。神聖かまってちゃんにとって初めてのまともな全国ツアーになるので、の子さんの気合いが伺えた。それは3月にアップロードされた新曲『僕は頑張るよっ』にも表れていると思う。
この日から1年ぶりに自主的な撮影を再開した。
一度やめたことにより、葛藤はたくさんあった。しかし、撮影をしていたことによって昨年から『極私的神聖かまってちゃん』『劇場版神聖かまってちゃん』などの作品に関わり、の子さんの家に行ったときに『GiGS』で機材として紹介されたり、そういった経験が「また撮影してもいいんじゃないか」という気持ちにさせてくれた。
また、震災が起きたことも影響しているかも知れない。『僕は頑張るよっ』がなぜ心の琴線に触れるのかと思えば、誰にでも共通する生と死が歌われているからだ。人間はいつか必ず死ぬ。それじゃあ、少しでもやりたいと思ったことをやるべきではないか。自分にしかできないことだってある。その一つが、僕にとっては神聖かまってちゃんの撮影だった。
メジャーバンドだけあって、アップロードはできない。それだと撮影する意味が無いと思っていたけど、撮影したことでそれを文章に起こしたり、伝えることができるのではないだろうか。
「また撮りたいときに撮りに来てくださいよ。ひょっこり、ひょうたん島で」
昨年4月の下北沢屋根裏で帰り際にの子さんが言ったことを覚えている。彼の言う通り、ひょっこり、ひょうたん島って感じで行った。誰になんと言われようが、撮りたいときに撮りに来た。
渋谷のクラブクアトロに着き、楽屋に入るとホワイトボードに当日の予定が書かれていた。「18時30分…前説(TRG)」とあり、劒さんにTRGとは何かと尋ねたところ「つるぎ」と答えられた。膝をポンと叩いた。
の子さんに会うのは今年初めてだった。
「お久しぶりです!なんか竹内さんイタリアンマフィアみたいじゃなくなりましたね!」
元気いっぱいに挨拶をしてくれたが、なんなんだそれは。そして彼はなぜか顔面を泥パックしていた。大物女優の楽屋に来てしまったのかと思い、妙に緊張した。
「しばらく会わない間、色々ありましたよ」
彼の言う"色々"は、本当に色々なんだろう。その一つであろう、先日の心斎橋クラブクアトロでのライブ後、神聖かまってちゃんにとって初めてではないかと思われるほど珍しい打ち上げの場が設けられた。そこでの子さんがメンバーにキレて飲み屋を出ていったのは、の子さんがその日の深夜に『子供ノノ聖域』で更新したブログを読んで知っていた。ブログ『みっどないとのこにき』によると、monoくんの"お米ぱくぱくはいはい"な態度が気に食わなかったらしいが、今現在、絶賛泥パック中のの子さんのすぐ隣でmonoくんは眠そうに"お目めぱちくりむにゃむにゃ"していた。
「竹内さんの撮った動画を見て、今でもたまにあの頃の感覚を思い出している」との子さんは言う。撮影してアップしていた当時は「今後のライブのための参考にしたい。あと、思い出として」と撮った映像を欲しがっていたので、撮影から帰ってきたらすぐにメールで送っていた。
すべての映像が本人に確認される上に、アップした映像が逐一2ちゃんねるで反応があるという脅迫にも似た強迫は恐怖である反面、刺激的。神聖かまってちゃんのライブ撮影ほど神経を尖らせるものはなかった。
開場前にカメラマンの佐藤哲郎さん(グラサン)と森リョータさん(イケメン)に誘われ、近くの居酒屋へ。ひとしきり気分を落ち着かせて楽屋に戻り、会場の様子をモニターで見ると、すでにTRGが始まっていた。佐藤さんに背中を押され、誘導された先にはの子さんとノートパソコン。ということでライブ前、上の画像にある通り、配信に出させられた。
「この方が僕らを初期から支えてくれた方です」
紹介され、グラサンを渡されてかけさせられるも、の子さん所有のダッチワイフの話からお父さんの話へ。静止画として成立するほどの放置状態が、逆に心地よかった。
開演時間が迫る。
やがて登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、観客の手拍子が鳴る。拍手も何もない頃とは全然違う。ライブが始まる前から、会場がすでに暑い。ステージにたかれたスモークがまるで湯気に見えた。
