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2003年3月10日月曜日

無戒秀徳アコースティック&エレクトリック@京都磔磔

3月はまだまだ寒い。

凍える身体を摩擦でごまかし、季節を急かしたい一心で京都の街にせかせかと降り立つ。阪急烏丸駅を降りる。京の都はどこも風情があり、どこで降りても同じ風景に見える。これが京都のカラクリ、カラスマ。韻を踏めていない。
何度来ても道に迷うため、時間にゆとりを持って磔磔の場所を確認してからスターバックスで時間を潰そうとする。と、友人に出くわす。中古CD屋で向井秀徳さんに出くわしたという。
「一緒にいる人にLPを掲げて"これどうよ?"と示してた。俺が"今日ライブですよね。チケット取れなかったんですよ……"って言うと、向井さんが"当日券あるかも知れんから行ってみたら"って言ったので来たわ」
だが、友人は間違えている。今日は向井さんではなく無戒さんだ。井に向かうのではなく、戒めが無いのだ。
この日は"無戒秀徳"名義で出演。ナンバーガール解散後、ファンだった我々をことごとく惑わせる彼はこれからこの名前でやっていくのだろうか。

磔磔の開場時間になる。
なんとテーブルとイスばかり。これはディナーショーなのか。ナンバーガールのライブを観に来た時とえらい違いだ。キャパは恐らく100人程度。整理番号は68番だったが、無事に前の方の座席に座れた。後ろの方のテーブルには無戒秀徳が普通に座っている。しかも普通に溶け込んでいる。むしろ客より客のようだ。
そして無戒秀徳が立ち上がると開演。ナンバーガールでいうところのTELEVISIONの『マーキームーン』が、起立。これぞ、ディナーショー。

「うちのスタッフはチューニングもできんとかいな……」
不満をぶつぶつと漏らしながら、お馴染みのテレキャスターをギュイーンガギョーンと鳴らす。ステージの彼と客席はとにかく近い。どれだけ近いかというと小便が届きそうなくらいの距離。この例えは汚いか。1曲目『NUM-AMI-DABUTZ』のソロバージョン。ってソロとか当たり前か。もうバンドで演奏しないのか、って思うと正直少し寂しく感じる。せっかく演奏しているのに寂しくなってごめんなさい。

『鉄風 鋭くなって』『透明少女』を立て続けに披露する。あの頃、ベースがブンブン鳴り、ドラムがバカドコ響いた曲。アコースティック調になると新しい解釈が生まれる。ナンバーガールの楽曲は歌詞が風景を浮かび上がらせる。"無戒秀徳"が歌うとそれが際立ち、かつてのモッシュとサーフに溢れた怒号や喧騒が無い分、歌詞に集中して聞き入ることができる。
『TATTOOあり』は、最後の田渕ひさ子のギターソロの部分を無戒秀徳が裏声でターターター♪と唄っていた。ひさ子さんの不在を感じて切なくなる。ああ、バンドじゃなくなったのかと。いまだにそんなことを思うのは失礼かも知れないが、大好きなバンドが解散してすんなり次を受け入れるのは時間がかかるのだ。ギターの音は歪み続けてギュワンギュワンと鳴る。これだ。この音だ。思い出す。感傷竹内午後八時。なんとなくナンバーガールっぽい書き方をしてしまう。
予想通り、長渕剛の曲を披露する。ネットで噂に聞いていたが、最近では恒例になっているようだ。ライブ前に中古レコード屋で長渕剛の『逆流』というレコードを気にしていたという。それが友人の言っていたLPの"これどうよ?"だったのか?

