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2009年12月24日木曜日

神聖かまってちゃん@渋谷LUSH

昨日の吉祥寺MANDA-LA2での宣言通り、この日は史上初・ニコニコ生放送配信ライブ。

以前、の子さんに「映像を使ったライブをまたやってほしい」みたいなことを言うと、「スクリーンを使ってニコ生配信ライブやりたいんですよ」と構想を少し話してくれた。その念願が叶い、スクリーンにニコニコ生放送の画面が映し出され、リアルタイムでインターネット上のリスナーのコメントが右から左に流れていき、それにの子さんが反応していくというサイバーなライブになった。
初の試みということもあり、セッティングには長い時間がかかった。神聖かまってちゃんの前に出演していた撃鉄の筋肉質なライブとはうって変わり、いきなり室内チックな配信ライブに。

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ライブ前から配信は始まっていたようだ。
こう見るとメイドカフェに来た客と店員にしか見えないが、実はこの2人は病みあがりのちばぎんとなぜかメイド服を着たみさこである。ライブ前からいつも通り、リスナーと会話していた。
撃鉄のライブ後、の子がライブ直前にいつものようなテンションでリスナーに話しかける。するとそこに、ライブを終えた撃鉄のボーカル・天野ジョージが後ろのほうで好奇心満々な笑みで配信を眺めている姿が。画面に映りこんでおり、「後ろの白衣の人が好奇の目で見ている」とリスナーも反応。天野ジョージが「なんだこのやろー!」とリスナーに挑発的。ライブの格好が半裸状態だったので、ここでも半裸状態に。の子も負けん気が発揮され、半裸どころかなぜか全裸になる。
「なんだこのやろー!!」「そうだ、なんだこのやろー!!」
これがクリスマス・イブの風景とは思えない。冬場、とてつもなく涼しい格好の2人。やることなすこと、バンドマンなのか芸人なのか分からない。これは今に始まったことではない。

『夢のENDはいつも目覚まし!』が登場SEとして流れ、メンバーがステージに登場。
メイド姿のみさこはmonoに促され、ステージ前方でスカートを両手でヒラッとし、可愛らしくお辞儀。なんなんだこれは。ビデカカメラを回しているとカメラ小僧のようになってしまうメイド服。何してくれるんだ。いや、もうすでにカメラ小僧なのだろうが。
ちばぎんが配信中のノートパソコンを持ちながらステージに現れる。そしてスクリーンには、いつも家で見慣れているニコニコ生放送の画面が映り出す。
これは面白い。本当にニコニコ生放送と連動している。会場の様子がスクリーンに映し出され、家でライブを見ている人によるコメントが流れている。ちばぎんがイケメンとか言われている。これは面白い。

しばらくして、ようやくの子が登場。
「ポイフルどこやった?」とうろうろする。ポイフル?「朝、すべてのポイフル店を回って買ったポイフル」と呟き、手にぶらさげている袋には大量のポイフルが入っている。どういうことだ。これは今年5月に下北沢で女子大生に逃げられた通称・ポイフル配信のセルフオマージュなのだろうか。
「客席にカメラ向けようか」との子が客席にカメラを向ける。「映ったらマズイという人は顔隠してください。全国に配信されます!」とちばぎんが警告する。
ノートパソコンをmonoに手渡したの子は自由の身に。みさことちばぎんが演奏を始め、monoがノートパソコンでニコ生撮影。の子は「僕はここでお祓いをしなければならない!」と言い、ポイフルの粒を袋から客席に投げてくる。

「ポイッ、ポイッ、ポイッ、ポイッ、カップルポイッ!」
「この中でカップルっぽいやついるか?見つけろ、みんなで。お前らこんなクリスマスに来てるやつなんて、どうせひとりだろ?」

