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2011年5月28日土曜日

神聖かまってちゃん@ROCKS TOKYO2011

東京の江東区・若洲公園で行なわれた野外ロックフェスティバル『ROCKS TOKYO2011』に神聖かまってちゃんが出演。

今回、配信は主催者側から禁止されていた。それでも楽屋はギリギリ大丈夫ということで、会場近くの楽屋で暗闇の中で配信をする神聖かまってちゃんの姿が。毛皮のマリーズのボーカル・志摩遼平やこのフェスの主催者・鹿野淳氏なども配信に登場。『MUSICA』について「バンプ(・オブ・チキン)ばっか表紙にしてんじゃねーかよ!」と言うの子さんに対し、「神聖かまってちゃんの表紙のやつも結構売れたんだよ!」と反論する鹿野さん。出演者と主催者との会話、ノリが最高だ。

神聖かまってちゃんはBAYSIDE STAGEで17時20分に登場。当日は雨。雨だからか、時間ギリギリに到着しようという考えがいけなかった。電車がなぜか運休、そして会場の最寄り駅の新木場からの直通バスが大幅に遅れており、17時10分頃にバスに乗るという大惨事。タクシーという手段も考えたけど、仕方ないと諦める。
17時25分くらいに着いたROCKS TOKYO。広い会場ではあるが、道に迷うことはない。遠くから「死にたいなー」という悲鳴が聞こえるのだ。その声が鳴る方向に歩いていけば問題ない。そういうことを歌っている人は地球上にあの人しかいないので、「死にたいなー」の出所を辿っていくと、やはり神聖かまってちゃんがいた。

すでに『天使じゃ地上じゃちっそく死』が演奏されていた。近くで観ていた小さな男の子が「何歌ってんのかわかんないよー」と親に笑いながら言っていた。分からないほうがいいだろう。
「僕ら、次の曲で終わりだぜ」
到着していきなり、の子の発言。途中から観ることになったので、信じてしまった。周囲の笑い声に安心した。ネタか。「ほんとなの?サクサクいってますよ」とちばぎん。「ハワイでやったときは3曲くらいで終わったよな」との子が言うので、ちばぎんが「ハワイではやったことないです」と即座につっこむ。

セットリストをちゃんと考えてきたというの子。「まあね、毎回考えたってセットリスト通りにはいかないしね」とmono。行き当たりばったりな神聖かまってちゃんのライブであるが、フェスではちゃんと時間を守らなければならない。またもや味噌汁をステージドリンクにしているの子は、今日も調子が良さそうだ。
雨が降り続けている。会場では傘をさすことが禁じられているため、誰もささない。なぜか雨合羽を忘れてきた僕は、濡れながら神聖かまってちゃんのライブを観る。何か悲しいことでもあった人みたいだ。

mono「こんな雨の中でロックってどうなんだろうね」
の子「ロックとかポップとか関係ない。ただお前らが今日ここで盛り上がってくれればいい。それだけ!」
ドラム「パシャーン!」
の子「とりあえずいくぜ!」

いつも思うが、の子がキメセリフのようなことを喋ったらみさこがシンバルをパシャーン!と鳴らすのがなんだか和む。ということで、ファンでなくても会場にいる人ほとんど知ってそうな『ロックンロールは鳴り止まないっ』の最初のピアノが鳴り始める。
過去にありとあらゆる感動的なシーンを目撃してきた。そんなときにはいつもこの曲が鳴っており、気持ちを高ぶらせていたように思う。この日も、雨で、野外で。音が拡散していたけども、本当に鳴り止んでいなかった。雨は止んでほしかった。
「死ぬ前なんてどうでもいいんだよ!今こそここで!鳴り止まねえっ!!…鳴り止まねえじゃねぇっ…」
最後、「鳴り止まない」を「鳴り止まねえ」と言ってしまったことをなぜか恥じているの子。今まで細かいことを気にせずにやってきた感満載だったのに、なぜかこんなどうでもいいことが気になっている。「家で鏡見て練習したのにな…」と落ち込んでいる様子に、会場には笑いが。

みさこ「さっき、リハ直後にトイレ行ったんですよ。普段あんまりいい石鹸を使ってないんですがキレイ キレイが置いてあったんです。キレイ キレイで手を洗ったらすごいサラサラになって、スティックがどんどん吹っ飛ぶんですけど」
の子「どうでもいいから話を変えるわ」
この一連の話のぶった切り感が爽快だったが、その後も痛快すぎる。
「レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのライブでは湯気が立ったんだぜ?湯気があると思ったら、白いカッパじゃねえか。だからもっと俺は湯気が立つくらいまでやるぜ!もっと弾けるような曲を今からやります!てことでバラードいきます。チューニングするね」
この落ち方がたまらない。そして『ぺんてる』。まさかのバラードだったのか。
「俺の見えてる景色が幻想的だ…昔いた、白装束の、何だっけ?ポアする、じゃない。プロミスじゃない。なんでもいいや」
野外で聴くのは初めての『ぺんてる』は相変わらず、最初のギターのジャーーン!が気持ちいい。

珍しくそのまま間髪入れず『いかれたNEET』の演奏が始まり、「せーーーい、ほう!」とコール&レスポンス。「お前ら言えよ!俺が恥ずかしいだろ!」と笑顔のの子。「フェスは楽しいな。マジで」と楽しそうにギターを弾いている。
『いかれたNEET』の最後はいつも狂暴。ピアノとベースだけになり、しっとりとした曲調なのにいつもの子がギターを振り回す。今回も当然、フェスだけあって大規模に動き、最終的にギターを振り回しながらステージから落下。一気にオレンジ色の服を着た警備の人たちに取り囲まれ、ステージに戻される。
白い服が土まみれになっていた。それを見て、近くで観ていた小さな男の子が「うんこみたい」と言った。
「ステージでこれやろうと思ってたんだよ。それが今できて、個人的に今、満足」
嬉しそうに語るの子。

「鹿野さんが一時間半やらしてくれるって言ったからさ、さっき」との子が言うと、ステージ脇にいた鹿野淳が手を横に振って否定。「お言葉に甘えて1時間半やります」と、相変わらず主催者泣かせの脅迫だ。
「次は成井さんというヘルパー、介護ヘルパーがいるんで」と成井さんをの子が紹介。「すごい、フェスで、現時点で、5曲。前人未到の…」と。初めてサマーソニックに出た日と比べると、恐ろしいくらいにスムーズに演奏している。
「早くやるよ!クラムボン来ちゃうよー!」
珍しくの子が早く曲をやるように促し、成井幹子のサポートバイオリンが加わった『ちりとり』の演奏へ。
最後の語りがまたグッとくるものだった。
「26年間経っても、残ってるんだよこのやろー!!このやろーなんて言ってすみません。あなたもそうですよね。ずっと積もり積もったものを、僕はただ単に、ここに叩きつけるだけです」
一度謝っているけど、それがまたよかった。

「時間なんか関係ねえ。ユニコーンとか、奥田民生とか、勝てるか。そういうことはどうでもいい。勝つ勝たないとか。ただ単にここに叩きつけるだけ。俺はやるぜ!!」
最後は『あるてぃめっとレイザー!』。大盛り上がり。「血統書つきのお嬢様です」の「です」の部分だけをmonoがコーラスしていたのが謎だったが、白い雨合羽姿の人たちがタテノリで盛り上がり、ステージ上もバッタバタと色んなものがなぎ倒されていて凄い。
最後は「あるてぃめっとレイザー!!」と何度も叫び続ける。曲が終わると、オレンジ色の服を着た警備の人たちが一斉にの子に歩み寄り、ステージ脇へと連れ出す。まるで捕獲された宇宙人のようだった。の子がアップロードした曲のタイトル『大島宇宙人』とはこのことだったのか。

ライブ後、客席を見ると湯気が立っていた。本当に立っていた。周囲の人たちが「湯気www」と爆笑していた。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのようなライブだったということか。
神聖かまってちゃんは、どうでもいい奇跡を色々と見せてくれる。雨に濡れていることを忘れる瞬間がたくさんあった。放射能、大丈夫だろうか。
この後に同じステージに出演するクラムボンのメンバーが、ツイッターで神聖かまってちゃんとともに撮った写真を公開していた。フェスならではの出来事だ。

後でライブを最初から観ていた人から聞くと、1曲目は雨だからか『ベイビーレイニーデイリー』で、リハーサルで何曲か演奏し、しかも即興曲も演奏したという。ROCKS TOKYOについての歌で、「雨が降れば親父にも会わなくて済む 僕は雨が大好きさ」といった曲。気になる。電車とバスを恨む前に、自分自身がもっと早めに外に出ればよかったと後悔。
とはいえ、やっぱり雨の中は辛い。この日は珍しいくらいの豪雨だった。ユニコーンを観ようと会場を移動していたら、神聖かまってちゃんと同じ時間に別のステージで出演していたSEBASTIAN Xのベース・飯田くんにバッタリ会う。「神聖かまってちゃんどうでした?僕、用事があったんで観れなかったんですよー」といい感じの皮肉を言っていた。
クラムボンもサカナクションも観たかったけど雨の中で風邪をひいてサカナヘックション!となるかも知れなかったので、ユニコーンを観た後は会場をあとにした。
それにしても雨の中で『ベイビーレイニーデイリー』、聴きたかったな。

2011年5月28日 ROCKS TOKYO2011
(リハーサル)
いくつになったら
白いたまご
即興曲
〈セットリスト〉
1、ベイビーレイニーデイリー
2、天使じゃ地上じゃちっそく死
3、ロックンロールは鳴り止まないっ
4、ぺんてる
5、いかれたNEET
6、ちりとり
7、あるてぃめっとレイザー!