『delayed brain』は、「こんがらがってるインマイブレイン♪」と観客に無理矢理コールアンドレスポンスを求め、「SAY!」と叫ぶ。爆笑には行き届かない、戸惑いまじりの半笑いの一体感が磔磔を包む。本人も珍しく照れ笑いの表情を浮かべて「SAY!」と叫び、終始微妙な空気に包まれる。
『猫踊り』という曲は無戒ワールド全開で、降ってくるワードが聞き覚えあるものばかり。ナンバーガールの世界観は地方都市の"少女"から始まり、やがて冷凍都市へと舞台を移し、"春猫音頭"と呼ばれる狂乱節へ。爽やかな風景からいかがわしい色街へ。歌と演奏に無戒節が十二分に発揮されていた。

『Ku~Ki』、そして『Setimental girl's violent joke』の演奏。なぜかすべてが懐かしく、ノスタルジーに追い打ちをかけるようにこの日のハイライト『性的少女』へ。
無戒秀徳は叫んでいた。あの頃のように声を枯らし、絶叫していた。いや、ちょっと待てよ。タワーレコードの『bounce』だったか、何かの雑誌のライブレポート内のインタビューを思い出す。ナンバーガールの札幌でのラストライブが終わった後、向井秀徳が「もうこれから二度と叫ぶことはないでしょうね……」と寂しいことを言っていたのに。『性的少女』であっけなく叫んでしまってるやん。しかも「忘れてしまった!」って叫んでるやん。本当に忘れてしまったんか。いや、向井じゃなくて無戒だからか。でも、それでええんやで。ええねんで、向井さん。もっと叫んでください。その声が大好きです。あなたの叫び声がかっこええんです。

"休憩タイム"へ。無戒秀徳が磔磔のステージ下に降り、普通にお客さんと慣れ始める。もはや客と見境がない。休憩が終われば、オー!キャー!と歓声が上がりながらまたステージに戻っていく。オン・オフの切り替えはお客さんにも備わっているようだ。

再びステージに立つと、「この世はウソだらけ」と言い続ける無戒。休憩中に何があったんだ?「この世はウソだらけ」を連発し、会場はどうしたらいいのか分からない雰囲気に包まれる。
なぜか「ウソだらけ」の「け」を「き」と発音していて、「ウソだらき」と言っている。笑っていいのかよくないのか分からない雰囲気が漂い、一人が笑い出すとみんなが笑い出す。「○○新聞とか○○新聞とか読んでもこいつは本当なのかどうなのかわからん~」といった、社会の裏と表の恐ろしさをアドリブで歌い始める。
ここでイベントが開催される。「ウソだらけ」と言い続ける曲の演奏中に、それは始まってしまった。
「ここいらで、今日来られている皆さんの中でお一人がステージに上がってもらい、その方の身の回りの"ウソだらき"を発表していただきたいと思います」
ジャカジャカとギターを掻き鳴らしながら伝え、鳴らした音をその場でサンプリングし、音が鳴り続けている中でステージを降る。発表者を探す無戒と目を合わさないように怯えているお客さんも少なくはなく、一人目は僕のちょうど後ろのテーブルに座っている人が標的に。あーよかった。無戒に促され、身の回りの"ウソだらき"を発表させられる。
客「僕は……親に無職であることを隠しています!」
無戒「ウソだーらーけー♪」
ウソの内容に全く動じずに無表情で歌い始める無戒に、場内は爆笑の渦に。かなりシリアスなウソだったが、無戒は表情を変えずに"その通りさ。この世はウソだらきなのさ"と言わんばかりの険しい表情で歌い続ける。
次の標的は女性のお客さん。ウソが思い付かずに困っている。無戒がフォローのつもりで色々と質問し、内面を探り出そうとする。その内容があまりにもひどいので、ステージに上げられた女性は「えーっ、屈辱的……」と漏らすと、さすがの無戒さんも苦笑いで"しもた"な表情を浮かべる。
最後、一人の女性のお客さんが自ら名乗り出る。仕事中のエピソードを織り交ぜつつ、
「空港の荷物チェックで修学旅行生たちに"うっせぇバーカ!"という気持ちを隠している」
と暴露。これはウソだらきだ。自ら発表することに狂気が滲み出ていた。「ウソだーらーけー♪」はっきりとしたウソにご満悦の無戒であった。