配信中のノートパソコンを持ったの子が登場すると、会場全体が沸く。なぜかちばぎんのマイクの前からなかなか動かないの子。
の子「ぬるぬるしてるかい?」
お客さん「いぇーーい!!」
の子「ぬるぬるぺちょぺちょしてるかい?」
お客さん「いぇーーい!!」
何を言っても歓声が上がるのを知ってか、まるで観客で遊んでいるかのようなの子。満面の笑みを浮かべている。「あれ、『MOTHER2』で出てきたやつ、何だっけ?」との子が尋ねると、「あれでしょ。ゲップーでしょ?」とmono。懐かしい。あのダンジョンでピンク色の丸い奴たくさん倒してレベル上げしていた記憶が蘇る。
「そんなわけで神聖かまってちゃんです」
どんなわけだ。ちばぎんのいつも通りの挨拶で、デーーーン!!とドラムとベースが鳴る。相変わらずジャーーン!!とは鳴らない。の子がリズム隊に合わせてギターを鳴らすことは絶対にないのだ。
劒マネージャーにノートパソコンを渡したの子。「の子イケメン!!」という歓声。「もっと逆のこと言えよ」と求めるの子。「映画観たよ!!」という歓声。「あれだな。金の無駄だな」と、会場に苦笑いを与える。「いやー、前回の大阪のライブの後色々あったんですけども…」と『みっどないとのこにき』をぶり返そうとすると、monoが「それ言うの!?」と戸惑う。
1曲目は『いくつになったら』。
の子が「皆さん、歌ってくれると嬉しいです」と言い、みさこのカウントによって演奏開始。の子が物凄い笑顔で歌う。ちばぎんもかなりの笑顔。というか全員笑顔。なんなんだ、このピースフルなムード。4人はアイドルか。
「の子イケメン!!」という声がかなり聞こえる。しかも男性客から。「なんなんだ、お前もイケメンじゃねえか。もっとdisれ!」と指示。
続いて『怒鳴るゆめ』。「嫌なことが色々あったんで、僕が歌います。お前らには歌いません」という宣言でスタート。アウトロでは「僕は、怒鳴る、ゆめを、追いかけて~」との子のギターだけになるというアレンジが。
今回のフリーライブツアーは全部配信するつもりなのか、の子側でずっと劒マネージャーがノートパソコンを持って配信している。の子が少しでも暴れるとノートパソコンを置いてステージに駆け込もうとする。劒マネージャーがあと2人くらいは必要だ。
「親父はもう、あれだよ。出てけみたいになってるよ、配信も家じゃできないんだよ」
の子が愚痴を言いつつ、『ゆーれいみマン』へ。「うーっ、ゆれい!」の部分での子が両手をカンチョーのような形にして天に突き刺した。振り付けか。しかし、その瞬間の高揚感がたまらない。更にその後は「ですよね」が来るし。二度、大きな山場がある。終盤のコーラスはちばぎんが担当していた。
mono「色々設定やってたらみさこさん急にドラム始めたからビックリしちゃったよ!」
みさこ「え、ごめん!」
ちばぎん「なんでやった曲をすぐ後に掘り返すの?」
mono「掘り返すよ、まったく!」
「あっちぃーぜ。まだまだ、ドライアイスだぜ」との子が観客を挑発。
「みんなー、アメリカに行きたいかー。グラストンベリーに行きたいかー。勝手に行ってくれー。とりあえず国技館がなくなって、そんなことはどうでもいい。エイプリルフールだったってことで。それで、国技館?武道館?どっちだ!?」
こうして始まった『レッツゴー武道館っ!☆』はこの日のハイライトの一つだ。観客の「やーねーー!!」コールも完璧で、後半の盛り上がりにゾクゾクする。最後はの子が両手でマイクを持ち、「ぶらぼー!ぶらぼーー!センキュー!!」と締める。
mono「ガンダムファンの人は、"クアトロ"って聞くとニヤっとするんでしょ?」
ちばぎん「えっ?」
みさこ「待って。解読する。ガンダムファンの人は、"クアトロ"って聞くと思わず笑っちゃうって?」
ちばぎん「なんなのお前、大佐disってるの?」
monoの滑舌の悪さについてのいじりは相変わらず。「あごイケメンー!」という歓声に、「あっ、ほんと?ガンダムの話からまさかイケメンとはね」と喜ぶmonoの声にも「何言ってるのかわかんない」とみさこ。
次はサポートバイオリンの成井幹子を迎えて、『白いたまご』。関東では初めての5人編成ライブ。恐ろしいくらいにバイオリンの音色と曲の世界がマッチしている。不気味にも聴こえるし、郷愁感を漂わせ、懐かしいようにも聴こえる。成井さんはすごく美人だ。どういうことなんだろう。神聖かまってちゃんと美人。この組み合わせはシュールだ。
