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2011年10月31日月曜日

ナンバーガールとは一体何だったのか?


ナンバーガールとは一体何だったのか?

解散して9年になる。
その後のあらゆるバンドに影響を与えた。一般的にはCDの売り上げも知名度もそれほど爆発的人気を誇ることはなかったが、今現在も音楽関係のみならず様々なアーティストにファンが多くいる。『ナンバーガール』がひとつの代名詞にもなる。『ナンバーガールっぽい』という形容詞だってある。多くの若いバンドマンが彼らに憧れている。だけど彼らのサウンドには近づけても、その世界観にはなかなか近づくことはできない。

日常に潜む狂気。凛々とした少女。都会の喧騒。祭囃子。他では体験できない世界がナンバーガールにはある。

たった4枚のアルバムを発表して解散したナンバーガールは、これまでの日本のロック史にはなかった日本語ロックの新しい形を提示していた。内面を激情の言葉にして叫ぶバンドは数多くいる。だけど、気持ちは高ぶっているのにどこか自分はその場所にいなくて、傍観している。それを叫ぶのが向井秀徳(Vocal/Guitar)であり、彼の独特な歌詞世界がナンバーガールの大きな個性だった。
田渕ひさ子(Guitar)、中尾憲太郎(Bass)、アヒト・イナザワ(Drums)というメンバーにより奏でられる、鋭くて殺傷力のあるギター、爆発音にも似たベース、マシンガンのように常に撃ち鳴らすドラム。ライブバンドとしても圧倒的なテンションでその存在を知らしめ、ただでさえ個性溢れる音楽なのに、そこに更に向井の独特な言い回し、造語、描写が歌詞で乗っかっていく。

元々アートシアターギルドの映画を好んでいる向井は、1970年代、80年代の日本映画にも通じる世界観を音楽に表していたように思う。それはイラストでも、ヘルメットを被り、角材を持った全共闘の青年を描いたライブのフライヤー、17才の少年による政治家・浅沼稲次郎刺殺事件の光景を描いたCDの裏ジャケットに反映されている。
また、歌詞にも林静一の1970年代の漫画『赤色エレジー』が登場し、曲のタイトルも『転校生』といった大林宣彦監督の同名映画を匂わせる。他にも、ミュージックビデオのゴシック体のテロップの出し方などにもスタンリー・キューブリック監督作品の影響が見られ、向井が監督した『タッチ』のPVは森田芳光監督の『家族ゲーム』のオマージュであり、どこかしら20年以上前の青春に憧れを抱いているように思われる。
過ぎ去った時代の若者の熱さと、現代の若者の冷え切った日常。こういった対比と、どこか共通する退屈。それらがさりげなく散りばめられ、音楽という枠を越えようとし、現代を描こうとする姿勢が伺える。

向井は"少女"で現代を描こうとした。
CDジャケットには向井によって様々な少女が描かれている。しかし、どれも目が描かれていない。輪郭だけがあり、顔と表情は分からない。そこにあらゆる女の子を自由に投影できるかのように、 抽象的なイメージだ。
映画のように登場人物を用いて、何かを主張する。向井は「少女」や「あの子」を登場させて、景色を真っ暗闇にも清々しい青空にも変えてしまう。向井自身の一人称は存在しても、どこか遠くにいる。彼の記憶と妄想の中で薄っすらとした曖昧なシーンが、具体的な言葉で綴られていく。
ほとんどの歌というものが自らの考えや気持ちを率直に綴った"コラム"であるならば、向井の歌は"物語"を綴られた感覚に近いのかも知れない。
あたかもナンバーガール=番号少女と言い表してるかのごとく、その世界には数多くの少女が存在し、笑っている。
「透明」「日常に生きる」「Sentimental」「真っ昼間」「DESTRUCTION」「性的」「黒目がち」などと名づけられている。向井の中で生きる少女はどこかすべて 共通しており、儚げで寂しい。
そして「嘘笑い」がとても多いのだ。
ナンバーガールの重要な部分はこの「笑い」に関する向井の洞察だろう。

「赫い髪の少女は早足の男に手をひかれ うそっぽく笑った」(『透明少女』)
「暴力的なジョークで死にたい あの子は笑う 笑い狂う 殺人的に」(『Sentimental Girl's Violent Joke』)
「風 鋭くなって 都会の少女はにっこり笑う」(『鉄風 鋭くなって』)
「笑って あの子 歩いた夜を忘れん それは土曜日の夢しばい」(『TUESDAY GIRL』)
「あの子は今日も夕暮れ族で 半分空気 笑って走り出す」(『I don't know』)
「女は笑いながら ただ待っている ただ一人待っている」(『Tombo the electric bloodred』)

少女が笑っている描写があまりにも多く、それが単に笑って楽しんでいる様子では受け取れない。自嘲気味に、嘘っぽく、笑っている。『タッチ』に「それでも奴ら笑い合う」とあるように、笑いをシニカルに受け取っている。笑いには嘲笑、嘘笑いなどと後ろ向きな言葉がある。絶叫して歌われることで、その笑顔を悲しくも切なくも感じることができる。

誰しも日常に生きる中、作り笑いなんて幾らでも見てきたはずだ。それは相手に対する優しさもあれば、自分を守るための手段でもある。純粋・無垢な少女だって、残酷なまでに笑顔を作る。向井は人間の裏側にある本質を「笑い」の面で探ろうとしていたのかも知れない。
笑い、笑われ、笑ってあげる。取り繕って生きるしか道はない。そんな青春を疑い、ブチ切れたかのように叫ぶ。1970年代頃のロックの、いわば社会に向けられたものではなく、青春への反逆だ。ナンバーガールは、本当の意味での"青春パンク"だった。

福岡で活動していた頃に制作された1st ALBUM『SCHOOL GIRL BYE BYE』と、東京でEMIに所属してから制作された2nd ALBUM『SCHOOLGIRL DISTORTIONAL ADDICT』(録音は福岡)とでは、その少女への洞察に変化が見られる。
グラスの向こうでキラキラ輝いて見える少女に別れを告げるかのように、都会に出てきてからは彼女たちの歪んだ日常を妄想している。それでも『透明少女』はギリギリにも美しく、嘘っぽく笑う。しかし、やがて3rd ALBUM『SAPPUKEI』にもなれば、向井自身が感じた東京の都会の喧騒、闇、不安が少女に投影されており、歪みに歪みきった姿が描かれている。

4th SINGLE『URBAN GUITAR SAYONARA』に収録されている『Sentimental Girl's Violent Joke』『真っ昼間ガール』の2曲は、寂しげな少女が歌われている。笑いまくるセンチメンタルな女の子。落っことしてほしい女の子。SCHOOL GIRLの頃では考えられなかった、大人になった少女をイメージしている。
「真っ昼間から 飛び降り自殺見ちゃった アッ夏のかぜ すずしいね スカートふわり」
まるで感情なんてものを自ら殺し、無感覚に浸ったような女の子が歌われている。後に4th ALBUM『NUM-HEAVY METALLIC』の『性的少女』にあるような「記憶を自ら消去した」という女の子の原型なのかも知れない。

そんな女の子たちの極めつけは『TRAMPOLINE GIRL』だろう。
都会のど真ん中で飛んだ女の子が歌われているが、「飛ぶ」ことが一体何なのかは具体的に描かれていない。清々しくも惨くも想像できる。背が高い草の上を飛ぶ花粉にも例えられ、歌詞は直接的な言葉を避け、幻想を織り交ぜている。
「ゆらいで 傷ついて 飛ぶ」という描写から、飛び降り自殺さえ想像できてしまう。
『真っ昼間ガール』が見た自殺とは、都会の喧騒で力強く惑わされることなく飛ぶ女の子のことではないだろうか。
それを「完全勝利」と呼ぶことに、『SAPPUKEI』というアルバム名に説得力を感じる。どれほど殺伐としてしまったのか。飛ぶことが勝利なのだろうか。そんな「オレ」の鬱屈とした精神状態が少女を通して伝わり、それが鋭く尖った音で演奏されているのだから切迫感があるのだ。
また、『YARUSE NAKIOのBEAT』で男が街を眺めている都市公団の団地の6階。1960年代までに建てられた団地のほとんどは5階までしか存在しないらしい。だとすれば、6階とは屋上のことだと考えられる。
「1979年に起こった事件なのさ」
一体何の事件が起こったのか。それは、向井が後にhal&54-71に提供した曲『6階の少女』も6階であることも手がかりとなりそうだ。
6階という屋上が、まるでTRAMPOLINE GIRLが佇んだ場所にも思えてしまう。中途半端な緑の町でもあり、都会のど真ん中でもある。そういった意味でも『SAPPUKEI』のクライマックスに持ってきただけある。向井の"ナンバーガール"が何かのドキュメンタリー映画を観ているかのようなドラマチックな展開になる。それを「腐れきった感傷」と言い表す『BRUTAL MAN』がなんともやるせない。
「洞察の裏側にある冷笑」
その行き先は「オレ」と叫び、都会をトランポリンのように飛んだ女の子もやっぱり「笑っている」と歌われていた。

このように、向井は曲と曲とで世界を繋げている。それも少女が別の少女を目撃し、YARUSE NAKIOが6階から眺める景色を描くように、どこか自分は離れたところにいて、傍観している。
そして少女が飛ぶことに美しさも悲しみも含み、ダブルミーニングにもなり、解釈の幅を広げている。単なる妄想なのかも知れない。だけど、聴いていると感情が揺らいでしまう。
これは一人称で心情を吐露するように叫んでいては決して表現できない、独特な表現方法だろう。
"ナンバーガール"は一つの物語として歌われ、その物語の中に埋もれていく感傷を楽しめる。
退屈だからこそ、感傷さえも娯楽になる。
少女が煙草を吹かしながらわざと感傷に浸っているように、ナンバーガールを聴くとそんな感覚があるのかも知れない。
ナンバーガールみたいな女の子はいる。
よく笑う。家に帰ると、笑った分の頬の痛みを感じる。玄関を出て眺める景色はいつも同じ。そりゃあ誰かと話したいし、さらってほしい。時には繋がりたい。忘れたい過去もある。いつでもゆらぐし、傷つく。それでも日常に生きるしかない。並木道に自分の影が伸びて、存在していることを知る。空気の冷たさに気付き、半分空気となり、また笑って走り出す。
少女はいつだって笑っている。
それを悲しいと捉えるか、美しく思うか、いつだって気分によって変わってくる。
過去も現在も、女の子はみんなナンバーガールだ。
だからこそ、記憶と妄想を行ったり来たりするように、いまだにナンバーガールの音楽が鳴り止まないのだ。


2002年11月28日木曜日

NUMBER GIRL@ZEPP TOKYO

ナンバーガールが解散する日が来るなんて。

ラストツアー『NUM-無常の旅』は解散とともに告知された。気が付けば東京行きの深夜バスに乗っていた。気が付けば、というのは嘘だ。チケットはぴあで2時間並んで購入した。それでも、手に入れたのはなんとか2階席。ナンバーガールの最後の姿を観ようと、全国各地でチケットの争奪戦が行なわれたのだ。
公式サイト『狂う目』で解散が発表されたときの心情は忘れられない。何度も「更新」ボタンを押し、解散の記事が取り消されないかと現実を疑った。『NUM-HEAVY METALLIC』で大きな展開を迎えて、これからだと思っていた矢先。
深夜バスでは延々とナンバーガールをMDで聴いていた。結局一睡もできないという無常の旅を経て、東京・お台場のZEPP TOKYOに辿り着いた。

開場すると、ありえないくらいの観客の多さ。これが東京か。関係ないだろうが、当日券もあったせいか、人を詰め過ぎたZEPP TOKYO。しかし、2階席は意外にスペースがあった。座席の前のほうでは椎名林檎、宮藤官九郎といった著名人の姿も。
おなじみのローディーがステージのセッティング中、ベースでラモーンズを一人カバー。「アイッ!オウッ!レッツゴー!」とコール&レスポンスする会場。無常の旅といえど、湿っぽくない。本当に解散するんだろうか。最後まで信じられなかった。

照明が落とされ、TELEVISIONの『マーキームーン』が流れる。 ステージだけが照らされて、メンバーが登場する。
この瞬間を何度観てきたことだろう。これが最後になるなんて、いまだ信じられない。


向井秀徳が静かにテレキャスターを鳴らし、この日のライブの序章を言葉なしで綴る。そして激しく掻き鳴らされ、『I don't know』が始まる。中尾憲太郎のベースが戦車が近づいてきたかのような迫力で地面を揺らし、アヒト・イナザワのドラムと田渕ひさ子のギターも同時に加わる。そのときの爆発音は、代用できるものがない。
そのまま『はいから狂い』へ。照明の通り、青く、清く、病的な街を駆け走るような気分。客席はダイブする人、拳を突き上げる人、ひたすらジャンプする人で溢れていた。ほとんどの人が「この曲を聴くのはこれで最後になるのか」という事実を背負っており、解散ライブツアーの哀愁を一瞬感じた。が、次の瞬間にはすぐに忘れてしまう興奮があった。

「夏に嘘っぽく笑うあの子は…嫌いじゃない。そう、たとえばあの子は透明少女」

向井の曲紹介で、会場はますますヒートアップ。『透明少女』は向井のMCの直後、見事なタイミングでひさ子のギターが始まる瞬間がたまらない。どれほどこのようなMCを聴いてきたことだろう。そんな少女について「嫌いじゃない」と言った向井により、ナンバーガールに登場してきたあらゆる女の子が肯定されていく気がした。
刺青の女の子、『TATTOOあり』も同様に。ひさ子のギターソロ、その音がキリキリと胸を締め付ける。バンドが一挙に巨大化でもしたかのように、音が大きく感じる瞬間がある。これは感情のせいだろう。
そして『ZEGEN VS UNDERCOVER』へ。

