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2001年11月8日木曜日

NUMBER GIRL@大阪ベイサイドジェニー

bloodthirsty butchersとのツーマンライブツアー・HARAKIRI KOCORONO TOURが遂にやって来た。
HARAKIRIはナンバーガール。KOCORONOはブッチャーズ。そのネーミングセンスもずば抜けてかっこいいツアーの関西編は、大阪ベイサイドジェニー。

『マーキームーン』を登場SEに、まずはナンバーガールの登場。
向井秀徳は真っ白けっけの服でコーディネートされ、ライトに反射してとにかく眩しい。後光とかそういうのではなく、物理的に眩しいのだ。田渕ひさ子も白っぽい服装。中尾憲太郎はボーダーの服で、囚人のようだ。アヒト・イナザワは赤い。と、無駄にファッションチェックを行なったのも束の間、彼らの第一音は低い重低音。それ、すなわち『鉄風 鋭くなって』だ。

しかし、今回はいつもとワケが違う。ダブバージョンの『鉄風』である。鋭く尖ったテレキャスターの音が時折空間を切り裂くように響き渡り、終始無表情な田渕ひさ子のギターがリズミカルにテロテロリンと鳴る。向井の中盤のギターソロは和風なメロディ。予測不可能とも言えるアヒトのおかずたっぷりなドラムは、充実感たっぷり。
そして『TATTOOあり』から曲のスピードが一気に加速。客席も大いに盛り上がり、ひさ子のギターソロの瞬間は何か大きなビルが破壊されたかのような衝撃が脳天から足元まで駆け巡るのだ。この興奮を覚えた人たちが歓声を上げていた。

初披露となる『真っ黒けっけの海』。汚れた海を泳ぐ夢ばかり見ている女の子について歌われた曲。『Sentimetal Girl's Violent Joke』の世界の続編とも呼べる、感傷的な女の子が想像できる曲だ。向井のギターと歌だけで始まるが、サビではすべての楽器が一気に集う。
「頭の機能がぶっ飛んで!」といった絶叫があったような気がする。
とにかく、向井のギターが焼き焦げたような音。ジリジリと煙を上げるように、寂しい、いや、寂しがってる、いや、寂しい自分を得意げに見せている女の子の歌が披露されていた。

「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」から始まったのは『タッチ』。真っ黒けっけの海を泳ぐ夢を見る女の子も嘘笑いで放課後の恋を探していたのだろうか。ナンバーガールの曲に登場する女の子はみんな、寂しげで、顔は見えない。輪郭だけがあって、ぼんやりと記憶の奥底で笑っているのだ。

「今年で3回目である、このHARAKIRI KOCORONO TOURも、今年で3回目です」

日本語が完全に崩壊している向井のMCが笑いを誘う。「我々の演奏の後も、bloodthirsty butchersの演奏を楽しんでいってください。それでは、bloodthirsty butchersの好きな曲をやります」と言い、『プールサイド』のカバーを披露する。
ブッチャーズのオリジナルと違い、ナンバーガールは少し攻めている様子の曲調。それはやはり、中尾憲太郎の直線的なベースがそうさせているのだろう。ガリガリガリとひさ子はギターを掻き鳴らし、高音が延々と響いている。水色の飛沫がイメージできる。曲の世界観を大切にしたカバーだ。

「赤とんぼが飛んどったよ」

向井は突然、MCでこう呟く。いまいち反応の薄い会場に向けて、なぜかどんどん早口言葉で同じ言葉を繰り返す。「あかぁんがとんどぁよ」といった具合に、「何喋っとんのか分からん…」と自分で自分をつっこんでいた。それでもMCを続ける。

「赤とんぼが飛んどったよ。止まったよ。…今度はスズメバチが飛んどったよ。小学3年の○○君が、スズメバチの巣を叩いて刺されたよ。スズメバチに刺された痕は残ってないけど、他の傷はまだ残ってるよ」
意味のわからない語りが、なぜか最後は切なさを帯びていた。心の傷、というつもりなのか、そのまま切なさを持ち運んで『日常に生きる少女』へ。スズメバチが本当に関係ない。

そして「中野駅の4時から6時の間、そこに流れる空気と出会うことがある」と向井が言う。なんだそれは、と思ったら「クーキ」と言い、まさかの新曲『Ku~Ki』が聴けるとは。
「半・分・空・気!」というアヒトのカウントによって演奏がスタート。ゆったりしたテンポから始まり、中後半は突然スピードが速まり、キラキラとした街をかけ走るような田渕ひさ子のギターのメロディが気持ちいい。『SUPER YOUNG』と『水色革命』が合わさった感じなんだろうか。最初期のナンバーガールの楽曲に近いように思えて、少女の存在がどこか儚げで鬱屈している様子は『SAPPUKEI』以降の世界観に通ずる。福岡編のナンバーガールが、都会に巻き込まれた。そんなイメージだ。

その後、『我起立唯我一人』『IGGY POP FAN CLUB』を演奏し、ナンバーガールのライブは終了。田渕ひさ子が楽しそうに飛び跳ねながらギターを弾き、男くさいステージが一気に彩られる。どれだけ必要な存在なんだろうか。


ナンバーガールの後は、bloodthirsty butchersの出番。

ミニタリーな格好の吉村秀樹。帽子も迷彩柄でキメており、ここは戦場かと思わせる。アルバム『yamane』を中心にしたセットリスト。1曲目からそのオープニング曲『theme』、そして『happy end』。吉村の滲んだギターの音、射守矢の深く図太いベース、小松の軽快ながらも確かなリズムを刻むドラム。楽器はこの三つで十分なほど、他の音は要らなかった。
『10月』は痺れた。もう10月は終わったけど、秋の季節柄、木枯らしを感じた。ツアー名にKOCORONOとある分、『Kocorono』からも何曲か演奏。『7月』『2月』でライブは終わる。季節は冬から夏にかけて、ブッチャーズの音楽は今の季節を変えてくれた。ライブハウスを出ると、完全に秋の夜空が広がるわけだけど。

そのツアー名の通り、腹切り心のツアーだった。いや、意味が分からない。刺激的な言葉が二つ並んで理解不能なツアー名になったにも関わらず、なんとなーく「HARAKIRI KOCORONOだったわー」と感想を吐いてしまいそうになるイベントだった。
少なくとも、向井秀徳はブッチャーズとの対バンというだけあり、いつも以上の気合いが垣間見えた。ハラキリというか、ハリキリといったところかも知れないけど。


<セットリスト>
1 鉄風 鋭くなって
2 TATTOOあり
3 真っ黒けっけの海(仮)
4 タッチ
5 プールサイド
6 日常に生きる少女
7 Ku~Ki
8 我起立唯我一人
9 IGGYPOP FANCLUB

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