ちばぎん「じゃあリーダー次の曲決めてください!」
mono「はい!何の曲がいいですか?」
お客さん「ねこらじーー!!」
の子「疲れるだろーー!!」
ちばぎん「疲れない曲にしろよ!」
みさこ「優しい曲にしろよ!」
の子の体調を尊重するメンバーたち。monoが青いギターを持つと『天使じゃ地上じゃちっそく死』か『ぺんてる』が始まるということだ。答えは後者。イントロ中、monoがリズムに合わせてピョコン!とジャンプする姿が可愛かった。うわあ、可愛かったなんて言ってしまった。
そんなmonoがついに怒りをあらわにした。
mono「ありがとうございました」
ちばぎん「えっ、なんて?」
mono「聞こえないネタ、もうやめないか?ありがとうございました(苛立ちながら)」
お客さん「もう一回ー!!」
残念でした。
「あー、家でお菓子たべたいなー」というの子。「かわいいー」という、なぜか男性客からの声援。「かわいいとかじゃなくて、普通に腹へってんだよ」とマジレスする。
の子「なんかみさこさんが今日は雨降ってるから『ベイビーレイニーデイリー』やるっていう単細胞な…」
mono「俺もそれどうかと思うんだよ」
みさこ「えっ。でもみんな聴きたいよね?」
お客さん「聴きたいー!!」
みさこ「みんな単細胞ってことだよ」
お客さん「お前に言われたくないっ!!」
みさこ「ありがとうー!」
『ベイビーレイニーデイリー』は"単細胞"なみさこの「ちゃららちゃららー」の後に続く、会場全体の「ちゃららちゃららー!」というコーラスが見事にキマる。せっかく鳥肌が立つスタートなのに、の子が出だしの歌詞をダイナミックに間違えてズッコケる人も少なくはないだろう。それでも大したことはない様子で表情を変えずに歌い続けていた。
「へーーいへいへいへーーいへい!」とコール&レスポンスを求めるの子。「そこの後ろのほうも!"まーどーかーまぎかーが終わったけどもー、マーミーさんがー生き返らなかったー"!」。さすがに長すぎるコールに、レスポンスが返せない客席。
「僕、一話しか見てないんですけどみなさん観てます?」
エリオをかまってちゃんが主題歌のアニメ『電波女と青春男』の話に。monoが「ちばぎん見た?」と聞くと、ちばぎんも「一話だけ」と。monoだけが二話目も見ているということで、お客さんからの「どうだった?」という問いに、「いやー、ここから先どうなるのかなって感じですよ。ほんとに」と当たり障りのない感想に笑いが。
の子の「売名大成功っ!」という叫び声が客席には聞えなかったみたいで、仕切り直して「アニメタイアップ!」とキメ顔で呟き、喋り続けようとしたらみさこがドラムを始め、強引に『Os-宇宙人』の演奏が始まる。
初めて生で聴く『Os-宇宙人』。の子ボーカルバーション。『電波女と青春男』のために書き下ろしたというのに、まるで自分のことを歌っているような歌詞になっている。
「バラードいきます。『さわやかな朝』いきますー」
の子により、『さわやかな朝』がバラードであったことが判明。「今日雨だったんですけど、どうでした?」の問いに、「ヤだった」という女性客の率直な感想が。
の子「俺、放射能浴びたらハゲるんだよ!」
mono「いや大丈夫でしょ?普段から色々やってるんでしょ?」
の子「何?育毛剤とか?やってるわけありませんっ!」
お客さん「ハゲ!」
mono「ハゲとか言っちゃダメだから!」
の子「お前ら、ニコ生、いやピアキャス上のコメントだけにしとけ。まあけど、ハゲたくないなー」
お客さん「デコ見せて」
の子「うん?ああ、いいよ」
ここでの子、おでこを大公開。客席からなぜか若干の悲鳴が。
「でも俺デコ出したらさ、大河ドラマとか出てそうじゃね?」
ちばぎんが『さわやかな朝』のベースを弾き始め、そのリズムに合わせての子が「俺は武士~」と歌い始める。そしてみさこがドラムを叩き始め、monoがホワーンとキーボードを鳴らし始め、『さわやかな朝』が始まろうとしている。
「ちょっと…ちょっと、ちょっと待ったぁああ!!お前、"俺が武士~"って言ったら『さわやかな朝』をいきなり始めるなよ!意味がわからねえ」