「売れるぅ~売れない、二の次で。かっこのよろしぃ~歌ぁ~作りぃ~。聴いて~もらぁ~えーりゃ~、万々歳。そんな~私は、歌舞伎者」

最近お決まりのセリフを弾き語りで歌い、ドーーンと始まる演奏。どれほど「バリヤバイ!」と叫んできたのだろう。それも、この日と2日後の札幌で終わってしまうのだ。終末感たっぷりではあるが、今までのツアーで見せた向井の余裕な雰囲気は、この日はあまり見られなかった気がした。
曲と曲の間、MCも無くてステージが沈黙していると、客席からはメンバーの名を叫ぶ声が絶えない。「向井ー!」「中憲ー!」「アヒトー!」「ひさ子ー!」と。その中に「ひさ子さーん!かっこいいー!」という叫び声があった。目の前で椎名林檎が叫んでいた。

『鉄風 鋭くなって』の後は『URBAN GUITAR SAYONARA』。このバンドの魅力にとりつかれた者であれば誰でもそうだと思うが、PVのシーンが目に浮かぶ。中憲が坊主になるというシーンが。だけど、目の前にいる中憲はロン毛だ。表情が髪の毛で隠れて見えない。どんな顔をしてベースを弾いているのか、想像してしまう。
『NUM-AMI-DABUTZ』の演奏中、ステージ後方のカーテンが開く。なにかが出てくるのか?と期待したが、何も出ず。なんやねんな。『delayed brain』ではミラーボールがキラキラと光を拡散させ、ムード感たっぷりな演出だった。

「黒目がちな少女が…白目を剥く瞬間…俺は嫌いじゃない」

といった風に、この日は色んな少女を肯定していた。白目を剥かれても困ると思うが、この日の向井は「嫌いじゃない」シリーズを連発。その後に続く『性的少女』『CIBICCOさん』も嫌いじゃないはず。ナンバーガールの歌に出てくる女の子たちはみんな寂しげ。それが鋭く尖ったギターサウンドによって物語られる。まるで何本もの映画を観ているかのような感覚を与えてくれる。

「俺はこの世の憂いを、オーサカの橋の上から見ていました」

ここは東京だけど。向井が『SAPPUKEI』の前に語り、ひさ子の単音フレーズが慎ましく鳴り始め、曲が次第に盛り上がっていくスリル。そのまま『U-REI』へと続き、あの真っ黒で闇に包まれたアルバムの世界が繰り広げられる。放課後の少年少女を見て、これほど憂うべきなのか。向井はメガネを光らせながら絶叫を続ける。
「たまーにさぁーとなる感じー!」

『MANGA SICK』。シニカルな恋愛ソング。ここで歌われた「現実的すぎる風景はいらない」を、解散に当てはめて歌いたい。解散という現実はいらない。ここにいた誰もがそう思ったはずだ。やはり、事実を受け止めたくない。未練がましいライブ鑑賞であるが、これはライブ感傷だ。この曲も、聴くのが最後になるなんて。『Sentimental Girl's Violent Joke』『DESTRUCTION BABY』と、感傷的な少女について歌われた曲が続けられる。
だんだん、少女が減っていく感覚だ。曲が終わるごとに、向井が「嫌いじゃない」と肯定し、記憶と妄想の中から消し去っていく作業をしているかのような。これは向井にとってのナンバーガールとの決別ではないだろうか。今までに、番号を振り分けられた少女たちがそれぞれ「透明」「性的」「Sentimental」「DESTRUCTION」などと形容されてきた。単なる少女になっていく。そんな寂しさを感じてしまった。

この曲の少女もそうだ。『YOUNG GIRL 17 SEXALLY KNOWING』。家猫娘が久しぶりに街を出て、その街に慣れていき、もう家には帰って来ないような。サビに入る直前、ひさ子がギターを高く掲げて鈍い音を響かせる瞬間。これを目に焼き付けなければならない。

「少女が飛んだのを、俺は見た。力強く、惑わされもなく、少女は、飛んだ」

『TRAMPOLINE GIRL』は都会のビルから飛び降りた女の子を「完全勝利!」と言い表す、とても切迫感のある歌詞だ。福岡から上京し、都会の闇に埋もれた向井の精神状態や感覚が色濃く反映されているように思う。彼は自分の心情を少女に当てはめることで、あらゆる少女を作り出してきたのだろう。
飛ぶことが、いいことなのか。凛々として、背高草のざわざわとした騒やかの中で、このライブハウスりように騒がしい音の中で、おとなしく静かに佇む女の子がいた。ナンバーガールという物語の中の登場人物は、日常にも確実にいる。できれば少女のように、惑わされもせずに生きたいものだ。

そして『日常に生きる少女』へ。少女シリーズは、これが最後。冒頭の騒がしい演奏の後、向井のギターがリズムを刻み、アヒト・イナザワのドラムがそれに応戦する。中憲が激しく首を振りまくり、後半のひさ子が弾くメロディは女の子の泣き声のように、セリフのように、言葉にならない何かを訴えかけてくる。
と、ほぼイメージだけで書き綴っているけど、ナンバーガールは記憶と妄想がテーマだ。幼い頃の記憶から、今現在の自分の妄想だけで世界が成立してしまう。

「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」

このセリフをこれまで何回聴いてきたことだろう。
ライブでも、映像でも、CDでも。家で聴くCDプレイヤーからも、外で聴くMDプレイヤーからも。耳を突き刺すドラムロールは血管やら神経やらを伝って脳や心臓に到達し、現時点、彼らを観たいがために東京まで足を運ばせている。気持ちが行動を起こす。それはナンバーガールのメンバーだって、そうだろう。福岡からはるばる上京し、音楽をぶちかますために東京にやって来た。そしてこの日、東京での最後のライブ。これからメンバーはどうしていくのか。何をするのか。そんな期待と不安は必要なかった。
『omoide in my head』が鳴ると、すべてを忘れさせてくれる。無常の旅なんかじゃない。始まりがあれば終わりもある。無常はもっと先に待ち構えており、ナンバーガールは終わらない。「17才の俺がいた」のであれば、今19才の俺はこれから10年20年過ぎても、ナンバーガールが好きでたまらないに違いない。
そうでなければ、泣いてないよ。鼻水と涙でいっぱいだ。
「感傷の渦巻きに沈んでいく俺を」、僕を、突き飛ばしていこう。インマイヘッド。


アンコールを呼ぶ手拍子は鳴り止まない。
向井だけがステージに戻り、ドラムスティックを手に持ち、ドラムをスコーーーン!と叩く。ものすごくエフェクトかかった音だ。笑いが起きる。
メンバー全員がステージに再登場し、RAMONESのカバー『I WANNA BE YOUR BOYFRIEND』。そして『IGGY POP FAN CLUB』。淡く、青い日常風景が迫ってくる。観客は向井のボーカルに合わせて大合唱。向井のギターソロを十分堪能し、何年経とうが、ナンバーカールの忘れてた輪郭を一寸これからも思い出していこうと思った。

「本日の公演は以上で終了しました」というアナウンスに、客席からは「ええーーーっ!?」というどよめき。歓声は鳴り止まず、ずっと居座り続けるファン。メンバーを呼ぶ声、アンコールを呼ぶ叫びが何度も響き、そんな中、なぜかひさ子だけがステージに現れた。

 「ありがとうございましたぁあああ~。かんぱぁあああ~い」

ゆるーく笑いながら一言告げる。それも向井のマイクスタンドを使ったので、背伸びして言ったのだから会場の空気が一気に和む。「かわいいいぃぃ~!」と男女問わず歓声が響き渡る。
それでも観客は帰ろうとしない。そりゃそうだ。これが東京で観る最後のナンバーガールなのだから。
突然、どこからともなく向井の声が。

「SAYホーーーッ!!」

まさかのコール&レスポンスを促す声。場内アナウンスで向井の声が聴こえ、観客も待ってましたと言わんばかりのテンションで「ホーーーーッ!!」と何倍もの声量で返す。
ところが次の展開に、どよめきが走る。

向井「SAY帰れーーーーーー!!!」

観客「ええーーーっ!!」

向井「SAY帰りやがれーーーーーーー!!!」

場内は爆笑の渦に。

「えー、終電時間に間に合うように、お気をつけてお帰りください。えー、ライブ中のカップル誕生を、皆さんで祝ってください。乾杯!」

さすがです。


人生最後のナンバーガールのライブ。

いつも通り、鋭く尖ったギターの音、腹に響く重低音、マシンガンのように撃ち鳴らされるドラム。絶叫ボーカル、少女を歌った歌詞、観客のテンション。すべてがいつも通りに、無常の旅が終わった。ナンバーガールにとって、ライブは残すところあと1つ。札幌ではどのようなライブが繰り広げられるのか。行けないけど、何度も想像した。想像するとワクワクするはずが、切なくなった。

向井秀徳があらゆる少女に別れを告げるように、後半は怒涛のガールソングのセットリスト。観客は『TRAMPOLINE GIRL』のように飛び跳ね、凛々と負けていなかった。「完全勝利!」とは、向井なりの優しさなのかも知れない。

ナンバーガール、本当にかっこいいバンドです。



<セットリスト>
01、I don't know
02、はいから狂い
03、透明少女
04、TATTOOあり
05、ZEGEN VS UNDERCOVER
06、鉄風 鋭くなって
07、URBAN GUITAR SAYONARA
08、NUM-AMI-DABUTZ
09、delayed brain
10、性的少女
11、CIBICCOさん
12、SAPPUKEI
13、U-REI
14、MANGA SICK
15、SENTIMENTAL GIRL’S VIOLENT JOKE
16、DESTRUCTION BABY
17、YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING
18、TRAMPOLINE GIRL
19、日常に生きる少女
20、omoide in my head
<アンコール>
01、I WANNA BE YOUR BOYFRIEND (RAMONESのカバー)
02、IGGY POP FANCLUB

2002年8月10日土曜日

NUMBER GIRL@ROCK IN JAPAN FES.2002

ナンバーガール、ロックフェスのトリ。メインステージでのサザンオールスターズの裏で、レイクステージでの出演。ただでさえ暑いのにTheピーズやBOOM BOOM SATELLITESで熱くなり切ったステージに、20時頃。ステージ後方には『ROCK IN JAPAN』という大きな文字。茨城県のひたちなか、夜空の下でナンバーガールがぶちかました。

セッティング中に中尾憲太郎の近くにマイクスタンドが設置されていた。中憲が歌うのだろうかと思いきや、この日は特別ゲストが用意されていた。

ステージからスタッフの姿が消えると、どこからともなく聞き覚えのある声が。
「SAYホーッ!」
観客にコール&レスポンスを要求する。姿なき要求者が更に続け、「SAYホッホッホーッ!」「SAYええじゃないかええじゃないかええじゃないかー!」と独特なものに。向井秀徳の声だ。なぜか「ホーッ」が掠れており、泣きそうな声になっていたことに会場が笑いに包まれる。まだ姿は現れていないのに、会場が一気に温まる。
「水着のネーちゃんも、童貞のニーちゃんも、ヤクザのニーちゃんも、開演まで、準備が整い次第、もうしばらくお待ちください」
先ほどまでの絶叫から、いきなり落ち着いた口調でアナウンスする。
その後、音出しのチェックとしていつものナンバーガールスタッフのローディーがステージに。なぜかベースでラーモンズを弾き始め、「アイッ!オウッ!レッツゴー!」と観客を煽っていた。照明まで用意されていた。ステージ脇で中憲が笑っていた。
そしてメンバーが暗闇の中、ステージに続々と現れる。


向井はテレキャスターの金属っ気たっぷりな音を鳴らし、一人で歌いだす。
「売れる~売れない、二の次で~かっこのよろしい歌作り~聴いてぇ~もらぁ~えりぁ~、万々歳。そんな~私は、歌舞伎者。人呼んで、ナンバーガールと発しやす」
そして「やばい、さらにやばい。ばりやばい」といった具合に『ZEGEN VS UNDERCOVER』に突入。メンバーが繰り出す最初の一音がばっちり。スモークがたかれ、神がかったステージになっていた。
そのまま間髪入れずに『omoide in my head』。カラフルな照明に彩られたステージの上で、田渕ひさ子がギターを高く掲げて低い音をグォオオンと鳴らす。

『NUM-AMI-DABUTZ』ではダイバーが絶えず降りかかり、会場は興奮の渦に。向井は歌詞を間違えていたが、そんなことは気にしない。「冷凍都市の暮らし あいつ姿くらまし」で合唱が起きる。相変わらず終わり方がびしっとキマっていた。
『EIGHT BEATER』『裸足の季節』と続けていく。向井のテレキャスターの音は、ますます暴力性を帯びていく。耳を突き刺すほど、鋭い。不快な騒音ギリギリのラインで気持ちよく響いている。単に心地よいハーモニーであることだけが音楽ではないと思っている。危うさと暴力を感じなければ、映画には説得力が生まれないと同じように。それを音楽でやっている。こういったスリルはナンバーガールのライブでしか味わえない。

