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2011年12月22日木曜日

【連載】神聖かまってちゃん物語~第4話「こんなの全然ロックじゃねえよ!!」~

神聖かまってちゃんがサマソニに?

平均集客数7、8人のバンドなのに?ボーカルが警官に補導されたりするのに?ライブで『アラレちゃん音頭』を歌って踊ったりするのに?
信じられなかった。
『神聖かまってちゃん、サマソニ出演決定!!』
昼ご飯中、友人のmixiでそれを知ったとき、頬張っていた焼きそばを噴出しそうになった。ウソだろ、と。なぜなら数日前、劒さんに『出れんの?!サマソニ?!』オーディション時の話を聞いていたからだ。渋谷O-eastまで劒さんがベーシストのバンド・あらかじめ決められた恋人たちへのライブを客として観に行ったときのこと。
「いやー、の子くんがエフェクター全部家に忘れてきてね…」
うっわあ。なにやってんだ。人生一度あるかないかの勝負時になんでそんなことになるんだ。の子は『夕方のピアノ』をボーカルエフェクター無しで歌ったという。「死ねー!!」と生声で叫ばれるオーディションは一体どのような空気だったのか。こんなので受かるはずがない。投票数を多く獲得し、最終審査まで行けただけでもういいじゃないか。と、半ば諦めていた。それがまさかの。
「みっちー、あなたの目は正しかったね!」
劒さんからメールが届き、サマソニ出演決定という現実をようやく受け止めた。僕の目ではなく、審査員の目がぶっ飛んでいるのだろう。ライブを一ヶ月に一回やるかやらないかのバンドが巨大ロックフェスにいきなり出るなんて、夢のような話だ。
ポップカルチャーのニュースサイト・ナタリーでも取り上げられた。
『サマソニ一般応募枠にEES、神聖かまってちゃんら16組』
最も集客数の少ない無名のバンドが、なぜか記事のタイトルに。これはナタリーの社長・大山卓也さんがツイッターで「神聖かまってちゃんが気になる」と呟いたことが関係しているのだろうか。ナタリーに気に入られると、一気に飛び火しそうな予感がする。
その夜、神聖かまってちゃんは配信をしていた。サマソニ出演決定を告げるニコニコ生放送。そうなんだ。ほんとに出るんだ。うっわあ。リスナーからは「ぶちかませ」「伝説を作れ」「サマソニで脱げ」などと激励されていた。この状況、奇跡としか言い様がない。
みさこからメールが届く。の子がサマソニのライブをどうしても撮影してほしいという。その日、平日だ。出番は夕方頃らしいだけど、間に合うのか。仕事を休めるかどうかも分からない。その後、の子からも連絡があった。
「絶対やらかしますんで俺!!」
もう、仕事を休むしかなかった。その瞬間を見逃すわけにはいかないし、撮らない理由はない。

数日後、柏で再び神聖かまってちゃんのメンバーと会うことになった。
の子は僕の友人が某テレビ番組で取材されているのを偶然見たことがあり、興味を持っていた。その友人2人と僕とメンバーとで『飲み会配信』をしたいと打診され、行なうことに。
いやしかし、の子にとって"飲み会"なんて最も苦手な場じゃないのか。みんなでわいわいとする場なんて耐えられるのだろうか。だけどこの頃、彼は配信のネタを探しに探しまくっていた。ネタの一つとして捉えると、別に心配しなくてもいいのだろうか。
「竹内さん、本名とか働いてる会社の名前とか、配信で言っちゃマズイことってあります?」
千葉へ向かう前、の子から電話があった。配信に出てもいいか尋ねられ、意外な細かい気遣いと、律儀な態度に驚いた。配信やライブなどでは"キチガイ"と形容される行動もあるが、やはり彼は正常な意識を持っているのだろうか。そして「みさこって奴がいきなり喋るかも知れないんで、一応…」と、みさこがなぜか危険人物とされていた。