そう言いつつも、またちばぎんがベースを始めると「俺は緋村抜刀斎~」と『るろうに剣心』のキャラクターと思われる名前を歌い始め、「俺はハゲた瀬田宗次郎~」と止まらない。そこにmonoが「う~っ、ハゲ!」と合間合間に言葉を添えていき、ハゲにますます拍車をかけていく。「ハゲハゲハゲ!」と叫び、曲が終わる。
まるで一曲完成したかのように、客席から歓声が巻き起こる。
「エンターテイメ(言えていない)」
かっこよく締めようとするの子であるが、噛む。ようやく始まった『さわやかな朝』は「クソむかつくぜマジで」とはにかみながら言いつつ、演奏に。
の子「大阪ではmonoくん、色々あったからなあ。ライブはよかったんだけど。『壊れかけのRadio』
みたいなことにな」
mono「ああ、お前がね。俺はね、"お米ぱくぱくはいはい"って感じだったんだよね。日記書いてたんだよな」
の子「日記なんか書いてねえ!」
mono「書いただろ!」
ちばぎん「まあまあまあ」
mono「まあ、いいですよ!こうやって、やっていくんですよ」
お客さん「あご頑張れー」
「とりあえず、さっき『さわやかな朝』やったんで、さわやか繋がりで『美ちなる方へ』いきまーす。とりあえずいくぜベイビー。ベイビーってなんだよ。(monoに)お前がテレパシー送るからベイビーなんて言っちゃったよ!」
の子、無理矢理monoのせいにする。「『美ちなる方へ』、いくぜベイビー」というmonoのキメセリフのように呟くが全然キマっていないまま、演奏がスタート。と思いきや、ファーーと『夜空の虫とどこまでも』の最初の音がなぜか流れる。これ、前もあったな。慌てるmonoにバッシングの嵐。
「調子のいいときの限って、ミスするんだよ!」
monoの言い訳がまったくメンバーに届かない。「言い訳はいいから謝れよ」というちばぎんのドS指示のもと、monoが深くお辞儀。さきほどの「いくぜベイビー」が虚しく感じる。
無事、始まった『美ちなる方へ』。演奏後、気分が悪くなったというお客さんが担ぎこまれたからか、「大丈夫ですか?初めてマキシマムザホルモンみたいなことになりましたけど」との子。
『ねこラジ』では再び成井幹子の登場。バイオリンの音色が曲のスケールを広げている。「上へ、上へ、上へ!!」の後のメロディは、このバイオリンなしでは実現しないだろう。もはや必然的な音になっている。まさに、「そんな感じです」だ。
そして『夜空の虫とどこまでも』へ。「俺は渋谷クアトロに来た。お前らには宇宙が見えるかい?」などと意味不明なことを語りながら曲に入る。この曲を演奏中のmonoはまるで瞑想中のような表情をしており、怪しげな照明で照らされている。ベースラインがとにかく気持ちいい。
終わると同時に「このままコタツいこう」と言い、「なんとかなんとかの…」となぜかタイトルを失念し、客席から「コタツ!」という声が聞こえ、「こたた!」と可愛げに呟くの子。
そのまま『コタツから眺める世界地図』へ。『夜空の虫とどこまでも』の後はだいたいが『黒いたまご』なので、この流れは珍しい。
そしてまたキーボードの前に戻ると、『黒いたまご』の演奏に。
真っ赤にライトアップされたステージ。メンバー全員の顔面が赤い。赤いたまごだ。ヘッドマイクが無いせいか、の子がマイクを握ってこの曲を熱唱する姿は珍しい。後半のベースラインが怪しく響いて、ボーカルエフェクターによっての子の人間とは思えない声が耳を突き刺すように高く響く。その低音と高音の絡まり合いが不気味でありながら、メロディは切ない。ドキドキする。
「えー、ここでざんぜん…残念なお知らせが」
ちばぎんの噛んだことに、みさこが「ざんぜん!」と笑顔でつっこむが、ちばきんは無視。ちばぎんが「残念なお知らせ」といえば、ライブが終盤に向かっていることを観客は熟知していた。
ちばぎん「あれだろ?お前ら劒さんがこっちに来たときはうすうす勘付いてただろ?あと2曲だそうです」
お客さん「えーーーっ!!」
の子「えーーっ!!なんなんですか!なんなんですか!」
mono「なんなんですか!」
みさこ「なんなんですかこれは!」
ちばぎん「すまん!」
ちばぎん、悪くもないのに謝罪。毎回「えーーっ!」と言われる立場のちばぎんだが、グッと堪えていた。「早いよね、時間が過ぎるのは。それもフィーリングかな。とりあえず、いい!それはいいライブ。それだけ!」とパシッと観客に告げるの子。