『真っ黒けっけの海』を披露するが、なぜか途中まで。最後までやってくれ。その後、無戒がこのライブ自体の解説をなぜか突然語り始める。
「えーっ、ここいらで、これは一体なんなのかということを説明いたします。このライブは、ナンバーガールのツアーのときに各地方でお世話になった方々にお会いする意味合いもあり、企画したものであります。実はナンバーガールやっていた頃から、こうやって一人で飲みながらやりたいなぁとは思ってました」
なぜか質問コーナーへ突入する。ディナーショーである可能性をますます感じる。
「なんでも質問してかまいません」と無戒。挙手するお客さんがちらほら。学校の先生のように当て、お客さんが質問をする。

「僕は"ハラキリココロノツアー"が大好きだったんですけど、今後またブッチャーズとはやりたいですか?」という質問。
「もし、ここでわたくしが、"やりたくない"と言ったらどうなるのでしょうか?まあそりゃあわたくしはブラッドサースティ・ブッチャーズを敬愛していますからねえ。やりたいなぁと思ってますよ」
「今後バンドを組む予定はあるんですか?」の質問。
「ええ、あります。アヒト・イナザワと組む予定です」という答えに、「おおーーっ!」と歓声が上がる。「もうすぐ発売されるローリング・ストーンズのトリビュートにも、アピート・イナザワと参加しております」と付け加える。なんなんだ、「アピート・イナザワ」って。ピート・タウンゼントとかけてるんだろうか。
「バンドとソロ、どちらがメインになっていくんですか?」という質問。
「でも、ここでこう公に発表しても、これからやらんといけんので、まあ言うとすれば、"知らん!"と言いたいね」
「はやくバンドやってほしいー」という、質問ではなく意見。
「そりゃあわたくしも思っていますよ。せやけどなんでもやっていいかっていったら、全然やりたくないバンドとかやってしまったら、あかんやろがいな?」

「イースタン・ユースがカバーしていた曲ですが、吉野寿さんの話によると、イースタン・ユースはもうこの曲をやらないそうです。この曲の作者から色々指摘があったそうでですね……ですのでわたくしが代わりに歌います、『たとえば僕が死んだら』」
まさかの『たとえば僕が死んだら』。彼の歌声で聴くのはいつ以来になるのか。神戸チキンジョージの前で歌っていた頃を思い出す。というか、イースタン・ユースは森田童子から指摘があったのか。吉野寿が指摘を受けてる姿を想像してしまった。どんな状況なんだろう。

最後は、コンピレーションアルバム『Strange Circus』でのPANIC SMILEとの共作『猫町音頭』と、彼の作った様々な楽曲の歌詞がミックスされた楽曲を披露。ギターのリズムと無戒の軽妙なラップの組み合わせで、絶妙で微妙な駆け引き。これがすごくかっこよかった。
「日本刀握りしめた騒々者たちが街ん中を浮浪」「座敷に上がって飛んだり跳ねたりの30分間2万5千円の過ち」
無戒節の言葉の数々。痺れる。いいねぇ。最高に気持ちいい。途中、「京都在住のイルリメです」と紹介し、イルリメがステージに登場。これがまた無戒の人力パーカッションに乗せて、イルリメが独自の言葉を炸裂させる。すっげーかっこよかった。
「あいつ姿くらまし」と何度も連発する無戒。座ったラッパーと立ったラッパー。ボキャブラリーが豊富な2人と、ジャンジャンと鳴り続けるテレキャスター。斬新なデュオが異様なステージを繰り広げながら、今宵のイベントは終了。

なんというか、その名の通り戒めは無かった。無戒秀徳なのに、やっぱり向井秀徳のステージだった。
ナンバーガールではなくなっても、彼の独特な佇まいは変わらない。ほとんど笑わないことで緊張感を生み、シュールな光景を生む。ストイックな姿に惚れる。ナンバーガールで歌われてきた少女と都市、そして今後の展望を感じるよりディープな裏社会感溢れる歌詞。
ディナーショーなのに炸裂するものがあった。ゆったりと座りながら、彼の世界観を余すことなく堪能できました。

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