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2010年11月19日金曜日

神聖かまってちゃん@渋谷WWW

元々映画館(渋谷シネマライズ)だった施設を改装し、新たに作られたライブハウス・渋谷WWWにて神聖かまってちゃんがこけら落としのライブを。

ここでこの日、CS放送、ニコニコ生放送、DOMMUNEという3つの媒体で同時生中継のライブが行なわれた。結果、視聴者数はインターネット配信だけで2万人を越えたらしい。ライブ前、渋谷のスペイン坂で神聖かまってちゃんの配信に、女優の臼田あさ美、タレント・漫画家の浜田ブリトニー、写真家の梅佳代が登場。
神聖かまってちゃんらしさがたくさん詰まったライブになった。後に大きな話題となったハプニングも含めて。

また、SPACE SHOWER TVで来年放送予定のドキュメンタリー番組『極私的神聖かまってちゃん』(松江哲明監督)の撮影を監督から頼まれていたので、ずっと撮影していた。関わっている人やファンからの目線で、その日常と神聖かまってちゃんをカメラで追うといった内容。その最終地点が、渋谷WWWでの神聖かまってちゃんのワンマンライブとなる。
ビデオカメラで撮影しながら、18時前にWWWに到着。
撮影するのは5ヶ月ぶり。スタッフ用通路を歩くと、神聖かまってちゃんのみさこさんに遭遇。「ちばぎんが死んでるんで」と教えてもらい、ちばぎんの死んでいる場所へ。死んでいた。まるで独房のような楽屋でソファに寝転がり、目を瞑っている。そんな死体安置所では突然死人の目が開き、死人はいかに自分が寝ていない状態かを時間で説明してくれた。

独房から出るとカメラマンの佐藤さんに遭遇し、撮影するライブハウスの会場を下見。映画館を改造しただけあって、天井が高く、客席は後ろからでも観やすいように段差がある。
今日は、の子さん側の客席の最前列で撮影する。客席だ。モッシュやらなんやらで揉みくちゃの視点で撮ると臨場感が出ると思った。

開場時間の19時が迫り来る頃、monoくんが楽屋から出てくる。「これから渋谷の駅前まで、路上ライブの配信しに行きます」と教えてもらう。スタッフの方々がバタバタとし始め、ちばぎんが出てくる。
「どうせ撮りに行くんでしょ?俺、フツーに携帯代払いに行ってきます」
慌しくなるスタッフを尻目にコンビニに向かおうとする、安定感のちばぎん。"どうせ"がクールだ。この日のライブはタワーレコードの撮影が入るらしい。それなのにHMVでの撮影で手に入れたHMVのキャップを被っていた。謎の反骨精神がそこにあった。
「の子が"本番まで間に合わないかも"って言ってるんすけどね…」
神聖かまってちゃんらしい、この予定調和一切なしの展開。ビデオカメラで撮影していると、の子さんが楽屋から出てくる。
「竹内さん、俺は竹内さんのおかげだと思っています。今度ゆっくり話しましょう」
突然、神妙な表情でこのように話しかけてきた。急だったので動揺し、「え?」としか返答できなかった。階段で「monoくんは…?」と探していたので、「上です」と教え、一緒にライブハウスの入り口まで行く。ノートパソコンで配信の電波を繋げ、設定をしようとするの子さん。傍にはmonoくんがいる。携帯代を払いに行ったはずのちばぎんが設定の手助けに来る。やっぱり、ちばぎんだ。

入り口でのメンバーの登場に、ライブハウスの外から開場を待つファンの歓声が上がる。
「の子…!」「の子だ…!」
の子さんは気にせず、無言でノートパソコンを見つめている。異様な静けさに包まれた。彼の周囲には、佐藤哲郎、森リョータ、梅佳代、松江哲明という著名なカメラマンと映画監督たちがカメラを構えている。

