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2010年8月12日木曜日

神聖かまってちゃん@恵比寿LIQUID ROOM

恵比寿のリキッドルームでミドリと神聖かまってちゃんが激突。

4年前、大阪の小さなライブハウスで偶然観たミドリ。1年前、東京の小さなライブハウスで観た神聖かまってちゃん。どちらにもガツンとやられた身としては、これ以上ないくらいの組み合わせだ。
そして多くのメディアで"ミドリVS神聖かまってちゃん"と書かれただけあり、"VS"はあながち嘘ではなかったようだ。
ステージはまさに対立構図、そのものだった。

恵比寿駅に着いてトイレを探すためにうろうろしていると、の子さんにバッタリと遭遇。目が合うとお互い「あっ!」と言って立ち止まり、「がんばってください!」となぜか励ましをいただき、一瞬のコミュニケーションで終わった。
会場に着くと、人、人、人。この組み合わせに当然、ソールドアウトの会場。
人で密集された空間と化したリキッドルームが盛り上げるのは、フロアだけでなく、ステージだけでなく、後ろの小さなステージも。
まずは撃鉄、385のライブが客席フロア後方の小さなスペースでそれぞれスタート。撃鉄はボーカル・天野ジョージのアクロバットなパフォーマンスと、ライトに照らされた肉体美。鬼ような天使に思えた。ミドリのボーカル・後藤まりこ主宰のレーベルに所属する385も小さなステージに収まり切らない何かがあった。
フロアには首にタオルを装備したお客さんで溢れ返り、場内には先ほどから水着のギャルが「ちかん、あかん」と韻を踏んだプラカードを持ってニコニコしてうろついている。どういう空間なんだ。

そして、いよいよ大きなステージでのライブが幕を開ける。誰もが「最初はミドリか、神聖かまってちゃんか」と想像したことだろう。
しかし、その答えはどちらでもなかった。やがてBGMと客電が消えた途端、お客さんの歓声だけが地鳴りのように響き渡る。そして『夢のENDはいつも目覚まし!』の登場SEが。
「神聖かまってちゃんが先か!」と思った途端、突然ミドリの登場SEに切り替わる。どよめく客席。後藤まりこの声と、の子の「イッツマイジェネレーショーン!」の声が流れ、突然のNHK『MJ』に戸惑いを隠し切れない。
ステージに下ろされているカーテンの幕が開き、ますます戸惑いを隠せない光景が目の前に。

なんと、ミドリと神聖かまってちゃんが一つのステージに同居している。

わ、すごいわ、ステージに2つのバンドが、それぞれセッティングされとって、狭い空間の中、それぞれが、音を鳴らしとって、2人のボーカルが、左右におるで、これ。あまりの意外な光景に戸惑ってしまい、思わず後藤まりこのツイッターの文体になってしまう。
イラストに描くとこんな感じだ。




の子「みなさん!夏バテとか関係なく、今すぐここに叩きつけて…」
まりこ「いっせーのーっせっ!!」
ハジメ「ミドリいくぞーー!!」
まりこ「セックスーーー!!!!」

の子の声を掻き消すようにミドリ側が叫び散らし、ミドリが演奏を始める。「あたしは、あんたと、セックスがしたい!!」と後藤が叫び、『うわさのあの子』からライブがスタート。
左側でミドリがバシバシと演奏をキメている中、右側では神聖かまってちゃんのmonoとの子が音楽に合わせてうねうね踊っている。の子は宇宙人との交信でもしているかのような動きで、monoは若干憎たらしい踊りを見せている。なんだこの光景は。
ミドリファンは演奏に拳を上げ、かまってちゃんファンは2人の姿に苦笑い。間奏では後藤まりこがの子の顔に大接近し、「ああーー!!セックスーーー!!」と叫ぶ。「あぁー!!」「ああぁー!!」とお互い絶叫。なんなんですかこれは。

"VS"という名のもとの対立構図。お互いのバンドの姿を延々観ることができると、それぞれのファンが全く飽きさせられることはなく、演奏を楽しめる。この発想は新しい。

の子「僕らの番ですよ、負けてはいられません!背水の陣です、僕は!」
mono「ぼくらぁ(聞き取れない)」
の子「(無視)まあまあまあ、なんかシステムがあるからどんどん行くぜ!」
まりこ「おまんこーー!!」
の子「じゃあいきます、ゆーれいみマンという曲をやります」

神聖かまってちゃんは『ゆーれいみマン』からスタート。
広いステージに計8人がそれぞれ楽器を持つと、なかなかの狭さに。それでも、の子のフィールドは常に広い。ステージ中央や端、ありとあらゆる場所に移動しながらギターを弾く。

「こんなのは初めてだから、戸惑いっちんぐ…」
の子が言った後、ミドリのハジメが鍵盤を弾いて『あたしのお歌』。「股を広げるだけが女じゃないのーです」などと後藤まりこが可愛らしい声で歌い始め、右側でまたの子とmonoがウネウネと踊り始める。曲の感慨をぶち壊すかのように。ミドリファンにとってはイラッとする動きにも思えてしまいそうな2人だけど、2人は単純に楽しんでいるようにも思える。

