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2011年6月29日水曜日

神聖かまってちゃん@仙台CLUB JUNK BOX


震災によって両国国技館のライブが中止になったことで始まったフリーライブツアーも、この日が最終日。
場所は、東日本大震災で最も被害を受けた宮城県の仙台。

「飛行機に乗れないのではないか」「テンションが落ちるのではないか」
の子さんへの不安がファンの間で囁かれつつも、ほとんどの公演が絶好調のライブ。ライブの良し悪しに多少の波はあるが、地方でのライブを配信で見ていてもギターを掻き鳴らす彼の姿を見て安心した。
きっと、ファン、スタッフ、メンバーを含め、多くの人がそうなのではないだろうか。の子さんは『僕は頑張るよっ』と言った通り、本当に頑張っていた。
この日、特に不安を感じることなく仙台へ向かった。
遠征というのは初めてだ。カメラマンの佐藤哲郎さんに「よかったら森くんの車で一緒に行かない?」と誘っていただき、カメラマンの森リョータさんの運転する車で3人で東北へ。車中ではandymori、撃鉄が流れていた。なぜか神聖かまってちゃんが流れることはなかった。お2人とも、国内外問わずあらゆるアーティストの写真を撮影している方々。音楽雑誌を開けば必ず名前が載っているようなイケメンとグラサンに挟まれた。イケメンでもグラサンでもない僕なんかが乗せてもらっていいのか、という疑問を乗せたまま車は栃木、福島を通過する。
森さん曰く、震災直後は高速の道路もガタガタになっていたらしい。今では舗装が進み、車体が軽くバウンドする程度に収まっていた。ヘルメットを被った自衛隊員が乗っている車を数台見かけた。サービスエリアでは"がんばろう東北"などといったスローガンの貼紙が目立った。佐藤さんのグラサンは夏の日差しで怪しく光っていた。

やがて仙台市内に到着する。
内陸部だけあって、震災の被害はまだ少ないように見られた。それでもビルの壁が剥がれ落ちている姿もあり、ここが被災地であることは間違いなかった。
CLUB JUNK BOXというライブハウスへ。
いつものスタッフの方々がいた。東京で毎回会う人と、宮城で会う。安心する顔ぶれであり、この感覚は初めて遠征する僕にとっては新鮮だった。

ステージでは神聖かまってちゃんのメンバーがリハーサルをしていた。
思えば、彼らのリハーサルを見るのは久しぶりになる。

見たことのあるリハーサルはすべてピリピリとしたムードがあった。
2009年9月の東高円寺ではの子さんがみさこさんを怒鳴っていた。楽屋で会うとの子さんの腕の切り傷が半端なく、本番ではカミソリで頭を切りつけて大量に流血した。2010年1月の新代田ではリハーサルですべての力を出し切ってしまったのか、本番ではの子さんがライブをまともに進行できないでいた。機材を蹴りつけるの子さんに激怒したライブハウスのスタッフが彼の髪の毛を掴み、ステージ脇に連れ出すシーンもあった。
だけど2011年6月のこの日、穏やかな口調でスタッフとやり取りをするの子さんの姿があった。
4月1日の両国国技館でのライブが中止になり、このフリーライブツアーが始まった。その最終日、メンバー全員が余裕のある表情で音を確認しており、以前までの彼らとはまた違う姿に感動した。普通にリハーサルしているだけなのに。

撮影していると、マネージャーの劒さんが後ろからグミを差し出してきた。昔、地元の道ですれ違うたびにお菓子をくれるおっさんがいたことを思い出した。懐かしい気持ちにさせてくれた劒さんは「ほら、もうね、リハーサルもこんなにイイ感じなんだよ」と得意げに語った。
ちばぎんもすれ違いざまにポイフルを大量に差し出してきた。突然のお菓子シリーズだ。誰もいない客席フロアにちばぎんが立ち、ステージを見ながらベースを弾き、全体の音を確認している。僕はそのすぐ後ろでビデオカメラを回し、繰り出される演奏曲にいちいち歓喜した。
僕の着ている花柄のシャツに対し、の子さんは「ロシア人」、劒さんは「ダフ屋の人」と形容した。サポートバイオリンの成井さんが唯一「かわいらしい」と言ってくれた。成井さんが一番かわいらしいのに。

リハーサル後、「光が欲しい」と詩的なことを言うの子さんは、外に繋がる通路を知りたがっていた。案内した後、個人的に用事があったので一人で仙台市内に出た。よく晴れた空の下、のどかな平日の都会を歩いた。
やがて夕刻に差し迫った時間帯になり、アーケード街を歩いているとの子さんが一人でホテルから出てくる姿を目撃した。いつもの、中学生の部活帰りのような白シャツにアディダスのバッグ。
だが、見た目、明らかに様子がおかしかった。
顔が青ざめていた。話しかけると、焦点の合わない目で訴えかけてきた。
「ヤバいっす俺。さっきまで楽屋いたら、酸素薄いし苦しくなって。閉所恐怖症なのか分かんないですけど頭がヤバくなって、パニック状態になって飛び出したんすよ。こんなの初めてっすわ…」
今にも街の空気に溺れ死んでしまいそうな表情をしており、更に「今日ライブできないかもしんないくらいヤバいっす」と言い出した。
「ここって泊まってるホテルですか?」
「いや、違います」
なぜ泊まってもいないホテルから出てきたのか。これはヤバい。
ご飯を食べたいがために間違えてよく分からないホテルに入ってしまったらしく、当然追い返され、「ふざけんな」と不満をもらしていた。これはヤバい。

すぐに目に入ったお店に一緒に入ることにした。パスタ専門的の『コパン』へ。入ると、お客さんが誰もいない。まるで貸切状態のまま、広々としたテーブルに座った。
そこから約1時間半に渡り、店内で2人きりになった。「ヤバい。これはマジでヤバい」と落ち着かない様子のの子さんに「とにかくここでゆっくりして、落ち着いて」と具体的にどうすればいいのか分からないけど、自分なりにの子さんを落ち着かせるため、なるべくアッパーな話題を選んだ。