客席に投げ込んでくるのはポイフルの粒だけでなく、なぜかサクマドロップの缶まで。それは投げると痛いだろう。ポイフルがぶち当たり、「痛ーい」と訴えるお客さんも。
ライブなのですかこれは。なんなんですかこれは(『ちりとり』)。
「これが本当の厄払いじゃあああ!クリスマスの厄払いじゃあああ!」
の子、気合い十分。クリスマスとポイフルがあまりにも関係ない。それでも「カップル、ポイッ!」と豆のように投げ続ける。節分は2ヶ月先だ。の子の中ではカップルは鬼ってことなんだろう。
ついには客席を歩き始め、カップルを探し始める。
「どっかにカップルはいるかー? お前かー!?」とカップルらしき男女を見つけ、面と面向かって叫ぶ。「セックスか!?今宵はセックスか!?」と男性客の方の足下に顔を埋め、男性客がすっごい困ってる。「俺に言いたいことあるなら、吐き出してこい!!」というの子の振りに対し、男性客は「このあと仕事ーー!!」と切実な叫びが。「僕アルバイトーー!!」レベルの切なさが。の子、思わぬ返答と真実に、喧嘩を売る相手を間違えたような表情で焦る。「仕事、、?」と聞き返し、少し照れ笑いの笑顔を浮かべたままステージに戻り、会場には笑いが。

ちばぎんとみさこの演奏のスピードが早くなり、それに合わせて即興ラップを披露するの子。「セックスさせますセックスさせます。ライブはセックス。ライブというものはセックス。今日はお前らと心と心のセックス!」と叫び、またポイフルを投げつけながら、一旦演奏が止む。

「これがサブカルチャーー!!! 今がサブカルチャーー!!! 俺はサブカルチャーー!!! 渋谷でサブカルチャーー!!! 俺はサブカルチャーー!!!」

出ました。ポイフルといったらサブカルチャー。下北沢から渋谷へと移動したサブカルチャー。今年5月の下北沢の路上配信を見なければ、なんのことだか分からないことだらけ。
「おっさんかー!おばさんかー!貴様ら一体何才だぁああーー!??」
またまた出ました。ポイフルときて、サブカルチャーときたら、「何才だ?」。ちばぎんのベースとみさこのドラムがの子のラップ調の叫びに合わせ、セッションのような演奏を開始。これがかなりかっこいい。monoは終始ノートパソコンを手に持って撮影係に徹し、混沌としたステージとインターネットの世界を繋がせていた。

monoが「動画止まったよー」とニコ生の不調を知らせる。の子はmonoを見て、赤い帽子とキリッとした姿勢がそう見えたのか「どこのバートウォッチングの人かと思ったよ」と例える。monoが帽子を脱いだら、「あ、お前monoくんか!」と悪ふざけ。
の子がなぜか司会者のようにマイクフォローする。「クリスマスは独りなんだよ!」と怒り気味のmono。そのとき1人のお客さんが「うるせーアゴ!」と話しかけ、「はあ?なんだよチクショー!」とマジギレするmono。真に受けてしまう性格は相変わらず。「うっせーアゴって思いますわ~」との子がお客さんに同意。
配信が途絶えたステージは、いつも以上にグダグダ感が漂う。時間を持て余し、しまいにはちばぎんがなぜかドラムセットに座って叩いている。お客さんに「ラップをやれ!」と促されるmono。やらないmonoに対抗し、変なクルクル目のメガネをかけたみさこが「チェケェ!オンッオンッ!」とmonoの傍に立って煽る。ちばぎんがドラムでリズムを刻み、無言のプレッシャーを与える。ノートパソコンの前でニコ生の復旧に対し、夢中のの子。なんなんだ。なんの時間なんだこれは。

メイド服着ていることで、の子がみさこに「脱げよ」と命令する。「私脱ぐくらいなら、3人が脱げばいいじゃない!」と反論するみさこに対し、「は?逃げんな」と厳しく当たるの子。「うそっ。まさかのっ…」との子の反応にみさこがビックリする。の子がいきなり客席に向かって「みんな、友だちですか、ここにいる人は」とみさこを無視して全く関係ない話題を振ってくる。