柏に着き、友人と合流。ちょうどその日、柏駅西口では『柏まつり』が開催されており、多くの家族連れで賑わっていた。大音量で音楽が鳴り、とにかく騒がしい。車道が渋滞しているようで、遅れて神聖かまってちゃんメンバーが到着。みさこだけがまだ少し遅れるという。
もはやサマソニ出演者となった神聖かまってちゃん。だけど、やはり柏の風景に馴染む、どこにでもいる若者たちに見えた。
唯一おかしいのは、開いたノートパソコンを手に持っていること。
そして、の子の腕。
ズタズタに切り刻んだ傷が大量にある。
ビックリした。遠くからでも分かる。畳の模様にも見えるくらいのおびただしい傷だ。木村カエランドで会ったときは一つも無かったのに、一体どうしたんだ。
少なくとも、転んで擦り剥いたような傷ではない。
アームカットというやつだ。
自ら切り刻んだものだと誰が見ても分かる。
以前、アームカットをするような女の子と一瞬だけ付き合っていたことがある。知り合ったのが春先だったので長袖を着ており、付き合うまでは気づかなかった。それはもう大変だった。躁鬱が激しく、1時間のうちに人格がころころと変わる。都合の悪い状況になると、「私、死ぬよ」と自分を人質にする。
早い話、"かまってちゃん"だった。
危険を察知してすぐに別れたが、その後、深夜にかかってきた電話は忘れられない。「竹内さん、月がキレイだよ」「竹内さんの家に包丁がなくて良かったね」と、ロマンチックと狂気を併せ持った内容にいちいち震えた。腕の傷を見たことにより、その恐怖を思い出してしまった。
「今日は飲みましょう!」
の子は笑顔で話しかけてきた。いかにもリア充感溢れる飲み会と腕の傷とのギャップは計り知れない。胸元にも切り傷があった。心の傷を視覚的に訴えかけているように思えた。傷の多さに圧倒され、触れることはできなかった。monoとちばぎんは以前から知っていたのか分からないが、普段通りにの子と接していた。
それにしても気になる。穏やかではない姿だ。見てるこちらがヒリヒリしてしまう傷だ。

ちばぎんがパソコンを設定し、柏駅前での配信が始まる。順番にパソコンを渡され、配信に出ることになった。その様子を少し離れたところで、手を後ろに組んでなぜか紳士的な表情で眺めるの子。授業参観に来た父親のような佇まいだった。
配信ではリスナーからの容赦ないコメントが流れる。の子は「ハゲ」、monoは「アゴ」、ちばぎんは「脱退しろ」、みさこは「黒乳首」と書かれようが、喋り続けなければならない。「新曲、いまいちだった」などと、アーティストがリスナーの正直な意見と向き合うことなんていまだかつてあっただろうか。恐怖も危険性もたくさんあるだろう。ウェブカメラの前に姿を現した瞬間、叩き台となる。僕が映ったときに流れた文字がそれを物語っている。
「いまのところイケメンなし」
本当にごめんなさい。

「今から俺、祭りの中で"あるてぃめっとレイザー!"とか叫んでくるんでちょっと待っててもらえますか?」
の子がノートパソコンを持ち、突如として『祭り配信』がスタート。祭りの中へと消えていく。monoとちばぎんも「すいませんね…」と言い残し、の子を見守るようについていく。子どもから老人までが輪になって踊る中へ向かっていく。「おしっこがー!おしっこがー!」などと楽しい祭りの風景をさぞかし一変させたに違いない。やがて約30分後、の子がなぜか上半身裸になって帰ってくる。思う存分に叫んできたのか、若干疲れている様子。それでも瞳孔は開き切っていた。
その後、大型チェーンの飲み屋に入る。の子はパソコンを手に持ち、上半身裸のままだ。店員さんが「着ていただかないと、ちょっと…」と入店を拒む。そこで、の子とちばぎんの言い争いが始まった。
「服着ろよ!」
「絶対着ねーよ!!」
説得するちばぎん。なぜか頑なに拒むの子。聞き分けのない子どもと、それに振り回される父親。そんな関係にも見えた。祭りの近くの飲み屋だけあり、次々と家族連れが入ってくる。その人々の目には、上半身裸、そして傷だらけの腕でノートパソコンを持っているの子の姿がどう映ったのだろう。あそこまで露骨に「見ちゃダメ!」といった様子で子どもの目を覆い隠す母親を初めて見た。正しいと思う。
店内が忙しいのもあり、やがて上半身裸のまま自然に入店することになる。店員さんに「あとで着るんで…」と小声でお願いし、ようやく本来の目的である『飲み会配信』の場へ。店の個室に入る。
が、電波が届かないのか、突然配信がストップする。戸惑うの子はmonoにパソコンを預け、配信を復帰させようとする。「なんだよこれ、分っかんねー」とmonoが困りながらパソコンをいじっていると、注文した飲み物が届く。
結局、配信は諦めることに。その瞬間、ちばぎんに電話で道案内されていたみさこがようやく駆けつける。なぜかボブのウイッグをつけており、配信に出る気満々だったようだ。見事に空回りしていた。

