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2002年8月10日土曜日

NUMBER GIRL@ROCK IN JAPAN FES.2002

ナンバーガール、ロックフェスのトリ。メインステージでのサザンオールスターズの裏で、レイクステージでの出演。ただでさえ暑いのにTheピーズやBOOM BOOM SATELLITESで熱くなり切ったステージに、20時頃。ステージ後方には『ROCK IN JAPAN』という大きな文字。茨城県のひたちなか、夜空の下でナンバーガールがぶちかました。

セッティング中に中尾憲太郎の近くにマイクスタンドが設置されていた。中憲が歌うのだろうかと思いきや、この日は特別ゲストが用意されていた。

ステージからスタッフの姿が消えると、どこからともなく聞き覚えのある声が。
「SAYホーッ!」
観客にコール&レスポンスを要求する。姿なき要求者が更に続け、「SAYホッホッホーッ!」「SAYええじゃないかええじゃないかええじゃないかー!」と独特なものに。向井秀徳の声だ。なぜか「ホーッ」が掠れており、泣きそうな声になっていたことに会場が笑いに包まれる。まだ姿は現れていないのに、会場が一気に温まる。
「水着のネーちゃんも、童貞のニーちゃんも、ヤクザのニーちゃんも、開演まで、準備が整い次第、もうしばらくお待ちください」
先ほどまでの絶叫から、いきなり落ち着いた口調でアナウンスする。
その後、音出しのチェックとしていつものナンバーガールスタッフのローディーがステージに。なぜかベースでラーモンズを弾き始め、「アイッ!オウッ!レッツゴー!」と観客を煽っていた。照明まで用意されていた。ステージ脇で中憲が笑っていた。
そしてメンバーが暗闇の中、ステージに続々と現れる。


向井はテレキャスターの金属っ気たっぷりな音を鳴らし、一人で歌いだす。
「売れる~売れない、二の次で~かっこのよろしい歌作り~聴いてぇ~もらぁ~えりぁ~、万々歳。そんな~私は、歌舞伎者。人呼んで、ナンバーガールと発しやす」
そして「やばい、さらにやばい。ばりやばい」といった具合に『ZEGEN VS UNDERCOVER』に突入。メンバーが繰り出す最初の一音がばっちり。スモークがたかれ、神がかったステージになっていた。
そのまま間髪入れずに『omoide in my head』。カラフルな照明に彩られたステージの上で、田渕ひさ子がギターを高く掲げて低い音をグォオオンと鳴らす。

『NUM-AMI-DABUTZ』ではダイバーが絶えず降りかかり、会場は興奮の渦に。向井は歌詞を間違えていたが、そんなことは気にしない。「冷凍都市の暮らし あいつ姿くらまし」で合唱が起きる。相変わらず終わり方がびしっとキマっていた。
『EIGHT BEATER』『裸足の季節』と続けていく。向井のテレキャスターの音は、ますます暴力性を帯びていく。耳を突き刺すほど、鋭い。不快な騒音ギリギリのラインで気持ちよく響いている。単に心地よいハーモニーであることだけが音楽ではないと思っている。危うさと暴力を感じなければ、映画には説得力が生まれないと同じように。それを音楽でやっている。こういったスリルはナンバーガールのライブでしか味わえない。

『TATTOOあり』の向井による冒頭の弾き語りが終わると、「ギター、田渕ひさ子」とまさかのメンバー紹介後、ひさ子のギターが炸裂する。その瞬間、ひさ子が笑顔をみせた。
『DESTRSUCTION BABY』のダブバージョンで、中憲付近に設置されたマイクスタンドの使いの主がやってくる。こだま和文だ。「トランペット、こだま"エコー"和文」と向井が紹介し、フォーーンと夜空にトランペットの音が溶け込んでいく。向井は煙草を吹かしながらステージをうろうろと歩き、人力エコーで「ベイッベイッベイッベイッ…」と声を響かせながら歌っている。フェスで聴くと、スケールが圧倒的に違う。
そのままこだま和文のトランペットが続き、未発表曲『ネクラの坊さん』へ。明らかな「メ」と歌っているようだけど、「ネ」なのか。途端に入るひさ子のノイジーなギターにギョッとする。ステージ脇ではフェス出演者であるsmorgasの加藤来門が楽しそうに踊っており、向井が曲中に来門に歩み寄り、招き入れる。するとマイクを掴み、田渕ひさ子のすぐ横でラップを披露。メンバー一同、笑顔になる。客席から見ると左から、こだま、中憲、向井、ひさ子、来門という並び。その後ろでアヒト・イナザワがおかずたっぷりのドラムを遊ぶかのように打ち鳴らす。来門は、坊さんだけでなく色んな人が「屁をこいた」と歌っていた。フェスならではのイベントなのかも知れない。ナンバーガール外の人がステージに上がっているのを初めて見た。