電波が繋がり、の子さんがノートパソコンに向かって喋り始める。配信が始まった。ライブハウス前にいるファンに「出れねーよ!お前ら、どけよ!!」と怒鳴る。
外に出ると、「逃げるか!」と言っての子さんがパソコンを持ったまま突然猛ダッシュ。追いかける大勢のファンとスタッフとカメラマン。渋谷WWWから渋谷駅前までの道は、の子さんを数十人が追いかける形となった。何かのデモ行進のような異様な光景だった。センセーショナルとはこのことか。ライブ直前に渋谷駅前でゲリラライブを行なおうとするの子さんもロックだろうが、そのまま携帯代を払いに行ったちばぎんもロックだ。
僕も当然、ちばぎんの言う通り"どうせ"撮影し、の子さんを"どうせ"追いかけた。途中、の子さんが僕の存在に気付き、話をふっかけてくる。
「竹内さんがいるじゃないすか!竹内さんいるじゃないすか!竹内さんも路上ライブやりますか?カバーしてくださいよ」
竹内に配信中のカメラを向けた途端、ノートパソコンの配信画面がフリーズする。
「あれ?なんでコメント表示されねーんだチクショウ。なんだこれは、2010年問題かコノヤロー!」
昨年のサマーソニックでの配信同様、僕が配信に映るとなぜか配信がストップする。竹内BANか。僕はそんなに卑猥な物体なんだろうか。

の子さんと共に大勢のファンが横断歩道を渡り、ただでさえ混んでいる渋谷のハチ公側の駅前には"神聖かまってちゃん族"による人だかりが。時間は18時50分。あと10分で開場だ。最前列で撮影するために路上ライブを撮影するのを諦め、ライブハウスに戻る。
WWWに戻る道の途中、携帯代を払い終えて満足気のちばぎん、みさこさんに遭遇。裏口を使ってライブハウスへ。ちばぎんが寝ていた独房をこっそり荷物置き場にしていたので、急いでバッテリーと替えのテープを独房に取りに行く。
「何か忘れている…」
気付いた。神ヘルメット。この日、なぜか"神"と書かれたヘルメットを装着しなければライブを観ることができないという、不気味な決まりがあった。急いでWWWのスタッフから受け取る。
最前列から後ろを振り返ると、神ヘルメットを装着した観客。見渡す限り、神、神、神。神だらけの空間だ。これで角材さえ持てば学生運動だ。

こうして今年4月以来久々になる神聖かまってちゃんのワンマンライブがスタートする。

「開演に先立ちまして、皆さんに注意事項を申し上げます」
みさこの丁寧な会場内アナウンスが流れ、沸き立つ観客。「今回配布しているヘルメットをライブ終了後、ヤフオクなどに出品するのはご自由ですが、大した値段はつかないかと思われます」と会場を賑やかせ、アナウンスが終わると登場SE『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れる。そしてステージ後方の大画面ではニコニコ生放送が映し出され、コメントが右から左へ大量に流れる。
9月の渋谷AX同様、ライブハウス生配信。家にいながらライブが観れる。しかも会場にもコメントが流れるという画期的なスタイルだ。
メンバーが登場し、大きな歓声が上がる。
後ろから押され、映像はブレる。これを狙っていた。1年前では考えられないブレだ。余裕で客席の最前列で撮っていた頃、こんなに押されることはなかった。それがいまや、演奏が始まると後ろからの重圧とタテノリで映像が乱れる。もはや使い物にならない映像になるが、それがいい。この臨場感こそが、これまでとは違う神聖かまってちゃんの人気を物語っている。

の子だけが遅れてステージにやって来る。
テンションは低く、後ろの大画面を見て「この配信気持ち悪いわ」と呟く。「AXのときは?」と尋ねたお客さんに対し、「AXのときも気持ち悪かった。お前も気持ちわりぃよ」と低いテンションで答える。