ミドリの演奏が終わった途端、の子が叫ぶ。
「いぇーーーい!!今日は同じバカなら踊らにゃ損損ですよ。夏バテとか言ってるそこのみさことかどうでもいい!夏バテ解消!運動!スポーツ!いきましょう!」
「いきましょう!」と言ってもすぐに演奏が始まらないのが神聖かまってちゃん。客席からは「あごー!あごー!」とmonoへの歓声が。こうして『学校に行きたくない』へ。
「計算ドリルを返してください!計算ドリルを返してください!」
始めから飛ばして大丈夫なのだろうか。マイクを持ってステージを歩き回るの子。そして思いっきりダイブ。
「計算ドリルを、返せーー!!」
の子のものではない低い叫び声が響き渡る。なんだ?と思って視線を左に向けると、後藤まりこが「計算ドリルを返せ!計算ドリルを、返してくださいー!」と、なんと『学校に行きたくない』に参加していた。これは貴重だ。

「計算ドリルを返してくださいー!デストローーイ!!」
強引すぎる繋ぎ。そのままミドリは『ゆきこさん』へ。
この日はノンストップで激しい演奏が交互に続けられる。後藤まりこは曲の合間に「計算ドリルを返してください」と呟き、なんとなくだが神聖かまってちゃんへの気配りや愛情もどこかで感じられる。"VS"とはいえ、実際のところは温かいイベントだ。

の子「アドレナリンが凄いときがありますが皆さんもそうだと思いますが、(観客の野次に対し)うるせー?いや僕は喋りますよ全然、あはははは!」
ちばぎん「喋ってもいいけどギター持ってくれる?」
この日もちばぎんは父親的存在を発揮。客席からはなぜか「あごー!」というmono君への声援がやたらと目立つ。
の子「あごーぅ!!」
mono「あごーる!!」
まりこ「おまんこー…」
みさこ「おめこー!!」
まりこ「おまんこ!!!」
の子「おちんこ!!!」
いつの間にか"あごコール"が生殖器へと変化。とにかく下品極まりない。

の子の「おちんこ」発言に対し、「あかん、それはあかん。それはあかん!!」と叫ぶ後藤まりこも他人のことは言えない。すると、「…痴漢、あかん!!」と繋げ、会場を笑わせる。
「かまってちゃんよりな、ミドリのほうが、偉いねんぞ。なんでか言うたらなあ、お前ら、既婚者おらんやろ。こっちは人妻おるねんぞ!!あかんか!??人妻が"おまんこ"言うたらあかんか!??」
後藤まりこ節が炸裂。やはり声の力強さは半端ない。それでも神聖かまってちゃん側はの子が「僕のほうもどんどん声を張り上げて!ピョコピョコとジャンプしていきましょう!!」とマイペースに盛り上げてくる。ちょっとばかりのディスコミュニケーションと張り合い。刺激的な空間だ。
「僕は楽しいな!」
満面の笑顔での子が言い、『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロが。誰でも知っている往年のヒットソングかと思えるほど、会場全体が盛り上がっていた。
「後藤まりこさん、この度はご結婚おめでとうございます!」
ちばぎんが祝福の言葉を告げ、みさこのドラムがドカドコと鳴る。右側で神聖かまってちゃんが演奏している間も、左側では後藤まりこがリズムに乗って軽く踊っており、ステージの上はワイドスクリーンのように迫力のある光景。温度差はそれほどなかったように思う。

演奏後、ミドリ側でハジメが『ロックンロールは鳴り止まないっ』のピアノを自己流にアレンジ。後藤まりこが「遠くに!近くに!なんとか!鳴り止まねえっ!」と叫び、「ロックンロールの基本を始めるよーっ」と煽情。の子がなぜか「いや、あとで!」とすかさず注文。

ミドリは『スピードビート』を演奏し、その後は神聖かまってちゃんが『通学low』を演奏。
みさこに対し、「かわいい!」「みさこかわいいぞー!」の声援が続く。「もう…そんな言ったって何も出ないよー」とみさこ。その間、後藤まりこがマイクを使って高い声でなぜか喘ぎ始める。
「おいみさこー、こんな声出しちゃって…おまんこー!おしっこ飲みたい!おしっこ飲みたい!おしっこ飲みたい!おしっこ飲みたい!おしっこ飲みたい!おしっこ飲みたい!!」
ハジメ、後藤の喘ぎ声をみさこのものと見立てて変態発言を。
そのままマイクを口にくわえてクレイジーにキーボードを弾きまくり、「あ、1曲できちゃった」と満足げのハジメ。その後、後藤まりことmonoのやり取り。マイクを通してないのでお互いのセリフは聞こえない。

まりこ「あの、僕らもう1曲やっちゃったんでそちらが…」
mono「いえいえ、そちらがちゃんと1曲やってください」
まりこ「いえ、かまいませんので」
mono「いやいや、そちらの番ですよ」
すべて想像のセリフだが、そういったジェスチャーで会話が繰り広げられ、場内が爆笑の渦に。「早くやれよ!!」というお客さんの野次。
「今日対決でしょ?」
ハジメが煽動する。「1曲やらせてもらっていいですか?」と更に一人で、もう1曲演奏しようとする。なぜか木村カエラの『Butterfly』を音程外しまくりで即興カバー。「場違いだった…」とすぐに後悔し、ミドリはそのまま『リズム』の演奏へ。

の子「次は僕らの番です、いくぞお前らーー!!」
みさこ「ちゃらららちゃららー、ちゃらららちゃららー!」
の子「待てーー!!俺の前フリがあるだろ、"新曲やりますよ"っていう…『ベイビーレイニーデイリー』やります、初めて」