2011年5月26日木曜日

神聖かまってちゃん@恵比寿LIQUID ROOM

神聖かまってちゃん、恵比寿リキッドルームでワンマンライブ。

リキッドルームと神聖かまってちゃんの相性は抜群だ。過去のライブでも、リキッドでの2009年12月11日のオープニングアクトのライブと、2010年12月27日のワンマンライブは神聖かまってちゃんのライブでも三本の指に入るほどの最高のライブだった。
そしてこの日、2011年5月26日のリキッドルームでのライブがやはりベスト3に食い込んだ。リキッドルームがもはや聖地と呼ばれる日も近いだろう。

ステージ裏で配信を行なっているメンバー。それぞれが足や腕を伸ばしたり、本番への準備に気合いが入る。の子は本番もオフも、配信の前では変わりない。ノートパソコンの前では常に本番なのだ。
登場SEが流れ、メンバーが入場。当然、即日ソールドアウトの会場では大歓声が上がる。
新たにステージドリンクとして味噌汁を持ち込んだの子。ステージに登場するとすぐに飲み始める。「そんな感じで神聖かまってちゃんです。今日1日よろしくお願いします!」とちばぎんが挨拶し、いつものデーーーーン!!が。
「では、次…」
これから1曲目が始まろうとするのに、「次」と言うの子に笑いが。「じゃあ今日はいい1日にしましょう!皆さんも盛り上がってください!他人任せ!俺らが盛り上げれるわけねーだろ。こんなクソバンドが!」となぜか自虐的に怒る。
1曲目は最近ではおなじみ、『いくつになったら』。リキッドルームには何千人もいないけど、この曲はライブの1曲目にピッタリだ。の子のライブのテンションも1曲目の出来に左右されることが多いように思う。だからこそ、テンションが上がる曲としてナイスセレクションだ。

「なんなんですか!なんなんですかここは!1曲目終わったらここがどこかわかんなくなっちゃったよ」
やはりテンションが高いの子。『いくつになったら』が最初でよかった。
「5月といえば5月病で、みんな鬱になるんだよ、俺も」と語り続け、鬱と言いつつも気分が良さそうに見える。6月の話になる。「お前の大事な日もレコーディングだもんな」とmonoがの子の誕生日について語ろうとすると、の子が「は?何言ってんの?ちばぎん、解釈よろしくお願いします」とちばぎんに託す。「はい次の曲いきます」とちばぎんが華麗に避ける。

「チューナーの呪いがかかってるんで」とチューニング中にサポートバイオリンの成井幹子さんの登場。「神聖な感じでやれよ、お前」との子がmonoに指示。の子は自分の立ち位置を「なんか、土に挟まれてるようだ。劒さんとmonoくんで…」と表現する。どちらも顔の色が土っぽいということか。
そして『白いたまご』。前回のクラブチッタでは過去最多ではないかと思わせるほどのやり直し回数だったけど、今回はスムーズに曲に入る。それはちばぎんのベースが始まる前に、みさこのカウントが入っているからかも知れない。改善したということか。

「大島ー」という観客の声援。「大島…下の名前も言えたら許してあげよう」との子が煽ると「亮介~」という声。「うるせえ!」と返事する。
monoが青いギターを持ったということで『天使じゃ地上じゃちっそく死』へ。曲紹介をするmonoに「なんて言ってんのー?」と客席。「は?なんだよそれ!」と苛立つmonoに、「手話やったら?」との子。「できないし」とマジレスするmono。

「みさこかわいいよー」という声援に「かわいくねーよバカヤロー!なんでかわいいんだ、解明してくれよ、方程式で。monoくんのほうがなんか、かわいいよ」との子が怒る。「monoくんかわいいよー」と客席から聞こえると「かわいくねーよバカヤロー!」との子が返事する。どっちなんだ。
千葉県の柏市の放射能がヤバイという話題になり、の子曰く、放射能を浴びるとの子のイボが肥大化されるらしい。「海に汚染されにいくぞ!」というの子の掛け声により、『怒鳴るゆめ』へ。最近のこの曲は最後が「僕はー、怒鳴るゆめをー、追いかけてー」と、の子が一人弾き語りみたいに歌って終わるのがかっこいい。

の子「そう!俺は今!テンションが始めは上がってる!後半は!後半デスマッチだ!」
みさこ「あのね、テンションが上がりすぎてね、音がリハのときと比べて全然でかくて頭がくらくらするよ、の子さん」
の子「当たり前だ!ライブだ!ライブということはリハとは違うんだよ!で、こういう風に叫ぶことで俺は疲れていく…」
お客さん「がんばれー」
の子「"がんばれー"って…うるせえ!」

メンバーの名前を次々に呼んでいく客席。「monoくんもっと喋ってー」について、「そうだよもっと喋れよ!何言ってんのかわかんねーよ!」との子がいじる。の子、monoが茶色に染めた髪の毛について「E.T.に見える」とdisる。ちばぎんも「茶色に染めればいいと思ってるだろ」と冷たい意見を。
続いて、『E.T.』で繋げたわけではないだろうけど『映画』へ。グッとくる演奏。後半の景色が広がるような曲の展開がたまらない。

の子「みんなー!ノッてるかーーい!!?」
観客「いぇーーーい!!」
の子「ほんと?すげえな」

の子、突然醒めたように反応し、いたずらっ子な笑顔を浮かべる。ちばぎんのブンブンと鳴るゴキゲンなベースから『レッツゴー武道館っ!☆』へ。
ところがの子のボーカルが入る部分、メンバー間で食い違いがあったようで、monoが無理矢理の子に合わせて、仕切り直しもなくそのまま演奏を続行。その間違いが逆に観ているほうをドキドキさせて、ハラハラした。目が離せない演奏になり、逆に良いように作用していた。

「今日はなかなかいい感じじゃないですか?」
ライブのスムーズな進行に、ホッとしているちばぎん。たしかに、6曲続けて現時点で約40分。神聖かまってちゃんとしてはかなり絶好調な進み具合であることは一目瞭然。他のバンドにとっては当たり前なのかも知れないが。
そして、まさかの『22才の夏休み』の演奏へ。
ライブでは初披露。「22才の人っているんですかー?」と客席に問うの子。「はーーーい」と、「結構少ねえなあ…」と残念そうなの子。「うまくいくかわかんないけど」と言い、みさこのドラムから始まる。「キャンディキャンディみたいな声出していけよ」というの子の指示により、いつも以上に高い声でみさこがカウントを叫び、演奏スタート。
『23才の夏休み』の情感がそっくりそのまま一年下げられ、切なさを保っていた。PVでたくさん観ていたからか、映像が思い出す。「君なんて、大嫌い」のあたりのサッカーボールを蹴っている光景など。曲の発表のやり方がまず映像ありきなので、こういった感覚になる人も少なくはないはずだ。
演奏後、初披露にしては良い出来になったようで、満足そうなの子。

の子「なんだもう、末期だな最近。2010年のマヤ文明が来ると終わるんでしょ?」
ちばぎん「ああ、2012年?」
の子「そうそうそう。2012年に終わるんだって?」
ちばぎん「なんでその話するとき俺見るの?マヤ人じゃないし」
の子「まやぎんでいいじゃん」
お客さん「まやぎーーん!!」
ちばぎん「うるせえ!!」
の子「なんでキレんだよ!」
mono「キレ芸は俺だぞ!」

ちばぎんの着ているつなぎについて話が振られる。ちばぎんがツイッターで告知していた痛ベース("痛車"のベース版)にすることについて、「痛ベース!」という声が客席から。「痛ベースはまだです!」とちょっと苛立ちながら答えると、みさこが「まだですぎーん」と舐める。「みさこだまれー!」と野次が。の子が突然テンションを上げて「みさこ黙れ、いいなそれ!お前気に入った!そうだよ、なんでみんな同じようなこと言ってくるんだよーー!もっとそんな感じで逆のことを言ってこーい!!」と喜ぶ。さすが、配信で鍛えた煽り耐性。
ちばぎん「普通に今、クソの子って呼ばれてたよ」
の子「クソの子はいいんだよ」
さすがです。

「雨の曲いきまーす」と言い、『ベイビーレイニーデイリー』へ。みさこが「今日は特別バージョンで…」と言い始め、「聞いてねえよ」「まあ聞くだけ聞いてみよう」との子とちばぎんが反応する。「monoくんが"ちゃららちゃららー"って言う」とみさこが提案。
結果、monoが仕方なさそうに「ちゃららちゃららー!!」と乱暴に歌い、客席から「ちゃららちゃららー!!」と返り、演奏へ。多くの人が笑顔になりながら始まりつつも、きちんと哀愁のまま締める歌。「傘でー隠さないよにー」と歌い、ギターをジャーン!と弾いて終わるのは、いつもながら切ないのだ。

mono「君たちの顔を見ても大丈夫なのようにウィスキーを飲んできたんだけどね。飲ませていただいてます。だけど、酔わなくなっちゃった!」
お客「おもしろい!」
mono「え、おもしろいの?どうやったら酔えるのか、教えてください!」
彼にとっては真面目な悩みらしいけど、誰もが適当に答えている。「とりあえず『さわやかな朝』いきまーす」との子が締める始末。
と言いつつ、ちばぎんのベースが始まってもなかなか演奏に始まらず、の子の静止している顔に客席から笑いが起きる。
『さわやかな朝』だけちばぎん側から撮影する。以前と比べて、ステージの配置が変わり、機材が多くなっていることから、メンバーの顔を一つのアングルだけですべて映すことができない。モニタの存在により、どうしてもmonoの手元が何をやっているのかわからない。顔だけが映ることになり、何をしている人なのか分からない映像になる恐れがある。小さなライブハウスでやっていた頃を懐かしくも思うが、喜ばしいことである。