1曲目は『美ちなる方へ』。後半のちばぎんとみさこのリズム隊の演奏がばっちりだ。目の前に立つの子がギターを掻き鳴らす。客席は揺れ、激しくノッている。最前列を初めて体験した。これは楽しい。こんな神聖かまってちゃんのライブは初めて体験した。
「初めて上手くやったんじゃないかなー!」
演奏が終わると満足げに叫ぶの子。テンションが急に高くなった。後ろを振り返り、配信のコメントが大量に流れている大画面を見る。「映り方やっぱいいね。大画面。ぶっ壊したいな!みんなヘルメット投げてぶっ壊したらいいんじゃないかな!」と叫ぶ。「いやいや!」と焦るみさこ。

次は『ベイビーレイニーデイリー』。今までの演奏で一番に思った。後半のmonoのキーボードの音色が美しい。「あえて言わないだけです」と繰り返すの子の声が透き通っている。ギターを弾く姿も、今日は何だかいつもと違う。この人が調子良いときにギターを弾く姿は妙にかっこいい。
大画面には"団地ニートがよくここまで来たもんだ"というコメントが右から左へ流れていく。その通りだ。

「ライブがいいんじゃなくて、音が良くないか!?」
観客に問いかけるの子。たしかに音は良いし、彼の調子も良さそうだ。『ロックンロールは鳴り止まないっ』、そして『ねこらじ』の演奏へ。
の子「ちゃんと"にゃ~っ"て言えよ」
ちばぎん「…誰に言ってる?」
mono「どこで言うの?レコーディングでも俺言ったことないよ!」
歌詞の通り、まさに伝説を信じて塔に登っていく勢いを感じる。「上へ!上へ!上へ!」の後の間奏がたまらない。本当に「にゃ~っ」と言うタイミングがない。ムチャ振りなのが凄く分かる。

の子「ヘーイヘイヘイヘーイヘーーイ!」
観客「ヘーイヘイヘイヘーイヘーーーイ!」
の子「うるせえ!!」
コール&レスポンスで大いに盛り上がる客席。「WWWってネーミングセンスどう思います?ダサイと思わない?」と観客に問いかけ、の子節は相変わらず。次の曲の準備をするmonoの弾くギターに「うるせえ!!」と吠え、の子は「うるせーし、おせーし、本当に子どもとして何なんだ」とmonoに投げかける。"子どもとして"って一体何だろう。
続いて『天使じゃ地上じゃちっそく死』。みさこのカウントにより始まるが、の子だけ出遅れる。他人のせいにしようとしたの子。「しまった」と思ったのか、なんとも言えないはにかんだ笑顔をしている。
mono「おめーが悪いんだよ!ひとのせいにしようとするな!」
ちばぎん「新しい表情している…」
みさこ「堺雅人みたい…」

仕切り直された演奏は、堺雅人が珍しくギターをちゃんと弾けている。この曲のギターの単音フレーズはだいたいグチャグチャになっていることが多いが、この日の堺雅人はいつもと違う。ゴールデンスランバーみたいな顔もしないし、武士の家計簿も関係ない。間違いなく、の子なのだ。どうでもいいか。
後方の大画面には「死にたいなー」などと歌詞がコメントでたくさん流れ、その通りに歌っているの子が画面の逆光でシルエットに。ネット上の人たちの「死にたい」と、の子の「死にたい」が合わさっていた。時折コメントが「知りたいなー」「尻痛いなー」と替え歌の大喜利になるような瞬間があり、見事に曲の世界をぶち壊している。それも神聖かまってちゃんの魅力の一つかも知れない。ズブズブと世界観に入り込んだと思いきや、どこか醒めさせてくれる。

「次は『学校に行きたくない』やりますよ。やりますよ、って言ってやる曲じゃねーんだよコノヤロー」
配信中のノートパソコンを持ちながら、ステージを歩き回るの子。monoは踊っている。客席のヘルメットの波の中を、パソコンを持ったままダイブ。荒れる客席。人の重圧の波がころころ変わり、最前列にいると身体は横向きになったり前向きになったり、とにかく苦しい。
客席とステージの間で絶叫するの子。ボーカルエフェクターによる子どものような高い声で「おかーーさーーん!!」と何度も叫び、マイクをステージ中央にぶん投げる。マイクスタンドもぶん投げる。大迫力のパフォーマンスだ。

