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2002年11月28日木曜日

NUMBER GIRL@ZEPP TOKYO

ナンバーガールが解散する日が来るなんて。

ラストツアー『NUM-無常の旅』は解散とともに告知された。気が付けば東京行きの深夜バスに乗っていた。気が付けば、というのは嘘だ。チケットはぴあで2時間並んで購入した。それでも、手に入れたのはなんとか2階席。ナンバーガールの最後の姿を観ようと、全国各地でチケットの争奪戦が行なわれたのだ。
公式サイト『狂う目』で解散が発表されたときの心情は忘れられない。何度も「更新」ボタンを押し、解散の記事が取り消されないかと現実を疑った。『NUM-HEAVY METALLIC』で大きな展開を迎えて、これからだと思っていた矢先。
深夜バスでは延々とナンバーガールをMDで聴いていた。結局一睡もできないという無常の旅を経て、東京・お台場のZEPP TOKYOに辿り着いた。

開場すると、ありえないくらいの観客の多さ。これが東京か。関係ないだろうが、当日券もあったせいか、人を詰め過ぎたZEPP TOKYO。しかし、2階席は意外にスペースがあった。座席の前のほうでは椎名林檎、宮藤官九郎といった著名人の姿も。
おなじみのローディーがステージのセッティング中、ベースでラモーンズを一人カバー。「アイッ!オウッ!レッツゴー!」とコール&レスポンスする会場。無常の旅といえど、湿っぽくない。本当に解散するんだろうか。最後まで信じられなかった。

照明が落とされ、TELEVISIONの『マーキームーン』が流れる。 ステージだけが照らされて、メンバーが登場する。
この瞬間を何度観てきたことだろう。これが最後になるなんて、いまだ信じられない。


向井秀徳が静かにテレキャスターを鳴らし、この日のライブの序章を言葉なしで綴る。そして激しく掻き鳴らされ、『I don't know』が始まる。中尾憲太郎のベースが戦車が近づいてきたかのような迫力で地面を揺らし、アヒト・イナザワのドラムと田渕ひさ子のギターも同時に加わる。そのときの爆発音は、代用できるものがない。
そのまま『はいから狂い』へ。照明の通り、青く、清く、病的な街を駆け走るような気分。客席はダイブする人、拳を突き上げる人、ひたすらジャンプする人で溢れていた。ほとんどの人が「この曲を聴くのはこれで最後になるのか」という事実を背負っており、解散ライブツアーの哀愁を一瞬感じた。が、次の瞬間にはすぐに忘れてしまう興奮があった。

「夏に嘘っぽく笑うあの子は…嫌いじゃない。そう、たとえばあの子は透明少女」

向井の曲紹介で、会場はますますヒートアップ。『透明少女』は向井のMCの直後、見事なタイミングでひさ子のギターが始まる瞬間がたまらない。どれほどこのようなMCを聴いてきたことだろう。そんな少女について「嫌いじゃない」と言った向井により、ナンバーガールに登場してきたあらゆる女の子が肯定されていく気がした。
刺青の女の子、『TATTOOあり』も同様に。ひさ子のギターソロ、その音がキリキリと胸を締め付ける。バンドが一挙に巨大化でもしたかのように、音が大きく感じる瞬間がある。これは感情のせいだろう。
そして『ZEGEN VS UNDERCOVER』へ。

「売れるぅ~売れない、二の次で。かっこのよろしぃ~歌ぁ~作りぃ~。聴いて~もらぁ~えーりゃ~、万々歳。そんな~私は、歌舞伎者」

最近お決まりのセリフを弾き語りで歌い、ドーーンと始まる演奏。どれほど「バリヤバイ!」と叫んできたのだろう。それも、この日と2日後の札幌で終わってしまうのだ。終末感たっぷりではあるが、今までのツアーで見せた向井の余裕な雰囲気は、この日はあまり見られなかった気がした。
曲と曲の間、MCも無くてステージが沈黙していると、客席からはメンバーの名を叫ぶ声が絶えない。「向井ー!」「中憲ー!」「アヒトー!」「ひさ子ー!」と。その中に「ひさ子さーん!かっこいいー!」という叫び声があった。目の前で椎名林檎が叫んでいた。