味噌汁を嗜むの子。「CMくるよ!」とお客さん。「電通を味方にしないと…」との子。「にゃーにゃーにゃー」と連発し、続いて『ねこラジ』へ。
の子の「にゃーにゃーにゃー、サブカルチャー」という掛け声にこっそりとリズムに乗ってベースを弾き始めるちばぎん。そのおかげでスムーズに曲に入ることができたように思う。成井幹子さんのサポートバイオリンの間奏が曲の世界を広げて、とにかく気持ちいい。

「しゅーっ、ぱぱん。アニメタイアップの曲やるか。最近飽きてきたんだよな…」と消極的なことを言いつつ、シューッ、パパンッ!といった音から始まる『Os-宇宙人』の演奏を促す。が、次の瞬間、すべての人が驚く。
「じゃ、『ぺんてる』いきまーす」
「ええーっ!」という会場の反応。「すいません…」と素になって謝るの子。「どっちもやります」と言い、まずは『ぺんてる』の演奏へ。
「ぺんてるにー、ぺんてるにー」のみさこのドラムの叩き方が妙に愛らしくて、最近気になっている。シンバルを両手で楽しそうに叩きながら、バスドラをフフフンって余裕な表情で踏んでいる。ニコニコしながら楽しそうに演奏しているみさこの姿は、いつもの死んだ目で叩いている顔とのギャップがあり、たまにグッとくる。

「劒さーーん」という女性客の声援に、「泥ガールがいる」とみさこ。「みさこボーイはいるのかな?」と問うと、客席から「みさこーー」という声。「こいつロクな女じゃないよ」とmonoが釘をさしたときの、みさこの「どうもー!クソでーす!」という清々しい返しがなんだか良かった。「ドアノブ!」という歓声も上がる。
そしてシューッ、パパンッ!から始まる『Os-宇宙人』が。これがタイアップ曲になったアニメ『電波女と青春男』の原作はの子しか読んでいないらしい。monoが「えらいね、の子は」と言うと、「当たり前だろ!お前よりはえらいよ!バカ!」と返答するの子。

「流れでカップリングやるってのはどう?」というちばぎんの提案により、『コタツから眺める世界地図』。と思いきや、「じゃあ、『ゆーれいみマン』!」との子が言う。「リハでやってない…」とみさこが戸惑う。「えっと、俺、今何やるって言ったっけ…」との子が戸惑う。大丈夫なのか。
「monoくん、大丈夫ですか?あなた全然練習していないけど。monoくんのキーボードに注目!」
の子の合図により、『ゆーれいみマン』がスタート。なんとなく、聴くのが久々のような気がする。終盤のコーラスはちばぎんが担当。最後の「僕はゆーれいを見たんだ!僕はゆーれいを見たんだ!」の連発、そして終わり方がかっこいい。

「えっとね、『あるてぃめっとレイザー!』なんてどうかな?」
ちばぎんがまたもや提案。こうやって順調に進行させていく魂胆なのか。「ばかやろ!あれやったら俺の喉が壊れるんだよ」との子。「ごめんごめん、monoくんが『あるてぃめっとレイザー!』したいらしいんだけど…」とちばぎんが言い、monoが両手を合わせて謝っている。の子は状況を掴めず、「お前、喋れ!」と怒鳴る。
「monoくんがおしっこしたいらしいよー」とお客さんが教える。
「お前、ここでやれよ!」との子が命令。「ここでやるとモテるらしいよ」とみさこが言うが、monoは謝りながらステージ脇に走る。「まじか!」とちばぎんの悲鳴をよそに、トイレに駆けていくmono。その姿をカメラで追った。追ったといっても、monoが本当におしっこをするだけであって、トイレのドアの『TOILET』という字をボーッと撮影するだけだった。しかし、ライブ本番中にこのような光景が映るとは思わなかった。
「もう最悪ですよー!」
monoはカメラに向かって話しかけて、ステージに戻ろうとする。「僕、どういうタイミングで入ればいいんですかね?」と尋ねてきたとき、突然みさこのドラムが叩かれる。『笛吹き花ちゃん』がmono抜きでスタートしていた。
「ひどいっ!」
そう言いながらステージに走っていくmono。途中から演奏に参加するその姿は、どこか感動的。が、これは単にトイレから帰ってきただけである。久々にライブで聴いた。『さわやかな朝』のようにmonoの「はーーほーーっ」というコーラスが入っている。

演奏後、「おかえり!」という客席からの声。「みんなでね、monoくんの良いところばっか喋ってたんだよ」とみさこ。しかし、ステージ脇に置いていたICレコーダーで後でライブの音声を確認すると、「あいつ最低だよな…」というの子の声が入っていた。なんたることか。

無事にmonoの尿意が収まり、『コタツから眺める世界地図』へ。演奏後はの子が欽ちゃん走りでキーボード前に歩み寄る。
ちばぎんが笑う。「すいません、劒さんが伝えてきたことが面白すぎて…本編、あと15分だそうです」と。「ええーーーっ!」と客席。
「最近松戸がやばい。松戸と柏がやばい。2ちゃんねるで昨日見て、震えたぜ。でも俺はそんなんどうでもいい。俺は放射能をあびて、進化する、タイラントなのさーー!!」
ものすごく不謹慎なことを言いながら、の子がヘッドマイクを装着し、緑色の照明の中を泳ぐようにダンスする。『夜空の虫とどこまでも』が始まる。
そのまま『黒いたまご』へ。の子、テンションが上がったせいか、何も悪くないmonoの頭をポンッと叩く。「なんで俺は今お前を殴ったんだよー!」と。誰も知らない。ちばぎんが「仲いいなー」と、みさこが「いちゃいちゃしてんじゃねーよ」と言い、演奏がスタート。
これは間違いなく今日のハイライト。「ばっかじゃね、真っ白て、死ねよ君は」のときのの子の目つきが鋭く、狂気の表情をしていた。青と赤の怪しい照明が合わさり、ステージ上を紫色に染める。monoがなぜかマイクを握って客席に向かって「ああ!」と叫んで挑発する場面。これはちょっと意味がわからなかったけど、ひょっとしたら少しは意味があるのかもと思わせるほど、この演奏は意味がありすぎた。

「これで、一回出てー、また入ってきてー、って感じかな?」とアンコールについて喋るの子。「これ、一回出ていく必要あるのかな。アンコールあるってのが分かっておいて」とちばぎん。
monoが意見する。「僕思うんですけど、一回出て、で入ってくるじゃないですか。"あごーー!"とか言ってくれる声が嬉しいわけですよ」と一回出ていくこと推進派の意見を。の子が「そうなるとお客さんがまた空気読んで、別のことを言ってくれるんですよ」と。みさこが「monoくんが入ってきてもガン無視とか」と提案。結局、monoはどんな状況でもいじられるのだ。

「『聖天脱力』といっても、明日は雨です!」とmonoが天気予報を伝える。の子が「それ、俺がさっき言ったよ。ボキャブラリー少ねーな」といじめる。ちなみに言っていない。
「やって、戻ってきます」との子がアンコールを宣言し、『聖天脱力』の演奏がスタート。
バイオリンとキーボードの絶妙なハーモニーが奏でられ、「絶妙なハーモ二ーで、パティシエも俺の弟子入りかな?」という、かつてのコアラのマーチ配信(ポップコーンの袋の上にコアラのマーチを置いて焼いていたら燃え上がり、家の台所でボヤが起きた)でのの子の名言も聞こえてきそうだ。

本編でもあと一曲演奏できるそうで、最後は『いかれたNEET』
この曲の最後はいつも通りギターを振り回しまくり、危なっかしいの子。しかし、危なくなったときこそが、それはシャッターチャンスなのだろう。カメラマンが一斉にの子に接近し、カメラを構え始める。それはいつも正解だ。やはりこの曲の最後は決定的な瞬間が多いように思う。この日のライブも、の子がパーカッション機材に目がけてギターを振り落とし、「バッシャーーン!!」とものすごい音を立てた瞬間の写真がどこかのメディアに掲載されていた。
「また来ます!」と言い残し、ステージを去るの子。

ステージ裏までカメラで追うと、アンコールのセットリストを決めているメンバー。撮影していると、ちばぎんが足で蹴ってくる。monoくんがカメラ目線。の子さんが「竹内さん行きますか?」とステージに連れ込もうとするが、さすがに無理があるだろう。拒否し、そしてアンコールへ。

「ぴょんぴょこぴょんぴょこ、みんなカエルになって!俺は、帰らないぞ!」
韻なのか、ダジャレなのか、の子がリズミカルに煽情。そしてしっとりと成井のバイオリンとmonoのキーボードが『ちりとり』のイントロを始める。
演奏するたびにますますバイオリンの良さが際立っていく。毎度ながら、の子のギターとmonoのキーボードだけになる最後の余韻といったら、もう。

なぜか演奏中にチューニングが狂ったの子のギター。劒マネージャーが代わりにチューニングをするが、彼の前での子が姿勢よく手を両手で組んで待っている姿に笑いが。ものすごくエラソーな態度になっている。チューニングができると、「おーっ!」という歓声。「さすが俺の弟子だな」との子がますます傲慢。だけど「すみません…」と謝り、そのまま『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。
ドラムがバシバシ鳴っていて気持ちいい。みさこは確実にドラムが上手くなっている。と、素人目から見てもよくわかる。疲れているのか、みさこが時折目を閉じて叩いているその姿は瞑想にも見える。何かしら次の段階に向かっているのだろうか。
最後、の子がおもちゃのようにマイクのコードを持って振り回す。その姿を警戒するように、優しく見守るように、どちらの表情にも受け取れるmonoのキーボードが曲の終わりを告げる。