「の子、血出てるよ!」「の子、血!」

お客さんが指摘する。出血を特に気に留めず、の子は「エヴァンゲリオンのように10分間休憩です」と機材が荒れまくったステージを直す時間を告げる。スタッフが急いで直しにかかる。

monoが「文房具でもいきますか」と問い、の子が「文房具?『ぺんてる』か、『ぺんてる』って言えよバカヤロー」と応える。
「…僕も大人になった。いいね。大人に、なりました」
こうして始まった『ぺんてる』の演奏は間違いなくこの日のハイライト。
「大人になりました」と呟いた後のキラキラと光るような曲展開、そこでの子は歌詞にはない言葉を呟き続けていた。
「僕は大人になりました。本当にどうしようもない、くだらない、本当にくだらない、しょうもない、これからどうなるか分からない、もっともっとしょうもない、大人になると思います」
歌っていたの子はくだらなくも、どうしようもなくもない姿だった。確実に人の心を掴んでいく。目を閉じて、何かを思い出すようにギターを弾き、後ろの大画面では「の子はくだらなくないよ」というコメントが流れていく。

その後は『通学LOW』。先ほどまでの感動的なムードを自らぶち壊すかのように「真っ黒な顔をして笑っている」という言葉が何度もループし、ボーカルエフェクターによって子どものような声から悪魔のような声へと何度も行き来する。
そして演奏終了間際、配信中のノートパソコンを床に思いっきり叩きつけて破壊する。演奏が終わってからも、執拗にパソコンを何度も床に叩きつけるの子。粉々になった破片をしつこく足で踏みつける。パソコンが赤いだけに、エヴァンゲリオンの劇場版で量産型エヴァにグチャグチャに殺されるエヴァ弐号機のように、残酷な姿になっていく。
妙な空気に包まれた会場。ちばぎんとみさこのセッションが始まり、ライブっぽい雰囲気に戻していく。の子はパソコンの破片をパーカッション機材を置く台に乱暴に叩きつける。

mono「HMVのキャップ被ってるってことは、お前放送ではカットされているよ?」
ちばぎん「うん知ってる」
お客さん「アゴがカットだ!」「アゴが放送禁止!」
みさこ「アゴが18禁!」

『ゆーれいみマン』演奏後、次は『いかれたNEET』だという話を先ほどまでしていたのに、「次はこれでしょ?」と『夕方のピアノ』の最初のメロディを奏でるmono。
「お前、酒やめろよ…」
の子がmonoを真剣に心配する。『いかれたNEET』のイントロ中、の子がリズムに乗りながら流れるコメントをラップ調で歌っていく。最後は「du,da~」と何度も呟きながら、ギターをぶんぶん振り回し、床に倒れる。

最後の曲は『ちりとり』。ここでハプニングが勃発してしまう。
monoにラップをするように促し、ちばぎんとみさこがセッションを始め、の子が会場を煽情する。
「monoラップが始まるぞ!今から、生まれてきてアゴだけが取り柄の男がアゴ以外のパーソナリティを、あなた方に見せつけてやろうと思います!」
しかし、の子は自分のラップを見せつける。

「俺の名前はの子!最近精神科に行って狂ってる!俺はもう終末感も感じちゃったりしている!だけどこれからやっていかなきゃならない!お前らがいる限りやっていかなきゃいけない!俺は曲を作る!それが俺の生き様!どーしても、どーしても、ニートになっちゃうからさー」