「もう、今日はここ(コパン)にずっといたい。むしろ、ここ(コパン)でライブしたい。というか、ここ(コパン)でオレンジレンジとか弾き語りしたい」

このままではコパンでオレンジレンジの弾き語りを聴かされることになる。今日のライブを潰してしまうのでは、というプレッシャーを感じた。でもオレンジレンジの弾き語りはある意味聴いてみたい。僕には彼の気分を回復させるような器はない。だけど、バカバカしい話やエロい話はできる。うん、エロい話には自信があった。
あと、Squier by Fenderのブランディングポスターの話題に触れた。「あれ、の子さんが日本人で初めてポスターに選ばれたらしいですよ」と言うと、「まーーじっすか!」とこの日一番の笑顔を。彼のモチベーションを上げることになり、次第に元気になっていった。それに店内に誰もいないことも手伝って、かなりリラックスできたようだ。
「竹内さんと会わなかったらマジでヤバかったですわ」と、ジュースとプリンをおごってくれた。"まろやかプリン"はおいしかった。の子さんは同じデザートをなぜか3回連続頼み、いつの間にか白ワインを注文していた。アルコールなんて飲んで大丈夫なのかと思った。
「全部飲むと酔っ払うしライブで声も出なくなるんで、残りは竹内さんが飲んでください」
ちゃんとライブのことを考え始めたのにホッとした。パニックの発作も落ち着いた。劒さんから心配の電話があったが、「もう大丈夫」と答えたようだ。本当によかった。エロい話に自信があって本当によかった。
ただ、僕も撮影前なのでワインを飲むとヤバい。ワインがあまり好きではない。しかし、ワインを残していると彼が飲んでしまいそうなので、息を止めて飲み干した。

の子さんとゆっくり話すのは久しぶりだった。
出会ってからの2年間を振り返ると、本当にドラマチックに思う。話していると、彼は恐ろしいくらいに感受性が強く、狂気に近いくらい野心的で、誰よりも孤独に感じた。だからこそ、本物のアーティストなんだなあと改めて痛感した。
アニメのタイアップになった『Os-宇宙人』を作ることができたことで、より一歩次の段階に進めたことを喜んでいた。だけど逆に『夜空の虫とどこまでも』のような曲は、ライブができないくらいに鬱状態でなければ作れない。そのあたりのバランスを今後の課題と考えているようだ。
最近の出来事や、グッとくるエピソードなど、濃密な話が聞けたように思う。もともとは彼が精神的に不安定になったことがキッカケではあったけど、この日、一緒にコパンでゆっくり話せてよかった。テンションも上がって安心した。
お世話になったお店→パスタ専門店『コパン』一番町店 http://r.tabelog.com/miyagi/A0401/A040101/4008036/

すっかりゴキゲンになったの子さんと2人でライブハウスに戻った。の子さんは楽屋裏口で待ち構えた劒さんに「竹内さんはマジで救世主です。帰り、竹内さんを車に乗っけてください」といきなり頼み始めた。だけど僕はすでに帰りの深夜バスのチケットを買っていた。
ライブ本番30分前。
メンバーにも閉所恐怖症でパニックになったことを生き生きとした表情で説明しているの子さん。その脇で、一生懸命に配信の電波を探しているちばぎん。劒さんが前説をしようとステージ裏口にスタンバイする。
そわそわしてきた。
神聖かまってちゃんのライブ本番が始まる。
ちぱぎん側のステージと客席の間でカメラを構えた。ステージには劒さんが現れ、脅された小鳥のような仕草で前説をし、客席から笑いが。「がんばれー!」という声援も。そして今回、お客さん全員に"神聖かまってちゃん"のロゴがプリントされたサイリウムが配られていた。まるでアイドルのライブ会場のように光に包まれ、本気と冗談の中間地点の美しさがそこにあった。

いつもの登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、メンバー全員が登場。会場全体を照らすサイリウムの光にメンバーが苦笑い。

「仙台やってきたぜー。」というの子の声に大歓声。monoは相変わらず「ゆきやー!」と呼ばれ、困っている。ちばぎんが「ていうか、なんでみんなサイリウム持ってんの?」と戸惑う。
の子「けど、振り回している人と振り回していない人の差は何なんですかー?」
mono「そんなこと言うなよ!」
の子「アウトサイダーがいるんだよ!こんな奴らに振り回してられっかよ、っていう。俺だってそっち側だもん。こんなん持ってられっかよバカヤローって」
お客さん「かわいいー!」
の子「ああ?お前ら毎回言ってるじゃねーか前列の奴ら、どこ行ってもよ。ミッキーマウスに対してもかわいいって言うだろうがこのやろーがよ!」
お客さん「帽子かわいいー!」
の子「ああ?帽子?なんだお前ら、"かぶるパンツ"とか言ったりしてこのやろーがよー!パンツじゃないんだから、ちゃんとリバーシブルですから。ちゃんとした僕なりのオシャレですから!」
ちばぎん「そんな感じで神聖かまってちゃんでーす。よろしくお願いしまーす」

デーーーーン!!いつも通り、このままではMCだけでライブが終わると危惧したちばぎんの声によって、いつも通りにベースとドラムだけが鳴り、神聖かまってちゃんのライブがスタート。楽器の音に「うるせえ!!」との子。色々ライブとして間違っている。

「最後の花火はここで打ち上げましょう。バンバンバンバン」
の子の穏やかな口調のアジテーションで、観客が盛り上がる。「今日はオルタナティブなセットリストでいくんで」と宣言しつつも、「それはmonoくんが考えてきているんで」とmonoに振り、「俺考えてないよ!」と慌てるmono。いつも通りのムチャ振り。ライブが始まるかと思いきやまだまだMCは続き、楽器の意味を示すかのようにちばぎんがベースをさりげなく弾いている。
「滑舌悪い!」というお客さんの言葉により、の子がベースのリズムに合わせて歌い始める。「滑舌悪いんだけどもー、僕は歌い続ける、今の気持ちをー、『いくつになったら』ですー!」