そして「行くところまでいくんだよーー!!みんなーーアメリカに行きたいかーー!?」との子が本当に関係ないことを絶叫し、『夕方のピアノ』へ。
「思い出されるんだ、思い出されるんだ、だから、僕は、ここに、叩きつける!!」
の子、ちばぎん、みさこの3人の「死ねーー!」という叫び声が鬼気迫っていた。の子が勢いよくギターを振り回し、マイクがポーーンと吹っ飛ぶ。歌える他のマイクを瞬時に見つけたの子。マイクを取り上げるが、音が出ない。怒り、マイクをぶん投げる。そしてmonoのマイクを奪い、ボーカルエフェクターがかかってない声で「死ねよ佐藤!」を連呼。アンプにもたれ、スタッフが一斉にアンプを支えに駆け寄る。ステージ上は荒れまくっている。

「どんなに地震で揺れようとも、俺が拳でバンッて地震を止めるから!」
テンションの上がりきったの子の発言は、不可能でも可能に聞こえてしまう。いや、不可能だ。そしてギターを持たず、マイクを持ってうろうろとし、「あんちきしょーー!」と叫びながら歩いて、最後の曲『学校に行きたくない』が始まる。
の子が近くにあったイスをステージ脇に目がけて投げてきた。危ない。軽くよけた。

monoがやることがなくて暴れまわり、「計算ドリルを!!」などとコーラス。うずくまったり、飛び跳ねたり、台の上に立ったりと、動き回るの子に注目してしまう。「おかーーーさーーん!!」とmonoが絶叫し、若干視線を奪われるが、次の瞬間にの子が客席に華麗にダイブ。客席から伸びる手の方向はの子一点に集中しており、「ああっ!ああっ!ああっ!!」と何度も叫び、マイクをぶん投げ、自分のマイクが使えなくなったらmono、ちばぎんのマイクをぶん取って叫ぶ。マイクスタンドが次々となぎ倒れていき、ステージ上がカオス状態だ。
「計算ドリルを返せこのやろーー!!」と叫び、ライブは終了。

ライブ後、ステージに1人残ったの子は笑顔で丁寧に挨拶。先ほどまでの大迫力の表情とは違い、穏やかな笑顔を見せていた。
「みなさん、ありがとうございました!無事帰ってください!」と言い残し、何度もお辞儀し、ステージを去っていった。

楽屋でちばぎんに「ちんぐ的に、今日は何点?」と聞かれた。どう答えても僕の何様感がハンパないが、あえて何様のつもりで「80点」と答えた。最高のライブだったけど、神聖かまってちゃんはまだまだ先を行くに違いない。そんな予感しかなかった。
Fender Japanの方が楽屋にいらしていて、Squier by Fenderのブランディングポスターを見せていた。の子さんがモデルのポスターだ。写真を撮った佐藤さんが嬉しそうに掲げていた。写真のの子さん(割烹着)がめちゃくちゃかっこいい。日本人でポスターになるのは初めてらしい。"遂にここまで来た"感がとてつもなく伝わるものだった。
の子さんは、ライブが終わってからも高いテンションが続いていた。身体は疲れていたけど、すごく気持ちよさそうだった。

神聖かまってちゃんと知り合って、ちょうど2年になった。
2009年の5月26日、下北沢。この頃、神聖かまってちゃんが今のようになるとは誰が予想しただろう。「サブカルチャー!」などと駅前で叫ぶの子さんを人々は避けるように歩いていた。今や、人だかりができる。いや、避けるように歩く人は今でもいるだろうが。でも彼にとっては、むしろ少しは避けられて、嫌われたほうが刺激になるのかも知れない。
「みさこ黙れー!」
リキッドルームでのライブ中のこういった野次に、の子さんは喜んでいた。
賛否両論を好む彼にとっては、配信中の冷ややかなコメントも刺激的なのかも知れない。事実、peercastで配信していた頃から今まで、彼は批判的なコメントや場の雰囲気が悪くなるようなコメントを積極的に拾っている。
自分たちの現在を叩き台としているからこそ、今がある。初めてライブを撮影した日の日記を遡って読むと、あの頃から全く変わっていないことばかり。
それが一番嬉しくて、かっこいいなと心から思いました。

2011年5月26日 恵比寿リキッドルーム
〈セットリスト〉
1、いくつになったら
2、白いたまご
3、天使じゃ地上じゃちっそく死
4、怒鳴るゆめ
5、映画
6、レッツゴー武道館っ!☆
7、22才の夏休み
8、ベイビーレイニーデイリー
9、さわやかな朝
10、ねこラジ
11、ぺんてる
12、Os-宇宙人
13、ゆーれいみマン
14、笛吹き花ちゃん
15、コタツから眺める世界地図
16、夜空の虫とどこまでも
17、黒いたまご
18、聖天脱力
19、いかれたNEET
(アンコール)
1、ちりとり
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、夕方のピアノ
4、学校に行きたくない

2011年5月19日木曜日

神聖かまってちゃん@川崎クラブチッタ

神聖かまってちゃん、フリーライブツアーで初の川崎クラブチッタでのライブ。

川崎に住んでいると身としては地元に来てくれて嬉しい。が、川崎市に住んでいるのに電車で1時間くらいはかかるため、結局東京でライブしているのと変わりない。
フリーライブツアーは先日の名古屋公演も無事に終了。みさこさんとmonoくんがMC中に険悪なムードになり、気まずいムードが漂った瞬間もあった。それが『26才の夏休み』の演奏でカバーされ、結果、感動的なライブになったようだ。
大阪では打ち上げでケンカ。渋谷は大盛況。名古屋はライブ中に険悪。そして川崎はどうなるのか。相変わらず起伏のある神聖かまってちゃんのライブ。毎度ながら、ライブが始まるまでどうなるかは予測不可能だ。

クラブチッタに着くと、劒マネージャーに連れられて楽屋へ。先日撮影した撃鉄の渋谷クラブクアトロのライブ映像と、劒さんがベーシストで在籍しているバンド・あらかじめ決められた恋人たちへの『Back』という曲のPVを一緒に楽屋で見る。
の子さんは会った途端、「おー!」と笑顔で握手してきて元気いっぱいに思えた。「竹内さん、なんなら今日、ステージ上がってきて撮っちゃってくださいよ。竹内さんのこと知ってる人いると思うんで。5人くらい」と言われ、5人くらいなので断った。
ちばぎんは配信のセッティングに一生懸命。みさこさんは自身のバンド・バンドじゃないもん!のときの衣装と同じだった。monoくんはいつものウィスキーを装備していた。

本番が近づいてきたので、の子さん側でカメラをスタンバイ。劒マネージャーの前説(TRG)があり、見事に噛んでいた。「頑張れー」という声援が聞こえ、うろたえている様子には笑いが起きていた。

『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、メンバーが登場。
みさこは小走りでステージへ。ちばぎんは配信中のノートパソコンを持っている。続いてmonoが舌をぺろぺろしながら出てくる。最後、上手からの子が満面の笑みを浮かべながらステージに現れて、そのまま下手へと消えていく。客席からは悲鳴が。monoが連れ戻し、の子が無事登場。

「そんな感じで神聖かまってちゃんです!よろしくお願いしまーす!」
ちばぎんの挨拶のあと、デーーーーーン!とドラムとベースが鳴る。の子は「やべっ!セトリの紙忘れた!」と慌てており、劒マネージャーがなぜか余裕の表情でセットリストの紙を持ってくる。
「これないと、3曲目くらいで忘れちゃうんだよ…」
はにかみながらセットリストをじっくり眺めるボーカリスト。いつもの光景だけど、おそらく他のバンドのライブだとありえないのだろう。

「いやー、川崎のクラブチッタということで」とmonoが喋り出す。
「そうですねー川崎のクラブチッタといえば、オアシスのイメージが。この場に来るってことがこう、ぐぁーーっとすごいなんか、僕はちょっと、なんか、リアム・ギャラガーだ。いや、ノコム・ギャラガーだ。神奈川では初めてだからな、なかなかテンション上がるな」
ノコム・ギャラガーは嬉しそうな表情。とにかくオアシスが来たことのあるクラブチッタというイメージがあるようで、その喜びをかみ締めていた。

1曲目は『いくつになったら』
今のところフリーライブツアーの1曲目はすべてこの曲で統一しているようだ。
広い。とにかくステージが広い。の子側から撮影していると、ちばぎんがとても遠い。これは神聖かまってちゃんが大きくなったということか。ズームアップするとブレるちばぎんの顔から、それが伺えてしまう。
の子側だからか、劒マネージャーが持つ配信中のパソコンの撮影が近くで行なわれており、これがなかなかアングルが被る。そしてなぜか劒マネージャーが撮影中の僕の顔にパソコンを向ける瞬間があり、戸惑う。意味がわからない。僕はライブしていない。リアルタイムで配信を観ていた人によると、ばっちり映ってしまったらしい。

「神奈川に僕が来たのは、木村カエランド以来です。はい。神奈川っていう高級住宅なイメージが僕にはあるんです。千葉魂を見せてやるしかないんだよ。千葉の人がいたら失礼ですけども、なんか神奈川のほうが高級っていう…チューニングさせろよ!千葉魂もチューニングだ」

カエランドは懐かしい。劒マネージャー、の子、mono、竹内という変なメンバーで2年前の夏、横浜の赤レンガ付近で行なわれた木村カエラの野外ライブ『GO!5!カエランド』を観に行った。あの日はたしかに楽しそうだったけど、やっぱり楽しい思い出だったのか。
の子はしつこいくらい、クラブチッタでライブをする喜びをかみ締めている。

の子「ここはレッド・ホット・チリ・ペッパーとか、オアシスとか、もっと言ったらニルヴァーナとか、オアシスとか…」
mono「またオアシスかよ!」
の子「好きなんだよ!」
mono「俺だって好きだよ!」