そして「かましてやれ。実はこいつは、俺の師匠なんだよ」とmonoにマイクを振る。紹介されたmono。もはやDJ monoだ。ハードルは高い。そして完全に嫌がっている。第一声が「無理だょー」だ。しかしその「ょー」が次第に「YO」となっていき、ラップとなる。
「無理だYO、無理だYO、ヘイYO、僕にはラップができないYO、僕は人生うまくいかないYO、」
これが25才のリアルなのか。
「お前ら神のヘルメット被ってイイ気になってるけどYO、お前ら笑って見てりゃいいけど俺は笑ってられねーYO、どうするんだこの空気YO、」
強気から弱気に変わっていき、そしての子に対するラップが。ここから、会場の空気が本当に"どうするんだよこの空気YO"な事態になってしまう。

mono「お前YO、警察に捕まってもいいんじゃねーか、どうすんだYO」
の子「もう一回言え」
mono「お前、警察に行けよ」
の子「は?あー、わかった」

「警察に行け」という言葉にカチンときたのか、の子が突然怒ってマイクをぶん投げ、ステージを去ってしまった。
唖然とする会場。立ち尽くすメンバー。monoは動揺したように笑っている。
さきほどまでのヒップホップな楽しい空間から急変。monoの数々の「YO」が、今となってはもはや痛々しいYO。"師匠"であるはずのの子、お怒りになられたようだYO。

ちばぎん「アゴさん、ここで追いかけるとモテるらしいよ?」
mono「ここで行くアイツが悪いんだよ!どーなってんだアイツの頭はよ!」
ちばぎん「じゃ俺行ってくるわ」
みさこ「わたしも行ってくる」

取り残されるmono。ステージ中央にぽつんと立ち、たくさんのお客さんから責め立てられる。
「アゴー!」「アゴ謝れ!!」「金返せ!!」
「…どうしようこれ」とmonoは戸惑い、なぜかギターを抱えてソロライブでも始めるのかのようにイスに着席する。程なくするみさこが帰ってくる。monoに対し、「この一瞬ですべてを思い出させるから、ちょっと、いくよ?」と言い、顔面に2発ビンタを食らわす。みさこさん、満面の笑み。monoのメガネが吹っ飛んだ。

「僕のメガネは…?」と慌てるmonoに対し、みさこが「メガネより大切なものがあるだろ」という名言を。

「かっこいいー!」と客席から歓声が上がる。「去ればいいんだよ!」「謝れ!」「連れてきてこい!」と客席からの声。monoがステージを去り、の子を追いかけていく。しばらくすると、なぜか服がはだけた状態のの子が不機嫌な表情をして帰ってくる。「おかえりー!」と客席からは大歓声が。
このまま平穏が戻るかと思いきや、ますます事態はエスカレート。

mono「ケンカなんかしょっちゅうなんだよ」
の子「あ?なんだよ。…ライブ終わってからにしよう。クソッタレ」
mono「は?なんだバカヤロー」
ちばぎん「の子が小声で"クソがマジで"って言ってる…」

会場が戸惑いと笑いに包まれる中、の子が後ろを振り返って大画面に流れるコメントを読む。「"うっせーアゴ"」など、monoがそれをの子の言葉だと勘違いしたことから、争いが再び始まる。まさに、ネットの悪影響だ。

の子「"アゴとり"…」
mono「アゴとりじゃねーよ。『ちりとり』ってちゃんと言えよ」
の子「は?うるせーよ」
mono「なんだコノヤロー。ライブ終わったらたっぷり相手してやるよ」