の子が客席にいるお客さんに目をつける。「さっきからずっとフラフラフラフラしてよー!なんだ?ムーミンの"にょろにょろ"か?」とあだ名を与える。
ちばぎんが「あの…驚くべき事実があるんですけど、まだ僕らステージに上がってから1曲も曲やってない…」と。ほんとだ。もうすでに18分近く経過している。もはや黒子と化した劒マネージャーが配信の復旧に取りかかっている中、ようやくここで曲の演奏を。
「王道の曲くらいやろうや!」とmonoが提案する。「ピックある?」との子。まさか、ピックないままライブしに来たのか。もう、ほんとすごいです。
monoが「俺のクリスマス、これで終わりかよ。可愛い子がいるとかそうことないのか…」などとため息まじりに語り出すと、の子が「明らかにお前だけじゃねーだろーがよお!なんだよお前だけかわいそぶりやがって!」とブチギレ、クリスマスにふさわしくラブソング『ちりとり』が、一切ムード無しのままスタート。
ここにきて、ようやく"ライブ"と言えるものが始まった。ようやく。まさに歌詞の通り、なんなんですかこれはー。スクリーンにはいまだニコ生復旧できていないパソコンの画面が。演奏中、ちばぎんがスクリーンに隠れて一切見えない。足だけしか見えない。それにメイドがドラムを叩いている。この時点で何も知らずにライブハウスに入ってきた人には、一体これが何なのか全く分からない光景だろう。

演奏が終わるとニコ生が復旧する。メンバーもお客さんも歓声を上げる。
「さっきグダってから『ちりとり』やったんだー」と、リスナーにとっては空白となった時間について、配信画面に向かって説明するの子。大量のコメントがスクリーンに流れていく。「ハゲきた」「キチガイきた」というの子に対するコメントに、「ハゲでもねーしキチガイでもねーよ!!」との子が反論する。
そしてリスナーのリクエストについて次々と答えていくの子。

の子「計算ドリルを返してください?おお、君は予言者だね」
ちばぎん「じゃあそろそろネットの中の人たちにも曲を聴かせましょうよ」
の子「俺、パソコンダイブしたい!」
みさこ「したらいいじゃん」
mono「がんばってー!」
の子「お前らに励まされてどうすんだよ!」

メンバーの励ましもあり、『学校に行きたくない』へ。
「計算ドリルを返してください」と何度も叫ぶところで、スクリーンには大量の「計算ドリルを返してください」という弾幕が。インターネット上のリスナーが一斉に歌詞をコメントしている。みんなで作り上げた感があり、少しばかり感動的なシーンでもある。その書かれている歌詞とは裏腹だが。ライブでいう歓声が、ニコ生ではコメント。声以上に、文字の威力を感じてしまった。
曲の歌詞がこれほど流れるとかなりの演出にもなる。これはもっと極めると、いつか発明になるのかも知れない。小さなライブハウス、小さなスクリーンの今はまだ、完璧とは言えないが。
の子は宣言通り、パソコンを片手に持ったまま客席にダイブ。客に担がれ、床に倒れ込む。スクリーンに映るニコ生の映像はの子の動きに同期するかのように激しく乱れ、リスナーは「何が起きた?」と戸惑いのコメントを打つ。
曲が終わると、パソコンの画面がまたおかしくなった様子。
「おいにょろにょろ!さっきお前なんかポチッとボタン押しただろ!」と、先ほどいじったお客さんのせいにするの子。「僕とにょろにょろとな、そういった波長が合わなかった…」と続ける。

ちばぎん「どうしましたか?」
の子「さっきダイブしたら、にょろにょろに負けた!」
ちばぎん「負けた? 弱いですねー。」
みさこ「どんまーい。」

ちばぎんがニコ生の復旧にとりかかる。
の子、ちばぎんに何度も頭を下げて、復旧を頼んでいる。「ちばぎん大先生…毎日仏壇で拝んでます…」と言っているとニコ生が復旧。みさこが「今日さっきコメントでなぜか『ちばぎん、今日神になって』ってあったよ」と。ライブを進行させ、配信を復旧させた今や、ちばぎんはすでに神呼ばわり。の子が「ちばぎんは神ですよ…すごい奴なんだよ」と認める。「だってマサチューセッツ出身だからね!」と嘘を言う。
ここまでグダグダであるにも関わらず、の子が「これからも1年に1度くらいはやります」と今後のニコ生ライブ配信宣言。こういったチャレンジ精神は誰にも負けない。
の子が「にょろにょろこいつ恐い…回復系ポーション与えたら1発で消えるから」と通称・にょろにょろさんをFFの敵キャラに認定。「エリクサーだったら完全に消えるじゃねえか」とまったりとした会話になった自分に対し、「なんだよこれ、家配信じゃねえか!」とつっこみを入れるの子。