続いて『天使じゃ地上じゃちっそく死』。死にたいというテンションには見えない状態で「死にたい」を連呼。演奏後、「いやー、楽しいです」と言っていたし。楽しく死にたいのか。
「新しい場所で新しいプレイスでライブってことで、僕はなんか変な感じだなー。お、おとぎの国か…?」
楽しそうに喋るの子。セットリストの紙をガン見している。ここからはまたまたmonoの滑舌の悪さが話題になる。

みさこ「歯医者何年通ってるんだっけ?」
mono「15年…いや、歯並び悪いから。もともと歯ないけども」
の子「お前のそんな自伝の映画ができたらいいんだどな。ということで『映画』やります。これは、うまい」
mono「うまいね」
の子「お前ほんとのこと言えよ!」
mono「準備準備!」
の子「準備?じゃあ勝手にやるか!」

『映画』の演奏に入ろうとするが、またもや「いや俺、神奈川初めてなんですけども…」とまた神奈川の感慨に耽ろうとするの子。
「なんか、高級そうななんか、絶対外出たらお嬢様がなんか日傘さしててさ、なんか、"あの人アゴ出てるから"とか"あの人目がテンパってるから"とか、心の中で言ってそうなピーポーがいるのかなあと勝手に感じてるんですけども」
またもや高級イメージ。どうやらmonoとの子がお嬢様にdisられている錯覚を感じるようだ。

お客さん「千葉ニューもやばいよー!」
の子「ちばぎん?ちばにゅー?」
ちばぎん「いや、俺もどっちかわかんない…」
お客さん「ちばぎんもいいよー!」
ちばぎん「あ、ありがとうございます…」

「じゃあ、セットリストがあるんですけども…」と、なぜか次に演奏する曲を再考しようとするの子。「えっ、今『映画』って言わなかった?」とすかさずちばぎんが会場全員の気持ちを代弁し、の子が照れ笑いする。「『映画』…ヤだなあ」と困惑させてくる。「このために練習してきたよ」とmonoが自信満々に言うと、の子が「あたりめーだろ!」とつっこむ。たしかに。
こうして無事始まった『映画』。ようやく聴けた。相当昔に作られた楽曲だそうで、ずっとお蔵入りにしていたようだ。教室の後ろの席にいる“君”に目がけて、映画のような美しい世界を演出しようとする歌詞。青くて、若い。の子がこんなにロマンチックな歌詞を書くのかと誰もが驚いただろう。『ちりとり』に匹敵するラブソングだと思う。
「3、2、1」とカウントした途端にジャーン!とシンバルとギターとベースが景色を広げさせ、空がキラキラと光りだすようなピアノのメロディが奏でられる。
この日、最もときめいた瞬間だった。
「図書室で君をみつけたよ スローモーションで動いてる 古い映画のように絶賛上映中 巨大な思いを映してる」
淡い恋心が、映画の演出表現や女優や作家などの固有名詞を使って歌われている。小さな教室から大きな景色へと向かう曲の展開がたまらない。神聖かまってちゃんには「死ね」「死にたい」などといった一見過激に思われる言葉が散りばめられた楽曲もあるが、一方で、『ちりとり』『ベイビー・レイニー・デイリー』、そしてこの『映画』のような純粋なラブソングもある。どちらも同一人物でなければ描けない世界であるし、どちらもあるからこそ絶妙なバランス感覚で成り立っている。そのふり幅にはいつも驚かされる。でもそれは、人間誰もが持っているであろう感情と衝動のふり幅なのかも知れない。
それを率直に表現できるのがの子という人間であり、あらゆる感情をストレートにぶつけるからこそ、たくさんの人の心を動かしているのだろう。

の子「ここ凄いな。こういうところなのか…」
ちばぎん「ていうか、いつもよりスモーク濃くない?」
みさこ「雲の上にいるみたい。天界人みたい」
の子「てっ、天界人?何言ってんだお前」

次の曲を決めようとしていると「ミスター成井さん」との子が呼びかける。「ミスターではない」とちばぎんが冷静に訂正。サポートバイオリンの成井幹子さんがステージに。
現在行なっているレコーディングの話を語るメンバー。ひとしきり語った後、「わくわくさーん!あ、わくわくさんじゃねえ、まきおさーん。『美ちなる方へ』やりたい」との子がスタッフ・まきおくんに言い、戸惑うメンバー。成井さんは『美ちなる方へ』はバイオリンを弾かないのだ。
無事、バイオリンが入る『白いたまご』の演奏へ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ」との子が慌てると「結構待ったんだけどな…」とちばぎん。
「チューニングの鬼だからな、俺は。チューニングを1ミリもずらさない…これ、ほほーって」
ちばぎんのベース始まりと、の子の喋りがかぶってしまい、曲のスタートを連続3回ミスるというハプニングが。最終的にはちばぎんが「始めますよ?」とわざわざ言った後、無事に『白いたまご』がスタート。

の子「いやーなんかな、曲多いとな。これがな、ナパームボムとかだったら凄いんだけどな」
ちばぎん「ナパームボム?」
の子「うんなんか凄いんだよ爆発するんだよ世界が!通じる人もいるんだよ!」
客「クロノトリガーでしょ?」 
の子「クロノトリガー?ちげーよ!!」

「ここから横浜中華街まで行って配信したかったんだけど、遠いんすか?」というの子の問いに、「遠いー」と川崎市民の意見。いや、川崎の人かどうかはわからないけど、たしかに遠いのだ。そしてそのまま『美ちなる方へ』の演奏へ。
後半の盛り上がりがキマっていた。客席も、腕でウェーブみたいなものを作っている人たちが何人かいたようで、演奏後にちばぎんも「お客さんもすごいですね、チームワークが」と。

の子「いやー、ここまでくるとまた『いくつになったら』やろう、ってなりそうな感じなんですけども。あ、ちば銀行さん、ちば銀行さんはパッセンパッセン(セットリストに紙に、演奏済の曲のところに線を入れて分かりやすくする行為のことらしい)してますか?」
ちばぎん「してないっす。僕、覚えてるんで」
お客さん「ヒューーー!!」
の子「なんだお前それ、早稲田か」
ちばぎん「早稲田じゃないです」

の子の中では頭がいい人のことを早稲田というらしい。セットリストの演奏済みの曲を覚えているというだけで。
「早稲田ということで、僕の心が傷ついたんで。そんな早稲田とか地上にあるものなんてどうでもいいんだろ!それよりも海にいきたいんだよ!深海魚になりたいんだよ!とりあえず『怒鳴るゆめ』です」
色々つっこみたいところ満載の曲への繋ぎ。ドラえもんの映画『アニマルプラネット』の「ジャイアン、ほーい」を真似して楽しんだの子は、「次、なにやるんだっけ?」とますますやばい。忘れすぎだ。ちばぎんが「流れ的には『怒鳴るゆめ』かな」と冷静に対応する。の子はテンションが上がりきっているからか、忘れやすい頭になっている。
「じゃあ、海賊をぶっ殺しにいく曲です。こんだけ人数いれば白髭くらいは倒せるんじゃない?みなさん、歌っていたいたいたいただければ、いいと思っています」
噛みまくった後、『怒鳴るゆめ』。の子が歌詞を忘却の彼方へ飛ばしてしまったのか、ちばぎんのコーラスと噛み合っていない部分があった。

「神奈川イコール、日傘差してそうなイメージ」
の子、またまた神奈川イメージを。これで本日3度目だ。monoは「木村カエランド行ったとき、高貴な女性ばっかりだったからね!」と話を膨らまそうとする。
セットリストの紙にパッセンパッセン(の子語)されていることに気づいたの子は「monoくんがしたの?」と尋ねる。どうやら劒マネージャーがこっそり紙にパッセンしていたらしい。「ああ、らーめんか」と劒マネージャーのことをあだ名で済ましたの子は、「次は『さわやかな朝』やろう」と指示。

の子「『さわやかな朝』も、遅いバージョンのほうがいいって言われたりもするんですけどね。どっちがいい?」
お客さん「早いほうがいいー!」
の子「早いほうがいい?何言ってんだお前?」
尋ねて答えてくれたお客さんへのまさかの対応に、会場には大きな笑いが。
ちばぎんが『さわやかな朝』のベースを始めるが、そのリズムに合わせてなぜか『STAND BY ME』を熱唱し始めるの子。懐かしい。昨年の夏の埼玉県の坂戸市を思い出す。しかし、なぜ突然。疑問を抱きながらも演奏に乗るメンバー。
まだまだ喋り続けるの子に対して、みさこが強制的に最初のドラムを始める。笑いながらも「イラッとするな、ほんと!」と叫ぶの子。この曲はmonoが「はーーほーーー」とホーリーな声を出していて、すごくいいんだけど、失礼ながらちょっとおもしろいことになっている。
そしての子が突然、みさこの方を向いて演奏を止めるように指示。そのときのmonoといえば、戸惑いながらの子の顔を見て、声はいまだ「はーーほーーー」とホーリーな声を轟かせている。
「リズムがずれてた…」
そして仕切り直す。「ここまで赤裸々に言うバンドいないよね」とmono。「もう一回、『さわやかな朝』いくぜ。逃げねえぜ俺は!」との子が言い、再度演奏へ。今度は無事、演奏が終了。

「最近俺の売名に協力している曲をやります。では『電波女と青春男』の、まあ、『日常』しか観てねえけどな」
『Os-宇宙人』の演奏に入るが、また仕切り直し。本日2度目だ。グダっている空気がずるずると引きづられているけど、再開した演奏はバッチリ。そのままカップリングの『コタツから眺める世界地図』へ。「じゃあいきます。覚悟しとけよ」となぜかキメたmonoに対し、の子が「みなさん、こいつのキーボード聴かないようにしといてください」と言葉を添える。
途中、の子だけに照明があたる演出がかっこいい。それからブァッと光がステージ上に広がり、視覚効果になっていた。さすがはクラブチッタ。照明の数が半端ない。