そこでの子がブチキレた。ギターを後ろに放り投げ、monoの顔面に思いっきりパンチを食らわす。一方、monoも負けじと拳を振り回して応戦。

「やめようよー!」「ちばぎんなんとかしてー!」という客席からの悲鳴に、ちばぎんが「どうしよう!」との子を止めに入る。劔マネージャーもmonoを制止し、構図的にはステージ左にmono・劔、中央にみさこ、ステージ右にの子・ちばぎんという見事なシンメトリーが出来上がる。
劔マネージャーはの子を止めようとするが、なぜか脇腹をモミモミしている。少し笑顔を見せるの子。そしてちばぎんもの子の制止に向かうも、腕からスルリと抜けようとクネクネ動く。monoはずっとマジギレ状態。スタッフに止められながらも怒鳴り散らしているが、monoが着ているセーターがスーパーマリオだったりと可愛らしい。緊迫したムードであるはずなのに、細かい部分がいちいち面白くなっている。
客席からは「ちばぎん頑張ってー!」という女の子の声援。
「永遠に頑張れるけど…」
ちばぎんのボソッと呟いた言葉に、会場が笑い声に包まれる。ちばぎんは神聖かまってちゃんの心のオアシスとなった。そして導火線の短い爆弾2つがステージでいまだに睨み合い、そこに劒マネージャーのなんとも言えない表情がある。
次第に、言い合うの子とmonoの顔が接近していく。大画面のコメントには「キスしろ」「キスくるなこれ」「キスチャンスだ」となぜかBL的展開を煽る言葉が。客席からは「アンケートしよー!」という声があり、急遽、"どちらが悪いか?"とニコニコ生放送のアンケート機能が大画面上で活用される。結果、monoの圧倒的勝利。アンケートでmonoが悪いという空間になるという、神聖かまってちゃんらしさが活用されたケンカだ。色々おかしすぎる。
「このあとミーティングだな…」
みさこの寂しげな言葉が響き、コメントには「こけら落としなのに…」という文字が右から左へ虚しく流れていく。

ちばぎんと劔マネージャー及びスタッフの制止、客席からの野次のおかげで、ステージ上に安堵が戻る。

の子「ちりとりやります」
ちばぎん「今のは、の子が大人だった」
mono「(の子に)…サンキュー」

客席からは拍手が鳴り、無事に『ちりとり』の演奏に入る。こんな空気で聴く『ちりとり』がシュールでどうしようもない。なぜこのバンドはシリアスな状況でも、いちいち面白いのか。
『ちりとり』の最後はmonoのキーボードとの子のギターだけが残るところがある。その絡み合う音はどこか不協和音にも聞こえるし、感動的にも思える。どうなろうとも、二人の関係性はいつだって変わらないとも思う。
演奏が終わると、の子はギターを思いっきり床に叩きつけ、ライブが終わる。

観客はアンコールの拍手を続けるが、ステージ前の幕が閉じていく。「えーーっ!」と戸惑いの声が。しばらくすると再び幕が開くが、みさこただ一人だけ、ステージに現れる。
「すいません、今日はアンコールなしでお願いしますー!今日は来てくださってありがとうございました!気をつけて帰ってくださーい!」
一瞬で状況を察知した観客。笑顔でファンサービスをするみさこ。若干、みさこの雰囲気にだまされた感のある会場は強引にあたたか~い空気に包まれ、オチがついたのかつかないのか、幕が閉じていく。

ライブ後、かつてちばぎんが死んでいた独房に戻り、テープ管理を終えて打ち上げに。もちろん、打ち上げには神聖かまってちゃんメンバーはいない。そもそも打ち上げなんて初めてだ。
カメラマンの佐藤さんが「今日は集大成だったね」と語る。たしかに、ライブ前のゲリラライブ、ニコニコ生放送、パソコン破壊、ケンカ、ギター叩きつけ。これまでの集大成に思えた。
しばらくすると打ち上げにちばぎんが一人でやって来る。monoくんが楽屋の壁を殴り、拳を折ったらしい。そのまま病院に連れていかれたという。
「ひどいときがあるんです」
そんな歌詞の通り、何が起こるか分からないバンド。それが神聖かまってちゃんだ。
の子さんは疲れているのか、無表情でジュースをグビクビ飲んでいた。ライブ前のテンションとは違い、グッタリしている様子。
色々あったけど、この日の『ぺんてる』は美しく、忘れられない演奏だった。

2010年11月19日 渋谷WWW
〈セットリスト〉
1、美ちなる方へ
2、ベイビーレイニーデイリー
3、ロックンロールは鳴り止まないっ
4、ねこらじ
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、学校に行きたくない
7、ぺんてる
8、通学LOW
9、ゆーれいみマン
10、いかれたNEET
11、ちりとり

ニコニコ生放送公式全編(ニコニコ動画より)

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