新曲の『ベイビーレイニーデイリー』を初披露。
デモ音源よりも少しテンポが早く、monoのピアノのアレンジも気持ちいい。の子の「そんな好きだから!」という歌詞の声も透き通って聴こえてくる。
雨が降ったり止んだりのこの日。曲が作られた6月でもない8月の今日、歌詞の通り、ここにいる人たちは生きやすいのだろうか。たくさんのお客さんがステージに向かって手を上げていた。
「気持ちっていうものは、気持ちというものは…」
の子が間奏の中で叫ぶ。最後は余韻を残すように「傘で隠さないよにぃーーぁ」と叫ぶ。

ミドリはそのまま『春メロ』へ。ハジメのボーカル。サビでは後藤まりこが高い声で一緒に呟くという曲だ。
その後は神聖かまってちゃんの演奏。なぜかみさこがドラムセットから立ち上がり、ステージ脇に消えていく。

ちばぎん「なんかウチ、ドラムがいなくなったんだけど」
の子「ドラムがいない?生理か?」
ハジメ「みさこーー!!俺のみさこーーー!!」
の子「ホントなんなんでしょうね、何なんだアイツ…」
ハジメ「俺のみさみさはどこだい?俺のみさみさはどこだい?」
の子「ちょっと2番くらいまでは覚えてるだろうからmonoくんがドラムやって」
観客「あごーー!!!」
の子「アゴラム(恐らくアゴドラムという意)は凄い」
ハジメとの子、一切のコミュニケーションが取れていない。monoがみさこのいないドラムセットに座り、演奏のスタンバイ。そこにみさこが急いでステージに戻ってくる。
の子「お前、座敷童か…いるじゃねーか」
ちばぎん「お前そこで見とけ」

なぜかみさこ見学の『あるてぃめっとレイザー』はアゴラムで繰り広げられる。「あるてぃめっとレイザー!!」と、後半ではみさこも叫んでいる。
どうやら、みさこはトイレに行っていたようだ。先ほどのハジメの叫び声「おしっこ飲みたい!」といい、歌詞にある「おしっこがわたくし漏れそうなのです」の伏線だったのか。

その後はミドリは『メカ』、そのまま『獄衣deサンバ』へ。
ミドリの間奏で、の子が「わあわあわあ」と呟き始める。そこで後藤まりこがの子のもとへ威嚇するように大接近。切迫感と緊迫感のある状況の中、の子が後藤に「あなたイイ匂いがする」と素朴な意見を。爆笑する会場。
そして後藤まりこが演奏中、monoのネックレスを引きちぎる。

mono「後藤さんマジメに恐いわ。俺のネックレスが一瞬にして…」
まりこ「あご、あご、あご彼女できとるぞ。あご、首からネックレスに指輪通しとったぞ。ハジメ、お前あごに負けとるぞ」
ハジメ「えーっなんやねんこれ、俺あごに負けたんか!」
まりこ「お前こいつ童貞ちゃうやんけ」
ハジメ「俺も童貞ちゃうけど、けど、あご彼女おるねんな」
まりこ「お前負けとるやんけ」
ハジメ「負けたーーー!!!!」

まりこ「あご、お前彼女おるんけ?」

mono「はい、最近できました…」

場内騒然。そして拍手喝采。monoに彼女がいることを後藤まりこにカミングアウトさせられたこの瞬間、この日一番の盛り上がりとなった。「おめでとーーーーー!」の声がちらほらとあり、時折「ちくしょーー!」「ふざけんなーーー!」という声も。怒りの声は、ほとんどが男だ。

mono「なんでこんな形でカミングアウトしなきゃいけないんだよ!!」
ちばぎん「後藤まりこさんの結婚と同じくらい衝撃的なことですよ、ほんとに」
の子「monoくんもついにこのときが…リア充!!」
mono「うるせー!!」
まりこ「結婚すんの?結婚すんの?結婚すんの?なあ結婚すんの?結婚すんの?かまってちゃんで一発当てて結婚すんの?結婚すんの?」
の子「信じられないですよね!」
まりこ「の子くん置いて結婚すんの?」
の子「僕は全然結婚しないですよ!」

まりこ「自分ら結婚したらええやんか。結婚しいや!」

後藤まりこに勧められ、ここでなぜかの子×monoのキスシーンが。沸き立つリキッドルーム。本当に意味が分からない。もはや"VS "じゃなくて"BL"だ。
「やっぱそういうことやねんて。バンドはやっぱそういうことやねんて!!」
後藤は一人で納得し、テンションが上がったように全身で踊り始める。「いかれたまりこさんがいるんで、『いかれたNeet』という曲をやりまーす」との子の曲紹介により、『いかれたNeet』へ。すると、monoがなんと演奏を失敗。

みさこ「monoくん、動揺しすぎだよ!」
ちばぎん「あごのせいです」
みさこ「あごのせいです」
の子「リア充ー!」
mono「帰りたい…」
そこに突然後藤まりこが歩み寄り、monoを豪快にビンタ。メガネがものすごい距離で飛んでいく。会場には戸惑いまじりの笑いが絶えない。
の子「monoくん、今のは愛だ!!」
ちばぎん「早く曲やろうぜ!」
mono「こっちの(聞き取れない)」
ちばぎん「何?」
の子「何?何言ってんのかわかんねーんだよ!とりあえず曲いきましょう!」