『鉄風 鋭くなって』の後は『URBAN GUITAR SAYONARA』。このバンドの魅力にとりつかれた者であれば誰でもそうだと思うが、PVのシーンが目に浮かぶ。中憲が坊主になるというシーンが。だけど、目の前にいる中憲はロン毛だ。表情が髪の毛で隠れて見えない。どんな顔をしてベースを弾いているのか、想像してしまう。
『NUM-AMI-DABUTZ』の演奏中、ステージ後方のカーテンが開く。なにかが出てくるのか?と期待したが、何も出ず。なんやねんな。『delayed brain』ではミラーボールがキラキラと光を拡散させ、ムード感たっぷりな演出だった。

「黒目がちな少女が…白目を剥く瞬間…俺は嫌いじゃない」

といった風に、この日は色んな少女を肯定していた。白目を剥かれても困ると思うが、この日の向井は「嫌いじゃない」シリーズを連発。その後に続く『性的少女』『CIBICCOさん』も嫌いじゃないはず。ナンバーガールの歌に出てくる女の子たちはみんな寂しげ。それが鋭く尖ったギターサウンドによって物語られる。まるで何本もの映画を観ているかのような感覚を与えてくれる。

「俺はこの世の憂いを、オーサカの橋の上から見ていました」

ここは東京だけど。向井が『SAPPUKEI』の前に語り、ひさ子の単音フレーズが慎ましく鳴り始め、曲が次第に盛り上がっていくスリル。そのまま『U-REI』へと続き、あの真っ黒で闇に包まれたアルバムの世界が繰り広げられる。放課後の少年少女を見て、これほど憂うべきなのか。向井はメガネを光らせながら絶叫を続ける。
「たまーにさぁーとなる感じー!」

『MANGA SICK』。シニカルな恋愛ソング。ここで歌われた「現実的すぎる風景はいらない」を、解散に当てはめて歌いたい。解散という現実はいらない。ここにいた誰もがそう思ったはずだ。やはり、事実を受け止めたくない。未練がましいライブ鑑賞であるが、これはライブ感傷だ。この曲も、聴くのが最後になるなんて。『Sentimental Girl's Violent Joke』『DESTRUCTION BABY』と、感傷的な少女について歌われた曲が続けられる。
だんだん、少女が減っていく感覚だ。曲が終わるごとに、向井が「嫌いじゃない」と肯定し、記憶と妄想の中から消し去っていく作業をしているかのような。これは向井にとってのナンバーガールとの決別ではないだろうか。今までに、番号を振り分けられた少女たちがそれぞれ「透明」「性的」「Sentimental」「DESTRUCTION」などと形容されてきた。単なる少女になっていく。そんな寂しさを感じてしまった。

この曲の少女もそうだ。『YOUNG GIRL 17 SEXALLY KNOWING』。家猫娘が久しぶりに街を出て、その街に慣れていき、もう家には帰って来ないような。サビに入る直前、ひさ子がギターを高く掲げて鈍い音を響かせる瞬間。これを目に焼き付けなければならない。

「少女が飛んだのを、俺は見た。力強く、惑わされもなく、少女は、飛んだ」

『TRAMPOLINE GIRL』は都会のビルから飛び降りた女の子を「完全勝利!」と言い表す、とても切迫感のある歌詞だ。福岡から上京し、都会の闇に埋もれた向井の精神状態や感覚が色濃く反映されているように思う。彼は自分の心情を少女に当てはめることで、あらゆる少女を作り出してきたのだろう。
飛ぶことが、いいことなのか。凛々として、背高草のざわざわとした騒やかの中で、このライブハウスりように騒がしい音の中で、おとなしく静かに佇む女の子がいた。ナンバーガールという物語の中の登場人物は、日常にも確実にいる。できれば少女のように、惑わされもせずに生きたいものだ。

そして『日常に生きる少女』へ。少女シリーズは、これが最後。冒頭の騒がしい演奏の後、向井のギターがリズムを刻み、アヒト・イナザワのドラムがそれに応戦する。中憲が激しく首を振りまくり、後半のひさ子が弾くメロディは女の子の泣き声のように、セリフのように、言葉にならない何かを訴えかけてくる。
と、ほぼイメージだけで書き綴っているけど、ナンバーガールは記憶と妄想がテーマだ。幼い頃の記憶から、今現在の自分の妄想だけで世界が成立してしまう。