メンバーも飲み物もすべて揃ったということで、配信は無い、単なる飲み会が始まる。
まずは乾杯。彼らにはちょうど祝いごとがあった。
「サマソニ出演決定、おめでとうございまーーーす!!」
「うぇーーーい!!」
の子は元気いっぱいだった。腕の傷を忘れるくらいの笑顔を見せていた。
個室といっても隣には主婦グループのテーブルがあり、すでにアルコールででき上がっている。横から「おめでとーー!!」となぜか乾杯に参加してきた。
「サマーソニックって知ってるんですか?」
「知らなーーい!」
主婦たちは完全に酔っ払っている。ノリノリだ。旦那や子どもの愚痴などで盛り上がっていたのだろうか、彼女たちのチームワークは半端ない。「B'zとか出るんですよ」と教えると「すごーーい!」と反応。そこでの子が「俺、B'z大好きなんですよ!」とやたら主婦に絡もうとする。
「誰がボーカルなの?」と尋ねられると、「あの人なんですよ!」との子が僕を指差す。信じてしまった主婦の一人が興味津々に絡んでくるので、神聖かまってちゃんがいつの間にかギターボーカル・竹内、ベース・ちばぎん、ドラム・みさこというスリーピースバンドとして認識された。そのまま作り話を盛り上がらせ、ついにはスペイン語で歌うバンドに。「歌ってよー」と言われて困っていると、ちばぎんが助け舟を。
「ま、そんな感じのインストバンドです」
ボーカルはどうした。
「インスタントバンド?」
主婦は聞き間違えていた。

普通に飲み会として、メンバーと楽しいお酒を飲めた。サマソニ出演決定についての話から、昔のライブの話まで。の子は僕の友人と喋り続け、monoはノートパソコンをいじりながら会話に参加し、ちばぎんとみさこはよく笑っていた。

しかし、1時間ほど経過したあたりから、の子の様子が次第におかしくなっていった。

先ほどまで楽しそうにしていたはずなのに、ふと見ると、彼の身体が固まっている。
表情がフリーズしている。
パソコンで言うと砂時計が表れたような姿になっていた。
彼の手元には精神薬があった。楽しそうに喋るメンバーを虚ろな目で観察しており、不穏な空気が漂い始めていた。
メンバーと友人らも僕も、その空気を察知しつつも、どう接すべきなのか分からない様子だ。FMおだわらのラジオ出演同様、見るからに鬱状態。でもこの日は、収録時とは比じゃない。一触即発のムードがあった。導火線の短い爆弾が突然放り込まれたような飲み会になっていた。腫れ物に触れないようにする分、の子が孤立していくように思えた。
みさこはそれを気に留めながらも、笑顔での子に話を振る。
そこで爆発してしまった。