神聖かまってちゃんの『いかれたNeet』の後は、ミドリが『鉄塔の上の2人』『どんぞこ』と立て続けに演奏。何年ぶんの「どんぞこ」という言葉を聞いただろう、と思えるほどの「どんぞこ!」の連発が終わり、ミドリがステージから去る。の子以外の神聖かまってちゃんだけがステージに残る。
「すいません…彼女できました」
monoの白状に、客席からは彼女ができたことに対する怒りの野次が。

mono「うるせー!今すぐお前らもバンドやれよお前ら!俺だって頑張ってきたんだよ!ちょっとくらいは祝福しろよ!」
みさこ「24年間いなかったもんね!」
mono「24年間彼女いなかったんだよ俺は!ああ!?」
ちばぎん「別に誰も責めてないじゃん、怒るなよ。"おめでとう"って言ってくれてんじゃん」
みさこ「赤飯炊こう、赤飯」

の子がマイペースに帰ってくる。「ごめん、トイレ行ってた」と。なんなんだこの日は。神聖かまってちゃんだけが残ったステージで、「の子ーー!」という歓声。「うるせーー!」というの子の返答。「糞の子ーー!」という歓声。「ありがとう!」と嬉しそうなの子。ちばぎんの「喜ぶんだ?」という問いに「嬉しいに決まってるだろ!配信だろ」と答えるの子。

『いくつになったら』の演奏が始まる。
「僕はいつか 東京のど真ん中で 何千人の前で 存在を見せてやる」
最初の部分を、偶然か、ただの間違えか、それとも意図か、「僕はいまや」と歌っていた。恐らくただの間違いだろう。本当に、いまや東京のど真ん中で何千人の前で存在を見せている状態である。
演奏後、「今日は『学校に行きたくない』で飛ばしすぎて最初から疲れた…」との子が吐き出す。が、すぐさま「でも今はスーパーサイヤ人3だ!」と実は元気であることをアピール。
monoが「最後の曲だよ」と呟き、お客さんが「えーーーっ!!」といいともの状態。
「僕は早く帰りたいよ…」
彼女がいることをカミングアウトして疲れ切った様子のmonoに、メンバーからもお客さんからもブーイングが。
「がんばってー!」
お客さんの声援に、「このままバンド終わってもバイト生活がんばるよ!」との子。「でも、まだまだ伸ばす。ついて来い!ついて来い!…"ついて来い"って英語で何て言うのかな?」とmono君に尋ねる。「"カモーン!"じゃねえの?」とmonoが答えるが、の子は「"あご?"あごじゃねーよ!!」と聞き間違える。

そしてここから突然のセッションが開始。
「僕は来年には終わるかも知れないー。だけど今僕はここで叩き付けるのさー」
そのような歌詞を即興で歌い、「お前ら、どこまでも行くぞ僕は!」と客席を煽情。
「あごー!」「あごかわいいよーー!!」
声援にmonoがニヤニヤ顔で答えようとしていると、の子がステージ中央までギターを持って歩き、床にギターを叩き付ける。いつものピンク色のギターではなく、借り物か何かのギターだ。叩きつける瞬間、みさこがドラム、ちばぎんがベースを鳴らして盛り上がらせる。しかし、何度床に叩きつけてもギターは全く壊れない。
「壊れないね…」
monoが寂しげに呟き、スタッフがの子に歩み寄る。の子はそそくさと元の位置に戻る。

の子「あんまりねぇ、なんかねぇ、壊れなかった」
mono「頑丈にできてるね。えーと、最後の曲だよね」
ちばぎん「うん、『ちりとり』」
mono「じゃあ最後の曲、ちばぎんが紹介してー」
ちばぎん「『ちりとり』だって言ってんだろ」

ちばぎんのクールな突っ込みに、場内は大盛り上がり。この日は会話からメンバーの個性がびんびんに伝わってきて、ライブなのかトークイベントなのか分からないほど会話が充実していた。
「よし、ついて来い!いくぞ!…あぁ、くそっチューニングが…」
の子がアジテーションするが、チューニングがまだできていない。「だから僕がチューニングしている間にmono君がラップを!」と促し、みさことちばぎんが演奏を始め、お客さんが手拍子でmonoにラップを求める。チューニングができたかできていないのか、の子もギターを弾き始める。
「お前の男の見せ所!この観客に見せてやれー!!」
の子の言う通り、ついにラップを見せつけるmono。

「俺は彼女できたんだよー。最近できたんだよー。お前らみたいなリア充に仲間入りしたんだよー。ああー?俺だってリア充になりたくてバンドやってんだよー。お前らだってリア充になりたくて生きてるんだろー。ああー?…ラップじゃねえよバカヤロー!」

monoのラップ、というか呟きがスタート。そしての子のギターとボーカルが入り、意外なかっこよさにびっくりする。会場は盛り上がり、大歓声が。クールにキマったのも束の間、残念なお知らせが。

ちばぎん「大人の事情の話をしますと、『ちりとり』やる時間なくなったんですけど…」
の子「でも、やるんだよーー!!」
みさこ「うちら子どもだからねー」

大人の事情は子どもには通用しないらしい。そんなわけで最後の曲『ちりとり』が始まる。
先ほどまで言語感覚がめちゃくちゃだったりしていたの子が、丁寧に歌い始める。その瞬間は少しグッとくるものがある。切実な気持ちで歌おうとしているところに。
「だから僕は、あなたたちもちりとってほしい気持ちでいっぱいです。小学生のときの気持ちは今でも変わりません。だから僕は!!ちりとってくれたら、いいなぁ」
monoはやはり、彼女にちりとられたのだろうか。この日のテーマはもう、これしかない。

その後、ミドリのメンバー全員がステージに戻る。後藤まりこがmonoに近づき、なにやら耳打ちをする。そして最後は『夕方のピアノ』
この曲ではなんと、ミドリのメンバー全員が演奏に参加。ツインドラム。ツインキーボード。ツインベース。そしての子と後藤まりこという唯一無二なツインボーカルで「死ねーー!!!」の絶叫。両者カリスマの「死ね」が乱れ撃ちだ。