「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」

このセリフをこれまで何回聴いてきたことだろう。
ライブでも、映像でも、CDでも。家で聴くCDプレイヤーからも、外で聴くMDプレイヤーからも。耳を突き刺すドラムロールは血管やら神経やらを伝って脳や心臓に到達し、現時点、彼らを観たいがために東京まで足を運ばせている。気持ちが行動を起こす。それはナンバーガールのメンバーだって、そうだろう。福岡からはるばる上京し、音楽をぶちかますために東京にやって来た。そしてこの日、東京での最後のライブ。これからメンバーはどうしていくのか。何をするのか。そんな期待と不安は必要なかった。
『omoide in my head』が鳴ると、すべてを忘れさせてくれる。無常の旅なんかじゃない。始まりがあれば終わりもある。無常はもっと先に待ち構えており、ナンバーガールは終わらない。「17才の俺がいた」のであれば、今19才の俺はこれから10年20年過ぎても、ナンバーガールが好きでたまらないに違いない。
そうでなければ、泣いてないよ。鼻水と涙でいっぱいだ。
「感傷の渦巻きに沈んでいく俺を」、僕を、突き飛ばしていこう。インマイヘッド。


アンコールを呼ぶ手拍子は鳴り止まない。
向井だけがステージに戻り、ドラムスティックを手に持ち、ドラムをスコーーーン!と叩く。ものすごくエフェクトかかった音だ。笑いが起きる。
メンバー全員がステージに再登場し、RAMONESのカバー『I WANNA BE YOUR BOYFRIEND』。そして『IGGY POP FAN CLUB』。淡く、青い日常風景が迫ってくる。観客は向井のボーカルに合わせて大合唱。向井のギターソロを十分堪能し、何年経とうが、ナンバーカールの忘れてた輪郭を一寸これからも思い出していこうと思った。

「本日の公演は以上で終了しました」というアナウンスに、客席からは「ええーーーっ!?」というどよめき。歓声は鳴り止まず、ずっと居座り続けるファン。メンバーを呼ぶ声、アンコールを呼ぶ叫びが何度も響き、そんな中、なぜかひさ子だけがステージに現れた。

 「ありがとうございましたぁあああ~。かんぱぁあああ~い」

ゆるーく笑いながら一言告げる。それも向井のマイクスタンドを使ったので、背伸びして言ったのだから会場の空気が一気に和む。「かわいいいぃぃ~!」と男女問わず歓声が響き渡る。
それでも観客は帰ろうとしない。そりゃそうだ。これが東京で観る最後のナンバーガールなのだから。
突然、どこからともなく向井の声が。

「SAYホーーーッ!!」

まさかのコール&レスポンスを促す声。場内アナウンスで向井の声が聴こえ、観客も待ってましたと言わんばかりのテンションで「ホーーーーッ!!」と何倍もの声量で返す。
ところが次の展開に、どよめきが走る。

向井「SAY帰れーーーーーー!!!」

観客「ええーーーっ!!」

向井「SAY帰りやがれーーーーーーー!!!」

場内は爆笑の渦に。

「えー、終電時間に間に合うように、お気をつけてお帰りください。えー、ライブ中のカップル誕生を、皆さんで祝ってください。乾杯!」

さすがです。


人生最後のナンバーガールのライブ。

いつも通り、鋭く尖ったギターの音、腹に響く重低音、マシンガンのように撃ち鳴らされるドラム。絶叫ボーカル、少女を歌った歌詞、観客のテンション。すべてがいつも通りに、無常の旅が終わった。ナンバーガールにとって、ライブは残すところあと1つ。札幌ではどのようなライブが繰り広げられるのか。行けないけど、何度も想像した。想像するとワクワクするはずが、切なくなった。

向井秀徳があらゆる少女に別れを告げるように、後半は怒涛のガールソングのセットリスト。観客は『TRAMPOLINE GIRL』のように飛び跳ね、凛々と負けていなかった。「完全勝利!」とは、向井なりの優しさなのかも知れない。

ナンバーガール、本当にかっこいいバンドです。



<セットリスト>
01、I don't know
02、はいから狂い
03、透明少女
04、TATTOOあり
05、ZEGEN VS UNDERCOVER
06、鉄風 鋭くなって
07、URBAN GUITAR SAYONARA
08、NUM-AMI-DABUTZ
09、delayed brain
10、性的少女
11、CIBICCOさん
12、SAPPUKEI
13、U-REI
14、MANGA SICK
15、SENTIMENTAL GIRL’S VIOLENT JOKE
16、DESTRUCTION BABY
17、YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING
18、TRAMPOLINE GIRL
19、日常に生きる少女
20、omoide in my head
<アンコール>
01、I WANNA BE YOUR BOYFRIEND (RAMONESのカバー)
02、IGGY POP FANCLUB

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