無事、演奏がスタート。『いくつになったら』はこのフリーライブツアーのほとんどの会場で1曲目に演奏されている。いつの間にか"かぶるパンツ"の帽子が取れていた。

「アゴラップやってー!」というお客さんの声援に、「はえーよ!」との子。それでも「おいおいおいお前はラップをするべきだー!」とmonoを煽り、「まだはやい…」と笑顔で必死に拒もうとするmonoの意志に反するかごとくの展開に。
「アゴラップなんかすぐできるじゃねーかよ。アーゴーゴーゴーゴー、ゴーゴーゴー」
アゴが「A・GO」という響きになり、の子のボーカルにリズムが生まれる。そこにちばぎんがベースで乗っかり、みさこもドラムを始める。1人、中央でうろたえているmono。これが神聖かまってちゃんだ。

「アーゴーゴーゴーゴーゴーゴー。俺はもうすぐ1人暮らしするんだけども、家賃が高い!家賃が高い!お前ら最前列の奴は、俺に少しだけお金くれ!元気玉だ!元気玉だ!俺じゃねえ!monoくんに!」

ムチャ振りながら、実は優しい。毎度のことながら、このような内容の即興ラップは他ではなかなか観れないと思う。monoはキーボードを演奏することなく、戸惑いながらの子の様子を伺うことしかできないでいる。

「アーゴーゴーゴーゴーゴーゴー。俺はラジオ聴かねえぜ、ラジオを聴くくらいなら、俺の存在をここに叩きつける。イェーイ!!monoくん…お前、飲んでんじゃねえ!後でもいいですよ、後でもいいですよ、後でもいいですよ。俺の名前はの子!!仙台に来た!そう、被災地が近いという!でも俺の、心も、被災地なんですよ!俺の、心も、被災地なんですが!こんな音楽で、元気つけられたら、ちょっといいなと思いましたー!アーゴーゴーゴーゴーゴーゴー。俺は、ゴーゴー」

の子の即興ラップが終わり、全然アゴラップではない。最後、の子がキメ顔で観客を見る。メンバー全員、いい具合の苦笑い。まだ1曲しかやっていないのに、アンコール前の余興のような出来事になっていた。

「いやあ、さっきね。初めてなんだけどね。この地下2階、さっきまで閉所恐怖症でやばかったんだよ。さっきまでそこらへんのサイゼリアにいたんだよ、ほんとに。苦しくて苦しくて。でも今は大丈夫です!」
サイゼリアではないけど、元気に喋る彼に「おおーっ!」と観客が拍手。「でも1時間後は分からないけどねー」と小生意気な笑顔に「おーーいっ!」と観客が動揺。

「1曲しかやってない…今ので疲れたよ」と弱音を吐きつつも、ゆったりと喋り続けるの子。やばい。まだ1曲しかやっていないのにもう20分経っている。「じゃあ、次の曲いきましょうか」とちばぎんが促すも、「ああ?」との子。劒マネージャーに「パソコンを扱えない、まあ、ラーメンが得意ですから」と言い、パソコンが止まっていても「リアルはここですから!」と発言。「おおーっ!」と拍手する観客だが、「さあて、帰ろっか」と悪態。なかなか曲は始まらないようだ。
ちばぎんはずっとベースをヒマそうに弾き続けている。ツアー最終日とはいえ、このリラックスムード。なんとなくの予想だけど、の子はあまりペースをハイにしないように自分で心がけたのかも知れない。いや、ポジティブに考えすぎかも。
「誕生日おめでとうー!」という声援に、口を閉じて嬉しそうな笑顔をするの子。「かわいいー」という女の子に声援に、「かわいいって言われるためにこういうことやってんじゃないよ、僕は」と説明。「ほんとに、猫じゃらしされているようだ」とやっぱり嬉しそう。「恥ずかしいんだよばかやろー!くらい言ってやれよ」とmonoが言うが、「今のマジで聞こえなかった…」と最近定番になりつつある返しを。

セットリストを眺め、「じゃあ、『死にたい季節』やろっか」との子が言い、ようやく曲が始まる予感が。「の子ー!」という声援に、サイリウムを振る客の姿が見えたのか「それ、俺が欲しいわ。おもしろそう」と呟き、「じゃあいきますか!」とちばぎんが焦り始め、「何やるんだっけ?」との子の発言に色んな人がたぶん焦り始め、「『死にたい季節』です」とというちばぎんの即答により、ようやく曲が。
「今日はまあ、1時くらいまでできるんで」との子が言うと、劒マネージャーが視点を天井に向けて何かを訴えかける表情を無言で行なう。
「ということで『死にたい季節』ですー。かわいいかわいいとか言ってる分際どもは、歌詞くらい知ってるだろうから一緒に歌ってください」
始まった『死にたい季節』は最初から歌詞を思いっきり間違えたものだったけど、「死にたい」の説得力を薄まらせるほど絶好調な演奏だったように思う。

サイリウムでももいろクローバーZのライブを思い出したの子は、「あれ、ももクロのときだったよね。ちばぎん、『怪盗少女』歌ってよ」となぜかムチャ振り。客席からも「ちばぎん歌ってー!」という声援。「だが断るけど」と返答。
「あれヒャダインが作曲したんだよね。ヒャダイン、うん、僕なんかあれだ、メラゾーマじゃなくて、メラだ」との子が言い始めると、「ヒャダルコやってー!」と客席から。「あなたのその求める神経、すごいよね!」と、突然のムチャ振りにの子が戸惑う。
「ヒャダルコやって?どうする?」とmonoに問い、monoが着ているサメがプリントされたTシャツに反応する。「お前、なんだ"シャーク"って。俺がお前のTシャツ着てたらやるよ。"ひゃひゃ、ひゃだるこーーぅ!"って」と、『ど根性ガエル』のようにTシャツを指で動かす。笑う客席に、「俺に、愛想笑いはやめろ」。