ニコ生が完全に復旧し、の子が「ちばぎん大先生、もう今日僕らは捌けるんで一人でやっちゃってください…」とものすごい低姿勢。スクリーンには「ちばぎん神やが」といったコメントが流れる。
ニコ生のアンケート機能を使い、リスナーに"にょろにょろが踊るか踊らないか?"をアンケート。どういう展開なんだ。MCでグダっている部分はちばぎんがベースをゆるりと鳴らし、たまにみさこがセッションっぽくドラムを叩き、の子とmonoがノートパソコンの前で会話。いやこれほんと、家配信のノリである。
そして、にょろにょろさんとmonoの対決が始まろうとする。
「こっちは2packからエミネムから伝授されたライムがこの(monoの頭を指差す)頭脳に入ってるから、ラップ対決してやれよ。にょろラップ。それ聞きたいな~クリスマスだしな~。にょろにょろしたいな~。にょろラップとアゴラップ。アゴという固いものがぶつかると、どういう化学変化が起きるかな~」
普通のお客さんであるにょろにょろさんを、の子が個人アジテーション。
アンケートでは「おk」のほうに票が集まり、晴れてにょろにょろさんがステージに。「よく来たな!」との子。演奏が止まったとき、この空気を見かねて「もう帰ろう」と言ったちばぎんに対し、の子は「死んだにょろにょろの魂はどこに行くんだよ!」とめちゃくちゃな返答。その隙ににょろにょろさんは「乙」と呟いてステージを去る。会場が爆笑の渦に。

ちばぎんが「先生、そろそろ時間が」との子を促し、最後の曲『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。
ところがニコ生がうまく動かないようで、歌い出さないの子。その間にメンバーがセッションのように『ロックンロールは鳴り止まないっ』を演奏。これがさりげなくかっこいい。monoの弾くキーボードのメロディが久石譲のようだ。リスペクトしているからそうなのか。そのまま『菊次郎の夏』のテーマを弾き始めるmono。「アゴ石譲~!」というお客さんの声が。

ちばぎんが再びパソコンの復旧にとりかかる。その間、の子が聴いたことのない曲を歌い出す。未発表曲なのかカバーなのか、単なる即興なのか。定かではない。切ないメロディの歌だった。「ん? つながった?」との子が気づき、ようやく演奏へ。と思いきや、の子が演奏を中断させる。時間がない。monoが「なんなんだお前ほんとによー!」と怒り気味になり、ちばぎんが「いいから早くやろうぜー!!」と焦る。
実はこれ、神聖かまってちゃんがトリではないのだ。この時点で50分近くライブをやっている。次に出るバンドは大丈夫なのだろうか。
更に、の子がニコ生を復旧しようとしたらなぜか画面に時計が出た。会場はまたもや爆笑の渦に。
「ちばぎん、時計が出てきた!」と助けを求める。呆れた様子のメンバーが演奏の開始を促し、ようやく最後の曲『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ入る。

スクリーンを見ると、歌詞に合わせて「do,da~」といった書き込みも。配信の映像はなぜか、先ほどのの子の動きを延々ループしており、まとも配信できていない様子。恐らく音だけがインターネット上に届いているのだろう。
最後の語りの部分での子はノートパソコンを手に持つ。
「僕はこのパソコンを壊したい」
次の瞬間、突然ノートパソコンを床に叩きつける。大破したパソコンはバウンドし、無残な形に。今まで長い間配信などで使っていたパソコンが、まさか。ギターの次はノートパソコンだった。の子の愛の形はなかなかいびつなものだ。

