前回の流血ライブから1週間も経っていない。
の子さんの額がずっと気になっていた。セットリストよりも額が気になった。かさぶたとかどうなっているんだろうかと思っていた。だけど蓋を開けてみると、きれいな額だった。どういうことなのか。そしてこの日、セットリストも見事なものだった。
なぜか開場して間もない頃に着き、イベント出演バンドをほぼ網羅した。
住所不定無職というバンドは名前に似合わず、ガールズバンド。以前FMおだわらに出演したときにパーソナリティの成川くんがこのバンドのビートルズっぽい音源を流していて、ずっと気になっていた。終盤に演奏した『住所不定無職のテーマ』が切ないラブソング。住所が不定なのも無職なのも、勿体ないと思った。
話題のOKAMOTO'Sも観れた。
ベースの大きな眼鏡をかけた怪しい雰囲気の人、どうやら某有名タレントの息子さんのようで。それとは全く関係なく、妙なオーラがあった。素人の僕から見ても感嘆するほどのベース。8割方、彼に見とれっぱなしだった。
神聖かまってちゃんの出番はトリ前。
恐らく自分で持ってきたであろうビートルズのリマスター盤CDを流しながらセッティングするの子。『I Want to Hold Your Hand』をBGMに神聖かまってちゃんとは、これいかに。やがてセッティングが終わり、オアシスの『DON'T LOOK BACK IN ANGER』のイントロが流れてきたときに、の子がマイクで喋る。
「今日はまったりとして、いいですね。僕は今日まったりとライブをやるつもりです。はじめての人もいるかも知れませんが、それは知ったこっちゃありません。とりあえずライブを…(大音量で流れるオアシスの曲に)うるせえよ!!!」
大好きなオアシスにさえパンク精神を。(たぶん違う)
そしてまさかの「ぺんてるって曲からやりますー」という発言。
何かの配信で『ぺんてる』はもうライブで演奏しないと言っていた。ファンの間でもそれは知られていたので、常連のお客さんからどよめきが走る。の子の宅録音源のトラックが流れ、「まあまあまあ」と動揺する客席をなだめるの子。とにかく嬉しい。1曲目は『ぺんてる』。
monoがギターを弾いている。前回はの子の流血で完全にmonoのギター姿へ驚きが薄くなってしまったけど、キーボード2台に囲まれてギターを弾く姿はマルチプレイヤーの雰囲気を漂わせる。小室みたいなもんである。
イントロのギターのメロディが気持ちよく、「1つ、2つ、3つ」と歌詞に合わせて指を出すの子の姿が印象的。後半のキラキラとした幻想的なムードがたまらない。最後は「あの日のことを~」と繰り返し歌い、歌詞がライブならではにアレンジされていた。
の子「(『ぺんてる』を)ライブでやるのは2回目なんですけどね、まあ、良かったのか悪かったのかよく分からない反応だけど」
客「よかった!」
の子「…よかったってのが2人聞こえたから、残りの人はそうでもないんだ…見てろよ!!次の曲でお前らのアゴが外れる!」
まったりとさせるはずだったライブが突如、アゴを外すためのライブに。monoが自分が呼ばれたかのように一瞬機敏に反応した姿を見逃さなかった。
そしてアゴを外すために『23才の夏休み』へ。
「夏ですねー。サマーバケイションがやってきましたー」とフラフラした様子のの子が言い、みさこがドラムを鳴らしてスタート。いつも思うけど、の子の様子を伺ってドラムやシンバルを叩く機会を狙うみさこの笑顔がグッとくる。「いまだ!」という表情をたまにしている気がする。その通り、「そうさ今すぐにー」とはこのことを言う。最後は「そうさ今すぐにー」との子とちばぎんがコーラスの掛け合い。
の子がメンバー3人に「お前ら、3人でコントやって」と突然ムシャぶり。
「えーっと…えーっと…えーっと……」完全に困り果てている様子のちばぎん。の子に「あの、必死な俺の顔見て」と救いを求め、の子がマイクをスタンドから取り出し、お手本を見せる。
「イギーーポップだヨォオオオオオ!!!」と言いながら客席に突っ込んでいく。笑いが起きる。
「はい、これで苦笑い」との子。「でもね、ニューヨークでのイギー・ポップはこんな感じなの」と説明するの子に対し、monoが可愛げに「知らないよっ!そんなのっ」と返事したのが気になった。
「今日はあんまりやらない曲やります」との子が言い、『スピード』。この日のセットリストはかなりグッとくる。