「死ね!」「死ねー!」「はよ死ね!」「佐藤死ね!」「死なんかい!」「死ねよ!」

早い話、標準語と関西弁が入り乱れているという光景。
の子のボーカルエフェクターによる高い声、そして後藤まりこのデス声にも似た低くドスのきいた声。この現場ではもう、佐藤が死にまくりです。
「佐藤にいじめられたー、教科書はなかったー、僕のためにさー死ねーーーーー!!!!!」
最後はの子が叫び、演奏が終了。
そして後藤まりこがの子の身体を掴み、強引に客席に投げ込んでダイブさせる。やはり投げれるほど身体が軽いの子だし、男一人を投げられるほど後藤のパワーは半端ない。後藤は自ら飛び込んで、ダイブ。
後藤、ステージに戻ってきたの子に突進し、なぜか強引にキス。戸惑うの子と、無表情ですべてをやり遂げ、ドヤ顔の後藤まりこ。なんなんだこれ。ブッ飛んだ2人が見せた、よく分からない奇跡の光景。狂ったように見えつつも、どこか幼稚園児の男の子女の子の可愛らしいお遊戯にも見えるのだ。

ライブはこれにて終了。
余韻に浸っているのか、まだ何かを期待してしまっているのか、なかなか帰らないお客さん。ステージのカーテンが再び開くと、水着ギャルが登場。そして叫ぶ。
「今日はこれで終わりでーす。帰れーー!!」
最後は笑いに包まれ、イベントは終わった。

ミドリ VS 神聖かまってちゃん。
「一体どうなるものなのか…」と期待の反面、不安もあった。しかし幕が上がったその瞬間、期待も不安もすべてが吹き飛んだ。バンドが2つ同じステージにリアルタイムで同居するのは、絵的に笑いが止まらない。「なんだこれ」という光景なのだ。これが大成功だったように思う。
思えば、ミドリは神聖かまってちゃんの曲に繋げる工夫をしてくれていた。一方、神聖かまってちゃんは自分たちのペースだけでやっていた。
どちらもそれぞれの気合いがあった。ミドリは"VS"の気持ちがムンムンとしており、ミドリらしかった。神聖かまってちゃんはいつものペース。それぞれの"自分らしさ"がぶつかり合い、とにかく刺激的な空間でした。

終演後、物販ブースがなぜか異常な盛り上がり。
色んな人たちがいた。ミドリとの対バンとなると尚更だ。開演前に、久々に漫画家の山本直樹さんとお会いできた。以前、ゴールデン街で飲んでそのままカラオケに行って以来の再会。ナタリーのタクヤさんにもお会いし、「さっき楽屋レポ書いて、これからライブのレポも終わった後アップするんだよー」とガンガン仕事中だった。それにしてもナタリーの記事のアップの早さは異常です。
女優の佐藤江梨子の姿を発見。どちらを目当てに観に来たのだろうか。
フジテレビ『FACTORY』公開ライブ時、の子さんにギターを授かった女子高生とそのお母さんが来ていた。ちばぎんがギターにサインを書いてあげていた。僕はちばぎんに出会い頭に後ろから蹴りを入れられた。

の子さんのテンションも高く、後藤まりこさんの気合いはやはり天井知らず。もう二度と観ることができないであろう、ある種の伝説的な空間を体験できました。

2010年8月12日 恵比寿リキッドルーム
〈セットリスト〉
1 うわさのあの子(ミドリ)
2. ゆーれいみマン(神聖かまってちゃん)
3. あたしのお歌(ミドリ)
4. 学校に行きたくない(神聖かまってちゃん)
5. ゆきこさん(ミドリ)
6. ロックンロールは鳴り止まないっ(神聖かまってちゃん)
7. スピードビート(ミドリ)
8. 通学LOW(神聖かまってちゃん)
9. リズム(ミドリ)
10. ベイビーレイニーデイリー(神聖かまってちゃん)
11. 春メロ(ミドリ)
12. あるてぃめっとレイザー!(神聖かまってちゃん)
13. メカ(ミドリ)
14. 獄衣deサンバ(ミドリ)
15. いかれたNeet(神聖かまってちゃん)
16. 鉄塔の上の2人(ミドリ)
17. どんぞこ(ミドリ)
18. いくつになったら(神聖かまってちゃん)
19. ちりとり(神聖かまってちゃん)
20. 夕方のピアノ(神聖かまってちゃん / ミドリ)

2010年8月8日日曜日

神聖かまってちゃん@SUMMER SONIC'10

サマーソニック2010の2日目。昨年は一般公募枠『出れんの!?サマソニ!?』に出演した神聖かまってちゃんが、遂に大きなステージへ。

数日前にの子さんから突然電話があった。なぜかmonoくんの携帯からだった。最初の10秒くらいはmonoくんだと勘違いして喋ってしまった。神聖かまってちゃんから一人サマソニに招待できるということで、「竹内さん、もし観たいバンドとかいたら」と電話してくれた。本当にありがたい。
「いやあなたたちが観たいんですよ!」
恥ずかしがりなため、そう正直には言えなかった。彼らからのありがたいバトンをすんなりと受け取った。自分でいいのか申し訳ない気持ちだったけど、思えばこの電話に昨年を思い出した。みさこさんから「の子さんが撮ってほしいみたいで」と電話があり、昨年は撮影に向かった。
あの日は一曲しか演奏できず、メンバーにとって不完全燃焼に終わってしまった。今年、その挽回となるだろうか。あの頃とは状況が違う。ワクワクが止まらないまま、千葉県の海浜幕張駅に向かった。
SIDE SHOW MARINE、その1年後はISLAND STAGE。サマソニの出演会場の変化は、この一年の彼らの大きな飛躍を表していた。キャパ4000人の大きなステージに、わずか365日で立つことができたのだ。