「せっかくなんでリクエストってのもあれなんですけど」
リーダーらしく、monoがお客さんに提案。「お前、時間がないって割には喋るよな。まあでも喋るのは楽しいよな」と前向きにの子が反応し、「どうせ、夜は長いぜ」とキメる。「お前テレパシーでそんなん言わせるな」とまたもやmonoのせいにする展開。
monoが「よろしくお願いしまーーーーす」と力ない声で言い、『いかれたNEET』へ。「にぃぃいいいとぉおおお!!」と喉が張り裂けそうなくらいの絶叫。最後も何度も叫び、またベースとドラムが再開しつつ、ギターを激しく振り回すの子。この曲の最後の動きはいつも危険だ。
本編最後は『ちりとり』。ステージに現れた成井幹子さんに「いつも登場早いですね」と冷静に話しかけるちばぎん。
バイオリンが加入したこの曲を早く生で聴きたかった。「成井さん、ほんと申し訳ありません。こんなバンドによくヘルプとしてやってくれたことを、とても感謝しております」とmonoが丁寧に挨拶。「ありがとーー」とお客さんが歓声。なんだかラストライブみたいになっている。
『ちりとり』は相変わらず、ちばぎんがベースを振り下ろし、みさこがスティックを高く掲げてバッシャーン!とやる瞬間がたまらない。バイオリンの音色が涙腺を刺激する。最後のの子の語りがいつも楽しみで、今日はどんなグッとくる言葉を投げかけるんだろうといつもドキドキしてしまう。
「また来ます」との子が言い残し、予定調和のアンコールへ。
メンバーが登場してからも「アンコール!」といったコールが鳴り響き、「分かったからほんと!」とちばぎんが困る。
の子が遅れて登場。「俺はチューニングだ。チューニング仙人だからな」と言うと、客席から「早くしろ」の声。「うるせえ!聴いとけ!5秒後だ!」という答えに、「5!4!3!2!1!」とカウントする今日のお客さんはノリがいい。そして5秒後、まだチューニングをしていた。
monoが青いギターを持っているということで、次の曲が分かる。答えは一つ、『天使じゃ地上じゃちっそく死』だ。中盤のコーラスはちばぎんが担当していた。終わり方がまた新しくアレンジされていて、痺れる演奏だった。
「武道館がなくなって逆によかったと思ってるけどな。こんだけ密接していて、顔がちゃんと見えていて。ありがとうございます、ほんとに」
武道館ではない。両国国技館だ。公演が中止になったことについて触れるの子。monoが「ありがとうございます」と言ったが、の子には聞き取れなかったようだ。monoが「ありがとうございます、って言ったの」と言い直すと、「ちょっと伝わった!」とお客さん。
「ちょっとだけ伝えたものは、そういったものは曲で伝えるべきだと僕は思っていますので、それでは『ロックンロールは鳴り止まないっ』」との子が曲紹介し、『ロックンロールは鳴り止まないっ』がスタート。
この曲を撮影するときの高揚感といったら。ちばぎんが途中からベースを弾き始めるとき、カメラをちばぎんに向ける。すると、カメラ目線で笑顔を見せた。これは勘違いじゃない。たしかにちばぎんはこっちを見てにっこり微笑んだ。なんなんだ。韓流か。一気に照れ臭くなったが、なんとなくグッとくるものがあった。
最後はの子が「鳴り止まなーーいっ!!」と叫び、マイクを床に叩きつけ、monoのピアノの音だけが残り、終了する。
「また来ます。ちょっとマイクの、コンッコンッコンッ!」
そう言い、なぜかキツネのように飛び跳ねてながらステージ脇に戻っていくの子。の子ガールと思われる女の子からの「かわいいーー」という黄色い歓声があった。
ロックンロールだけでなく拍手も鳴り止まず、また戻ってきたメンバー。ダブルアンコールだ。
観客からの「メガネくれー!」という声に、「うるせえ、メガネは顔の一部なんだよ」とmono。「アゴくれー!」という声に、「うるせえ、これで食ってんだよ。これなかったらクビだよ…」とmono。メガネもアゴも顔の一部らしい。
mono「アンコール2回目っていうのもね、いい加減にありがたいってことです」
みさこ「いい加減にありがたい…」
の子「いやーここステージから眺めるとみんな若々しい顔に見える。でもこういうとこいると若々しくなるね」