液晶の部分がめちゃくちゃになったパソコン。当然、画面は真っ黒になり、破片が少し散らばっている。
の子は「このパソコンは寿命ぎみで壊れてきたんで…」とパソコンについて解説。お客さんの一人がボソッと「寿命じゃねえ…」と呟く。「このステージで殺してあげなきゃなと思って今日ここで…」と語っていると、スクリーンにまだ映像が流れていることに気付く。「あれ?映像映ってる?」との子が反応。なんと、パソコンのモニタは完全に壊れたけどハードディスクは生きている状態だった。ウェブカメラがきちんと映像を撮っており、液晶画面の代わりに、スクリーンにはばっちり映像が映っていた。死んでるはずなのに、生きている。ゾンビのようで少し不気味だ。カマキリの頭をちぎっても、まだ足をバタつかせている。そんな気味の悪ささえ感じられる。
パソコン、最後の悪あがき。その生命力に、の子もスクリーンを見てビックリしていた。

「とりあえず!みなさん!ちょっと初めてのところもあってグダグダな部分もあってすみませんでした!このまま2010年も、生きていきましょう、死ぬ奴もいるかも知れませんけど、がんばっていきましょう!」
今年最後のライブにふさわしく、の子が礼儀正しく挨拶して終了。

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グダグダなところも多かったけど、1年の締めくくりにふさわしいライブだったかも知れない。配信とライブを遂に融合されたことが神聖かまってちゃんらしい。彼らにしかできないニコニコ生放送ライブ配信だった。
ポイフルやサブカルチャー、お客さんの凸的要素、グダグダな会話、曲のやり直し、ちばぎんのお父さんっぷり、そしての子さんの暴走。
考えてみれば、神聖かまってちゃんらしさが十分に盛り込まれていたように思う。

の子さんがネット上のリスナーとライブに来ているお客さんの両方に対応するのに必死で、しかも無線LANという環境で四苦八苦しているところもあった。だけど、彼のやりたいことが物凄く伝わるライブだったように思う。
の子さんにとってはお金を払って観に来ている人も、ネットで見ている人も変わらないのだろう。どちらも興味を持って自分らを見てくれていて、それに応えたいという気持ちがあるのかも知れない。だからこそ、毎度毎度しつこいくらいにリスナーには礼儀正しい姿勢だ。そこが彼がリスナーに愛されている理由のひとつに違いない。

"かまってちゃん"の定義は色々あるかも知れない。ほとんどの人にとって、"かまってちゃん"は迷惑な存在だろう。メールを返さなかったら「怒ってる?」「返してよ?」とわざわざ聞いてくるような。ブログやミクシィでシリアスな感情をぶちまけて、反応を伺うような。
だけど、"神聖"という言葉が付いているバンドはどうだろう。
たしかに"かまってちゃん"であることには変わりはない。でも、まったく迷惑ではない。メールを返す必要はない。嫌なら聴かなきゃ、見なきゃいい。こちらの自由が許されている。
そして、それが表現に落とし込まれている。そこには、の子さんがずっと「鳴り止まないっ」と言っている"ロック"と呼ばれるものがあるからだろう。

実際、大破したノートパソコンがこう言っている。

の子さんはたった1台のパソコンから、世界と繋がった。小さな世界から、広い世界へと突き進んでいくきっかけを作ったのは、間違いなく壊されたノートパソコンだ。パソコンはおそらく、の子さんのことを知っていたのだ。



"の子 ロックしています"

パソコンが瀕死の状態で呟いたかのように、偶然スクリーンに映し出されていた。それは単なるユーザー切り替えのログイン画面。
完全にオチがついた。
このような奇跡こそが、神聖かまってちゃんには似合っているのです。

2009年12月24日 渋谷LUSH
〈セットリスト〉
1、(カップルポイ/サブカルチャー)
2、ちりとり
3、学校に行きたくない
4、(にょろラップ)
5、ロックンロールは鳴り止まないっ