「次の曲いきますか」とちばぎんが促し、「まあ今日は最後だからまったりでいいんじゃない?」との子が返す。「じゃあ、ちゃんと2曲続きでいきますか。このままだと50分くらいMCが続きそうだから…いつか(客と)喧嘩しそうだしね」とセットリストを眺めながらの子が言い、「じゃあ『怒鳴るゆめ』やって、『Os-宇宙人』やろうか。やっぱさー、ボイチェンはいいよね。初音ミク使えないんだよ!初音ミク使えたら使いたいんだけど。いや、大亀さんもいいけどね。あの不安定さが」と、今にもボーカルエフェクターを操作しようとするの子に、「『怒鳴るゆめ』からじゃないの?」と尋ねるちばぎん。「うん、『怒鳴るゆめ』からだよ」と答えるの子であるが、その5秒後に「えっ、どっちからやるんだっけ?」にちばぎんと観客が「えーーーっ!?」。

の子「悪いけど俺は(頭を指差して)パソコンがぱぁあーーーなんだよ。ちょっと待って」
ちばぎん「結構待ったけどね」
mono「いやね、牛タン美味かったよ」
お客「どこの?」
の子「とりあえず美味かったよね。千葉ニュータウンのイオンの牛タンも親父と一緒に行ったけど、うめーーって。サイゼリアとか比じゃないって。こっちの牛タンはマジで、うん」
mono「ほんとそうだよね」
の子「なんだお前、そういう番組に出たいのか。阿藤快とかの。じゃあ『怒鳴るゆめ』でーす。“いくぞみんなー”でお願いしますー。“お願いします”とかねーだろ…なんなんだ“お願いします”ってのは!こういうのはフィーリングで、暗黒の黙示録とか。暗黙の了解とか」

あらゆる楽器の存在価値を問いたいほど、長く続くMC。それがようやく幕を閉じ、『怒鳴るゆめ』へ。

最後、哀愁と切なさを漂わせてかっこよく演奏が終わったと思ったら、「2曲続けて」というの子の意志を尊重して始まった『Os-宇宙人』のイントロに、ボーカルエフェクターを変えれていないの子の「はえーーよ!」という悲鳴が。そして演奏中断。
「今のは、僕のせいでもあり、ちょっとあの、ミュータントタートルズみたいな人のせいでもあります」と、緑色の服を着たスタッフ・まきおくんを指摘。「僕ちょっとボーカルエフェクター変えなきゃいけないんで、そんなん無理に決まってるでしょ!」と叱るが、すかさずちばぎんが「ボーカルエフェクターを変えなきゃいけない曲を、あえて2曲目に選んだんだね…」とそもそもの失敗を指摘。ごもっとも。
の子「なんかまきおさん見ると笑っちゃうんだよ」
mono「俺も好きだよ」
の子「でも知らない人もいると思うから…クズで、バカ。だけど、優しい。恋人募集中」

物凄い言われようだけど多分愛のあるまきおくんの紹介の後、まきおくんがイントロのスタートボタンを押して無事に『Os-宇宙人』の演奏に入る。

の子「すげえ、もう十分盛り上がってんじゃん」
お客さん「まだまだー!」
の子「まだまだ?ああほんと、性欲が強いんじゃないの?」
mono「性欲じゃないよ、貪欲」

の子が盛り上がっているお客さんに「ありがたい限りです」と言い、「あーっと」と呟いた後に「アート、引越し~」と歌い始めると、みさこと観客が「センターへ~♪」と打ち合わせなしで返して見事なコラボへ。
「意外な曲って、結構あるんじゃないの?『スピード』とか」とちばぎんが促し、の子が「成井さーん。高嶺の花の、成井さーん」という呼び方でサポートバイオリンの成井幹子をステージに呼ぶ。「一生僕らが触れられないような成井さーーん」と続ける。

の子「みさこさんは結構ガードが高いんだよ!かわいいかわいい言われても全部マホカンタしてるからね。“うん、私はかわいいわよ!知ってるわよ!1000回くらい言われたことありますよ!”ってね」
みさこ「そんなこと言わないよ!」
mono「ほんと性格悪いよね」
ちばぎん「じゃあ『スピード』やりますか!」
の子「じゃあ、ちょっと待って」
mono「いやあ、牛タン食いに行ったんですよ…」

再び牛タンの話で繋ごうとするmonoに、客席から笑いが。もう、どうにもこうにもスムーズに進まない今回のライブ。メンバーにも若干疲労が感じられた。とりあえず、ステージに上がるだけ上がって放置状態の成井さんに同情心が芽生えてしまう。

の子「お前が劒さんと配信でべろんべろんに酔っ払ってたから、ぜってえこんな奴らに関わりたくないって思った」
mono「出なかったんだよねお前」
の子「ライブ前に酒飲んで出ると、声がガラガラになるんだよ」
mono「俺もガラガラになるわけだ…」
の子「ああ?」

グダグダな会話に、「みんなポカンとしてるよ…」とちばぎん。「もういい?」と問うと、「ちょっと待って」との子。これで何分間経ってしまったのか。
「でもね、ツアーファイナルですよ」と語り始め、ちばぎんが間を埋めようとするとの子の準備が万端に。と思ったが、「できなかったら、止めるわ」との子。「うん」とみさこ。「止めるわ、に、うんという返事」とちばぎんが冷静に会話を振り返る。
不意をつくように「得体の知れないスピードで~」との子が歌い始め、『スピード』の演奏へ。成井幹子さんが参加して、曲に新たな情動が生まれる。途中ブレイクするところでは「の子、好きっ」という女の子に「今の、“好き”っていう苦味笑い、いいね」と照れ笑いするの子。毎回思うけど、このときの沈黙の中での「得体の知れないスピードで、僕らは乗っかっていくんですけど」のちばぎんのコーラスが乗っかっていくのが難しそう。まさにそのスピードが。