『TATTOOあり』の向井による冒頭の弾き語りが終わると、「ギター、田渕ひさ子」とまさかのメンバー紹介後、ひさ子のギターが炸裂する。その瞬間、ひさ子が笑顔をみせた。
『DESTRSUCTION BABY』のダブバージョンで、中憲付近に設置されたマイクスタンドの使いの主がやってくる。こだま和文だ。「トランペット、こだま"エコー"和文」と向井が紹介し、フォーーンと夜空にトランペットの音が溶け込んでいく。向井は煙草を吹かしながらステージをうろうろと歩き、人力エコーで「ベイッベイッベイッベイッ…」と声を響かせながら歌っている。フェスで聴くと、スケールが圧倒的に違う。
そのままこだま和文のトランペットが続き、未発表曲『ネクラの坊さん』へ。明らかな「メ」と歌っているようだけど、「ネ」なのか。途端に入るひさ子のノイジーなギターにギョッとする。ステージ脇ではフェス出演者であるsmorgasの加藤来門が楽しそうに踊っており、向井が曲中に来門に歩み寄り、招き入れる。するとマイクを掴み、田渕ひさ子のすぐ横でラップを披露。メンバー一同、笑顔になる。客席から見ると左から、こだま、中憲、向井、ひさ子、来門という並び。その後ろでアヒト・イナザワがおかずたっぷりのドラムを遊ぶかのように打ち鳴らす。来門は、坊さんだけでなく色んな人が「屁をこいた」と歌っていた。フェスならではのイベントなのかも知れない。ナンバーガール外の人がステージに上がっているのを初めて見た。

その後は『性的少女』と続き、『I don't know』へ。
向井が「あの子は今日も漫画を読んで、笑いながら、眠ってしまいました」と弾き語っている間、野外ならではの印象的な光景を見てしまった。
1羽のトンボがステージの上のほうで羽ばたいており、中憲がそれを見つめていた。やがて演奏に入り、スモークの中でトンボがふらふらと回転しながら息絶えて、ステージのどこかに姿を消してしまった。トンボがエレクトリックな音像にやられて、赤い血を流しながらくたばったのか。ひょっとしてなんでもないシーンなのかも知れないけど、ナンバーガールの世界観が具現化されたかのような、奇跡的な光景に思えた。それを中尾憲太郎が見つめていたという点でも。

最後は『INUZINI』。アヒトが立ち上がり、「気をつけー!妄想人類諸君の発展を願ってー、ばんざーい!ばんざーい!ばんざーーい!」とマイクを使わずに叫び、向井がギターをグュイーンと鳴らし、演奏へ。
後半は祭囃子のような展開。「らっせーらー!」「ええじゃないか!」などと踊りを促すような歌となり、ひさ子のギターも和風のメロディ。アヒトのドラムはまるで太鼓のようだった。フェスは祭り。ロック・イン・ジャパン・フェスティバルが『日本のロック祭り』となり、どんちゃん騒ぎで終了する。


アンコールがあり、ステージにメンバーが戻ってくる。「しつこい声援、誠にありがとうございます」と向井が挨拶し、語り始める。
「この暑い、暑い夏が終われば、また、あの鉄のごとく吹く風の季節がやって来るのでしょう…」
「鉄」というキーワードが出た時点で、「おおーーーっ!」と歓声を上げる観客。答えはもちろん『鉄風 鋭くなって』。Aという名のノラ猫が3丁目でくたばったのと同じく、トンボもステージでくたばった。ひたちなかでは涼しい風が吹き、鋭さはなかった。ジャリーンと砂が混じったような音が出る向井のギターだけがとにかく鋭かった。

「あの部屋で、あの曲をあの子が"変な歌"って言って…それは私の妄想なのかも知れません」

アンコールの最後は『IGGY POP FAN CLUB』で終了。


野外で見るナンバーガールは格別だった。風に吹かれて、ステージにたかれたスモークがもくもくと形を変えていた。ライブハウスとは違い、音の広がりに限界はない。着地点のない鋭く尖った"鋼の振動"が、ロックにもダブにも祭囃子にも変えていた。
こだま和文、加藤来門という客人もフェスならではの遊び。そしてトンボも乱入し、その音に負けたのか、はたまた普通に寿命だったのか、『I don' know』で息絶えてしまった。冒頭の静けさの中でトンボが飛んでいた光景は、いまだかつて味わったことのないムード。ナンバーガールの世界にぴったりなシーンだった。
向井の言う"鋭角サウンド"には新たに祭囃子な音頭も加わり、都会に佇む少女がますます過酷なことになっていく。
それにスリルを感じるかどうかで、楽しみ方は変わっていく。
ナンバーガール、今後どうなっていくのか。ますます期待が膨らむ。



<セットリスト>
01. ZEGEN VS UNDERCOVER
02.
omoide in my head
03. NUM-AMI-DABUTZ
04. EIGHT BEATER
05. 裸足の季節
06. TATTOOあり
07. DESTRUCTION BABY w/こだま和文
08. ネクラの坊さん w/こだま和文、加藤来門(smorgas)
09. 性的少女
10. I don't know
11. INUZINI
<アンコール>

01.鉄風 鋭くなって
02.IGGY POP FAN CLUB

2002年5月23日木曜日

NUMBER GIRL@神戸チキンジョージ

ナンバーガール、約1年ぶりの神戸チキンジョージ。7年前に阪神大震災で崩壊した生田神社はその面影を全く見せないが、ナンバーガールも約1年前の面影を見せない。
それほど、先月発売されたアルバム『NUM-HEAVY METALLIC』は変貌を遂げたようにも思えるし、ライブ前に向井秀徳がチキンジョージ近くで弾き語りをやっていたらしいが、それも昨年に比べて千昌夫の『北国の春』、安全地帯の『ワインレッドの心』という渋い選曲になっていたくらいだ。

開場時間になるとチキンジョージがあっという間に人で埋まり、開演待ちの会場ではどこからともなく向井のアナウンスが響き渡る。
「本日はNUM-HEAVY METALLIC TOURにお越し頂きまして、ありがとうございます。バーカウンターは皆さまの後方に設けてあります。ライブ中の飲食は大いに結構でございます」
普通の声で、普通にアナウンスしている様に会場から笑いが。

程なくするといつもの『マーキームーン』タイム。ナンバーガールのライブの始まりを告げる音楽だ。


『NUM-AMI-DABUTZ』でスタートする。向井のお経のようなボーカルの後ろで、アヒト・イナザワのドラムが暴れまくっている。中尾憲太郎のベースだけが丁寧に曲を進行させ、田渕ひさ子もそうかと見せかけて、終盤のギターは怪獣の鳴き声のような鋭く尖った音を繰り出してくる。そして『ZEGEN VS UNDERCOVER』と続け、そのまま『鉄風 鋭くなって』『Tombo the Electric Bloodred』『INUZINI』へと演奏をぶちかましていく。
アヒトの声にあわせて「やっぱりロックンロールやね~」と会場は大合唱。その通り、やっぱりロックンロールな舞台がそこにあった。

HEAVY METALLICなセットリストの中に組み込まれたのが『裸足の季節』。新鮮に聴こえた。『CIBICCOさん』は以前ライブで聴いたときよりも洗練させており、向井のギターの音がギラギラとしていた。金属音が響き、それに熱を帯びているようなサウンド。右のスピーカーからはひさ子の同じフレーズが延々と聴こえ、後半のドラマチックな展開に思わず唸る。
『delayed brain』で一気にムーディな雰囲気になり、「妄想恋愛中の男女に捧げます」と言って『MANGA SICK』の演奏へ。向井はこの曲の前はMCで執拗に恋愛をシニカルに捉えたような発言をする。彼自身も漫画のような恋の策略に呑まれ、考えても意味のない恋愛について無駄な時間を費やしたに違いない。それがやがて「俺は見る」と少し距離置いて恋愛を見ることになったのだろう。

「ふ・し・ぎ!!」と向井が叫ぶと、『FU・SI・GI』へ。途中からスピードが加速する部分は、スリルを感じる。ある意味、曲が崩壊しそうな危うさもあるが、元に戻って向井が高音のボーカルを聴かせる。ナンバーガールの楽曲の中でも、特異な方。最も、不思議な曲だ。
『DESTRUCTION BABY』はダブバージョン。「デスッデスッデスッデスッデスッ…」と相変わらずの人力エコーで笑わせて、『FIGHT FIGHT』では曲が一瞬沈黙する部分で「ラーメン食いたい…」と呟いていた。
『性的少女』は後半の展開にアレンジが加えられていた。「記憶を己でぶち消した!!」といった向井の絶叫の後ろで、ひさ子がギターでセンチメンタルなメロディを奏でている。音がグワングワン歪み、性的な少女が見た景色を物語っているかのよう。最後の「あの子は今日も歩いてた 知らない誰かと歩いてた」は胸にスッと凍りついた風が入り込むような、空虚な余韻を残してくれる。

そしてライブで初めて聴くことになる『狂って候』。リズムを掴みにくい前半の演奏であるはずなのに、客席は一気にヒートアップ。後半、「記憶、記憶 妄想、妄想、妄想」と延々と叫ぶ向井、そしてひさ子のギターは先ほどの『性的少女』同様、ドラマを感じさせるメロディだった。歌詞はずっと同じなのに、その記憶と妄想にギターのメロディが切ない味付けをしていた。

この日のハイライトとなるのは『BRUTAL MAN』。大幅なアレンジが施されており、『BRUTAL NUMBER GIRL』にも近い印象のテンポでゆっくりと確実に攻めていく。サビの中憲のベースが気持ちいい。心地よい陰鬱を味わえる。後半、向井のギターから速度が一気に速まるという展開。ハードコアにも近いスピードでがつがつと攻めていく。「六本の狂った鋼の振動!!」と突然絶叫ばかりになるボーカルは狂気そのもの。これはすごい。

『omoide in my head』はお約束。なのにイントロは毎回違うアクションとプレイ。ひさ子のギターを使った無言の煽情は、いつ観ても興奮させてくれる。言葉無しでも観客を煽ることはできるのか。
『I don't know』は曲が始まる前に、向井が弾き語りのように歌詞をすべて歌う。激情と衝動に身を任せたようなハードな曲だけど、合間合間に歌われる歌詞なんとも切なくて、やるせない。風に吹かれて存在が今にも消えそうな少女がイメージされ、『ナンバーガール』という世界観の重要人物が笑って走り出している。向井の歌には色んな少女がいるものだ。


アンコールは『EIGHT BEATER』。ステージも客席も混沌とした。中憲のすべてを破壊しそうなパフォーマンスは、どこをどう見ても非の打ちどころがない。ロックはこうでなきゃ、と言わんばかりのアクションの連続だ。

今回、向井はMCで「神戸っ子にしてはおとなしいですね。何か悩み事でもあるんですか?」と煽りにも似たことを言っていた。確かに、昨年に比べるとお客さんのテンションは落ち着いているように思えた。年齢を重ねるごとに大人になってしまったのか。『マーキームーン』の時点でダイバーがいたことを考えると、悩み事を抱えてそうな客席にも思える。
とはいえ、ひさ子コールが巻き起こったときに恥ずかしそうに笑いひさ子に対し、「ひさ子照れんな!」といった歓声があったりと、客席からの掛け合いはハツラツとしたものが多かった。

音源から新たな付け加えられたアレンジや展開が印象的だった。特に『BRUTAL MAN』の変貌っぷりは昨年では考えられなかった。あれはとにかくやばい。ロックの美味しいところを全部持ち込んでいる気がした。


<セットリスト>
01. NUM-AMI-DABUTZ
02. ZEGEN VS UNDERCOVER
03. 鉄風 鋭くなって
04. Tombo the electric bloodred
05. INUZINI
06. 裸足の季節
07. CIBICCOさん
08. delayed brain
09. MANGA SICK
10. FU・SI・GI
11. DESTRUCTION BABY
12. FIGHT FIGHT
13. 性的少女
14. 狂って候
15. BRUTAL MAN
16. omoide in my head
17. I don't know
<アンコール>

EIGHT BEATER

2002年4月29日月曜日

NUMBER GIRL@京都KBSホール

京都はなんかいい。丸太町駅付近はなんかいい。「なんか」とは一体何なのかを探るヒマもなく、KBSホールに辿り着く。客席フロアは平坦としており、その奥にステージがある。ライブハウスとは雰囲気の違う場所だ。
ここでFar East Jungleという番組の5周年記念イベントが開催される。その名も『FEJ』。略しただけじゃないか。しかし、くるりからゴスペラーズ、キリンジからスネイルランプまで、幅広いアーティストがこのイベントにコメントを寄せている。そんなに有名な番組なのか。

対バンは、HAWAII1200、THE STILES、THE MICH TEETH、DJ SANCON、LUNCH TIME SPEAX。

そして最後を飾るのがナンバーガール。


急に前方に押しかける観客。ナンバーガールの人気を物語ると同時に、最前近くにいたたけうちんぐの背中に多大な重圧がのしかかる。ステージ前に柵はなく、客席とステージが何の隔たりもない。ダイブしてきた人はどこに行き着くのかという疑問が生じる。

1曲目は『TATTOOあり』。いきなり攻めてくる。が、中尾憲太郎のベースの音が出ないというアクシデントがあった。無事、後半から低音が鳴り響く。そしてそのまま『SASU-YOU』。「俺、なんも悪いこと」の部分がアレンジされており、「俺俺俺俺…」と人力エコーで歌うようになっていた。そのときの田渕ひさ子のギターも、若干可愛らしい弾き方に。通り魔も優しい目をして通り過ぎていくよこれ。

『鉄風 鋭くなって』のベースが始まると、向井秀徳がなぜかジャンプ。飛び跳ねてノリノリだ。これは『NUM-AMI-DABUTZ』のPVでお面をつけながら飛んでいる絵に近い。どうした向井。というくらいのテンションだった。
『CIBICCOさん』の後半の展開は景色をガラリと変えてくれる。ひさ子の延々と同じフレーズが繰り返される中、そのまま『NUM-AMI-DABUTZ』へ突入。この瞬間がライブの最高潮。ナンバーガールの新境地といえるこの曲は、彼らにとって革新的かと思われたがファンには意外にもすんなりと受け入れられた。その証拠に、「必要はなーい!」という大合唱。必要のある音楽を目の前にして。
ライブで初めて聴くことになる『delayed brain』。「社会との約束、思い出せんときがある」という歌詞が物悲しい。アヒト・イナザワのドラムが見ていて釘付けになる。思いがけないところでズカズカと激しく叩くのだ。