今回はサマソニ運営側の規制で、ニコニコ生放送での配信は出来ず。それでも楽屋ではいつも通り、配信をしていたようだ。
会場に着くと、とにかく日差しが強い。暑い。汗が出る。人が多い。すべてを敵に思えるほどの夏の熱気だ。

10時半過ぎ。
ステージは高い。セキュリティの柵に囲まれた客席最前。中央の一番前あたりに位置した。あの頃と違い、誰でも撮影できる環境ではない。ビデオカメラなんて持っていたら巨体のスタッフに連れて行かれる。佐藤さんがカメラを持ってステージ前に現れた。僕は客席でじっと彼らの登場を待っていた。
みさこさんがセッティングに現れる。夏の風物詩か、浴衣姿だ。さすがは紅一点、歓声が上がる。その後にちばぎんが登場。最近痩せたからか、凛々しくなったように思う。
monoくんも酔っ払った様子で登場。お客さんの声援に応えるが、滑舌が悪くて何を言っているのか分からない。その後、なぜか上半身裸になる。そしてキーボードで映画『菊次郎の夏』の久石譲の音楽を奏で始め、歓声が上がる。
その後、ちばぎんはmonoくんの代わりにキーボードの音をチェックし、恐らく楽屋で配信に夢中のの子さんの代わりにボーカルエフェクターも確認していた。どうしようもない子どもたちのために働く、父親のような佇まいだった。

そして11時頃。
サマーソニックの会場で大音量で流れる『夢のENDはいつも目覚まし!』。何度も聴いた登場SEだが、この会場で聴くと格別に思う。鳥肌が立つ。神聖かまってちゃんの出囃子に何千人もの観客が大きな歓声を上げ、SEのリズムに合わせて手拍子をする。
の子が一瞬ちょろっと現れて、すぐ引っ込み、みさこ、ちばぎん、monoがたくさんのライトを浴びて登場。

「どうもーこんにちわー神聖かまってちゃんですー。こんなに人いると思わなかったよー。どうもー。肝心のの子がいないなー。まったく、どうしたって言うんだよー」

monoが寝起きのようなテンションで言う。「一瞬見えた気がしたんだけどねー。すぐいなくなっちゃった」と、みさこがほのぼのと喋す出す。

mono「色々と何かやろうとしてんじゃねーの、あいつは。知らないけどー。意気込んで。こういった(まったく聞き取れない)」
みさこ「滑舌が悪すぎる…」
ちばぎん「なんすか?」
mono「は?なんだよ」
みさこ「滑舌が悪すぎて何言ってんのか分からない」
mono「ばかやろー知ったこっちゃないんだよー!」
ちばぎん「(無視)神聖かまってちゃんです、どうもこんにちわー!」

その瞬間、の子がノートパソコンを片手に猛ダッシュで登場。「楽屋までは配信OK」ということだったらしいが、なんとステージまで強行突破。の子らしい登場に、歓喜するISLAND STAGE。すぐに劔マネージャーとサマソニスタッフが止めに入り、パソコンは没収。の子は憤慨する様子を見せるも、スタッフに両手で肩を優しく押さえられてなだめられ、なぜか笑顔になる。

mono「ニコ生できなくてザマァねぇなぁ」
の子「うるせえバカヤローコノヤロー!!お前ワケわかんねーつまんねー配信しやがってよ!!」
mono「俺は今を生きてるんだよ!」
の子「俺だって今を生きてるんだよ!!黙れこの酔っ払い!!」
mono「うるせーバカヤローコノヤローチクショー!」

突然のケンカ。いつも通りの展開だ。monoがなぜか上半身裸のままなのが特別な感じがするが、特にありがたいわけではない。
「夏なんで、そんな曲をやります」
の子の紹介によって始まった曲は『23才の夏休み』。25才の夏休みの彼が歌う。23才のニート生活の頃の日記を歌う。
こんなに大きな会場で、こんなに早く聴けるとは思わなかった。「ギアをあげて今ーをー 過ごしていーまーす」だなんて。ギアがガンガンにかかりすぎていた一年間だ。サビの部分はなぜかボーカルが妙な不協和音に見舞われており、セキュリティのお兄さんも心配してステージを振り向くくらいの事態だ。それでも気に留める様子もなく演奏を続ける神聖かまってちゃん。ライブのたびに試行錯誤を繰り返してきたこの曲。完璧な演奏とは思えなかったけど夏を感じた。の子がサビの歌詞をオリジナルとは違う言葉で歌いまくるので、コーラスするちばぎんが何度も戸惑う場面が。

の子「サマーソニックで神聖かまってちゃんを観に来た人たちが大好きです僕は!」
mono「おめぇが(聞き取れない)」
の子「はぁ?お前何喋ってんのかわかんねーんだよ」