もはや若々しい頃の曲にも思える『23才の夏休み』へ。終盤、みさことちばぎんのコーラスが入る。ライブでは演奏のたびに幾度となく細かい部分を改良してきたこの曲、今が一番気持ちのいいバージョンだ。
mono「いやー、ダブルアンコールというものはね、嬉しい反面、体力がね…」
ちばぎん「疲れたってこと?」
の子「ステージ上で疲れたって…お客さんのほうが疲れてるわ!お前何様だ!」
mono「すいません…」
みさこ「おじいちゃん頑張ってー!」
お客さん「もうちょっと頑張ってー!」
「この曲は歌詞がない!ないというか、短い!全然ない!だから、歌ってくれ!どうなっちまってもいいんだ俺はよ!」
の子の煽情により、『あるてぃめっとレイザー!』。テンションがぶっ飛んでおり、monoがリズムに合わせて両腕をブンブン振ったり伸ばしたり、とにかくおもしろい。演奏とはまったく関係ないところで動いているため、この曲はある意味monoをずっと観ていても十分楽しめる。後半、キーボードに座った途端に動きが大人しくなり、突然アーティスティックな佇まいになる。
最後はの子がステージに倒れ、「あーー!!あーー!!」とずっと叫んでいた。
の子「ラストの曲だから、みんな、それこそ、みんな、あれだ、イソップ物語だ、バターになっちゃって、ぐるぐる回って、バターになっちゃって」
ちばぎん「イソップ物語じゃないよ」
最後は『夕方のピアノ』。
壮絶なまでの回数の「死ね」が鳴り響き、ステージと客席からは「死ねよ佐藤」の大連呼。その間に挟まれて写真を撮っている"佐藤"哲郎さんがすぐ隣にいる。どんな心境なんだろう。
最後はステージに倒れ込み、絶叫するの子。そんな中、ちばぎん好きの"ちばガール"たちの「ちばぎーーん!」という熱い声援が聞こえた。
の子は何を言っているのかわからないが、倒れながらぶつぶつと呟いている。ふらふらでピクピク動いている。痛そうだ。
「うぉーー!俺は痛いけど、今日はほんとによかったです!」
の子が最後の挨拶。ふらふらのまま客席に突っ込み、「ドラゴンボールのカプセルホイホイで、カプセルホイホイで、うるせえ、俺はヤムチャじゃねえぞ、これ、捻挫なのかな…」と、言葉を断片的に言った後、ステージ中央に立つ。
「みなさんありがとうございましたー!これからまたライブやるんで、また来てください!!ありがとう」
満面の笑みで、最前列にいるお客さんと握手していくの子。胸がいっぱいになる。客席から伸びる手との子の手の間から撮影していると、不思議な気持ちになる。やっぱり彼の笑顔を見ていると、安心する。この感情、気持ち悪いけど本当にそう思うのだから仕方がない。
目が合い、「あっ、たっ、たけっ」と呼ばれそうになる。
「今日は本当に幸せでした。生きててよかった」
ステージを去るとき、の子さんはこう呟いた。
このときの気持ちはすぐに忘れてしまうかも知れないけど、の子さんは本気でそう思ったんだろうなと思える顔をしていた。
終演後、疲れてグッタリした様子のちばぎんが「ちんぐ(竹内)がいるのを見て吹きそうになった」と述べた。なんなら吹いてくれてもよかったが、やはりあの笑顔はカメラに向けたものだったのか。ちばガール、申し訳ありません。
環境や状況は変わっても、ビデオカメラに映る神聖かまってちゃんは変わっていなかった。 それが心から嬉しくて、ありがたいことだと思った。
2011年4月23日 渋谷クラブクアトロ
<セットリスト>
1、いくつになったら
2、怒鳴るゆめ
3、ゆーれいみマン
4、レッツゴー武道館っ!☆
5、白いたまご
6、ぺんてる
7、ベイビーレイニーデイリー
8、Os-宇宙人
9、さわやかな朝
10、美ちなる方へ
11、ねこラジ
12、夜空の虫とどこまでも
13、コタツから眺める世界地図
14、黒いたまご
15、いかれたNEET
16、ちりとり
(アンコール)
1、天使じゃ地上じゃちっそく死
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
(ダブルアンコール)
1、23才の夏休み
2、あるてぃめっとレイザー!
3、夕方のピアノ
ライブ配信 PART1/PART2/PART3
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