「京都っ子にしてはイマイチな盛り上がりではありませんか」
向井がMCで煽り、観客はなにくそ!といった様子で歓声を上げる。『FIGHT FIGHT』『MANGA SICK』と、淡々と演奏を続けていく。
最後は『omoide in my head』『I don't know』の連続技。ひさ子がギターを高く掲げ、グォオオーンと鈍い音が轟けばナンバーガールの真骨頂がそこにある。
しかし、ダイバーへの不安がここで現実のものに。ステージと客席の間に空間がないためか、ジタバタするダイブした人の足が隣にいた女の子の耳を直撃。ライブの激しさと楽しさは比例するときも、反比例するときもあるようだ。


終演後、ホールスタッフの人が販売していたのが明らかに弁当の残り物。食べていると、向井秀徳に遭遇。「なにバイト弁当食っとんねん」と指摘してきた。
中憲のベースの不調もあれば、ダイブの危険もあった。それほど完璧なライブではなかったかも知れないけど、『SASU-YOU』の一部アレンジは思いがけない収穫。『SAPPUKEI』の頃では考えられなかった変化だけど、これからの展開が楽しみになりました。


<セットリスト>
1.TATOOあり
2.SASU-YOU
3.鉄風 鋭くなって
4.CIBICCOさん
5.NUM-AMI-DABUTZ
6.delayed brain
7.FIGHT FIGHT
8.MANGA SICK
9.omoide in my head
10.I don't know

2002年3月27日水曜日

NUMBER GIRL@心斎橋クラブクアトロ

向井「皆さんと飲み会をしましょう」
観客「おおーーー!!!」
向井「夢の中で」


最新シングル『NUM-AMI-DABUTZ』が発売されてちょうど一週間後、心斎橋クラブクアトロにナンバーガールがやって来た。
天気が悪い日だったが、午後からは快晴に。「天は雨を降らし」とはいえど、見事なライブ日和となった。今回はナンバーガールの自主イベント『FAN CLUB』。対バンに迎え入れられたのはLuminous Orange。

最初に登場したのはLuminous Orange。1曲目は『KEN-BAN』。赤・橙に発光するライトがギターの音色にズブズブとはまり、染まっていく。キラキラしていた。『walkblind』も心地よく、聴いていてうっとりするような演奏が続いた。

そしてナンバーガールの登場。
真っ赤なシャツ、そして最近頭を刈ったという向井秀徳の頭髪に話題が集中。『マーキームーン』が流れる最中の歓声の「わー」のほとんどが、その頭髪へのリアクションではなかろうかと疑うほどだ。メンバーの準備ができ、1曲目は『DESTRUCTION BABY』。いつもはダブバージョンばかりライブで聴いていたが、今回は通常バージョン。何気に初めて。サビの田渕ひさ子のギターの音が鈍く、深く、渋く、轟く。ギターなのに重低音を感じる音だ。

そして最新の『NUM-AMI-DABUTZ』。イントロから興奮が加速し、ひさ子の単音フレーズが耳にこびりついて離れない。中尾憲太郎だけが一定のフレーズを奏で、土台を作る。その上でアヒト・イナザワが自由自在にドラムを叩き、向井のお経のようなボーカルが世界観を作る。後半のひさ子のギターソロは、『TATTOOあり』のギターソロに匹敵する絶頂ポイント。空間を切り裂く音だ。

そのまま『ZEGEN VS UNDERCOVER』『鉄風 鋭くなって』と立て続けに演奏。4ヶ月ぶりに関西に来たナンバーガールのライブは、客席も4ヶ月の渇望感がモッシュとダイブで表現されており、体力は消耗するが、感情は覚醒していた。
「今日は新曲を中心にやります」
最新アルバムも楽しみな彼らの新しい楽曲が、次々に披露されていく。まずは中尾憲太郎のベースから始まる『CIBICCOさん』。「ちびっこさんよー!」と何度も話しかけてくるような歌詞。そして後半は少しテンポがスローになり、ひさ子のギターが次の展開へと誘う構成だ。

最新シングルのカップリング曲『MACHIGAI』『FIGHT FIGHT』の演奏へ。「しない!」「あいたた!」がまさかの大合唱に。世界中どこを探してもこんな言葉を合唱する空間はない。後半、向井のギターソロが。真剣に弾きながらも、どこかおちゃらけて楽しいアクションをしようとするサービス精神が向井にはある。だから、ずっと見てしまうし、活動を追いたくなるのだ。

「妄想恋愛ってあるよね」
「雰囲気だけのFall in Loveってあるよね」
「ベイサイドジェニーの横でデートするよね」
「観覧車に乗ったりするよね」
「合コンで惚れたってよく言うよね」

向井、MCで突然お客さんに話しかける。「言われても」といったことばかりだが、実はこれが曲紹介。「漫画みたいな恋するよね」といった具合に、新曲の『MANGA SICK』が披露される。「ひっついて」「まぐわった」などといった短い言葉を連ねていく中盤。今までのナンバーガールにはあまり無いような曲調であり、終盤の向井のボーカルのメロディが珍しいように思えた。


お客さんの一人に「(酒に)酔ってる?」と問われる向井。「酔ってません。そんな失礼なことはしません」と応えるが、絶対に酔ってる。呂律は回っているが、それは酒に強いだけ。先ほどの『MANGA SICK』直前のMCも、酒のにおいが漂ってきそうな口調だった。
「酒飲んでリミッターかかってる人は、酒毒を取り入れないようにしてるんです。私はそのまま飲み続けているので、辛いんです。ここにいる皆さんの中で、『自分は酒に強い!』 と思う方いらっしゃいますか?」
突然、客席に問う向井。次々に挙手が。「(酒飲んだら)辛い」という声に、中尾憲太郎が「飲まなきゃいい…」とぼそっと呟く。彼がライブ中に喋るのは非常に珍しい。しかも笑顔だった。

まだ喋り足りない様子の向井は「皆さんは何時ごろ寝ますか?」と引き続き質問を。やっぱり絶対酔っ払ってる。向井は左を意識し、ひさ子に「何時ごろ寝ますか?」と問う。まさかの「4時」という答えに、会場がどよめく。深夜すぎるだろう。「4時…」と、向井はなぜか渋い表情で返答に困っていた。

ひさ子は4時、そして向井は…といった具合に『MUKAI NIGHT』という、なかなかぶっ飛んだタイトルの新曲の演奏へ。『INAZAWA CHAINSAW』もあれば『MUKAI NIGHT』だってあるのだろう。ひさ子はリズムに乗ってぴょんぴょん飛び跳ね、『HISAKO JUMP』がいつかは作られるのだろうか。中尾憲太郎も…そんなわけないか。
後半、向井の自由時間が始まる。ギターをお客さんに向けて傾けたり、最前列にいたお客さんが持っていた本を取り、中尾憲太郎と一緒に読んだり。演奏中とは思えないパフォーマンスに笑いが巻き起こる。

「映画『害虫』が公開になります。ぜひご覧ください」
ライブで初めて聴いた『I don't know』。メンバーの気迫が音で伝わってくる。「うおおおおい!!」と絶叫する向井。メロディなんてあってないようなもの、といった具合にひさ子のギターの弦が掻き毟られ、激情を感じる。絶叫の合間合間に曲が一旦落ち着き、「あの子のほんとを俺は知らない、あの子のうそを俺は知らない」という歌詞が印象的だった。
そのまま『大あたりの季節』へ。『SCHOOL GIRL BYE BYE』の音源とはまた違っており、ギターが金属音のようにジャリジャリ鳴り、鋭い。また別の季節の到来を感じた。それは曲だけでなく、ナンバーガール自身にも言えることだ。


ライブの本編が終わり、アンコール。

なぜか向井のよるイントロクイズがスタートし、安全地帯の『ワインレッドの心』のイントロが披露される。クイズに正解した男性客は向井からビールをプレゼントされ、ライブというよりかトークイベントのような雰囲気に変貌する。
向井は更に続け、「これはカラオケによく行く方や、女性はご存知の方が多いと思われます」とギターを奏でる。中島みゆきの『悪女』だった。アヒトと中憲が「俺、わからんかった」と呟く。正解者の女性客がステージに上がらせられ、向井のギターとアヒトのドラムをバックに歌わされる。女性にとって貴重な体験であるかも知れないが、すごく大変な状況である。「もし、これで誰もわからんかったらどうなっていたんでしょうね」とボソッと向井が呟き、笑いが。
いまだかつてナンバーガールのライブでは味わったことのない、砕けた雰囲気。殺伐、狂気、鋭角なサウンドの最中これなんだから、向井という人間は掴みどころがない。

「アンコールの曲はまだ決まっておりませんので、皆さんのご要望に応えます」
客席からは「タトゥーー!」「イナチェン!」「イギーポップー!」などと叫び声が。「サムライッサムライッ!」「サムライやってー!」といった声が多く、向井が呟き始める。
「なぜ、そこまでして、腹を切らなきゃいけんのか…」
ライブアルバム『シブヤROCKTRANSFORMED状態』での『SAMURAI』直前のMCが始まるが、次に演奏する曲が本当に決まっていなかったのか、延々と呟き続ける向井の後ろでひさ子と中憲が「え、これ次『SAMURAI』でいいよね?」と真剣に相談する光景が。

そして約束通り、『SAMURAI』。続けて、要望に応えるように『IGGY POP FAN CLUB』で終了。


4ヶ月ぶりの関西でのライブ。新しいシングルを引っさげてのライブは大盛況のまま終わった。途中、MCで向井が「皆さんと飲み会しましょう」と言い、「夢の中で」と付け足すと、なぜか観客が「ひゅーーひゅーーー」と歓声を。こういったやり取りや、お客さんとイントロクイズをやったり、メンバー同士の掛け合いもあるなど、演奏だけでなく、MCも充実していたように思う。

自由気ままなライブだけど、ちゃんと楽しませることを心がけている。すべては向井秀徳のサービス精神ゆえのパフォーマンスだろう。


終演後、クアトロに残っていたら向井秀徳に連れられ、クアトロ内で30分間くらい話す。高校生活最後の思い出となった。インマイヘッド。



[セットリスト]
01. DESTRUCTION BABY
02. NUM-AMI-DABUTZ
03. ZEGEN VS UNDERCOVER
04. 鉄風 鋭くなって
05. CIBICCO さん
06. MACHIGAI
07. FIGHT FIGHT
08. MANGA SICK
09. MUKAI NIGHT
10. I don't Know
11. 大当たりの季節
E1. SAMURAI
E2. IGGY POP FAN CLUB

2001年11月8日木曜日

NUMBER GIRL@大阪ベイサイドジェニー

bloodthirsty butchersとのツーマンライブツアー・HARAKIRI KOCORONO TOURが遂にやって来た。
HARAKIRIはナンバーガール。KOCORONOはブッチャーズ。そのネーミングセンスもずば抜けてかっこいいツアーの関西編は、大阪ベイサイドジェニー。

『マーキームーン』を登場SEに、まずはナンバーガールの登場。
向井秀徳は真っ白けっけの服でコーディネートされ、ライトに反射してとにかく眩しい。後光とかそういうのではなく、物理的に眩しいのだ。田渕ひさ子も白っぽい服装。中尾憲太郎はボーダーの服で、囚人のようだ。アヒト・イナザワは赤い。と、無駄にファッションチェックを行なったのも束の間、彼らの第一音は低い重低音。それ、すなわち『鉄風 鋭くなって』だ。

しかし、今回はいつもとワケが違う。ダブバージョンの『鉄風』である。鋭く尖ったテレキャスターの音が時折空間を切り裂くように響き渡り、終始無表情な田渕ひさ子のギターがリズミカルにテロテロリンと鳴る。向井の中盤のギターソロは和風なメロディ。予測不可能とも言えるアヒトのおかずたっぷりなドラムは、充実感たっぷり。
そして『TATTOOあり』から曲のスピードが一気に加速。客席も大いに盛り上がり、ひさ子のギターソロの瞬間は何か大きなビルが破壊されたかのような衝撃が脳天から足元まで駆け巡るのだ。この興奮を覚えた人たちが歓声を上げていた。

初披露となる『真っ黒けっけの海』。汚れた海を泳ぐ夢ばかり見ている女の子について歌われた曲。『Sentimetal Girl's Violent Joke』の世界の続編とも呼べる、感傷的な女の子が想像できる曲だ。向井のギターと歌だけで始まるが、サビではすべての楽器が一気に集う。
「頭の機能がぶっ飛んで!」といった絶叫があったような気がする。
とにかく、向井のギターが焼き焦げたような音。ジリジリと煙を上げるように、寂しい、いや、寂しがってる、いや、寂しい自分を得意げに見せている女の子の歌が披露されていた。

「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」から始まったのは『タッチ』。真っ黒けっけの海を泳ぐ夢を見る女の子も嘘笑いで放課後の恋を探していたのだろうか。ナンバーガールの曲に登場する女の子はみんな、寂しげで、顔は見えない。輪郭だけがあって、ぼんやりと記憶の奥底で笑っているのだ。