2009年12月23日水曜日

神聖かまってちゃん@吉祥寺MANDA-LA2


水中、それは苦しいのボーカル・ジョニー大蔵大臣さんのバースデイイベント。

ジョニー大蔵大臣さん、11月の渋谷0-nestでのライブではまるでファンのように喜んで観ていたし、本当に神聖かまってちゃんが大好きなんでしょう。この日は水中、それは苦しいがもちろんトリ。かまってちゃんはトリ前の出演。
会場に着くと、大人計画の女優・猫背椿さんの姿が。水中、それは苦しい目当てで来ていたようだけど、猫背椿さんに神聖かまってちゃんのライブはどう映ったのだろう。
ライブハウスは椅子が並べられ、着席して観るという雰囲気。座ってかまってちゃん。神聖座ってちゃん。しっとりと鑑賞するとは、これいかに。の子さんと関わりを持ち始めるDaredavilのスエタカさんとコマツさんと知り合う。どちらも異彩なオーラを放っていた。
僕の隣に座っていた女の子が着ている服がマスドレのバンドTシャツだった。もしやと思い、「こないだのリキッドルーム行ったんですか?」と尋ねる。正解だった。「あんなもの観たら、また観に行きたくなりますよ。マスドレ完全に食ってましたよ」と、マスドレファンが認めた!

そんな神聖かまってちゃんは、またもや『クレヨンしんちゃん』の二代目オープニング曲『夢のENDはいつも目覚まし!』をBGMに登場。このSEが当たり前になってきている。
オシャレな真っ赤な帽子を被っているの子。
前回のリキッドルームとは違い、今回は落ち着いた雰囲気だ。椅子があるから仕方がない。

の子「こんばんわ神聖かまってちゃんです!まあ、だいたい知らない奴がいっぱいいると思いますが、そんなことは知ったこっちゃないね!今日は、えー、"ジョニー、それは苦しい"の誕生日…」
ちばぎん「違う違う!」
の子「"水中、それはジョニー"の誕生日だということで」
ちばぎん「"苦しい"!」
の子「え?俺のMCが苦しいそうで。とりあえず誕生日ということでおめでとうございます。心の中ではまったく思ってません!」

1曲目から『ロックンロールは鳴り止まないっ』とは珍しい。
キリッとした表情で歌うの子。客席が座って観ているからか、ライブというより鑑賞会に近い印象を受ける。monoのスーパーマリオの顔がプリントされた服が映える。かわいらしい。劒マネージャーがステージ脇でメンバーを見守っているが、マスクをして目だけが見えて恐い。シンナーを吸ってそうな人にしか見えない。

「こうやって目の前で座られてるライブはたぶん初めてなんで、はい。前の奴とかは何を期待してんだか、処刑か?あるいは、どうすればいいんだ?とりあえず次は『芋虫さん』という曲をやります。カーッ。(痰を吐き出す)俺は新型インフルエンザの疑いがあるから…今日はお前らが生け贄だ」

の子、いきなりお客さんを脅迫。そこで割って入るようにmonoが話し始めると、の子が「お前、せっかく人がおもしろいことやろうとしているのにジャマすんな。そんなんでM-1出れっかよ」と叱る。そして『芋虫さん』へ。
ところが演奏が合っていないため、仕切り直し。「ほんと冷めるわ…俺も座りたいわ…」との子がため息まじりに呟いて、「死にたいな~ 生きたいな~」と歌い始める。monoが「はぁ~」と高い声でコーラス。失礼だが、ちょっと面白い。芋虫がうねうねしているPVを何度も観ていたぶん、ライブで演奏を観るのは新鮮。ライブではこうなるのかという発見。ボーカルエフェクトによって子どものような高い声のの子の「死ねないくせにと言われたら 僕なんか"はい、そうです。"と」とという歌詞にはキュンとさせられる。