曲が終わり、またまたゆったりとしたMC。monoが何を喋っているのか分からないという、いつもの話題に。
「お前、高校の頃から言われてたじゃん。あごーあごー、お前何言ってるのか分からねえよって。俺隣で知らんぷりしてて。“こいつに関わると俺までいじめられちゃうなー!”って」との子。「monoくんはそうやって昔からいじられてんだよね。いじられてるっていうか、これは愛だよ。monoくんはそれで補完されてるんだよ」と、エヴァっぽい話になりつつ「そんな嬉しい話じゃないけどね」とmono。「嬉しい話じゃないって、そんなことねーだろーがよ!最初と比べて。彼女もできたし」との子が言い、「ふぅーーっ」と観客が叫ぶ。
もうすぐ彼女と同棲するmonoに、みさこが「2DK」と添えると「2DKって、ドンキーコングくらいしかわかんねえよ」と笑いを誘う。そうなるとの子が『ドンキーコング』のメロディを思い出してゲーム音楽の話になり、もはや冒頭からこれがライブなのかトークイベントなのか分からないものに。あらゆる概念を覆し始めたところで、「よし!次の曲いこうか!」と軌道修正をするちばぎん。

ちばぎんの「次の曲何やりますか?」という問いに、「知らねえ。そんなもん、ねえよ」との子。ちばぎんの提案で『ベイビーレイニーデイリー』に決まりながらも、セットリストを眺めるの子。「何をやってから、『ベビレニ』っしょ」と。『ゆーれいみマン』の演奏を決める。その後、劒マネージャーに「なんだよその表情。“僕はこれでまた地球をもらえます”みたいな」と、パソコンを持っている劒マネージャーの姿を観客に説明する。
再び閉所恐怖症だったことを説明し始めるの子に、「さっき喋ったから!」と止めるメンバー。「えーっと、何やるんだっけ…」と呟くと客席から「ゆーれい!」と教えてもらい、「今を生きている男には辛いぜ…」とついさっき決まったことを忘れる自分をかっこよく形容する。

曲の最初の「うーっ、ゆれい!」をX-JAPANの「X!」みたいにやれ、との子が促しつつ、『ゆーれいみマン』がスタート。終盤の「はーー」という神様の声みたいなコーラスはかつてmonoがやっていたけど、いまやちばぎんの物に。この曲は盛り上がりが何度もくるから、ライブで演奏すると本当にかっこいい。
終わり方が見事にキマりつつも、「劒さん、味噌汁が、こぼれた?大丈夫か…」と、ステージドリンクを気にするの子。「かけてー!」と味噌汁をかけたがられるの子ガールたちが叫ぶ。「おかしいだろどう考えても…どんだけだよ!」とmonoがつっこむ。

そのまま『ベイビーレイニーデイリー』にいこうとするも、またもやの子の「ちょっと待って」が。そろそろ「ちょっと待って」が多くなってきたのを自覚したのか、次の曲をまた忘れてしまったことに対して「なんなんだよ!世の中ってのはよ!こんなことが俺に起きるんだよ!こうやって『ベイビーレイニーデイリー』ってこと忘れたりよ!」と、世の中に摩り替えて怒りをあらわにしていた。
こうして始まった『ベイビーレイニーデイリー』は何の迷いもなく、キラキラしていた。最後、の子が弾き語りのように「そんな、好きだからー」と歌い、ギターを鳴らしながら演奏を終えるところは何度観ても見事です。

「もう電灯、鬱陶しくなってきたよな!」とサイリウムに飽きるの子は、「これ見ると、あれ思い出すんだよ。ジャッ、ジャッ、ジャジャ、ジャッジャッ、ジャッジャッジャー」と恐らく『ミッション・インポッシブル』のテーマを口で歌い始めるが、メンバー誰も理解できずに無言。「わかんない」とmonoが答えると、「『ザ・ロック』だよ!」との子。これはわかんない。ポキッと折って光っている部分で、あの映画に出てくる危険物みたいなものを連想したようだ。「だからお前ら、死ぬよ」と観客に伝える。

「ほんとここはコンパクトな感じだよね。後ろのほうまで、ありがとうございますー」との子が先ほどの発言を撤回するかのように。その後、『コクリコ坂』の話をするが観客が置いてけぼりになったのに対し、「『コクリコ坂』にもっと興味を持ってくれー!」との子が叫ぶ。どうやら『ちりとり』も『時をかける少女』がきっかけで生まれたようだ。

「次、元気な曲やる?」というみさこの提案で、『レッツゴー武道館っ!☆』の演奏へ。「そっか、俺たち国技館行く予定だったんだよな」との子。
「国技館なんか行くよりも、もっとでかいところに行きましょうー。次はどこだ?グラストンベリーか!?」という掛け声でイントロが始まる瞬間がたまらない。

演奏後、タオルで汗をふくメンバー。客席からも「暑い」の声。「失神とかしないでくださいね。毎回、俺ダイブするとき下の女の子ぺっちゃーんて潰しちゃうんだよな」との子。「なんかしらないけどミニマムな女の子のところにいくんだよ。男のとこだったらいいけどな」と優しさをみせる。

「今何やったか覚えてねえ」と言うの子だけど、有無を言わさず『夜空の虫とどこまでも』のベースを始めるちばぎん。「ちょ、ちょちょちょっと待って」と戸惑いながらギターを置き、曲に入る。

「仙台にやってきたぜー。実はまあ、復興とかそういうこと考えてませんー。でも、俺の今の心を復興させなければなりませんー。俺は曲を作らなければならないー。だからみんなに、そういう形で届けられたらー、僕なりの復興支援ですー。あなたたちファンへの復興支援ですー」

いつもは「悪い奴はみんな友だち」と喋る部分で、まさかの復興支援宣言。怪しげなライトがの子の顔を照らし、みさこがリズムをつくり、monoが淡々と同じフレーズを弾き続ける。ライブで演奏するたびにますますかっこよくなっていくこの曲。終盤の盛り上がりにゾクゾクするが、メンバー同士の意思の疎通ができていないまま、『黒いたまご』が始まり、の子がまだ『夜空の虫とどこまでも』を歌い続けるという場面も。それはそれでなぜかいい味になっていた。

の子「混ざった、ていうのがmonoくんはわかったよね?『夜空の虫』をどんどんうぉおおおってやっていこうと思ったら、いきなり『黒いたまご』が始まって、えっ!?って」
お客さん「すごいよかったです」
の子「…よくねえよ!」