「今年で3回目である、このHARAKIRI KOCORONO TOURも、今年で3回目です」

日本語が完全に崩壊している向井のMCが笑いを誘う。「我々の演奏の後も、bloodthirsty butchersの演奏を楽しんでいってください。それでは、bloodthirsty butchersの好きな曲をやります」と言い、『プールサイド』のカバーを披露する。
ブッチャーズのオリジナルと違い、ナンバーガールは少し攻めている様子の曲調。それはやはり、中尾憲太郎の直線的なベースがそうさせているのだろう。ガリガリガリとひさ子はギターを掻き鳴らし、高音が延々と響いている。水色の飛沫がイメージできる。曲の世界観を大切にしたカバーだ。

「赤とんぼが飛んどったよ」

向井は突然、MCでこう呟く。いまいち反応の薄い会場に向けて、なぜかどんどん早口言葉で同じ言葉を繰り返す。「あかぁんがとんどぁよ」といった具合に、「何喋っとんのか分からん…」と自分で自分をつっこんでいた。それでもMCを続ける。

「赤とんぼが飛んどったよ。止まったよ。…今度はスズメバチが飛んどったよ。小学3年の○○君が、スズメバチの巣を叩いて刺されたよ。スズメバチに刺された痕は残ってないけど、他の傷はまだ残ってるよ」
意味のわからない語りが、なぜか最後は切なさを帯びていた。心の傷、というつもりなのか、そのまま切なさを持ち運んで『日常に生きる少女』へ。スズメバチが本当に関係ない。

そして「中野駅の4時から6時の間、そこに流れる空気と出会うことがある」と向井が言う。なんだそれは、と思ったら「クーキ」と言い、まさかの新曲『Ku~Ki』が聴けるとは。
「半・分・空・気!」というアヒトのカウントによって演奏がスタート。ゆったりしたテンポから始まり、中後半は突然スピードが速まり、キラキラとした街をかけ走るような田渕ひさ子のギターのメロディが気持ちいい。『SUPER YOUNG』と『水色革命』が合わさった感じなんだろうか。最初期のナンバーガールの楽曲に近いように思えて、少女の存在がどこか儚げで鬱屈している様子は『SAPPUKEI』以降の世界観に通ずる。福岡編のナンバーガールが、都会に巻き込まれた。そんなイメージだ。

その後、『我起立唯我一人』『IGGY POP FAN CLUB』を演奏し、ナンバーガールのライブは終了。田渕ひさ子が楽しそうに飛び跳ねながらギターを弾き、男くさいステージが一気に彩られる。どれだけ必要な存在なんだろうか。


ナンバーガールの後は、bloodthirsty butchersの出番。

ミニタリーな格好の吉村秀樹。帽子も迷彩柄でキメており、ここは戦場かと思わせる。アルバム『yamane』を中心にしたセットリスト。1曲目からそのオープニング曲『theme』、そして『happy end』。吉村の滲んだギターの音、射守矢の深く図太いベース、小松の軽快ながらも確かなリズムを刻むドラム。楽器はこの三つで十分なほど、他の音は要らなかった。
『10月』は痺れた。もう10月は終わったけど、秋の季節柄、木枯らしを感じた。ツアー名にKOCORONOとある分、『Kocorono』からも何曲か演奏。『7月』『2月』でライブは終わる。季節は冬から夏にかけて、ブッチャーズの音楽は今の季節を変えてくれた。ライブハウスを出ると、完全に秋の夜空が広がるわけだけど。

そのツアー名の通り、腹切り心のツアーだった。いや、意味が分からない。刺激的な言葉が二つ並んで理解不能なツアー名になったにも関わらず、なんとなーく「HARAKIRI KOCORONOだったわー」と感想を吐いてしまいそうになるイベントだった。
少なくとも、向井秀徳はブッチャーズとの対バンというだけあり、いつも以上の気合いが垣間見えた。ハラキリというか、ハリキリといったところかも知れないけど。


<セットリスト>
1 鉄風 鋭くなって
2 TATTOOあり
3 真っ黒けっけの海(仮)
4 タッチ
5 プールサイド
6 日常に生きる少女
7 Ku~Ki
8 我起立唯我一人
9 IGGYPOP FANCLUB

2001年10月5日金曜日

NUMBER GIRL@大阪ベイサイドジェニー

初めて来たベイサイドジェニー。その名の通り、ベイサイドだけあって大阪の港が見えて、近くには観覧車と海遊館がある。

港の向こう、海の遥か彼方から舞い降りてきたニューヨークのバンド・SUPERCHUNKを迎えて行なわれたイベント『SPLIT JAPAN TOUR』。考えてみれば対バンライブは初めて観る。いつもはワンマンで、ナンバーガール目当ての観客の前での彼らしか見ていない。さて、今日はどうなるか。しかもニューヨーク。ワールドワイドなライブを見せてくれるに違いない。
先月、9月11日にニューヨークでテロ事件が起きた。あらゆるところで大々的に報道され、SUPERCHUNKの来日は大丈夫なんだろうかと不安に思ったけど、無事開催されることになりました。


出番はナンバーガールが先。
開演を待つ間、見上げた2階にはナンバーガールのメンバーが次々と姿を現していた。スタッフと談笑する彼らの姿がやがて消えたとき、それがステージに降り立つ合図。『マーキームーン』が流れると大歓声が上がり、メンバーがステージに。
向井秀徳は散発をしたのか、耳のあたりが草原みたいになっていた。ほんと、今までイメージしていた"ロックミュージシャン"とは一線を画す風貌をしている。

アヒト・イナザワが「P・U・N・K!」とカウントを始め、いきなり『裸足の季節』とは。この日の向井はいつもとワケが違った。目が鋭く、何かを凝視して捕らえて離さないような眼光で絶叫している。いつもより増して狂気が滲み出ていた。その証拠に、そのまま『SASU-YOU』なんだから。通り魔の歌なんだから。終盤、田渕ひさ子の工場の機械音のような無機質であり、尖りまくったギターの音がたまらない。「ルサンチマン抱えた奴ら」がすぐ目の前にいるような、そんなテンションでがつがつと演奏するナンバーガール。

そして初めて生で聴いた『ウェイ?』。向井、まさかのぴょんぴょん飛び跳ねながらの演奏。さっきまでの狂気はどこへやら、といった可愛らしい姿が目の前に広がり、観客も彼と同じようにぴょんぴょんとモッシュをしている。オモチャのような飛び跳ね方に笑いが起きる。

「アメリカからはるばる、"Hyper Enough"がやって来ました。やって来てくれました。大変嬉しい」

対バンに迎え入れたSUPERCHUNKを紹介する向井。何度も「アメリカが誇る…」と絶賛する。客席からは「テロは?テロは?」という声が。「そんなん知ったことかー!」と向井が返答。
「それでお前、そんなんでお前、イベントできんかってお前、部屋でなんもせんやったらお前なー」などとなぜか日本語崩壊な返答を続けていた。やはりテロ事件当時はこのイベントへの出演のキャンセルを考えていたそうだが、SUPERCHUNKが前向きに出演を考えてくれて無事出演、とのこと。

『DRUNK AFTERNOON』。真っ赤なライトに照らされて、夕暮れの空の中で演奏されているような光景に。ほぼ全編に渡って向井が絶叫し、淡々と演奏されているようで、内面はゾクゾクと鳥肌が立つような感情が渦巻いている。そんなステージだった。そして『桜のダンス』へ。最近、東京のライブとかではダブバージョンになったと噂で聞いていたが、通常バージョンだった。「造・反・有・理!」というアヒトのカウントが刺激的だ。
そして『ABSTRACT TRUTH』。ステージで繰り広げられる衝動は、もはや抽象的なんかではなく、具体的。
「先生あなたは誰ですか?先生お前は誰なんだ?先生貴様は誰なんだー!?」
この三段活用はいつ聴いても痺れる。


再びMCの時間へ。先ほど海遊館に行ってきたと渋く語る向井に、会場が笑いに包まれる。
「かわいい動物ショーというものに参加しました。一人で」
寂しいエピソードを続ける。
「まわりにはカップルたちがいましたが、そこで檻の中で犬や猫が発狂しそうに、うずくまっとるわけですわな。動物たちが。それを見て私は感傷に浸っていました…そんな犬猫畜生に捧げます」
結局何が言いたいのかさっぱり分からないことになったMCに、田渕ひさ子が爆笑する。あと、「シーソーでバランスを保つ…尾崎豊の曲でもありましたね。『軋むベッドの上で~♪』」などとも話していたが、何のときのMCかは忘れてしまいました。そんなやるせない向井が次に繰り出すのは…。

『YARUSE NAKIOのBEAT』きました。カラスの鳴き声のようなギターが田渕ひさ子のジャズマスターから聴こえ、ああそうか、シーソーってこの曲の歌詞からか。と今書いていて思い出した。ただ、向井は2番の歌詞を1番の歌詞で歌ってしまっていた。あと、「1978年」って叫んでしまっていたような気がする。
そしてこの日のハイライトは『BRUTAL MAN』。特筆すべき点は、ラストの中尾憲太郎→向井秀徳→田渕ひさ子の連続ソロだ。それぞれが一部分のパートをリレーしていき、最後は全員でジャーン!と合わせる快感がたまらない。観客はステージの左から右へと視線を移す。最終的に音が中央に集まる感覚、これはかっこいいとしか言えない。
『TATTOOあり』ではまたひさ子ギターソロが長くなっていた。その間、ひさ子に向かい合ってギターを掻き鳴らす向井の姿が。

最後は『omoide in my head』。怒涛のイントロ、そして最後の向井が作ったオリジナルキャラクター"弦切り妖怪"とやらが降り立ったかのごとく、自ら弦切りとなってギターの弦を引きちぎる向井。メンバーが振り落とす音に合わせて、丁寧に一本ずつちぎっていく。「まだまだー!」と言わんばかりの表情でメンバーに合図し、その弦の異様な状態を見てひさ子が若干笑っている。「まだかよ…」と顔で訴えかけていた。
最後はバシッと弦をちぎってキメて、ナンバーガールの出番はこれにて終了。


次はSUPERCHUNK。ボーカルのマック・マコーンが「今日はヨーイチの誕生日なんだヨ!」と冒頭から日本人を連れて登場。誰かは分からないけどとりあえずおめでたい空気に包まれた会場では「ハッピーバースデイ・ヨーイチ」と大合唱が巻き起こる。ヨーイチさんらしき方は照れ笑いし、反応に困っていた。スタッフか関係者かと思われるが、アットホームなその雰囲気に温かい気持ちになる。

『hello hawk』を演奏してくれたのが嬉しかった。ギターのジム・ウィルバーは、ギターが身体の一部かと思えるほど縦横無尽にギターを扱っていた。ベースのローラ・バランスは中尾憲太郎女版と言わんばかりの激しいアクションで、度肝を抜かれた。これがアメリカってやつか!とバカみたいなことを言ってしまうほど。
アンコールは5曲も演奏。キーボードやアコースティックギターを使用し、幅広い音楽性を見せていた。 メロディがキャッチーで、耳にすんなり入り込む。テロ事件にも負けず、アメリカから無事来日してくれてよかったです。


< セットリスト >
01. 裸足の季節
02. SASU-YOU
03. ウェイ?
04. DRUNK AFTERNOON
05. 桜のダンス
06. ABSTRACT TRUTH
07. YARUSE NAKIOのBEAT
08. BRUTAL MAN
09. TATTOOあり
10. omoide in my head

2001年8月8日水曜日

NUMBER GIRL@心斎橋クラブクアトロ

先月7月の『騒やかな群像』ツアー・神戸編から早一ヶ月。あっという間に大阪編の日がやって来た。
関西のNUMBER GIRLフリークが一堂に会する場所は心斎橋クラブクアトロ。ここでまたもや騒がしい演奏と騒がしい群集がワーギャー叫ぶ。それ、すなわち騒やかな群像。

ライブハウスが暗転し、真っ暗闇になるとTELEVISIONの『マーキームーン』が流れる。青い照明に照らされたメンバーが続々とステージに登場。

向井秀徳は先月と同じアロハシャツを着ており、胸ポケットからライターを取り出す。煙草に火をつける。煙を吹かす。ライターをアンプの上に置く。この人、何歳なんだ。まだ一応20代だろう。50代のような貫禄を感じ、とてもじゃないけど「向井ー!」と呼び捨てしづらい。「向井先輩ー!」と叫んでしまう。
田渕ひさ子は髪が伸びていた。中尾憲太郎は髪が相変わらず長い。アヒト・イナザワは髪がさらさら。と、髪の毛のことばかりだけど、最初の一音の振動で髪が揺れるほどの重低音。中尾憲太郎の仕業。さすがです。

1曲目から『日常に生きる少女』。あらゆる邪念が轟音でかき消される冒頭、そして勢いよく鳴らされる向井のテレキャスターで客席はオイオイコール。なぜか最前列の中央に位置してしまったたけうちんぐは一気に後ろからの重圧を感じ、明らかに日常ではない。
後半の落ち着いた演奏に切り替わるとき、向井は「アヒト・イナザワ」の部分を「飛田新地で」と言っていた。関西在住なら誰もが知ってる、日本でも有数の色町・飛田新地。日常に生きる少女は飛田新地で働いているのだろうか。

そして飛田で働く女の子が脱いだときに『TATTOOあり』な状態だったのだろうか、この曲へ。終盤の田渕ひさ子のギターソロが、先日フジロック'01のインターネット中継で観たライブよりも3倍くらい長くなっている気がした。狂気の音を轟かせ、ダイバーの足が自分の首に引っかかる。クアトロの最前列で人の重圧を制御するはずの柵には、その圧を吸収するためにクッションのようなものが撒かれてる。だが、自分の腹の部分だけはなぜか無く、鉄だ。痛い。生死を彷徨うのにはちょうどいい、地獄で燃え滾る灼熱の炎を想像させる音だった。
そのまま『DESTRUCTION BABY』のダブバージョンへ。オリジナルバージョンも当然好きだが、このバージョンは向井が自ら"人力エコー"と称し、「BABY」の部分を「べいっべいっべぃっべぃっ…」と繰り返すのが気持ちいい。アヒト・イナザワのドラムも気持ちよくスコーンと響き渡るのだ。