ギターを置いてキーボードの前に向かうの子が「もう何をやるかわかるだろ」と告げる。観客が「おおーっ!」と歓声を上げる。「やりづれえんだよ」と、いつも装着しているヘッドマイクが壊れたことを明かすの子。
「よう、よう川崎へやってきたぜ。だけど、千葉の、千葉魂をお前らに見せてやる、田舎、田舎だからこそ夜空の虫が見れるのです、だから、ここに、千葉県で夜空の虫を見た光景を、ここに叩きつけたいと、思います」
言葉というものが一切ない曲だからこそ、聴く人それぞれの光景を思い浮かび上がらせることができる。なんとなくだが、この曲には死のイメージが漂う。『夜空の虫とどこまでも』が演奏される。
そしてそのまま『黒いたまご』へ。
このときの演奏は神がかっていた。大きい会場であればあるほど、この曲は映えるように思う。

の子「木村カエランドに出たいですよ劒さん。3万5千人くらい来て、野外フェス。神聖かまってちゃんランド?かまってランド?」
mono「海が見えたらいいよな…あれ?」
まったく客からの反応のないことに焦るmono。「お前、海行ったらそのままブータンとかいけよ。イースターとか行って、配信しろよ」との子に言われる。たしかにその配信は見てみたいが。

成井幹子さんのバイオリンが加わり、『聖天脱力』へ。まだチューニングができていない様子のの子に、客席から「成井さんが待ってるよー!」の声。「うるせえお前に言われたくないよ!成井さんも空気読んでんだよ!」との子。
『聖天脱力』は朝の気だるい気分と、さわやかさな日差しが同時に攻めてきたあの感覚が歌われている。

次は『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。monoが「オアシスが『ロックンロールスター』をやるような感覚」と形容する。
正直、やはりこの曲を撮っているときが一番楽しい。先ほどからステージ脇に場所を変えて撮影しているが、客席が盛り上がり、展開がドラマチックで、ビデオカメラに映る光景がとにかく感動的なのだ。この曲だけで彼らの活動の2年間を表現できるような気がする。最後、monoがの子の様子を伺いながら笑顔でキーボードを弾く姿で終わるのは、グッとくる。

「ここはレッド・ホット・チリ・ペッパーズとかレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンとかがやったことがあるからなー」
本日何度目だろう。の子のクラブチッタへの感慨。
「えっと、ラスト3曲だそうです」
ちばぎんの告げにより、客席から「えーーっ!?」と悲鳴が。「ROCKS TOKYOとかな。世界の終わりに突撃したいなあ」と宣言する。「世界の終わりのブログなんなんだよあれ。色々やったらさあ、すぐ削除されちゃったよ」と。色々やったらって、何やったんだろうか。

そして、まさかの『スピード』。久々の演奏。
しかもバイオリンが加わっている。哀愁のメロディに、スピード感のあるバンド演奏が。一瞬静寂になるときの緊張感がいい。なかなか歌い始めないの子に客席から「の子ーー!」と絶えない声援。もっと欲しいのか、まだまだ溜めるの子に「かっこいいー!」「イケメーーン!」と女性客の歓声が上がる。

の子「神奈川は木村カエランド以来だけど、町並みとか好きだからまた来たいです。やりたい曲いっぱいあるんだけどね。うーんと…『怒鳴るゆめ』か?」
mono「やったやった!」
ちばぎん「『いかれたNEET』とかどうですか?」
『いかれたNEET』のベースを鳴らしつつ、ちばぎんが提案。これは終わりに向かっている証拠。ラスト3曲ということを意識し、ちばぎんが提示している。この曲は終盤に演奏する曲だ。
「チョコボール!」
の子が演奏に入るときに言った言葉が謎であるが、この曲の最後ほど危険なものはない。ステージ脇にいるとそれを痛感する。の子がギターを振り回し、カメラマンたちが一斉によける。皆さん、よけるのが慣れているようだ。瞬時に察知し、よけつつパシャパシャと撮影するその姿がかっこいい。荒れたステージを直したり、回収するスタッフもかっこいい。ギターを振り回すの子も当然かっこいいけど、かっこいいが伝染していた。
曲が終わるとき、ギターを思いっきり投げつける。直撃したマイクスタンドがガタッと揺れた。「まだ1曲残ってるのに…」とちばぎん。

本編最後は『あるてぃめっとレイザー!』
「じゃあミッシェル・ガン・エレファントみたいにいきます!お前ら『スモーキン・ビリー』か?あとなんだっけ?『PUNKY BAD HIP』か?新しい国ができたー」
途中、なぜかブランキー・ジェット・シティが入っているが、ギターがかき鳴らされると演奏開始。やることがないmonoであるが、なぜかステージから姿を消し、途中から登場。何をしていたのだろう。

「なんか音聞こえづらくてリズム合ってなかったかも知れないけど、ま、テンションだね!」
の子が元気よく言い訳をし、本編が終了。ギターを回収する劒マネージャーに、「劒さん、弾き語りしてくださいよ」と話しかけていた。

アンコールはちばぎんの登場から。
「あのー、毎回なんだけどー、アンコールで俺だけ出ているけどみんな気づかないんだよね」と愚痴をぽつり。
「ここって消灯時間あるみたいだね。修学旅行みたいだね」
恐らく、楽屋でスタッフに時間を守るように言われたの子。またまたカエランドのことを呟く。「神聖、カマランド。オカマみたい(笑)」と楽しそうだ。

アンコール一発目は『ベイビーレイニーデイリー』
の子「じゃあみなさん"ちゃららちゃららー"って言ったらのよらにはよわに(聞き取れない)…」
ちばぎん「何言ったかわかったか、お前ら?」
しっかりと客席から「ちゃららちゃららー」という掛け声があり、無事に演奏がスタート。

「横浜中華街に行きたかったんだけど、横浜中華街配信したかったんだけどもー」と、この日はやたらと同じことを繰り返すことが多いの子。「今日はワンマンなんで制限がないんで。俺がここで座って、30分休んで、それからライブ始めることもできるから」と無理を言いつつ、会場を盛り上げる。
そして『ちりとり』。最後は「かおりちゃん」などと呟き、余韻を残す。言葉にならない感情を叫びまくる。

ちばぎんの口から、ニューアルバムが8月31日に発売目標であることが伝えられる。の子は「アルバムなんかどうでもいい。この場で、どう伝えるかだけ」と『23才の夏休み』の演奏を促し、みさこのドラムからスタート。
メンバーがステージを去り、これでアンコールも終了。と思いきや、の子がステージに居座り、まだライブをやろうとしている。
の子「『さわやかな朝』とかやってないなー」
お客さん「やった!」
の子「『怒鳴るゆめ』とかかな…」
お客さん「やったよー!!」
セットリストの紙を見ながらタイトルを読み上げ、やっぱり演奏済みの曲を忘れているの子。「『学校に行きたくない』とかやりたかったんだけどなー」と言うと、客席から『学校に行きたくない』合唱が。の子が嬉しそうにピョンピョン跳ねながら、演奏がないアカペラでの『学校に行きたくない』が。

「計算ドリルを返してください!計算ドリルを返してください!僕のひとしを返してください!」

そんな中、ちばぎんが「うちの、ケチな事務所の社長が延長料金を払ってくれました」と再登場。まさかの、もう一曲演奏可能。客席から歓声が起こり、「な、こうやって無理をいえばなんとかなるんだよ!怒られるのはこっちだけど、お客さんは関係ないから。て、かっこいいこと言っちゃってるけど」との子が言うと、ますます大きな歓声が。
「『ぺんてる』やってねーな。『ぺんてる』いきまーーす」

最後の曲は『ぺんてる』。「大人になりました」のとき、の子だけにスポットライトが当たる演出。ジャーーン!と鳴ると会場全体が明るくなり、ステージからはお客さんの顔が見える光景になった。
この日、途中からはずっとステージ脇から撮影した。以前撮影していた頃とは全く違う景色だ。こんなにも多くの人が神聖かまってちゃんに拳を上げて、笑顔のまま、歓声を上げている。メンバーはこんな光景を普段から見ているんだなあと思うと、しみじみと感じるものがあった。

演奏後、場内BGMが流れ。それでもまだステージに居座るの子。劒マネージャーにギターを回収され、まだ『学校に行きたくない』を一人で歌い続けている。
最後は客席にダイブ。「みなさんありがとうございましたー!」と言いながら、人の波に乗りながらステージに帰ってくる。
彼の真後ろから撮影すると、向こう側にたくさんの人の手が。木村カエランドならぬ、神聖カマランドがいつか実現するかも知れない。オカマの楽園みたいだけど。この日の何倍もの人が彼の目の前で歓声を上げる日が、いつか来るかも知れない。そんな予感のする絵になった。
の子は「ありがとうございました!」と言いながら、マイクを床に叩きつける。笑顔で手を振りながらステージをあとにした。

グダグダであり、の子が演奏した曲を何度も忘れ、やたらとクラブチッタと木村カエランドへの感慨に耽るMCが多かった。
ライブの時間は、なんと2時間48分。ずっと同じ姿勢で撮るので、終わった後は放心状態だ。ライブの記憶もすっ飛んでしまうほど。しかし、僕以上に疲れているはずのちばぎんは廊下で対面すると、いきなり土方担ぎをしてくれた。更にお姫様抱っこもされた。ときめいた。さっそく神聖カマランドの気分になった。
の子さんが「竹内さんの撮ったやつ見せてくださいよ」と言ったので、再生して見せた。「竹内さんの撮り方だ…」と見ている彼とその横で一緒に見ている僕を、カメラマンの佐藤さんが携帯で撮影していた。
撮ったものがいつかどこかで公開できる日が来ればいいな、と思いながら川崎クラブチッタを去りました。
『映画』の演奏は、メンバーの表情がよかった。グダグダな雰囲気でも、曲に入るとグッとくる瞬間がいくつもある。だからこそ、神聖かまってちゃんから目が離せないでいる。

