たけうちんぐ最新情報
⬛︎ たけうちんぐと申します。映像作家をやっております。 プロフィールはこちらをご覧ください。
⬛︎ 撮影・編集などのご依頼・ご相談はこちらのメールアドレスまでお気軽にお問合せください。takeuching0912@gmail.com
2001年1月29日月曜日
NUMBER GIRL@神戸チキンジョージ
「フレーーー!フレーーーー!コ・ウ・ベ!」
「フレーーー!フレーーーー!ア・ヒ・ト!」
「フレーーー!フレーーーー!ヤ・ク・ザ!」
神戸チキンジョージに行くのは初めて。だから、ロッカーが少ないという事実も知らない。だから、アニメ『サウスパーク』の人形がぶら下がるカバンを背負った状態でライブ鑑賞となった。
前回の心斎橋でのライブ後、「次は絶対、前方に行ってやる!」と決心した。開場すると即座に前方へ駆け走り、田渕ひさ子サイドの2・3列目を確保。しかし、次々に押し寄せてくる人々の重圧。重い。苦しい。冬なのに暑い。その迫力は想像を絶するものだった。最終的には、ライブ中にサウスパークの人形は引きちぎれた。終演後、頭部の一部だけがぶら下がっていた。まさに『サウスパーク』らしい残虐描写となった。
ただでさえ窮屈なチキンジョージの会場であるにも関わらず、スタッフが「あと200人くらい入りますんで、もっと前に詰めてくださーい!」と。笑いながらどよめく観客。いやいやいや。もう無理です。でも、時間が経つにつれてそんなことを気にする余裕がなくなった。なんせ、もうすぐ田渕ひさ子が自分の約2・3メートル前に現れるのだ。あの田渕ひさ子だ。今、ギターのピッキングの細かい部分が見えそうな位置にいる。その事実に、体力なんて気にしなくなった。ただ目の前の興奮に、期待だけが膨らんでいた。
ついに、ナンバーガールが登場する。
TELEVISIONの『マーキームーン』をBGMに、メンバーがステージに姿を現わす。向井秀徳のメガネがキラッと光る。何かを企んでいるような輝きがある。そして、テレキャスターのギターを鳴らす。
ギャリンギャリーン!
これは、心斎橋の時よりも暴力的な音だ。ギラギラとしている。前回は砂が入り混じったような音だった。でも今日は、砂鉄が入っている。硬くて鋭いものがギターの中で踊っている。荒々しい。恐ろしい。えげつない。バンドをやっていない僕にも、前回と今回の音の違いは区別できるレベルだ。
全員が黒っぽい服でキメている。ミッシェル・ガン・エレファントのようだ。だけど、ナンバーガールは普通のシャツ。「ロックンロール然」とした格好ではなく、日常から飛び出してきたような服装。日常に潜む狂気を表すだけあって、普通の私服であることが何よりの衣装であり、ユニフォームに感じる。
1曲目は『鉄風 鋭くなって』。これは心斎橋と変わらないセットリスト。でも、今回のほうが凄まじいテンションで迫ってくる。これは前回と違い、ナンバーガールを間近で見ているからだろうか。はたまた、向井のギターを掻きむしる音があまりにも暴力的すぎるからだろうか。
ジャキンジャキーン。
まるで刀を抜いたサムライのように鋭く尖っている。刺し殺されていく。楽器がここまで凶器になるなんて思ってもみなかったよ!
アヒト・イナザワのドラムが間髪入れずにビートを刻み込む。ドコダンドコダンドコダン…こ、これは。
「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。R・O・C・K!」
向井秀徳お決まりの挨拶の後、そのまま『BRUTAL MAN』へ。
なんだこれは。なんなんだこれは。この人たち、どこまで突き抜ける気だ。客席前方はダイブの嵐。誰かの足が頭に当たる。普通に生活していると足が頭に当たることはない。だけど、ここではそれがいとも簡単に起きる。もちろんナンバーガールのライブなのだから。
「遥か海の向こうの南蛮国より舶来した、このロック・アンド・ローール・エレクトリックギタァーを、用いてさらに弦をかき鳴らす男、人呼んで弦切りの向井と申しやす。よってらっしゃい、見てらっしゃい。ナンバーガール、びっくり祭りのはじまりぃ~!」
向井のMCの後、『TATTOOあり』が打ち鳴らされる。ひさ子のギターがキンキンと耳を突き刺す。向井の絶叫に合わせて「右肩!イレズミ!明け方!残像!」と合唱する観客。すごい。すごいよ。こんな一体感があっていいのかよ。田渕ひさ子のギターソロを間近で観る。この興奮は何にも代えがたい。怪獣の鳴き声のような、けたたましい音が鳴る。それが右耳から左耳へと貫通し、僕の頭はどうかしてしまいそうだ!