そして『ZAZENBEATS KEMONOSTYLE』。「漫画を読んで30cm開いた雨戸から聞き取れます。都市のざわざわっと」以降、後半の歌詞は全く聞き取れないほどの轟音。30cmどころか30kmくらい開いた雨戸からは大音量のざわざわが聴こえてくる。

このタイミングで「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです」と自己紹介。まさかの『BRUTAL NUMBER GIRL』へ。初めて聴いたナンバーガールの楽曲。客席は再びモッシュの嵐となり、それが『鉄風 鋭くなって』でも続く。
『SAPPUKEI』。まさかの演奏。「殺す風景!!」「生かす風景!!」の絶叫に鳥肌が立つ。この気合いと、打ち鳴らされる音の数々。風景が変わってしまう。『裸足の季節』、そしてずっと聴きたかった『DRUNK AFTERNOON』を演奏。ほとんどの歌詞が絶叫で歌われているのに、切なくて感慨深くなる曲の世界。午後、何もしないで過ごしてしまった日に訪れる夕暮れの空しさ。これは映画でもドラマでも味わったことのない感傷です。


「あの子はお父さんとお母さんのセックスを小学1年生のときに目撃して以来、付き合う男は決まって年上でした。そして付き合っていく営みの中で、彼女が必ずひとつだけ彼氏に注文したことがあります…」

突然語り出した向井秀徳。戸惑う観客は、「注文したことがあります…」の後に続く言葉が出てこない向井に対して野次を飛ばす。まだまだ沈黙を続け、ステージでは向井の場所だけ時間が静止している状態。

「…あの子の手紙はここで終わっていました。あの子はそのとき、17才でした」

手紙だったのかい。
ということで始まったのは『YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING』。「営み」という意味でかなりエロいことを言いそうになったが、やめて、言葉が出てこなくなったと憶測。まったく、向井はヤラしい大人である。

向井がギターを弾き始め、何の曲か分からないまま即興で歌詞をつける。「大阪のみなさん~心斎橋クラブクアトロにお越しいただき~大変感謝しております~メンバー一同~ありがとう~♪」となんとなく柄にもないような歌詞で会場を笑わせる。その曲の正体は『ZEGEN VS UNDERCOVER』という、全く予想のつかないもの。「バリヤバイ!」という絶叫がステージからも、客席からも聞こえてくる。

女性ダイバーが頭上をかすめたのが印象的だった『透明少女』、最前列で感じるあまりの重圧にへこたれた『タッチ』、そして『我起立唯我一人』へ。デデデデといったベースで始まり、ツッタカタカタカとドラムが入る。後半の田渕ひさ子のギターソロは『TATTOOあり』でみせた狂気とは全く別物の、哀愁漂わせるメロディ。

向井が突然、「面接を…面接を…」と言い始める。どうやら、お目当ての女性を見つけるために目をキョロキョロさせているようだ。が、「いや、やめとこ」と諦める。「なんでー?」というお客さんの反応に、「またエロオヤジやと言われる!」と発言。大丈夫。みんな分かってます。

「最後、あと2曲やります」と言った後に打ち鳴らされたのは『omoide in my head』のドラムロール。いつ聴いても全く飽きることなく、気分が高揚するオープニング。その興奮はそのまま『はいから狂い』まで続いていく。音を鳴らしていないときも中尾憲太郎のアグレッシブなパフォーマンスは天井知らず。首がもげて飛んでいくのではないかと思うほど、何度も振り回していた。
最後、向井はメンバーの鳴らす音とタイミングを合わせるようにギターの弦を1本ずつ引きちぎっていく。その表情は(>-<)といったもので、漫画のようだった。


54-71がBGMで流れる中、アンコールを呼ぶ拍手が続く。最後の2曲で耳が思いっきり逝ってしまったのか、拍手の音もあまり聴こえない。そんな中、メンバーが再登場。
あれ?アヒト・イナザワがギターを抱えている。
「今日買いました~」
笑顔でゆるーく挨拶するアヒト。だが、ギターはそのまま置いてドラムセットに着席する。これは一体何なんだ。

アンコールは『TOKYO FREEZE』。先ほどまでの熱狂のステージとはまた違う、冷え切ったステージ。とはいえ、冷めているわけではない。凍りつくような落ち着き加減で、向井が腕を組みながらラップを披露しているのだ。イメージとしてラッパーは手を忙しく動かしているものであったが、ここでそのイメージは覆された。お経のように言葉を綴っていくラッパーは、ナンバーガールのライブでしか観れない。
メンバーが演奏中、向井だけがステージを去ろうとする。そのときのセリフがとても印象的だった。
「頑張りまーす」
なんだそりゃ。


神戸に引き続き、心斎橋でもナンバーガールはぶちかました。文字通り、騒やかな演奏であり、群像だった。MCもいちいち冴え渡り、観客との掛け合いは何度も笑いを誘っていた。ある女性客が「かっこいいー!」と歓声を上げると、向井が「誰ね?」と興味津々。わざわざ後ろを振り向いて反応する向井に、会場が盛り上がっていた。
「10月にまたベイサイドジェニーというところで、NYのバンド・SUPERCHUNKと共演します」とMCで告げていた。これも間違いなくマストなライブになるだろう。ナンバーガールのライブは、行けるだけ行かないと意味がない。これほど衝動を絵に描いたようなバンドはいないだろう。


< セットリスト >
01. 日常に生きる少女
02. TATTOOあり
03. DESTRUCTION BABY
04. ZAZENBEATS KEMONOSTYLE
05. BRUTAL NUMBER GIRL
06. 鉄風鋭くなって
07. SAPPUKEI
08. 裸足の季節
09. DRUNK AFTERNOON
10. YOUNG GIRL 17 SEXUALLY KNOWING
11. ZEGEN vs UNDERCOVER
12. 透明少女
13. タッチ
14. 我起立唯我一人
15. omoide in my head
16. はいから狂い
[ アンコール ]
TOKYO FREEZE

2001年7月2日月曜日

NUMBER GIRL@神戸チキンジョージ

NUMBER GIRL熱がまったく冷め切らない中、暑い季節がやってきた。前回彼らが関西に来て、ライブを観に行った頃は冬だった。夏真っ盛りの気温であの熱狂の渦。自分の体力は大丈夫なのかと危惧しながらのライブとなった。
ワンマンライブツアー・騒やかな群像、神戸編。


開演前、チキンジョージ前になにやら人だかりが。チキンジョージ向かいのジャズバーに、なんと向井秀徳が。ギターを抱えてメガネを光らせている。そしてアロハシャツ。チンピラかと。周囲の人たちは目を輝かせ、状況を冷静に飲み込もうとしている。たけうちんぐもその中の一人。向井が向かいにいて、間近。これはマジか。と、意味もなくダジャレばかりの状況下、エレキギターにアンプを繋いだ音がジャアアンと鳴る。なぜか下駄姿だった。
『たとえば僕が死んだら』を披露し、そして『嘘だらけの7days』は途中で演奏をストップ。
「ここからはお一人様、○万円で」
高いよ。でも、この状況だったら払ってしまう人もいただろうな。高校生の自分には到底払える額ではなかったけど。
途中、自転車で通行するおじいさんをみんなで道をあけて通らせるシーンも。騒音といい、場所といい、かなり迷惑であるはずの催しではあったけど、おじいさんが走る道が花道になっていたせいか、少し笑顔のおじいさんでした。
なぜかアヒト・イナザワの名前を連呼していた向井。だけどアヒトの姿はなかった。最終的には「10円くらい入れてくれ…」と嘆いていた。
画素数のひどい携帯でその光景を撮影したけど、完全に包囲されている人にしか見えない写真になった。


チキンジョージの中、冷房がガンガン効いている。とにかく涼しい。ライブが始まるとこれも意味がなくなるのだろうけど、先ほどまで直射日光の下にいたせいか、HPが一気に回復していく。
まだライブが始まっていないのに、「向井ー!」という歓声が。やっぱりすごい人気なんだな、と解釈していたけど、気付けば後方2階席をお客さんが見上げている。よく見るとそこには向井秀徳がいて、踊っている。
先ほどのストリート・ミュージシャンといい、どれだけサービス精神があるのか。それとも出たがりなのか。酔っ払っているのか。
一瞬、自分以外誰ひとりと向井の踊りに気付いていない瞬間があり、それは寂しいものだった。この日の主役みたいなものなのに。

19時。照明が途端に暗くなり、『マーキームーン』が流れる。客席は一気にヒートアップ。叫び声しか聞こえない。そしてまさかの『マーキームーン』中のダイバー続出。まさかTELEVISIONも音源だけでダイバーが出るとは思ってもみなかっただろう。

1曲目から、神戸のど真ん中で『TOKYO FREEZE』。そのタイトルに反し、全くフリーズしない熱さしかなかった。田渕ひさ子は笑顔で、中尾憲太郎はロン毛で、アヒト・イナザワはキョトンとした表情をしている。向井のメガネがグラサンのように怪しく光る瞬間があった。
そのまま『鉄風 鋭くなって』。鋭くなるのは風だけでなく、向井のギター、そして観客の気持ち。そのせいか、たけうちんぐが着用していたメガネが吹き飛んだ。風のせいにしようと思った。危険を察知し、後方へずるずると後ずさる。こんなに危ないことになるとは、今日の神戸は狂ってる。歌詞にある「Aという名のノラ猫」のように、3列目くらいでくたばったのだ。

そして『SASU-YOU』。ナンバーガールの楽曲の中で最も攻撃的な歌詞に思える。刺すもんね。刺されたよ。という関係性がステージと客席の間にある。首がぶっ飛びそうなほど振り落とされる中尾憲太郎のアクション。音もそれに負けない激しさがある。お腹にくる。足元から脳天まで重低音が支配するのだ。
夏真っ盛りの季節にぴったりな『透明少女』から、まさかの『EIGHT BEATER』へ。この曲が本日のベストアクトではなかろうか。会話のようにつらつらと続ける歌詞、そのほとんどを絶叫している。すべてを理解できるような歌詞ではないのに、一緒に歌いたくなる。ひさ子は自分の身長以上の高さまでギターを持ち上げ、お客さんを煽情するかのように掲げる。その瞬間、生まれてこのかた味わったことのない興奮を得ましたのです。

「あーヤバイ」「ったらヤバイ」「あーヤバ」「どげんせーってなくらいヤバイ」「んんっとヤバイ」「つったらこれバリヤバイ」
ギターを奏でながら、1分間くらい独り言を続ける向井。
次の曲が容易に予想できる状態のもと、きました「ヤバイ」の正体『ZEGEN VS UNDERCOVER』が。メンバー全員が演奏に入る瞬間の動き、音と同期していてヤバイ。
『U-REI』は前回のライブで観たような、ひさ子の5分間くらいのイントロギターソロはなかった。スマートかつコンパクトになったように思えたけど、これが原曲だ。

『ミニグラマー』をライブで初めて聴けた。DVD『騒やかな演奏』発売記念ツアーというだけあって、DVDに収録されている楽曲を演奏してくれている。正直、アルバムではピンとこなかった曲も、ライブでは3倍くらいパワーアップしている。ダイバーがいた。その気持ち、わかりますよダイバーさん。
『DESTRUCTION BABY』はダブバージョン。緊張感があった。音数が少ない分、ベースの音がダイレクトに響いてくる。これがダブというものか。音源のグゥウワーンというひさ子の歪み滲んだようなギターも好きだけど、ジャッ、ジャッとリズミカルにカッティングされるこのバージョンも気持ちいい。

『TATTOOあり』は言うことなし。ありまくりだった。最後のひさ子のギターソロ、感涙ものだ。『ABSTRACT TRUTH』は抽象的な感動がどこにもない。はっきりとした、具体的な感動がステージで繰り広げられていた。先生が「あなた」から「お前」、そして「貴様」に変わっていくような曲の展開が狂気爛漫。
殺伐とした曲の流れに、一筋の爽やかな太陽の光を浴びせてくれるかのようにbloodthirsty butchersの『プールサイド』のカバーを。ブッチャーズの『未完成』を何度も聴いている自分としては、ナンバーガールバージョンは夢のような話だ。乱反射するようにキラキラとしたギターの音色。「自らを沈ませて 苦しさの反動で なんとなく押しかえす」という歌詞を向井が歌うと、また別の魅力が生まれる。

『ZAZENBEATS KEMONOSTYLE』。映画『けものがれ、俺らの猿と』のサントラで聴く印象とはまた違う。後半の混沌としたノイズが気持ちいい。ひさ子がずっと俯いてガガガガと高音のギターを轟かせ、アヒトがマシンガンのように休みなくドラムを撃ち鳴らす。中尾憲太郎は相変わらず首を振りまくる。その中央で、向井が高校時代の思い出話のような歌詞をマイペースに歌い、時に叫び、メガネを光らせている。

「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」

お決まりの文句を告げると、アヒトの「殺・伐!!」というカウント。『タッチ』がスタート。客席は大合唱。共感を呼ぶような一人称の存在が希薄な歌詞であるはずなのに、まるでその曲の世界に自分がいるような錯覚がある。あの子とあいつがいて、俺は何もせずにボーッしている。これこそ青春パンクだ。一気に拳を振り上げ、激しいタテノリが起きる。
そして『omoide in my head』。汗しかない。ステージ上のメンバーも汗が飛び散っている様子。よく見えないけど、向井のメガネも汗でびっしょりに違いない。
演奏後、「乾杯!」と言って去る向井。