『スピード』は8月のサマソニ後の渋谷LUSH以降、2回目。あのときよりもキレが鋭く、遥かにかっこよくなっていた。ブレイクするときのみさこのドッダンドッダンドッダンドダダダ!と叩くドラムがかっこいい。静と動のメリハリがある。それなのに、沈黙する部分での子が肝心の歌詞を間違える。
「誰にも見えないヒチメンマ~」
ちゃんと歌えず、メンバー3人が苦笑いしながら演奏。3人ともいい笑顔だった。
それにしても「ひとりぼっちが好きだったら 走れ走れスピードで」といった歌詞である。これはの子自身を歌っている曲だ。もはや神聖かまってちゃんは目に見えないほどの早さで、多くの人の心を掴んでいる。これからもそれが続くのだろう。
その後は珍しく間髪入れずに、すぐ『ロックンロールは鳴り止まないっ』の演奏へ。
演奏後にの子が「もっかいやらしてください!僕今ダメだったな…」と後悔。だけど、今まで一番だった気がする。ライブで演奏するごとにかっこよくなってきている。アウトロのmonoのキーボードの余韻がたまらないのだ。
『天使じゃ地上じゃちっそく死』も、まったりしたライブを宣言しただけあって、の子が丁寧にギターを弾いているといちいち感動してしまう。
そして「お前らのアゴを外してやる!」と宣言しただけあって、monoがギターからキーボードに切り替える瞬間にアゴが外れそうになる。PVで言うと、映像がバババッと素早く移り変わる瞬間。
前回のライブでは血まみれで赤く染まった顔で歌っていたけど、今回はつるっつるの白い顔で「死にたいー!」と何度も絶叫するの子。リズムを無視して「死にたい!死にたい!」と何度も叫ぶ姿は、初見の人にとっては新鮮すぎる光景だろう。
今回、みさこのドラムがやたらとかっこいい。どうしたの?というくらい、みさこのドラムが凛々しい。ハンサムだ。いつもと違う白熱の演奏にドキッとする。
それが最も表れていたのは、最後に演奏された『夕方のピアノ』。
「今日はこのくらいしかできませんが、わざわざ来てくださった5人のお客さま…」との子が言った後に始まる。中盤、monoのキーボードから音が出なくなる。monoが修復にしている間、『夕方のピアノ』なのにピアノがない状態でただの『夕方』になっていたが、みさこのドラムがなぜかここで大迫力に。夕方が一気に燃えた。赤く染まった。ある意味、の子がカミソリで額を切ったとき以上に赤い。精神的な夕暮れの赤が見えた気がした。
ズダダダダダ!!
低音で鳴り響くドラム。最後にの子が何度も「佐藤ーーー!!」と叫ぶところで、ドラムの重い音が耳に突き刺さる。身体で感じる。ちばぎんも激しくアクションし、気がつけばメガネを落下させるほどアグレッシブに。monoのキーボードが復旧した頃にはピアノがしっかりと鳴り、『夕方のピアノ』になった。
の子は鬼のような形相で、マイクスタンドを何度も床に叩き付ける。
まったりとはせずに、アゴが外れそうになったライブになった。
終演後は、薄暗くなったステージの上での子とmonoが「最後に笑点の物真似やれよ!」「できねえよ!」と仲良さそうにじゃれ合い、微笑ましい光景が。
大胆なアクションのあるライブもいいけど、演奏重視でまったりとした雰囲気のライブもいい。いや、みさこのドラムはまったりしていなかったな。あれは凄かった。神聖かまってちゃんの演奏で、初めて痺れたかも知れない。
この日はみさこさんの大学時代に一緒にバンドをやっていたという杉山さんが、初めて神聖かまってちゃんのライブを観に来ていた。なんとなくだが、みさこさんがこの日素晴らしいドラミングだったのは、杉山さんが観に来ていたからかも知れない。「私、こんなにドラム叩けるようになったよ!」という気合いが見えた。杉山さんとは、僕が以前勤めていた会社と繋がりがあったり、学生時代に僕のホームページを見ていたりなど、縁を感じた。
また、この日はDaredevilという渋谷の服屋のスタイリスト・スエタカヨーコがライブを観に来ていたようだ。ユーミンやベッキーなどの著名人のスタイリングを手がけている方だそうだ。ライブ後、『子供ノノ聖域』にはの子の日記でこのことについて書かれていた。
2009年9月27日 渋谷LUSH
〈セットリスト〉
1、ぺんてる
2、23才の夏休み
3、スピード
4、ロックンロールは鳴り止まないっ
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、夕方のピアノ
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