そしてmonoが「ほんと悪かった…」と本気で謝り、「本番ですよー」との子。「そこらへんは臨機応変ですよ!翼が生えてるでしょ、あなたも」と続け、「すいません!」とmono。の子が「俺が説教してるみたいじゃねーかよ!」と叫ぶ。

「まだやってない曲色々ありますよ。『美ちなる方へ』とかありますよ?」とちばぎんが提案するも、「やだ!」との子が一蹴。「『僕は頑張るよっ』って曲があるんですけど、“被災地に向けられた曲”って言われるけど地震起きる前にできていたからね」と。
「じゃあ『夕方のピアノ』やります」との子が言うと客席から歓声が。「『僕は頑張るよっ』はやんないんだ…」とちばぎん。
「案外慣れてきましたね、人がいっぱいいるのにも関わらず。3階か2階かわかんないけど空気がやばいんじゃないかって。さっき過呼吸すごかったんだからさ、閉所恐怖症で。ずっとサイゼリアとかいて。竹内さんと。ほんとずっとわけわかんねー、そこらへんにいるんじゃないの?」

ライブ前、『コパン』で「MCに困ったら竹内さんに話振りますよ」と言われた通り、こっちを指差した。何も反応できないので、「あっ、そうか」といった表情での子は「じゃあやりまーす」とマジメに曲に入った。夕暮れのような真っ赤なライト照らされながら、『夕方のピアノ』が始まる。

「こたつの中にいたいのですー」とボーカルエフェクターで高音になった声で呟き、『コタツから眺める世界地図』へ。このフリーライブツアーでは演奏するのがもはや定番になった。エフェクターさえ使えば誰でも似たような声になると思うけど、どうしてそれでもやっぱり声に特徴を感じるんだろう。

成井さんを呼び、「あれ?成井さんとさっき何やったっけ?」との子。ちばぎんが「『スピード』」と即答し、なぜか静かな沈黙が。それを埋めようとmonoが「ありがとうございます!」と挨拶するも、「ああ?」との子に一蹴される。その後しばらくして、「ありがとうございます!」との子がパクる。
の子「みなさん夏はどこか行くんですか?」
お客さん「プールに行ってくるよー」
の子「ああマジっすか。僕も連れてってください」
お客さん「いいよー」
の子「いやほんと、よければ。最近運動不足なんで、チャリンコも乗ってないから」
ほんっとうに何気ない会話をした後、バイオリンとともに『白いたまご』へ。

メンバー、疲れてきたのか曲の間も言葉が少なくなる。これが普通のライブというものなんだけど、マジメに演奏を続けると神聖かまってちゃんの場合はどうも、無言の空気を感じてしまう。そのまま『聖天脱力』へ。もはやバイオリンなしでは印象が全然変わってしまいそうな曲。

の子「燃えてるか?」
お客さん「…いぇーーーい!!」
の子「ウソつけ!」
お客さんの反応が一瞬ためらっていた。ワンマンは時間が長いぶん、メンバーもお客さんも中盤以降は疲れがみえてきているように思う。「燃えているところ悪いんですが、あと2曲だそうです」とちばぎんがいつもの「えーーっ!?」と言われる役割を。「はえーーよ!」との子。「トークが長かったからな…」とちばぎんがごもっともな意見。

客席から「みさこかわいいー」の声。
「かわいいわけねーじゃねーかよ!」との子の反論に、「かわいいー!」と客席。「じゃあじゃあ、みさこさんと付き合いですか?」というの子の問いに、一人の男性客が手をあげる。「かわいそうだから…」とちばぎんがなだめるも、の子が促し続ける。「お前恋したい恋したいLOVE ME DOとかうるせーんだよ!ビートルズのパクリかよ!」とみさこに詰めかかりつつ、「こうやって、残り2曲の時間が…」とちばぎんがナレーション。
「一緒にドラムを叩きますか?初めての共同作業…」
みさこが呟き、先ほど手をあげた「みさこさんと付き合いたい」男性客が最前列に歩みよる。「よっしゃ、こい」との子が誘い、柵をくぐってステージ前へ。「いいけど、99%ケガするよ?」とちばぎんの忠告が入る。「ケガするとかどうでもいいじゃんかー。明日死ぬかも知れないんだから」との子。今を生きる男性客、「みさこさん、今日離婚届渡したんですけど…」と"離婚届"というファンレターを渡したことを告げる。だけどみさこにはまだ届いていない様子。「わかりました。あとでじっくり見て、ちゃんと返信させます」との子が仲介に入る。よかったのか、どうなのか、みさこへのチークタイムはさりげなく終了。

『美ちなる方へ』が爽やかに終わり、『いかれたNEET』へ。途中、キーボードの前のイスに立ってギターを掻き鳴らす。そして最後はギターのボディを首にかけて、終了。話し続けようとするが、他のメンバーがすでに退場していることに戸惑う。
ライブ本編が終了したのにも関わらず、ステージに居座って話し続けるの子。「でも俺、オナニーしたほうが、親父の育毛剤使ってすごい髪が伸びるんだよね。今はオナニー期間だけど、またオナ禁期間に入るんで」と、アンコール前とは思えないトークを繰り出しながらスタッフに退場を促されるも、まだステージに居座ってちばぎんのマイクで喋る。
「アンコールつったって結局ここに来るのによ。別に引っ込むことねーじゃんかっていう」
そう言いながら、きちんとステージを去るの子。

サイリウムの光がまばらに輝きながら「アンコール!アンコール!」の声。そういえば最近、アンコールのときに「アンコール!」っていう掛け声は聞いたことがない。
ちばぎん、mono、みさこ、の子の順にステージに戻ってくる。「かわいいー!」と言われるみさこだけど、「かわいいって、の子さんの前で言われるとの子さんに怒られるんだよ…」とぼそっと呟き、「何が怒られるんだよ」との子、ちょっとだけお怒り気味。「実際のところ聞いてみたいんだけどね、(みさこの)男性ファンというものを間近で見たことがないんだよね」と、先ほどの離婚届の男性客を忘却の彼方へ。「あっ、今の方か…」と気付いて照れ笑い。