アンコールの声援。このとき、「向井!」「アヒト!」「ひさ子!」「中尾!」と、全員が3文字で呼べる名前であることを改めて知る。 「メガネ!」とも叫ばれていた。
そしてメンバーが再登場。

向井「また神戸に来ます」
観客「おーーー行くーーーー」
向井「皆さんはまた観に来ていただけるのですか?」
観客「行くよーーーー」
向井「皆さんはクリスマスにナンバーガールのライブがあるとして、それでも観に来ていただけるのですか?」
観客「行くーーーー」
向井「それじゃあ皆さんは恋人がいないってことですね」
観客「!!?」

いじわるな向井MCの後は、この日最大の個性といっていい余興。アヒト・イナザワによる『嘘だらけの7days』が披露される。「いやいや、風邪ひいてるから歌えんよ」と軽く拒否しつつも、サービス精神を忘れていません。ストリート・ミュージシャン向井とは比べ物にならない(失礼)美声を響かせ、女子はメロメロになったに違いない。
その後は当然、DVDを観た人なら「ひさ子!ひさ子!」コールは約束されている。 ひさ子は恥ずかしそうに困り果て、向井が「田渕ひさ子に関しては、お一人様12000円でございます」と告げる。色町かと。ところが「安いー!」「払うー!」という男性の歓声。そうなると向井が大もうけすることになる。

「実は、さっきまで実家に帰りたいと思ってました」
向井が突然のカミングアウト。反応に困る観客に対し、続ける。「実家に帰りたいと思っていましたが、皆さまのあたたかい声援を聞きまして"ハッ、戻らなきゃ!"と思ってステージに立ちました」と感動秘話を真顔で暴露。「ちなみに実家は佐賀です」と、今それほど必要ない情報を告げてくれるセンスは相変わらず。

本編の最後同様、またもや「福岡市博多区から参りましたナンバーガールです。ドラムス、アヒト・イナザワ」と言い、『はいから狂い』へ。その名の通り、狂っていた。

「また会いましょう。グッバイ、サイチェン(再見)。かんぱーい」


白熱、いや、灼熱のナンバーガールのライブが終わった。冬に観たときとはまた違い、より一層、とにかく熱い。終盤の演奏、田渕ひさ子のアクションが神がかっていた。あれは一体何なんだ。かっこよくて鼻血が出る。あんな人、世界に誰一人としていないだろう。いたら教えてほしい。きっと愛するから。

この日、向井はMCで幾度となく「バーカウンターはあちらにございます」と丁寧に案内していた。また、ライブ前に神戸・元町の高架下を歩いたらしい。高架下はマニアックかつレア物を価値を知らないお年寄りが値段をつけて売ってくれているという、兵庫県のシュールスポット。「以前来たときよりも、"掘り出し物"が減っていた」と向井は嘆いていた。彼にとっての掘り出し物とは何だろうか。
客席からは「○○(恐らく色町・歓楽街)行った?」と質問が飛んできていたが、クールに無視する向井。どうやらこの日はNHK-BSのビデオカメラが撮影に来ていたようで、「公共の電波使ってそんなことは言えんよ」と言い逃れを。「皆さん、受信料は払いましょう」とも発言していた。

MCから演奏、そして余興、更にライブ前のストリートライブまで、すべてが完全なるエンターテイメント。
サービス精神と、独自の世界観に満ち溢れたナンバーガールのライブ。向井秀徳の魅力は語り尽くせない。


< セットリスト >
TOKYO FREEZE
鉄風 鋭くなって
SASU-YOU
透明少女
EIGHT BEATER
ZEGEN VS UNDERCOVER
U-REI
ミニグラマー
DESTRUCTION BABY
TATOOあり
ABSTRACT TRUTH
プールサイド
ZAZENBEATS KEMONOSTYLE
TRANPOLINE GIRL
タッチ
omoide in my head
[ アンコール ]
嘘だらけの7days
はいから狂い

2001年1月29日月曜日

NUMBER GIRL@神戸チキンジョージ


「フレーーー!フレーーーー!コ・ウ・ベ!」

「フレーーー!フレーーーー!ア・ヒ・ト!」

「フレーーー!フレーーーー!ヤ・ク・ザ!」

神戸チキンジョージに行くのは初めて。だから、ロッカーが少ないという事実も知らない。だから、アニメ『サウスパーク』の人形がぶら下がるカバンを背負った状態でライブ鑑賞となった。
前回の心斎橋でのライブ後、「次は絶対、前方に行ってやる!」と決心した。開場すると即座に前方へ駆け走り、田渕ひさ子サイドの2・3列目を確保。しかし、次々に押し寄せてくる人々の重圧。重い。苦しい。冬なのに暑い。その迫力は想像を絶するものだった。最終的には、ライブ中にサウスパークの人形は引きちぎれた。終演後、頭部の一部だけがぶら下がっていた。まさに『サウスパーク』らしい残虐描写となった。

ただでさえ窮屈なチキンジョージの会場であるにも関わらず、スタッフが「あと200人くらい入りますんで、もっと前に詰めてくださーい!」と。笑いながらどよめく観客。いやいやいや。もう無理です。でも、時間が経つにつれてそんなことを気にする余裕がなくなった。なんせ、もうすぐ田渕ひさ子が自分の約2・3メートル前に現れるのだ。あの田渕ひさ子だ。今、ギターのピッキングの細かい部分が見えそうな位置にいる。その事実に、体力なんて気にしなくなった。ただ目の前の興奮に、期待だけが膨らんでいた。

ついに、ナンバーガールが登場する。
TELEVISIONの『マーキームーン』をBGMに、メンバーがステージに姿を現わす。向井秀徳のメガネがキラッと光る。何かを企んでいるような輝きがある。そして、テレキャスターのギターを鳴らす。
ギャリンギャリーン!
これは、心斎橋の時よりも暴力的な音だ。ギラギラとしている。前回は砂が入り混じったような音だった。でも今日は、砂鉄が入っている。硬くて鋭いものがギターの中で踊っている。荒々しい。恐ろしい。えげつない。バンドをやっていない僕にも、前回と今回の音の違いは区別できるレベルだ。
全員が黒っぽい服でキメている。ミッシェル・ガン・エレファントのようだ。だけど、ナンバーガールは普通のシャツ。「ロックンロール然」とした格好ではなく、日常から飛び出してきたような服装。日常に潜む狂気を表すだけあって、普通の私服であることが何よりの衣装であり、ユニフォームに感じる。

1曲目は『鉄風 鋭くなって』。これは心斎橋と変わらないセットリスト。でも、今回のほうが凄まじいテンションで迫ってくる。これは前回と違い、ナンバーガールを間近で見ているからだろうか。はたまた、向井のギターを掻きむしる音があまりにも暴力的すぎるからだろうか。
ジャキンジャキーン。
まるで刀を抜いたサムライのように鋭く尖っている。刺し殺されていく。楽器がここまで凶器になるなんて思ってもみなかったよ!

アヒト・イナザワのドラムが間髪入れずにビートを刻み込む。ドコダンドコダンドコダン…こ、これは。
「福岡市、博多区から参りましたナンバーガールです。R・O・C・K!」
向井秀徳お決まりの挨拶の後、そのまま『BRUTAL MAN』
なんだこれは。なんなんだこれは。この人たち、どこまで突き抜ける気だ。客席前方はダイブの嵐。誰かの足が頭に当たる。普通に生活していると足が頭に当たることはない。だけど、ここではそれがいとも簡単に起きる。もちろんナンバーガールのライブなのだから。

「遥か海の向こうの南蛮国より舶来した、このロック・アンド・ローール・エレクトリックギタァーを、用いてさらに弦をかき鳴らす男、人呼んで弦切りの向井と申しやす。よってらっしゃい、見てらっしゃい。ナンバーガール、びっくり祭りのはじまりぃ~!」

向井のMCの後、『TATTOOあり』が打ち鳴らされる。ひさ子のギターがキンキンと耳を突き刺す。向井の絶叫に合わせて「右肩!イレズミ!明け方!残像!」と合唱する観客。すごい。すごいよ。こんな一体感があっていいのかよ。田渕ひさ子のギターソロを間近で観る。この興奮は何にも代えがたい。怪獣の鳴き声のような、けたたましい音が鳴る。それが右耳から左耳へと貫通し、僕の頭はどうかしてしまいそうだ!

と、興奮したのも束の間、そろそろ体力に限界を感じ始める。圧縮、ダイブ、モッシュ。初体験の「ライブ感」にもはやグッタリしている。
こんな軟弱な体力であるのに、次に来る曲は『ABSTRACT TRUTH』『ZEGEN VS UNDERCOVER』。とどめを刺す気か。でも、ごめんなさい。さっき言ったことを撤回します。限界なんてありません。身震いが止まらない。限界なんて言葉が飛んでいく。「ばりやばい!」と絶叫する。そして『omoide in my head』『TUESDAY GIRL』を立て続けに。ああ、ヤバイ、バリヤバイ。ジャキンジャキンと音が鳴る。意識が朦朧とする中、ずっとナンバーガールの音だけが聴こえていた。
『TUESDAY GIRL』の後は『sentimental girl's violent joke』。女の子の歌が続く。ゆったりしたテンポの曲なのに、やたらと手数の多いアヒトのドラム。前方ではドラムもはっきりと見えるので、ひょこひょこと器用に叩きまくるそのドラムプレイを堪能できた。

そして何と言っても、今回の目玉なのは『U-REI』
ひさ子のギターソロが異常に長い。前回以上にかき鳴らす。その間、向井は観客の一人をステージに上がらせ、共にGUY呑みをする。
※「GUY呑み」とは向井秀徳による造語であり、腕をクロスし合って呑み合うという独特な呑み方のことをいう。
ステージの色んなところから観客に挨拶&扇動している向井は愛嬌たっぷり。それにしてもイントロのギター、めちゃくちゃ長いよ。曲のイメージを自らぶち壊すかのごとく、幽霊のようにおちゃらける向井。それでも曲の最後では「おれ~憂~い夕暮れに~、たま~にさぁ~ってなるカンジ~」と復唱し、余韻を残す。
『TRAMPOLINE GIRL』は「やはり俺はその凛々に、やはり俺は負けるのか!」の部分がもう、泣ける。泣けて仕方ない。様々な解釈があると思うけど、都会の屋上で人生を「決めて」しまう少女への感傷を見た。を、鑑賞した。都会という場所にはほとんど行ったことはないけど、都会にはこのような悲しみがたくさんあるのかも知れない。ひさ子はトランポリンに乗っているガールかと思えるほど、ぴょんぴょんと跳ねている。観客も同じようにタテノリで跳ね続ける。

向井が一人でギターを奏でる。森田童子の『たとえば僕が死んだら』のカバー。イースタンユースもカバーしていることでお馴染み。向井は叫ぶこともなく、丁寧に歌い上げる。その素朴な歌声に心を打たれるけど、向井が歌っている間は他のメンバーは結構ヒマそうにしていた。

切なさとやるせなさ続きで『YARUSE NAKIOのBEAT』。カラスの鳴き声のようなひさ子のギターが、水分を失ったからっからの音で鳴る。
ヤルセナキオという人物を想像する時間。ひさ子のギターの上に乗っかる向井のテレキャスター。焼け焦げたような音。淡々とデデデデと響き続ける中尾憲太郎のベース。後半で盛り上がってくるアヒトのドラム。その盛り上がりは続き、ドラムソロの場が設けられてあった。ドラムと共に慎ましく鳴っているひさ子のギター。アヒトのドラミングを楽しんでいるような表情をしていた。
そして更に盛り上がる、盛り上がる、盛り上がる、ジャーーーン。
再び『YARUSE NAKIO』の演奏に戻る。「1979年!1988年!1979年!1988年!」と叫び続ける向井。一体、1979年と1988年に何が起こったのか。分からないけど、なぜかグッときてしまう。自分にとって叫びたい西暦を叫びたくなる。特にないけど。

そして突然、アヒトが「殺伐!」と叫ぶ。それは『タッチ』が始まる合図なのだ。「触れることを恐れたアイツは~」と、心斎橋同様、大合唱。ひさ子も飛び跳ねながらマイクなしで歌っている。その通り、熱さを嫌う若者たちは冷えきった場所へ逃げていくのだ。ここに、冷めた奴はいらない。冷笑があれば熱笑という言葉が欲しい。ポジティブであるはずの「笑」の周囲に近寄るのは、なぜか「嘲笑」「冷笑」などと冷え切った単語ばかりなのが不思議で仕方ない。
そして『我起立唯一個人』。これをずっと聴きたかった。ああ、なんて美しいなギターの音色なんだ。ずっと鳥肌が立ちっぱなし。数メートル離れたジャズマスターから鳴る、泣き声のような音。ナンバーガールのメロディアスな部分は田渕ひさ子が担っている。

少しばかりのMCタイム。向井が喋り出す。

「ライブ終了後、周りの色んな人たちとビールを呑み、特に異性同士で呑み、そのまま付き合って、結婚して、離婚してください…」

なかなか辛いことを言う。

「さすが神戸っ子。地震から復興をした、神戸」などと、盛り上がりの良い神戸っ子をすごく気に入ったご様子。ご機嫌なのか、突然大きな声で叫び始める。

「フレーーー!フレーーーー!コ・ウ・ベ!」

ど、どうした。
応援団長のように、体育会系のノリで向井は両手を広げて叫ぶ。観客は向井に続いて「フレッフレッ、コウベ!フレッフレッ、コウベ!」と続ける。
すると、また向井が叫ぶ。