「ああ?なに見てんだ。なんだこのやろー。おい!ああ?!てめーらなんなんだよこのやろー!!ふざけんじゃねーぞこのやろーー!!!」

突然、の子の怒鳴り声が店内に響く。

一瞬で凍りつく空気。
静まる店内。
隣の主婦グループのグラスを持つ手が止まる。後ろの個室の家族連れも一斉に反応する。
それくらいの大きな声で、の子は怒鳴り散らした。
「おめーら、人がどんな気持ちなのかわかってんのかこのやろー!!」
ライブ中、いや、それ以上のシャウトが飲み屋を支配する。その怒りはメンバーに向けたものであるが、真意は掴めない。早く帰りたくなったのか、配信ができなかったことへの不満なのか、この空気が耐えられないのか。一体どうしたのだろうか。
模索する間もなく、の子は何度も怒鳴り続ける。
「なんなんだこれ!つまんねーよこのやろーー!!」
「俺だって早くお開きにしようと思ってたよ!!」
monoが反論する。の子の怒りは収まらず、歯を食いしばる。そしてまた怒鳴る。先ほどまでの表情とはまるで違っていた。monoからノートパソコンを奪い取り、配信していないのにも関わらずそのまま手に持って叫び続ける。
「なんでお前ら人の気持ち何もわかんねーんだよ!!」
「じゃあちゃんと言えよ!!」
ちばぎんも怒鳴って反論する。「言えよって、わかるだろ!!」と、の子は僕と友人の視線を気にしながらメンバーに訴え続けていた。何が言いたいのかは分からないが、苛立っている気持ちは十分伝わる。
その姿は見ていてヒリヒリする。恐さよりも切なさが勝っていた。みんな理解しようと思っているが、誰にも理解できない。本音を一言話せばいいだけなのかも知れないが、それが出来ないでいる。配信などではたくさん喋っているが、彼は実のところ、本当に言いたいことは何一つ言えていないのかも知れない。だから態度で示すが、相手には伝わらない。ただ、溜め込んだ感情が裂け目から沸騰し、ぶちまけられる。求める気持ちから生じる摩擦の火を、一人で起こしている。それが今、激しく燃え上がり、炎上している。メンバーも彼の気持ちを汲み取ろうとしているが、その量があまりも大きく、抱えきれないでいる。
腕の傷もその一つなのだろうか。
怒りでブルブルと震える腕が抱えるものは、ノートパソコンと傷。細い腕一本で、たくさんの表現欲求と大きな痛みをすべて背負っているようにも思えた。
突然の怒鳴り声で凍りつく飲み会。
こんな状況で不謹慎だが、なぜかライブを観ている感覚に陥ってしまった。

「こんなの全然ロックじゃねえよ!!!」

の子は大きな声で怒鳴り、個室を出ていった。

驚いた。
素でこんなことを叫ぶ人なんているのか。絵に描いたようなキャラクター。そしてなぜか胸に響く叫びセリフ。
映画でもライブでもない、日常で、こんな言葉が聞けるとは思わなかった。
まるで物語の中に放り込まれたかのようだ。
こんな状況で言うのもなんだが、痺れてしまった。

しかし、彼は出ていく方向を思いっきり間違えていた。

「出口逆だよ!!」
ちばぎんのツッコミが空しく響いた。これは恥ずかしい。の子は店の奥まで歩いていってしまった。せっかくかっこいいことを叫んだのに、逆方向へ歩いていくの子の姿を再び見ることになるなんて。隣の主婦グループは「なんなのかしら急に。カンジ悪いわ…」と場の空気を悪くさせたの子への愚痴をこぼしつつ、飲みを再開していた。
程なくして、の子の姿が。
なんと、再び個室に戻ってきた。

彼はイライラした様子で「なんなんだ…なんなんだよちくしょう…」と呟きながら、片手でズボンのポケットを弄り始めた。
すると皺くちゃの千円札が二枚出てきた。それをテーブルの上に無造作を置く。
これは会計か。出口を間違えたのをいいことに、律儀にも飲み代をわざわざ払いに戻ってきたのか。

「人生は一度きりしかねえんだよ!!!」

再び大きな声で怒鳴り、個室を出ていった。

が、また出ていく方向を思いっきり間違えていたのだ。

「出口逆だよ!!」
再びちばぎんのツッコミが。
まさかの天丼。
今度はさすがに笑いが生まれ、場の空気が和らいだ。

怒りをぶちまけた熱血人生劇場が、いつの間にかコントに。
これはの子の天然なのか、それとも場の空気を悪くしたせめてもの償いなのか。突然のサービス精神に度肝を抜かれた。せっかく痺れたのに、感動を返してくれ。そして行き止まりに気づいたのか、数秒後に逆方向に歩いていく彼の姿。それはなんとも情けなく、おかしい。そして妙に愛おしかった。
緊張感を覚えた分、同じくらいの安堵感を得た。そして苦い気持ちになった分、同じくらい笑ってしまった。
なんなんだ、この人は。