ちばぎんが「monoくん、何か喋って」と振り、「アンコールありがとうございますー」とmono。「決まりきったことしか言えてないコイツ、どうなんだ…」との子が呆れる。最前列の女の子から「mono君、シャーク!」とTシャツをいじられ、「かわいい子を、食っちゃうぞ!」と答えるmonoにブーイングの嵐。「苦笑いをしている人がいっぱいいて、超楽しい…」との子が客席を笑顔で眺めるという結果に。

アンコール1曲目は『23才の夏休み』。後半のみさこのコーラス、「君が僕にくれーーた」という甲高い声がやたら映えている。

の子「後ろのやつ、声出してみろ。あーーー!!」
後方のお客さん「あーーーー!!!」
の子「はい、前のやつ」
前方のお客さん「あーーーーーーー!!!!!」
の子「お前らうるさい!」
ちょっとばかり体育の先生になったような気分で嬉しそうなの子は「ありがとうございます、じゃあ『ロックンロールは鳴り止まないっ』と曲紹介。どうやら打ち合わせしていた曲と違っていたようで、すでにギターを持ち構えていたmonoの急いでギターを降ろしてキーボードに座る姿に笑いが起こる。の子が「えっ?」と状況を掴めない様子で、ちばぎんが「大丈夫。予想の範疇」と答える。
『ロックンロールは鳴り止まないっ』の終盤、「鳴り止まないっ」の後にステージ前方に立って、真っ直ぐ前を見つめてギターを弾くの子。

「ドーパミンが、よくわかんねえことになってるけど、チューニングだけはする、俺」と自分の状況を説明するの子が「じゃあ、『天使じゃ地上じゃちっそく死』です」とキーボードに座ったままのmonoを再び慌てさせる。「こういうこともあるんですよ!」といたずらっ気満載に叫び、「ちばぎんの今の苦笑いで分かるっしょ?」と説明。

『天使じゃ地上じゃちっそく死』の後は、成井さんを呼んで『ねこらじ』へ。
「みなさん、“にゃー”って言ってくださいね。後ろのほうも。今考えたんですけどね。“ひい、ふう、みい、にゃー”で。そんで、ジャンプして上に突き刺さってください」
そう言った張本人は「ひい、ふう、みい、よう!」と言うんだから仕方がない。かすかに「にゃー!」とちゃんと言ってくれたお客さんの声に心が痛くなりつつも、演奏は出だしも完璧。しかし「上へ、上へ、駆けのぼってく」のあたりでボーカルのマイクが出なくなり、しばらくはマイクなしで演奏が続く。そうなると観客からの合唱が起き、途中からマイクの音が出るようになってますます盛り上がりに磨きがかかる。そして最後は不完全なパフォーマンスを取り戻すかのように、の子がステージ前方のパーカッション機材を置いた台に「ドカッ!」という大きな音を立ててよじ登り、ギターを持ったままステージダイブ。きれいに飛び、すすーっと柵の中に落ちていく。

の子「てな、こんなことで!途中すいませんでした!いやーテンション上がっちゃった」
ちばぎん「すごいタイミングでダイブしたね」
の子「いや、俺ギターを弾きながらしたかったんだよ」
ちばぎん「シールド抜けてたからね」

その間、monoがなぜかステージから姿を消していた。「勝手にどっか行くな!」というお客さんの声に、の子が「正論!」と返す。
セットリストをじっくり眺め、「じゃあ『ちりとり』やります」と言い、さきほど楽屋に戻ったばかりの成井さんが再びステージに戻ってくる。ちばぎんが成井さんに「完全に“今日はもう終わった”って思いました?」と心を読むように尋ねる。

「いやあ、仙台だね。僕の気持ちが復興できたよ。…って、色々考えたんだけど言えたことがこれ!」
の子は大きく口を開けて照れ笑いする。「ほんとに、フリーライブで全国回ってきて無事にファイナル迎えられてよかったね、ほんとに」とちばぎん。「仙台に来れてよかったです。また来ます」との子。
ツアー、できるのか?という不安がこのツアーが決まったときに正直あったけど、グダグダなライブでありながらもの子がゴキゲンで、気持ちよさそうに歌っている姿を見れたのが本当によかった。そう思っている人はたくさんいるはずだ。それはライブ会場でも、配信でも。劒マネージャーがパソコンをずっと持ち、すべてのライブを配信した。遠くにいても、近くにいても、神聖かまってちゃんの音楽が鳴っている感覚。『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞が宣言していたかのように、配信が誰かの部屋とライブを「すぐ傍で」繋いでいるように思った。
「あのときの気持ちを、もっと叩きつけたいのです!僕は!」という叫び声。やっぱり『ちりとり』はいつ聴いても鳥肌が立ち、最後の語りにはグッときてしまう。
「かおりさんは、夕暮れの空の下に、いませんでした」
夕暮れ空のような照明に埋もれながらの呟きが、4人+1人の楽器の音に更に埋もれていく。

「まだ、まだまだだ、まだいける。まだいくの?」
の子、へろへろになって独り言をする姿に笑いが。「わけわかんなくなって、すいません」と謝る。「ラスイチらしいんですが」というちばぎんの声に、「ええーーーっ!」という反応。
最後は『ぺんてる』
イントロが始まるが、「待てよ」というの子の声。演奏は中断され、「チューニングしてます、僕は」と。フリーライブツアーの最後は、神聖かまってちゃんらしく、仕切りなおし。の子は優雅に手を動かしてポーズをとりながら、演奏は気持ちよく終了。
そしてギターを何度も床に叩きつけ、手からはなれたギターがステージ前方へ飛んでいく。

「の子ー!」という鳴り止まない声援。終演のBGMが流れる中、の子がギターを持ちながら挨拶。「なんでメンバーいつもはけるんだよ!」とステージに自分以外がいないことを指摘。