お客さんの一人が「あっちぃ!」と叫び、の子が「あっちぃのがいいんだよ!!」とアジテーションに使う。盛り上がる客席。
「60人くらいを(手のひらで)コロコロさせてやる!おっしゃ行くぞーーー!!」
の子が吠えると『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロのピアノが。
待ってましたと言わんばかりの大きな歓声に、会場に小さな地震が起きる。震源地はステージ。神聖かまってちゃん。その後、ドカドコと鳴るみさこのドラム。そしてちばぎんのベースとの子のギターが始まる。「オイ!オイ!オイ!オイ!」とリズムに従って叫ぶ観客。今までは曲のやり直し、チューニング不完全、機材不良、テンション不調で「おいおいおいおい…」なライブもあった。
「昨日の夜ー」
の子が歌いだすとき、心の中で何かが沸騰した。これは僕だけではないはずだ。目の隅っこから何かが流れた気もするが、放っておこう。そんなものに視界をぼかしたくはない。しっかりと彼らの姿を目に焼き付けたい。
ただでさえドラマチックな歌詞と曲展開の『ロックンロールは鳴り止まないっ』の歌詞には、葛藤が含まれている。
"何がいいんだか全然分からない"ものが、いつの日か、なぜだか全然鳴り止まなくなる。昨日の夜と、夕暮れ時の部活の帰り道。誰もが知ってるTSUTAYAさんが提供した、ロックンロールの入口への再入場。ワールドクラスの大御所が出演するこのサマーソニックは、の子が部屋で作曲し、制作したPVが具現化されたような会場。サマーソニックはあの映像の中に映っていたようなアーティストも出演するような会場だ。
初めてあのPVを触れたときの気持ちを、まるで昨日の夜のことのように思い出す。彼らはロックンロールの衝撃を受けた部活の帰り道を、サマソニの会場に持ってきたのだ。
「なんでだ全然鳴り止まねぇっ!!」
今はロックンロールより、神聖かまってちゃんが鳴り止まないっ。

の子の呟きが終わった後、ステージが沈黙し、観客が大歓声。
その後、静かにmonoのピアノが再開し、余韻を与えてくる。そしてちばぎんの「ありがとうございます」の声と同じタイミングでみさこのドラムだけがリズムを作り、観客が拍手でそのリズムに参加し、の子がステージ中央のパーカッション機材までカニ歩きで近づき、チョップするような手の形で音を鳴らす。ポーン!と。
「日だまりの夢見てー ふるさとの香りー」
こうして『自分らしく』がスタート。
大盛り上がりの会場で始まったこの曲の出だしは、この日のハイライトになったかも知れない。だけど、演奏中に何度もハウリングなのか分からないがキィーーン!と耳を突き刺すような異音が響き渡る。
「男らしく女らしくキィィーーーン生きてけと皆が言う でも僕はキィーーーンそんなことはできなーいキィーーーーン」
特別ゲスト・キィィーーーンかと思うくらいの目立ち様だが、メンバーは演奏を続ける。せっかくかっこよくキマった曲の出だしなのに、この事態はもったいない。だけど神聖かまってちゃんには珍しくはない光景。ある意味、自分らしく。神聖かまってちゃんらしく。
「男の子になった 女の子になった」の部分ではの子が「納豆巻きを、ねぎトロ巻きを」と替え歌を。そしてこの曲で一番盛り上がるタイミング。monoがパーカッションからキーボードに移り変わる瞬間の到来だ。曲が一気にPOPになる瞬間、持っていたスティックを客席にぶん投げるmono。上半身裸で先ほどまで変態みたいだったが、いきなりかっこよくなる。のはいいが、スティックを投げる時間のせいで肝心のキーボードに移る最初の部分が全く弾けてなくて、本当に惜しい。

「これから何を観るんだい!!」
の子が観客に問いかける。
これはちょうど一年前のSIDE SHOW MARINEと同じ質問だ。「これから何を観るんだいキミたちは!!」と繰り返すの子。こういうセリフをいちいち覚えていたのだろうか。最近になって昨年の動画を見返したのかも知れない。観客が応えていくが、の子は聞き取れずにいる。
「ジャンキー?ジャンキー観るのか?俺?俺はジャンキーじゃねえよ!俺はジャンキーじゃなくて精神薬ジャンキーだ。精神薬ジャンキーを絶ちつつある」
少し苦笑いの声が会場に響く。
「一気に一気に弾け飛ぶ。そんな躁の思いを、一気に叩きつけてやる!」

そして『学校に行きたくない』が始まる。
「計算ドリルを返してください!計算ドリルを返してください!計算ドリルを…」
途中、の子が歌うのをやめてステージから降りてくる。相撲部屋の親方のような巨体のセキュリティが制止する。の子の身体の3倍くらいはあり、物凄い迫力だ。強引にステージに放り上げられるの子は、また降りてくる。相撲部屋の親方が来る。降りる。そしてまた相撲部屋。そしてまた降りる。また相撲。
そんなの子とセキュリティとの攻防戦。
そのやり取りの一部始終に釘付けになる観客は、ステージでこっそり暴れまくっているmonoを一切見ていなかったかも知れない。かわいそうだ。いつもは「お前らがさぁ!お前らがいじめるからさぁ!!」と叫ぶ部分で、の子はこう叫んでいた。
「僕はさぁ、僕は心の中で傷を持ってんだよ。僕は心の中で傷を持ってんだよ!!!」
なぜか鳥肌が立つ。本当のことだからだろう。そして再び客席のど真ん前に降り立ち、の子の叫び声が響き渡る。
「おかあさーーーーーーーん!!!!おかあさあぁーーーーーーーーーーーーーーーん!!!!!!」
盛り上がる観客。バッシバシ鳴るドラムとベース。疲れて果てている上半身裸のmono。
そしての子が会場を煽情する。
「ピーポー、ピーポー、宗教じゃねえんだよピーポー、計算ドリルをピーポー、ここでサマーソニックでピーポー、ここで、発散させればいいと僕は思っています!!」
圧巻のステージだった。間違いなく、その存在を叩きつけていた。