2011年5月19日 川崎クラブチッタ
〈セットリスト〉
1、いくつになったら
2、天使じゃ地上じゃちっそく死
3、映画
4、白いたまご
5、美ちなる方へ
6、怒鳴るゆめ
7、さわやかな朝
8、Os-宇宙人
9、コタツから眺める世界地図
10、夜空の虫とどこまでも
11、黒いたまご
12、聖天脱力
13、ロックンロールは鳴り止まないっ
14、スピード
15、いかれたNEET
16、あるてぃめっとレイザー!
(アンコール)
1、ベイビーレイニーデイリー
2、ちりとり
3、23才の夏休み
4、ぺんてる

2011年5月15日日曜日

神聖かまってちゃん@ETV特集


先週の日曜日、NHK教育の『ETV特集』にて神聖かまってちゃん・の子さんが1時間に渡り、取り上げられました。

タイトルは『町に僕のロックは流れますか?~ネット世代のカリスマ“現実”に挑む~』というもの。

冒頭から、千葉県のとある団地の一室、の子さんの部屋が映し出される。蹴ったり殴ったりでボロボロになった壁とふすま、意味不明な大量の落書き、火をつけた跡。カメラは、奥にある自室をスタジオに改造した部屋に入り込む。

学生時代にいじめを受け、高校を中退。以後、ひきこもり同然の生活を送っていた彼が、「唯一と言っていい、人との接する場所」であるインターネット上に自作の曲をアップロードし、2ちゃんねるで宣伝し、叩かれ、それでもめげずにやり続け、やがて次第に認知されていくようになる。
そんなナレーションとともに、内容は、昨年12月にメジャーデビューしてからの彼の「仕事としてバンドをすることにおける葛藤」。今年4月までの彼の社会との折り合い、大人との対立を重点的に描こうとする。

の子「人間誰にだってあるんじゃないですか?もっと見られたいなあとか。復讐したいなあとか」
ディレクター「何に復讐したかったの?」
の子「世界にだよ」

自ら制作したPVと、ネット上の反応。生配信やライブ、映画撮影などの活動をなぞる。かつて自分のペースで制作活動を行なっていた頃と、今の環境とは違うことを表す。
「作曲している風景を撮りたい」と頼むディレクターの作曲部屋への入室を拒み、理由を「あんたが嫌いだから」と答える。「ほっとけ、うるせえ、黙れ、死ね」と言葉を並べ、その後取材陣との連絡を途絶えさせる。今年2月の渋谷AXでのライブ後はNHKの取材に関してマネージャー・劒さんに不満を爆発させ、怒りで全身を震わせながら、楽屋通路で叫ぶ。

「俺だって一応全部罪悪感感じてるんですよ。NHKさんにだってしわよせあるし。誰も感じてねえだろ?罪悪感なんて。俺が全部抱えてるんだよ!」

そんな彼に対し、劒さんが「減らそうよ。一緒に考えよう。そんな役に立たないかもしれないけどさ」となだめるが、「くそったれ…」と言いながら泣き出す。
その後のインタビューで「寂しさは原動力」と、潤んだ目で取材に答える彼。
不安なとき「こんな人生でいいや」と思いながらも、曲が出来たとき、「俺はこれを持ってる」と自分の中でしか流れていない音楽を見つけたときは自信になるという。
降りだした雪を喜び、外に出ていく彼。レコーディングが上手く行き、手ごたえを感じた様子の彼。生配信で、ノートパソコンの向こうにいる人々に話しかける彼。
“現実”と自分との狭間にいる彼の様々な表情が映し出され、やがて3月11日へ。東日本大震災が起き、レコーディングスタジオから外へ避難した神聖かまってちゃん。ヘルメットを被って避難している人たちの中で、彼はノートパソコンを手に持って配信を続ける。
地震の影響により4月1日の両国国技館でのライブは見送りに。2ちゃんねるではファンから嘆きのコメントが綴られ、街の灯りは消えていった。彼に迫っていたはずの“現実”が、向こうから遠ざかっていく。
「現実社会が、の子から撤退し始めていた」
そんな中、神聖かまってちゃんはフリーライブ全国ツアーの決行を発表する。有名なライブハウスを巡る長期のツアーは、神聖かまってちゃんにとって初めて。そして生配信で、彼はノートパソコンの向こうにいるネットの人たちに語りかける。

「俺らはこれから始まるぜ」





自分にとって神聖かまってちゃんは「いじめ」「ひきこもり」「非・リア充」といったキーワードはそれほど重要ではないため、NHKの切り込み方が新鮮だった。

このテーマでなければNHKでは企画は通らないはずに思えたので、多少の違和感はあっても、不満は感じなかった。むしろ、企画通りに台本を作り、断片的な映像の中に物語を見つけなければならない制作側の“現実”を感じてしまった。その結果、ドラマとして枷になったのは結局、NHKの取材自体のようにも感じた。

僕の中で、の子さんは現実に挑むというよりは、自分自身に挑まなければならないことに苦悩しているように思う。
NHKの取材で「自分で自分がわからないんです、僕」と言っているように、ライブも、色んなメディア媒体の取材も、メンバーのことを「お前ら大っ嫌い」「いらねえ」と言ってしまうのも、相手に問題があるというよりは、彼の中で解決することで前に進んでいく気がする。それは本人が一番よくわかっていると思う。ドキュメンタリー中の枷となったNHKの出演も、アニメの主題歌も、売名のチャンスだ。わかっているけど、それができないときがある。適応できるかどうかは、自分の中で判断するしかない。
そして、昨年末に『GiGS』の取材に同行させてもらったとき、彼の部屋で最も忘れられなかったのは「俺はやっぱ、他人に恵まれている」という言葉だった。どう考えても、彼の境遇は奇跡としか思えない。当然、それは彼に類い稀な才能と行動力があるからこそ人が集まってくる。
マネージャーの劒さんも、daredevilのスエタカさんもコマツさんも、カメラマンの佐藤さんも森さんも、丹羽さんも、音楽ニュースサイト・ナタリーも、神聖かまってちゃんを取り巻く大人たちは、技術的にも人間的にもおもしろくて、豪華だ。イベンターのホットスタッフの野村さん、所属レコード会社のワーナーの野村さんにしても、の子さんのやることなすことに寛大で、むしろ歓迎しているくらいに思う。
そして、恐ろしいくらいに素直で正直者のmono君と、ライブ中の気配りも車の運転もこなすちばぎんという幼なじみの男2人。その雰囲気と唯一の女性メンバーというところで、入り口を格段に広げてくれているみさこさん。外見でも内面でもキャラクターが成り立っているメンバー3人。
“現実”が彼の行く手を阻むと言うのであれば、それを描くためには彼を取り巻く人々の存在を無視してはならない。神聖かまってちゃんの作り出す世界観は当然、の子さんによるものだけど、彼自身を描くとき、やっぱりメンバー3人の反応と言葉も重要だ。黒澤明監督の映画『生きる』だってそうだけど、本人と向かい合うよりも、周囲の人の証言によって描かれる真実だってある。

昨年の代官山UNITでのライブ後、非常階段で久しぶりに2人きりで30分くらい話したとき、渋谷WWWでのライブ中のケンカの話になった。「なんであのとき俺、mono君を殴っちまったんだろう。自分でほんと、よくわかんないんですよ」と言っていたのが印象的だった。
思うに、人は相手によって多少表情を変えるものだ。
彼のお父さんにしか、メンバーにしか、劒さんにしか見せない表情は確実にある。僕も、自分が見た、見せてもらえた彼の姿でしか彼のことが語れない。人によっては「それは違う」といったこともあって当然だ。NHKに見せた表情は、最初は無邪気にピースして笑っている顔だった。それが次第に仕事として形式的に撮らなければならない事情に彼と摩擦が生じ、の子さんから「うるせえ、黙れ」といった言葉が吐き出されたように思う。でも、怒鳴り散らしたと思えば、雪にはしゃぎ、濡れた靴に困りながら笑い、かわいい靴下を垣間見せる。
「それは違う」といった番組を見たときの違和感はあって当然だろう。の子さんは、人一倍、表情がころころ変わる人だから。「君には見せたい素顔があると思います」「悲しい顔を君には見せたいと思います」といった『美ちなる方へ』で歌われている顔がたくさんある。
僕も今、この日記を書いていて、自分の中にある記憶と言葉を紡いで勝手に物語にしている。勘違いだってたくさんある。でも、それも一つの彼の姿であることは間違いないと思っている。
丹羽貴幸さんのYOUTUBEでの『の子さんドキュメンタリー』、松江哲明監督のスペースシャワーTVでの番組『極私的神聖かまってちゃん』、入江悠監督の映画『劇場版神聖かまってちゃん』、そして今回のNHKでの番組『町に僕のロックは流れますか?』。
同じ神聖かまってちゃんを扱ったものでも、それぞれの映し出されるものは全く違う。入り口も、切り口も、描き方も、表情も。