「とりあえず今日、ちょっと不完全燃焼だったよな!とりあえずまた来ます、ほんとに。ありがとうございます、マジで。俺は今まで、ダイブしてきて、女の子を踏み潰してきたんだよ!だから、男、お前のところ行くからね!行くぞ、潰れんな!」と忠告し、ダイブ。「潰れんな!」と叫びながら、客席に呑まれるの子。

「大丈夫だった?ありがとね、ほんとに」とステージに戻ったの子。一人の男性客が「の子!」と呼びかけ、「ありがとう」と言う。それに対し、「おう、ありがと!」と親指を立てて返す。客席から『神ヘルメット』が飛び込んできて、それを被る。
「ツアーはこれで終わりですけど、そんなん関係ないですよ。最終日だからとか仙台で被災地だからとか、関係ないんです。そんなことより僕はこうやってお客さんが温かい、そんな単純な話。また来ます!ありがとうございましたー!」
何度も客席に向かってお辞儀し、メンバーがステージに続々登場。みさこがステージ前方で台の上にのぼり、マイクなしで「どうもありがとうございましたー!」と挨拶。の子にマイクを渡され、「今回国技館が中止になってフリーライブが始まったんですけど、結果こういう風にたくさんのお客さんに会えて嬉しかったので、やれてよかったと思います。どうもありがとうございました!」と話す。そのとき、の子がみさこを凝視していた表情がなんだかよかった。
その後、ちばぎんとmonoに司会者のように「何か言いたいことある?」とマイクフォローするの子。ちばぎんが喋るときだけ、なぜか一瞬BGMが止む。4人がステージに並んだ姿は、なんでもないけど、なんでもあった。感動的でもないけど、ちょっとグッとくる。最後、の子がみさこの頭をヘルメットで軽く殴り、何度も手を振りながらステージを去っていくメンバー。
残されたのは大量のサイリウムの光。
終始、グダグダなライブではあったけど、曲単位ではいくつもかっこいい演奏があった。フリーライブツアーの最後にふさわしいライブ、とかは関係なしに、神聖かまってちゃんらしいライブだったように思う。なにより、無事にツアーが終了できたことが一番。

終演後、楽屋での子さんはうろうろしていた。ステージに忘れ物をしたらしく、「竹内さん、僕のピンク色のバッグって持ってきてくれたりできますか?」と律儀にパシられたけど、ライブの熱気がそのまま持続していて、清々しい表情をしていた。
「いやよかった。竹内さんのおかげですよーほんと。普通に歌えたの。マジで閉所恐怖症でどうなるかと思いました、一時期」
爽やかな表情でピンク色のバッグから着替えを取り出し、話しかけてくれた。僕、ほんと基本的に何もしていないと思うけど、ただ話すことで何かしら快方に向かってくれて本当によかった。お酒を飲んだことで若干テンションが上がりすぎていたように思ったけど、結果的には良かったのかな。僕としても、神聖かまってちゃんにとって初めての本格的なライブツアーの最終日、今までの総括のような話と出来事を『コパン』でできたことが嬉しかった。勝手に、これは本当に勝手だけど、奇跡に思った。
着替えながら、「でもまあ、ライブとしては微妙だったな…」と呟いていたけど、笑顔で、やり切った表情をしていた。この人の、こういう顔を撮るのが好きだ。色々あるけど、本当に色々あるけど、やっぱり神聖かまってちゃんのライブを撮るのが好きだ。

神聖かまってちゃんが有名になり、丹羽さんの映像がアップロードされるようになり、僕の役割は終わったと思った。自分としても、いつまでも神聖かまってちゃんにかまわれ続けていないで、新しいことに向かいたいという気持ちがあった。それで撮影を辞めた。だけどまた、しつこく、本当にしつこく、未練がましく、撮影をしている。
「また撮りたいときに、撮りに来てくださいよ、ひょっこり。ひょっこりひょうたん島で」
1年前、下北沢屋根裏の楽屋での子さんに言われた言葉をずっと覚えている。彼の投げかけた言葉は、ほとんど覚えている。こんな人は人生でいないんじゃないかと思う。好きで、好きすぎたから自分から離れようと思ったのが正直な気持ちだ。だけど、撮りたいときに撮ろうと思った。それは、昨年末の神聖かまってちゃん史上最高のライブを観たとき、「これを映像に残さないのは罪だ」と思った。運がよく、本当に運がよく、そういう立場にいさせてもらえているのなら、撮影させてもらいたい。そうして、劒マネージャーにメールを送った。

やっぱりこのバンド好きです。近くにいても、遠くにいても、そう感じます。

「物販、行く?」というちばぎんの問いに、「行く」と答えるの子さん。着替え終わった彼に、またもや「あれ?…竹内さん、帽子とってきてもらえたりできますか?」とパシられる。
物販コーナーに向かうの子さん。会場から出ていく多くの客を遠くで見つめながら物販コーナーに行く機会を伺う彼のショットは、背景がなぜかメッセージ性を醸し出した。そんなつもりはないのに、そんな感じだ。
その後、ちばぎんとみさこさんと一緒に、疲れ果てた様子で顔を真っ赤にしながらファンの方々にサインをするの子さんの姿があった。

神聖かまってちゃんは、ひとつの季節が終わり、また新しい季節に向かおうとしていた。

2011年6月29日 仙台CLUB JUNK BOX
〈セットリスト〉
1、いくつになったら
2、即興ラップ(AGO GO GO GO GO GO)
3、死にたい季節
4、怒鳴るゆめ
5、Os-宇宙人
6、スピード
7、ゆーれいみマン
8、ベイビーレイニーデイリー
9、レッツゴー武道館っ!☆
10、夜空の虫とどこまでも
11、黒いたまご
12、夕方のピアノ
13、コタツから眺める世界地図
14、白いたまご
15、聖天脱力
16、美ちなる方へ
17、いかれたNEET
(アンコール)
1、23才の夏休み
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、天使じゃ地上じゃちっそく死
4、ねこらじ
5、ちりとり
6、ぺんてる

ライブ配信 前半後半

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