の子「皆さん、これから出るバンドは強者ばかり出ると思いますけど、これからもサカナクションとか、えー、サカナクションとか、お魚とかいっぱい、出る…」
ちばぎん「何言ってんだかわかんねーよ」
このタイミングでこの日初めてのちばぎんMC参加。
mono「何言ってんのかわかんねーよ!」
の子「お魚とかが…」
mono「お魚さんが出るんですか!さかなさかなさかなー、さかなーを食べるとー♪」
の子「(無視)俺にはこんなもの、咬ませ犬にしか過ぎない。みんなのテンションをただ単に上げるために来た。だから、いちにのさんで…」
観客に一斉に声を出すように促すの子。

「サマー、ソルトキーーーーーーック!!!!」

失笑まじりの笑いが客席から。いつものことである。

mono「おめー1人だけで盛り上がってるだけじゃねーかこのやろー!」
ちばぎん「(無視)それでは最後の曲です神聖かまってちゃんでした!」
かわいそうなことに、monoへの無視は容赦なく続いていた。
mono「みさこー、おめーせっかく浴衣着てんだからちょっとくらい披露しろ!」
みさこ「何?何言ってんだかわかんない」
mono「浴衣姿披露しろよ!」

大歓声に応えるかのように、ドラムセットから離れ、ステージ前方で浴衣を披露するみさこ。なぜかセキュリティの男性陣もこっそりステージを振り向いていた。monoがスカートめくりのようにみさこの浴衣をペラッとめくり、みさこがドラムスティックでmonoを叩き、monoの乳首を突くといった反撃を。

mono「じゃあ最後の曲は『夕方のピアノ』かー」
の子「『ちりとり』」
みさこ「『ちりとり』?」
ちばぎん「え?『夕方のピアノ』?『ちりとり』?どっち?」
観客「ぺんてるー!」
の子「ぺんてるーぺんてるー」
mono「これどうする?アンケ取る?」
の子「どうするどうするって、他人任せかお前は!『ちりとり』やる!」

ちばぎんが「ありがとうございました。今日1日楽しんでください!」と律儀に挨拶をし、『ちりとり』がスタート。
の子はいつも以上に丁寧に歌っているように思った。monoはいつも通りに自分の演奏のないところでは踊り、ちばぎんとみさこのリズム隊のブレイクしてまたジャーーン!と始まる所の動きがいつも以上にキマっていた。
「放課後僕とキミ 掃除当番同士少し喋りました 優しくしようとして"先、帰っていいよ"…バカヤローが。僕はもっと優しくしていたら、良かったのかなぁ」
の子は途中、歌詞を変えていた。
小学生の頃の、まだ恋という感情であることなのか判然としない頃の、ワケのわからない気持ちが蘇る。
「何なんですかこれはーー!!!」
"好き"やら"愛"やら"恋"という言葉を一切使わない、神聖かまってちゃん唯一のラブソングだ。誰もが経験したであろう、小学生時代の掃除当番。誰もが使ったことのあるちりとり。昼下がりか、夕暮れ時間の空気感を思い出す。の子の歌が人々に共通する記憶を探り出す。そして、たくさんの心をちりとっていく。

「掃除当番あなたとやれて良かったと思います。このサマーソニックであなたに会えて良かったと思います。あなた、あなた、あなたあなたあなた、あなたあなた!僕はみんなに…僕はあなたのことをちりとりたいのです。僕はちりとりたいのです。ちりとりたいのです」

このとき、多くの人が"好き"やら"愛"やら"恋"という言葉を一切使わない、ワケのわからない感情を神聖かまってちゃんに抱いてしまったのではないだろうか。
なんなんですか、これは。あなたたちに言いたいよ。
夏の声が1階から3階へジャンプするように、僕の心の声も、客席からステージにジャンプしたように思った。いや、ダイブくらいはしたのかな。
「邪魔だバカヤロー!散れ!」
ステージの前でカメラを構えているカメラマンたちに怒鳴るの子。

の子「このあとも、スティービー・ワンダーとか観て帰ってください。僕は観ないで帰る。mono君!ここでスティービー・ワンダーを歌ったらどうだい!?」
mono「ファイヤー、ファイヤ~」
の子、ステージを去る。
mono「…うぉい!!」

計5曲の演奏、計4度のmono無視の、神聖かまってちゃんのステージが終わった。

この日のライブが完璧なものだったかどうかは分からない。けれど、一年前の記憶と照らし合わせてしまった個人的な思いは無視することはできず、しかしそれが神聖かまってちゃんの活動の歴史を表すことになればと思い、このレポートにも思いを綴りました。
何よりも、こんな見事なステージを見せてくれてありがたかった。僕は神聖かまってちゃんというバンドに本当に感謝している。

サマーソニックに出演することは、バンドにとって一つの到達点だろう。しかし、彼らはもっと先を行く。そんな予感がした。この日のステージでのメンバーを見る限り、いつも通りな雰囲気で、ここがゴールだとは一切思っていないようだった。
神聖かまってちゃんにはゴールというものがないのだろう。の子という執念に満ちた野心家がいる限り。

2010年8月8日 サマーソニック2010 ISLAND STAGE
〈セットリスト〉
1、23才の夏休み
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、自分らしく
4、学校に行きたくない
5、ちりとり