『ETV特集』のドキュメンタリーを見ていて、番組が言うところの“現実”の正体が結局よくわからなかった。彼が対峙しているものがブレていた。精神的には揺れ動いていても、彼のやることにはブレがないと僕は思っている。
その証拠に、彼が3年前に作った『ロックンロールは鳴り止まないっ』のPVがある。往年のロックスターたちのYOUTUBEの映像を画面撮りしたもの。合間にの子さんのうつろな目から覚醒したような目が挿入され、その演出だけでロックンロールの初期衝動が表現されている。
映像の中にある、THE WHOのピート・タウンゼントがギターを床に叩きつけるのも、GGアリンが顔面を流血させているのも、ザ・タイマーズの忌野清志郎がヘルメットに丸サングラス姿なのも、彼はこのPVを作って以後、すべてやってきている。の子さんにとっての憧れが、PVにすべて詰まっている。いわば、その後のシナリオのようにも感じる。





彼は、この映像の中に行き着きたいのではないだろうか。
ここにやがて、生配信しているノートパソコンを床に叩きつけて破壊する彼の姿が映し出されれば本望なのかも知れない。

生配信の画面が映し出されたスクリーン。初めてパソコンを破壊した2009年12月24日、そこに最後に映った文字こそが、僕にとっての神聖かまってちゃんを表しているように思う。





偶然にもパソコンのログイン画面が映し出され、その意味が、別の意味に捉えることもできる光景。

新宿や渋谷駅前で熱唱して警察官に補導されるときも、1人で電車に乗っているときも、家でメンバーと話しているときも、彼の姿をこのパソコンはずっと見ていた。何の罪もないのに壊された不遇なパソコンであるが、これはパソコンなりの返答であり、彼への賛辞にも見えてしまう。
僕のビデオカメラのテープに映り込んでいる神聖かまってちゃんは、単純に、おもしろくて、たまにかっこいい。そしてシュールだ。深い闇が根底にあるのは、わざわざ描くまでもなく、表現においては言うまでもなく必要不可欠な要素だ。
もし僕が神聖かまってちゃんで作品をつくるとすれば、『の子 ロックしています』なんだろうと思う。
僕のテープにある神聖かまってちゃんはもうちょっとシュールで、けっこうマヌケで、たまに繊細だ。だいたい、撮ってきたオフショットは楽屋での子さんが女装しているのと、埼玉県坂戸市の夏祭りで元気いっぱいに歌っているのと、彼の家でPVの素材を親切に見せてくれたりした、まったりとした光景しか映っていない。

でも多分、これが自分にとっての神聖かまってちゃんなのです。


2011年5月7日土曜日

バンドじゃないもん!@原宿アストロホール

原宿アストロホール11周年記念『PRIVATE LESSON』にバンドじゃないもん!が出演。オープニングアクトに杏窪彌(アンアミン)、対バン(?)にでんぱ組.incが登場。

2回目のライブで、アイドルとの共演。秋葉原のディアステージで夜な夜な熱い声援で叩き上げられてきたでんぱ組.incを相手に、バンドじゃないもん!がどんなライブを見せるか。今回は劒樹人、ミナミトモヤがステージにいない。みさことかっちゃんの女子二人になり、正々堂々とアイドルに勝負をかけた。

t.A.T.uの曲を登場SEに、ステージに降ろされていたスクリーンが上がっていくとバンドじゃないもん!のライブが幕を開ける。
前回とは全く違うライブの雰囲気。さすがはアイドル出演のイベントだからか、客席の声援が熱い。「みーさこぉおお!」という声が響き渡る。対バン相手にも同じくらいのテンションで接するアイドルヲタの皆さんは尊敬に値する。ロックのライブでもこのようなことが起きればいいのに。
ドラムセットが2台立ちはたがるステージだが、2人の姿はない。
「あれ?」「いない!」「みさこ透明!」
観客が戸惑いの声を上げつつも手拍子で迎える中、VJの映像が後方スクリーンに映し出される。『バンドじゃないもん!』という大きな文字にカラフルな光が拡散して浮かび上がり、もはや大物バンド(じゃないもん)の雰囲気です。ようやく登場した2人に拍手喝采、雄たけび、声援が巻き起こる。もはやアイドルのような佇まいだ。
「みさこだよ!」「かっちゃんだよ!」
音声がどこからともなく聞こえ、飛び跳ねたり、手を振って挨拶するバンドじゃないもん!セーラー服のような衣装に、短いスカート。これは男子のハートを狙い撃ちするつもりなのか。少なくとも神聖かまってちゃんのライブとはかけ離れた雰囲気に、思わず笑みがこぼれてしまう。

1曲目は『バンもん!のテーマ』。「バンドじゃないもん!ポポポポーン!」と、トラックから『AC』的なみさこの声が響き渡ると始まりの合図。2人が一斉にドラムを叩き、演奏へ。客席では合いの手が完璧。あまりの盛り上がりに笑顔を浮かべるみさことかっちゃん。
曲の途中で2人が立ち上がり、マイクを持ちながら歌い始める。
「メーデー、メーデーこちらみさこ!ただ今第三惑星地球・日本・東京!原宿アストロホールの基地に潜入!」
あまり完璧ではない喋り方が逆に初々しくて面白いことに。「バンバンバン、と言ったら皆さんで"バンドじゃないもーん!"と叫んでください」とかっちゃんが促すと、会場全体に「バンドじゃないもーーん!!」という叫び声が響き渡る。大成功だ。
そして曲に戻り、ライブハウスの熱気はいきなり最高潮に。VJの映像もアニメーションからCG、コラージュから実写までバラエティに富んだもの。最高の環境でのライブだ。

「今日はまだ2回目なんですけど、緊張してる部分もあるんですが…」
みさこがいつも通りのゆるいMCを始めると、「俺もー!」「いいよいいよー!」と愛のある声援が。「初回のライブのときにいた二人はちょっと、天に召されてしまいまして…」ととんでもないことを言い出して笑いを誘うが、「全然大丈夫!」「いないほうがいい!」という女性客の叫び声に少し心が痛んだ。
「私たちはその天の声に導かれるように演奏するという形になりました!」
「天の声を聞きながら活動を…」
色々とんでもないことばかり言うけど、二人ののほほんとしたまったりパワーですべて許されてしまう。「天の声の一人は裏方で出てないんですけど、今日誕生日なので…」と劒樹人のバースデイを祝福。みさこが「3、2、1」とカウントし、「おめでとうー!」と観客が叫ぶ。

『ショコラ・ラブ』はライブ動画をすでに公開しているだけあってか、イントロが始まったときの曲が認知されてる感は大きかった。「オイ!オイ!」とコールが凄い。神聖かまってちゃんのライブでも聞いたことがない声援だ。いまだかつてない受け入れられ方をしているせいか、この日のみさこの表情はいつもと違う。キリッとし、何かの自覚を持ったような表情をしている。単に緊張しているだけだと思うが。
ダダダダダンッ、ダダダダダンッとみさことかっちゃんがそれぞれドラムを叩き合い、「ひゃうぃごーっ」と掛け声を出すと『愛の世界』へ。会場の盛り上がりは一切衰えをみせない。ヲタの皆さん、マジでさすがです。

「みっさこぉおおおお!!!」「かっちゃーーーん!!!」
アイドル然とした楽しい雰囲気の中、みさこが「もうすぐかっちゃんは、諸事情によりかっちゃんじゃなくなるんですけどね。あの、結婚とかじゃなく、親の…」と容赦なく言い出すと、「重いーーー!!」と客席から悲鳴が。それでもかっちゃんの呼び声をみんなで考えたりと、和気藹々なMC。
「次は天に召された人のテーマ曲ですね。題名が『32th』っていうんですけど、たぶん歌詞を聴いたら誰もが『32th』ってタイトル忘れると思うんですけどね。このテーマになった人が32才を目前に天に召されたんで、『32th』になったんだよね」
「そう…だねっ」
みさこのMCに優しく合わせるかっちゃん。とにかく劒樹人はここでは死んだことになっている。

『32th』は前半、ドラムスティック2本をツノのように頭に備えつけ、ひょこひょこと揺らすといういわゆる"萌え"なアクションでゆるーく攻めてくる。そして後半はドラム対決と言わんばかりの、硬派な展開に。さきほどまでニコニコとしていた二人が真剣な表情でドラムを叩き合い、宇宙空間をワープするようなVJの映像も相俟って、クールかつアートな光景に。バンドじゃないもん!はこういうところがあるから魅力的に思います。
3分間にも及ぶドラム対決に、歓声を上げていた客席もグッと緊張感に包まれて黙り込む。見つめ合うみさことかっちゃん。グゥオオオンというトラックの音がグルグル回り、不思議な快感を与えてくれる。

「なんでこんなに楽しいお客さんばかりなのかな?」とみさこ。ますます盛り上がる客席。次回のライブ告知をすると「ロリータ18号」「大槻ケンヂ」という対バンの名前に大歓声が。
最後は「最終回っぽい感じで」とみさこが言うと、「終わらないでー!」と声が。『歌うMUSIC』の演奏へ。今回のライブで初披露。
昔見たアニメのエンディングテーマのように懐かしく、誰からも愛されるようなキャッチーなメロディ。また来週か…と次回放送を思うと少なからず寂しい気持ちにもさせるような曲だ。終始笑顔で歌い続けるみさことかっちゃん。2人が楽しそうに叩いている姿に、観る人たちの顔もほころんでいく。

「どうもありがとうございましたー!バンドじゃないもんでしたーー!」

2人がドラムセットから立ち上がり、ステージ中央に肩を並べる。「からの~?」と期待を寄せる観客の声に、「ありがとうございましたーー!!」と並んでお辞儀する2人。
笑いと拍手に包まれ、ひょこひょことかわいげに歩いてステージを去っていくみさことかっちゃん。なんとなく、バンドじゃないもん!が始まった気がする。そんな予感のするライブでした。

バンドじゃないもん!【歌うMUSIC】2011/5/7 原宿アストロホール