「フレーーー!フレーーーー!ア・ヒ・ト!」

ど、どうしたの。
向井応援団長、どうやらアヒトを大推薦のようです。少しリアクションに困っているアヒト。ひさ子と中尾憲太郎は笑っている。もちろん観客はそのまま続けて「フレッフレッ、アヒト!フレッフレッ、アヒト!」と叫ぶ。
すると向井、更にもう一発。

「フレーーー!フレーーーー!ヤ・ク・ザ!」

なんやねん。
ヤクザ、関係ない。と戸惑いつつも、「フレッフレッ、ヤクザ!フレッフレッ、ヤクザ!」と続ける観客。
一体なんのライブやねん。

「あと2曲、聴いて帰ってください。ドラムス、アヒトイナザワ」
ジャキンジャキンと向井のギターが鳴るイントロ。『INAZAWA CHAINSAW』
向井の指揮のもと、演奏が始まるような光景。CDとは迫力がまるで違う。向井秀徳監督・アヒトイナザワ主演とも呼べる。劇場版ナンバーガール。4人の演奏がばっちり合うか、合わないか。タイミングがギリギリのスリル。それが楽しくてたまらない。なんていってもアヒトのドラミングは鬼すぎる。観ているだけでも呼吸困難に陥りそうな気迫だ。見える。俺には見える。アヒトの腕が5本くらいに見えるのだ。

そして、本編最後の曲は『IGGY POP FANCLUB』
ひさ子、ずっと飛び跳ね続けて笑顔のまま。この曲が本当に好きなんだろうなと伝わる姿だ。「あーのー曲を~いーまー聴いてる~」という曲を今まさしく聴いてる。この2曲連続は予想外で、全くタイプの違う曲でありながら、テンションが持続されているのが凄い。楽しい。楽しすぎる。これ以上ないだろうと思えるほど楽しいです。


アンコールの歓声が鳴り続ける。なぜか客席からは「アヒト!」コールが巻き起こる。
「アッヒットッ!アッヒットッ!アッヒットッ!」
この日の三宮はやたらアヒトの名前が轟いている。
そして、メンバーが再び登場。
『はいから狂い』だ。
「俺っはっまっだっ生きているーーーーーーーーーー!!!」からのギャギャギャギャッという悲鳴のようなギターとシンバルとベースの大合唱。あれは一体何なんだ。本当に楽器なのか。「ギャ」と書いたけど、彼らの音は擬音で表すことは不可能だ。

「また、会いましょう。サイチェン」

向井がクールに言い残し、ステージを去った。去らないでくれ。このまま神戸にずっといてくれ。イタイけど、そんなことばかり思ったラストでした。


前方にずっといて体力は限界に近かった。それでも、こんなに楽しい日はいまだかつて無い!と言い切れるほどの時間でした。
田渕ひさ子の笑顔はこちらまで幸せにしてくれる。そして向井秀徳の笑いを誘うMC。あんなに狂気を醸し出しているのに、爆笑もさせてくれる。荒々しいギターもあれば、絶唱あり、響きあり、歓声あり、ドカドカドラムあり、応援団長あり。かけがえの無いバンドだ。間違いありません。「神戸に来てくれてありがとう」としか言い様がありません。現に「ありがっとぉ!」と最後叫びました。汗でジーンズが変色していた。汗でベルトがゴムっぽくなっていた。サウスパークの人形が頭部だけ残り、引きちぎられていた。
でも、それらがすべて楽しさに変わっていた。

狂気全開で、感傷的で、攻撃的な印象をCDでは感じる。でも、ナンバーガールのライブはめちゃくちゃ楽しい。それに尽きる。センチメンタルと日常に垣間見える狂気。これが楽しさに変わるのは、どういうメカニズムなのか。それを検証するため、というか普通に楽しむために、次に関西にライブで来るときも絶対に見逃さないのです。


セットリスト
01. 鉄風鋭くなって
02. BRUTAL MAN
03. TATOOあり
04. ABSTRACT TRUTH
05. ZEGEN vs UNDERCOVER
06. Omoide in my head
07. TUESDAY GIRL
08. SENTIMENTAL GIRL'S VIOLENT JOKE
09. U-REI
10. TRAMPOLINE GIRL
11. たとえば僕が死んだら
12. YARUSE NAKIOのBEAT
13. タッチ
14. 我起立唯我一人
15. INAZAWA CHAINSAW
16. IGGY POP FAN CLUB
[ アンコール ]
17. はいから狂い

2000年11月29日水曜日

NUMBER GIRL@心斎橋クラブクアトロ

「本日は、我々ナンバーガールの新曲の発売日でございます。新曲を既に購入しました本日ご来場頂いた方には、わたし自身からCD価格の2倍の、2000円を差し上げたいぐらいの、気持ちでございます」

気持ちだけかよ!
新曲とは、『鉄風 鋭くなって』のこと。発売されたばかりのCD。心斎橋クラブクアトロに着くまで、電車や心斎橋を歩く中、ずっとこのCDの3曲をリピートして爆音でした。嘘です。電車の中では小さな音です。音漏れ迷惑なのです。もはや心斎橋=INAZAWA CHIANSAWとなってしまうほど、通称・イナチェンが心斎橋のイメージにこびり付いてしまった。特に田渕ひさ子さんのギターが。

人生初めてのナンバーガール。そして初めてのライブハウス。しかも一人。
恐いったらありゃしない。刺青の入った男が入り乱れ、トイレでは乱闘騒ぎ。そんなイメージしかなかった。黒っぽいTシャツを着た女の子は、脱いだら絶対刺青。でも脱いでほしい。そんなエロ妄想も取り入れつつ、クラブクアトロでは少し後方に場をとったたけうちんぐ。
テロテロテロテロリン、テロテロテロテロリン。
といっても別にテロ事件が起きたわけではなく、TELEVISIONの『マーキームーン』が流れたわけ。登場SEなわけ。これでナンバーガール全員が出てくるわけ。お客さんが一斉に前に詰めかけ、歓声が響くわけ。もう、十分なテロ事件です。
田渕ひさ子を見ようとするが、お互い小さいのでなかなか見えない。ようやく初めて見た向井秀徳。なんていうか、大きかった。恐らく、自分の心が彼をそんな姿にさせているのだろう。自分にとってビッグな人だ。生で観ると、これほど存在感があるのか。顔が大きい気がした。
そしてそのギターの音。テレキャスターという名のギターは、最初テレビキャスターかと思った。赤いボディのその六弦は、砂が混じったようなサウンドをクアトロに轟かせる。ジャリーンと鳴る。耳を鋭く突き刺すような、向井秀徳がよく言う「鋭角サウンド」がそこにあった。

 1曲目から『鉄風 鋭くなって』。中尾憲太郎のベースが腹に響く。何この音。お腹痛い。すげえ。で、合唱?すげえ、ナンバーガールのライブってみんな合唱?というか、みんな早くも歌詞覚えてる。そこに驚く。とか言ってる自分も完全に覚えており、「かぜぇえあ!かぜぇぇあ!するどくなってぇ!」てな感じでみんな合唱してました。風について叫ぶ日が来るなんて思ってもみなかった。

2曲目、なに?あれ?この曲なに?新曲?と思ったら、「片目つぶって朝歩く~」と。なるほど、『PIXIE DU』。ハスカードゥ?ピクシードゥ?向井秀徳の憧れが詰まったようなタイトルだけど、二人のバンドの面影を感じさせない究極のオリジナリティ溢れる歌詞。坂口安吾まで出てくる。こんな、轟音と衝動の空気の中で作家の名前。やばくない?演奏するのはなかなか珍しいそうだ。すごく得した気分。音源で何度も聴いたのに、初めて聴いたように新鮮だった。

そして『ZEGEN VS UNDERCOVER』。おおい、あなた。そこのあなた。「やばい、さらにやばい。ばりやばい」なんて歌っておりますけど、あなたが一番やばいですよ。絶叫、シンバルの突き刺す音、お腹が痛い重低音、ひさ子さんの凛々さ。俺は一体どこに目を向け、意識を傾ければベストなのだ。教えてくれ。「おととしの事件を~」と急にメロディ アスになる瞬間、鳥肌で暑さを忘れ、熱さだけがそこにあった。

で、きました。『omoide in my head』

リアル17才だったりするたけうちんぐにとって、向井秀徳が叫ぶ「俺」はリアルタイム。電車通学ではないので制服の少女と普段出くわすこともない悲しい日々を送っているけど、映画のように架空のストーリーとして楽しめる。お酒飲んだことないけど、眠らずに朝が来てふらつきながら帰る二日酔いの景色ってそんな感じなんだろうと想像する。

驚いたことに、アヒト・イナザワの息を止めさせる灼熱のドラミングで始まるオープニング。それが打ち鳴らされた直後、僕の近くにいたカップルらしき二人組みの男性の方が女性の方を置き去りにし、前方に飛び込んだのだ。これがダイブというやつか。初めて見た。感激した。こんなものなのか。こんな、彼女が途方に暮れるものなのか。
彼氏さんは笑顔で帰ってきて「この曲を聴きに行くために来た」と彼女に告げた。
なんで僕、このとき「かっこいい」なんて思っちゃったんだろう。
そんな具合に快感のオモイデ。楽しい。なんたって楽しい。人生で一番楽しいのかも知れない。

ほどなくして、向井秀徳が語り始める。
 「なんでもかんでも、なんでもかんでも~、過剰になることがあります」
もうバレバレ。ナンバーガールフリークのたけうちんぐにはバレバレだぜ、向井さん。曲は『センチメンタル過剰』。なんて過剰なタイトルなんだ。曲の持つ感傷は感動に変わりつつある。

『U-REI』はネット上の噂通り、田渕ひさ子のギターのイントロがやたら長い。トリップ感溢れるメロディ。もはや狂気さえ感じる。おとなしそうな雰囲気なのに狂っているなんて、ATG映画です。よく分からないけど。後ろで向井秀徳が不気味なブレイクダンスをしている。これはロボットダンスとも呼べる。新ジャンルを築き上げている。

『TRANPOLINE GIRL』が終わり、田渕ひさ子のテロテロテロテロというイントロ。当然、テロ事件ではない。だけどテロみたいなものだ。ライブアルバム『シブヤ ROCKTRANSFORMED状態』を聴いたときから鳴り止まなかった『SUPER YOUNG』なのだから。アルバムに収録されている通りの向井の語りはなかったけど、語りは聞こえた気がする。中尾憲太郎のベース、ブンブンいってる。彼らより若い自分が言うのもなんですが、若さみなぎる元気ハツラツオロナミンCな演奏。直訳すると「めっちゃ若い」のです。

その後、『YARUSE NAKIOのBEAT』『EIGHT BEATER』『タッチ』とたて続けに演奏。『タッチ』こそが青春パンクだと思わないだろうか。世の「青春パンク」は、青春を受け入れている。素晴らしい青春を手に入れているのだ。それに反し、この『タッチ』はひどい。
「それでも奴ら笑い合う!それでも奴ら信じ合う!」
完全に青春を謳歌できていない。どこか客観的で冷めているが、叫んでいる。その心の奥底では満たされない感情が爆発しており、熱い。臆病風吹かすアイツ。嘘笑いをする少女。曲の登場人物が頭の中でモッシュ&ダイブを繰り広げていた。ここにいるアイツも少女も、みんなそんな感じなのか。だとしたら、具現化されているね。ダイブの嵐は視覚効果として、ライブを盛り上げていた。
そして「乾杯!」と向井が言い、メンバー全員がステージから去る。
もちろん、「アンコール!アンコール!アンコール!」と客席からは鳴り止まない歓声が。


メンバーが再び登場。向井が渋々した表情で言う。
 「さきほどまで弦2本でやってましたね…」 
自分からの距離では確認できなかったが、どうやらこの日は4本ギターの弦をひきちぎったらしい。それは弾いてると呼ぶのだろうか。だけど、かっこいい。なんでちぎるのがかっこいいのか。契るとかだとかっこいいかも知れないけど、実際、たけうちんぐはこの日、ナンバーガールとの契りをかわされた気がした。「一生ついていきます」とは僕のセリフ。僕は花嫁か。

そして、今回のツアーの主役であろうアヒト・イナザワが大きく取り上げられたINAZAWA CHAINSAW』。心斎橋はMDウォークマンからもライブハウスでもイナチェンが響き渡る。アヒトの撃ちまくりのドラム。鬼ってます。聴いているだけでも息を継ぐヒマがない。
おいおい。どんだけ最高なんだ、ナンバーガール。


初めてナンバーガールを観に行き、最も印象的だったのは向井秀徳の眼光。雰囲気。存在感。 人一人殺しそうな眼差しだした。そして中尾憲太郎のぶっ飛びそうなほど上下に振られる首。お腹が痛くなるほど地底から響くベース。残念だったのは、田渕ひさ子が遠かったこと。今度こそ、客席前方に行ってそのお姿を拝みたい。ロックが鳴る現場とは思えないアイドル視点の感想になってしまったけど、紅一点の為せるワザはここにあり。遠くても近くても、ひさ子さんのギターサウンドは両耳を貫き、頭の中でぐるぐる回っていた。


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セットリスト(曖昧です)
1. 鉄風鋭くなって
2. PIXIE DU
3. SASU-YOU
4. ABSTRACT TRUTH
5. ZEGEN VS UNDERCOVER
6. TATOOあり
7. omoide in my head
8. センチメンタル過剰
9. U-REI
10. TRAMPOLINE GIRL
11. SUPER YOUNG
12. YARUSE NAKIOのBEAT
13. EIGHT BEATER
14. タッチ
[ アンコール ]
15. INAZAWA CHAINSAW