「すいませんね。俺ら、追っかけないといけない感じなんで…」
ちばぎんが謝り、メンバー3人が席を立つ。ノートパソコンを持ったまま店を出ていったの子を追いかけるという。重たい空気を背負いながら荷物をまとめるmono、ちばぎん、みさこ。の子が置いていった皺くちゃの札に重ね、会計を先に払おうとする。の子のあまりの癇癪が気になり、ちばぎんに尋ねた。
「こういうことって、よくあるんですか?」
「まあ、年に何回かって感じですね…」
ため息まじりに呟いた。monoは「はーー」と落ち込んでいる様子で、みさこは何も言わずにそのまま出ていった。結局、みさこのボブのウイッグは何の役割も果たしていなかった。
こうして、神聖かまってちゃんが嵐のように去っていった。

その後、友人2人と先ほどの出来事を語り合った。
あれは一体何だったのか。何に対して怒ったのか。二度目の出口の間違えはわざとなのか。いや、あれは実は配信が止まっていなくて、作為的なものだった。いやいや、配信はやっぱり止まっていた。天然だろう。いや、計算だろう。というかそもそも、みさこのボブのウイッグは一体何だったのか。
「なんだか、ライブ観てるような感覚だったね」
「怒鳴り声は恐かったけど、なんか、かっこよかった」
話題は尽きなかった。
そんな中、突然、の子が個室に戻ってくる。
ものすごいスピードで歩いてきたが、とてつもなく神妙な面持ちだった。
「さっきはマジですいませんでした…いやほんと、マジですいませんでした…」
傍に座り込み、何度も何度も謝ってくる。「いやいやいや」とこちらもなんとなく謝る。彼の本心に気づかなかったのはメンバーだけでなく、当然僕らにも責任がある。それでも「ほんとすいませんでした…」としきりに謝り続け、こちらが申し訳なくなってくる。
たったの数時間で、の子のあらゆる表情を見てしまった。
不器用だが、自分の感情に素直だ。はつらつとした笑顔と、震えるほど怒りに満ちた顔。飲み会と、腕の傷。あらゆる両極端がそこにあり、バランス感覚さえ感じた。ライブのような迫力だった。生々しい人間模様を見た。神聖かまってちゃんを知って初めて、の子の心の痛みを感じてしまった。
「じゃあ、メンバーが車で待ってるんで…また会いましょう」
の子は後悔と反省に包まれたような表情のまま、個室を出ていった。

あっという間に過ぎていくすべての出来事に、ただただ圧倒された。
音楽とは関係ないところなのかも知れない。
単なるワガママなのかも知れない。
だけど、あそこまで人との摩擦を肌で感じさせる人を見るのは初めてだ。それほど自我があり、求めていることが大きいのだろう。それが音楽に繋がっている。『いかれたNeet』で歌われている通り、の子の音楽は日記そのものだ。人間性や精神、記憶や想像すべてが直結しているように思う。
ますます、神聖かまってちゃん、そしての子という人が気になった。追求したくなった。
僕と友人らは見事に終電を逃し、ネットカフェで一夜を過ごす。ネットの神聖かまってちゃん関連の掲示板で見る限り、やはり配信は個室に入った時点でストップしていたようだ。
「こんなの全然ロックじゃねえよ!!!」
「人生は一度きりしかねえんだよ!!!」
あれは演技でも何でもなかった。
の子は本当にロックを求めていた。そして、誰にだって人生は一度きりしかない。どちらも間違いではないのだ。
あの叫び声を、きっと忘れることはないだろう。

やがて朝になる。
始発で帰ろうと、外に出た。昨晩の祭りの賑やかさとは打って変わり、柏駅周辺は静寂に包まれていた。そこら中にゴミが散らばり、空は青く、夏の朝日が光り輝く。日光により、一瞬で退色したかのような駅の看板。荒れてはいるが、どこか清々しい。
まるで台風が去った後のようであり、神聖かまってちゃんが去った後のようだった。

その台風はやがて巨大な暗雲と嵐を引き連れ、千葉県の幕張に到達する。

サマーソニック2009の当日がやって来た。


~続く~

2 件のコメント:

  1. mixiのかまってちゃんコミュニティから来ました!
    こんなに事細かく書いてあって、長文なのに
    所々笑えるところがあって
    楽しく読めました♪
    続き楽しみにしています~◎

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  2. U3さま

    はじめまして!
    mixiのコミュニティ、どなたかがURLを貼ってくださっているんですね。ありがたいです。
    楽しく読んでもらえて嬉しいです!
    またゆっくり更新していくつもりですので、ご覧いただければと思います~。

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