と、興奮したのも束の間、そろそろ体力に限界を感じ始める。圧縮、ダイブ、モッシュ。初体験の「ライブ感」にもはやグッタリしている。
こんな軟弱な体力であるのに、次に来る曲は『ABSTRACT TRUTH』『ZEGEN VS UNDERCOVER』。とどめを刺す気か。でも、ごめんなさい。さっき言ったことを撤回します。限界なんてありません。身震いが止まらない。限界なんて言葉が飛んでいく。「ばりやばい!」と絶叫する。そして『omoide in my head』と『TUESDAY GIRL』を立て続けに。ああ、ヤバイ、バリヤバイ。ジャキンジャキンと音が鳴る。意識が朦朧とする中、ずっとナンバーガールの音だけが聴こえていた。
『TUESDAY GIRL』の後は『sentimental girl's violent joke』。女の子の歌が続く。ゆったりしたテンポの曲なのに、やたらと手数の多いアヒトのドラム。前方ではドラムもはっきりと見えるので、ひょこひょこと器用に叩きまくるそのドラムプレイを堪能できた。
そして何と言っても、今回の目玉なのは『U-REI』。
ひさ子のギターソロが異常に長い。前回以上にかき鳴らす。その間、向井は観客の一人をステージに上がらせ、共にGUY呑みをする。
※「GUY呑み」とは向井秀徳による造語であり、腕をクロスし合って呑み合うという独特な呑み方のことをいう。
ステージの色んなところから観客に挨拶&扇動している向井は愛嬌たっぷり。それにしてもイントロのギター、めちゃくちゃ長いよ。曲のイメージを自らぶち壊すかのごとく、幽霊のようにおちゃらける向井。それでも曲の最後では「おれ~憂~い夕暮れに~、たま~にさぁ~ってなるカンジ~」と復唱し、余韻を残す。
『TRAMPOLINE GIRL』は「やはり俺はその凛々に、やはり俺は負けるのか!」の部分がもう、泣ける。泣けて仕方ない。様々な解釈があると思うけど、都会の屋上で人生を「決めて」しまう少女への感傷を見た。を、鑑賞した。都会という場所にはほとんど行ったことはないけど、都会にはこのような悲しみがたくさんあるのかも知れない。ひさ子はトランポリンに乗っているガールかと思えるほど、ぴょんぴょんと跳ねている。観客も同じようにタテノリで跳ね続ける。
向井が一人でギターを奏でる。森田童子の『たとえば僕が死んだら』のカバー。イースタンユースもカバーしていることでお馴染み。向井は叫ぶこともなく、丁寧に歌い上げる。その素朴な歌声に心を打たれるけど、向井が歌っている間は他のメンバーは結構ヒマそうにしていた。
切なさとやるせなさ続きで『YARUSE NAKIOのBEAT』。カラスの鳴き声のようなひさ子のギターが、水分を失ったからっからの音で鳴る。
ヤルセナキオという人物を想像する時間。ひさ子のギターの上に乗っかる向井のテレキャスター。焼け焦げたような音。淡々とデデデデと響き続ける中尾憲太郎のベース。後半で盛り上がってくるアヒトのドラム。その盛り上がりは続き、ドラムソロの場が設けられてあった。ドラムと共に慎ましく鳴っているひさ子のギター。アヒトのドラミングを楽しんでいるような表情をしていた。
そして更に盛り上がる、盛り上がる、盛り上がる、ジャーーーン。
再び『YARUSE NAKIO』の演奏に戻る。「1979年!1988年!1979年!1988年!」と叫び続ける向井。一体、1979年と1988年に何が起こったのか。分からないけど、なぜかグッときてしまう。自分にとって叫びたい西暦を叫びたくなる。特にないけど。
そして突然、アヒトが「殺伐!」と叫ぶ。それは『タッチ』が始まる合図なのだ。「触れることを恐れたアイツは~」と、心斎橋同様、大合唱。ひさ子も飛び跳ねながらマイクなしで歌っている。その通り、熱さを嫌う若者たちは冷えきった場所へ逃げていくのだ。ここに、冷めた奴はいらない。冷笑があれば熱笑という言葉が欲しい。ポジティブであるはずの「笑」の周囲に近寄るのは、なぜか「嘲笑」「冷笑」などと冷え切った単語ばかりなのが不思議で仕方ない。
そして『我起立唯一個人』。これをずっと聴きたかった。ああ、なんて美しいなギターの音色なんだ。ずっと鳥肌が立ちっぱなし。数メートル離れたジャズマスターから鳴る、泣き声のような音。ナンバーガールのメロディアスな部分は田渕ひさ子が担っている。
少しばかりのMCタイム。向井が喋り出す。
「ライブ終了後、周りの色んな人たちとビールを呑み、特に異性同士で呑み、そのまま付き合って、結婚して、離婚してください…」
なかなか辛いことを言う。
「さすが神戸っ子。地震から復興をした、神戸」などと、盛り上がりの良い神戸っ子をすごく気に入ったご様子。ご機嫌なのか、突然大きな声で叫び始める。