その後は『性的少女』と続き、『I don't know』へ。
向井が「あの子は今日も漫画を読んで、笑いながら、眠ってしまいました」と弾き語っている間、野外ならではの印象的な光景を見てしまった。
1羽のトンボがステージの上のほうで羽ばたいており、中憲がそれを見つめていた。やがて演奏に入り、スモークの中でトンボがふらふらと回転しながら息絶えて、ステージのどこかに姿を消してしまった。トンボがエレクトリックな音像にやられて、赤い血を流しながらくたばったのか。ひょっとしてなんでもないシーンなのかも知れないけど、ナンバーガールの世界観が具現化されたかのような、奇跡的な光景に思えた。それを中尾憲太郎が見つめていたという点でも。

最後は『INUZINI』。アヒトが立ち上がり、「気をつけー!妄想人類諸君の発展を願ってー、ばんざーい!ばんざーい!ばんざーーい!」とマイクを使わずに叫び、向井がギターをグュイーンと鳴らし、演奏へ。
後半は祭囃子のような展開。「らっせーらー!」「ええじゃないか!」などと踊りを促すような歌となり、ひさ子のギターも和風のメロディ。アヒトのドラムはまるで太鼓のようだった。フェスは祭り。ロック・イン・ジャパン・フェスティバルが『日本のロック祭り』となり、どんちゃん騒ぎで終了する。


アンコールがあり、ステージにメンバーが戻ってくる。「しつこい声援、誠にありがとうございます」と向井が挨拶し、語り始める。
「この暑い、暑い夏が終われば、また、あの鉄のごとく吹く風の季節がやって来るのでしょう…」
「鉄」というキーワードが出た時点で、「おおーーーっ!」と歓声を上げる観客。答えはもちろん『鉄風 鋭くなって』。Aという名のノラ猫が3丁目でくたばったのと同じく、トンボもステージでくたばった。ひたちなかでは涼しい風が吹き、鋭さはなかった。ジャリーンと砂が混じったような音が出る向井のギターだけがとにかく鋭かった。

「あの部屋で、あの曲をあの子が"変な歌"って言って…それは私の妄想なのかも知れません」

アンコールの最後は『IGGY POP FAN CLUB』で終了。


野外で見るナンバーガールは格別だった。風に吹かれて、ステージにたかれたスモークがもくもくと形を変えていた。ライブハウスとは違い、音の広がりに限界はない。着地点のない鋭く尖った"鋼の振動"が、ロックにもダブにも祭囃子にも変えていた。
こだま和文、加藤来門という客人もフェスならではの遊び。そしてトンボも乱入し、その音に負けたのか、はたまた普通に寿命だったのか、『I don' know』で息絶えてしまった。冒頭の静けさの中でトンボが飛んでいた光景は、いまだかつて味わったことのないムード。ナンバーガールの世界にぴったりなシーンだった。
向井の言う"鋭角サウンド"には新たに祭囃子な音頭も加わり、都会に佇む少女がますます過酷なことになっていく。
それにスリルを感じるかどうかで、楽しみ方は変わっていく。
ナンバーガール、今後どうなっていくのか。ますます期待が膨らむ。



<セットリスト>
01. ZEGEN VS UNDERCOVER
02.
omoide in my head
03. NUM-AMI-DABUTZ
04. EIGHT BEATER
05. 裸足の季節
06. TATTOOあり
07. DESTRUCTION BABY w/こだま和文
08. ネクラの坊さん w/こだま和文、加藤来門(smorgas)
09. 性的少女
10. I don't know
11. INUZINI
<アンコール>

01.鉄風 鋭くなって
02.IGGY POP FAN CLUB

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