「フレーーー!フレーーーー!コ・ウ・ベ!」
ど、どうした。
応援団長のように、体育会系のノリで向井は両手を広げて叫ぶ。観客は向井に続いて「フレッフレッ、コウベ!フレッフレッ、コウベ!」と続ける。
すると、また向井が叫ぶ。
「フレーーー!フレーーーー!ア・ヒ・ト!」
ど、どうしたの。
向井応援団長、どうやらアヒトを大推薦のようです。少しリアクションに困っているアヒト。ひさ子と中尾憲太郎は笑っている。もちろん観客はそのまま続けて「フレッフレッ、アヒト!フレッフレッ、アヒト!」と叫ぶ。
すると向井、更にもう一発。
「フレーーー!フレーーーー!ヤ・ク・ザ!」
なんやねん。
ヤクザ、関係ない。と戸惑いつつも、「フレッフレッ、ヤクザ!フレッフレッ、ヤクザ!」と続ける観客。
一体なんのライブやねん。
「あと2曲、聴いて帰ってください。ドラムス、アヒトイナザワ」
ジャキンジャキンと向井のギターが鳴るイントロ。『INAZAWA CHAINSAW』。
向井の指揮のもと、演奏が始まるような光景。CDとは迫力がまるで違う。向井秀徳監督・アヒトイナザワ主演とも呼べる。劇場版ナンバーガール。4人の演奏がばっちり合うか、合わないか。タイミングがギリギリのスリル。それが楽しくてたまらない。なんていってもアヒトのドラミングは鬼すぎる。観ているだけでも呼吸困難に陥りそうな気迫だ。見える。俺には見える。アヒトの腕が5本くらいに見えるのだ。
そして、本編最後の曲は『IGGY POP FANCLUB』。
ひさ子、ずっと飛び跳ね続けて笑顔のまま。この曲が本当に好きなんだろうなと伝わる姿だ。「あーのー曲を~いーまー聴いてる~」という曲を今まさしく聴いてる。この2曲連続は予想外で、全くタイプの違う曲でありながら、テンションが持続されているのが凄い。楽しい。楽しすぎる。これ以上ないだろうと思えるほど楽しいです。
アンコールの歓声が鳴り続ける。なぜか客席からは「アヒト!」コールが巻き起こる。
「アッヒットッ!アッヒットッ!アッヒットッ!」
この日の三宮はやたらアヒトの名前が轟いている。
そして、メンバーが再び登場。
『はいから狂い』だ。
「俺っはっまっだっ生きているーーーーーーーーーー!!!」からのギャギャギャギャッという悲鳴のようなギターとシンバルとベースの大合唱。あれは一体何なんだ。本当に楽器なのか。「ギャ」と書いたけど、彼らの音は擬音で表すことは不可能だ。
「また、会いましょう。サイチェン」
向井がクールに言い残し、ステージを去った。去らないでくれ。このまま神戸にずっといてくれ。イタイけど、そんなことばかり思ったラストでした。
前方にずっといて体力は限界に近かった。それでも、こんなに楽しい日はいまだかつて無い!と言い切れるほどの時間でした。
田渕ひさ子の笑顔はこちらまで幸せにしてくれる。そして向井秀徳の笑いを誘うMC。あんなに狂気を醸し出しているのに、爆笑もさせてくれる。荒々しいギターもあれば、絶唱あり、響きあり、歓声あり、ドカドカドラムあり、応援団長あり。かけがえの無いバンドだ。間違いありません。「神戸に来てくれてありがとう」としか言い様がありません。現に「ありがっとぉ!」と最後叫びました。汗でジーンズが変色していた。汗でベルトがゴムっぽくなっていた。サウスパークの人形が頭部だけ残り、引きちぎられていた。
でも、それらがすべて楽しさに変わっていた。
狂気全開で、感傷的で、攻撃的な印象をCDでは感じる。でも、ナンバーガールのライブはめちゃくちゃ楽しい。それに尽きる。センチメンタルと日常に垣間見える狂気。これが楽しさに変わるのは、どういうメカニズムなのか。それを検証するため、というか普通に楽しむために、次に関西にライブで来るときも絶対に見逃さないのです。
セットリスト
01. 鉄風鋭くなって
02. BRUTAL MAN
03. TATOOあり
04. ABSTRACT TRUTH
05. ZEGEN vs UNDERCOVER
06. Omoide in my head
07. TUESDAY GIRL
08. SENTIMENTAL GIRL'S VIOLENT JOKE
09. U-REI
10. TRAMPOLINE GIRL
11. たとえば僕が死んだら
12. YARUSE NAKIOのBEAT
13. タッチ
14. 我起立唯我一人
15. INAZAWA CHAINSAW
16. IGGY POP FAN CLUB
[ アンコール ]
17. はいから狂い
登録:
コメントの投稿 (Atom)
0 件のコメント:
コメントを投稿