次は『学校に行きたくない』
いつも客席にダイブする曲だけに、この着席の会場ではどうするのかとドキドキしていた。イスに目がけてダイブか?と思いきや、客席を歩いてお客さんの飲み物を飲んだり、客席中央の通路に座り込んでカメラマンに向かってキメ顔をしたり。「おかあさーーーん!!」と猫背椿さんの間近くで叫んでいた。
曲が終わると、monoがの子に「写真撮ってんじゃねーよ。戻ってこいよお前。何やってんだよ。あれだろお前、ほんとはダイブしたかったところを、みんな座ってるからダイブできませんでした的なことだろ?」と厳しい指摘を。ステージに戻ったの子は「気は遣ってない…」と小声で弁解する。

ちばぎんによると、決めてきたセットリストがすでにめちゃくちゃな状態らしい。
「明日はニコニコ生放送でライブをやります」との子。どうやら翌日のクリスマス・イブの渋谷LUSHでのライブは、ニコニコ生放送で中継しながらライブをやるようだ。スクリーンを用意し、そこにニコ生の映像を投影するらしい。「明日はセッティングに時間がかかるから、明日来る人は2曲くらいは聴ける」と、あまり行きたくならないようなことを言い始める。
「さっきはポップな曲をやったので、次は『23才の夏休み』をやります」と言い、『学校に行きたくない』をポップ呼ばわり。「全然ポップじゃねーけどなぁ…」とmonoがボソッと呟く。

『23才の夏休み』に入る直前、の子が「お前、カップルか?」と最前列にいる男性客と女性客を睨みつけて尋ねる。みさこのドラムから演奏がスタートするが、「待てよ!!」といきなり中断させるの子。monoが「なんだよ!」と叫び、ちばぎんが「何か?」と不思議がる。すると、「お前、カップルか?」との子がまたお客さんに尋ねる。まさか、これをするために中断したというのか。
monoが「お前、そこ触れるとこじゃねーだろ!」とつっこみ、改めて『23才の夏休み』へ。の子のボーカルのメロディをmonoがキーボードで弾く。以前よりもキラキラ感が増して、"君が僕にくれたキラカード"がますますレア感満載に。
次は『夜空の虫とどこまでも』
の子がキーボード前に来たことで、ほとんどのお客さんの視界からみさこが消えた。この曲は歌っているの子の表情がなぜか笑顔に見える。気持ち良さそうに演奏しているのだ。
「今日はこれから鬼のようなバンドが次々と出てくるから!」
この後は水中、それは苦しいしか出ない。次が最後の曲だというのにボーカルの返しをPAさんに求め、笑いが起きる。
そして『ぺんてる』へ。
終盤、「ぺんてるに!」と何度も叫ぶ部分では僕が撮影しているビデオカメラを凝視し、完全にカメラ目線でぺんてるぺんてる叫んでいた。思えば最初で最後のカメラ目線での歌唱ではないだろうか。

「さすがに、もうギターは壊せないぜ!」
の子が神聖かまってちゃんの最新の話題をネタにし、ライブが終了するかと思いきや、イベント企画者でありこの日が誕生日のジョニー大蔵大臣さんが「『夕方のピアノ』やって!」とまさかのリクエスト。ギター壊すフラグを立たせるつもりなのか。

の子「だからまたいらんちゃちゃを入れるな!…いやいや、誕生日おめでとうございます、ジョニーさん。何才かわかんないんですけど、何才になるんですか?」
ジョニー「37才!」
の子「73才?若く見えるなー。あーわかったわかった。とりあえずもう73才なんだから、そんな生きてロックンロールなんてあれだから…死ねばいいんじゃない?」

とにかくひどい言い様で、monoが弾いているピアノからそのまま『夕方のピアノ』の演奏へ。今回はジョニー大蔵大臣さんの誕生日仕様ということで、歌詞を替えて歌っていた。
「死ねよジョニー 何が誕生日だ 死ねよジョニー 僕のために お前がお前でなくなるために お前が生まれないために 死ねーー!!!」
逆バースデイソング。「生まれてきてくれて、ありがとう」の正反対。全然おめでたくないリクエストは、さすがはジョニー大蔵大臣さんといったところ。
ジョニーさん、きっと優しく微笑んでライブを観ているんだろうなー、と、カメラでジョニーさんの顔を映すと、意外に結構真顔でドキッとした。それでもの子は歌い続ける。
「僕のことをいじめるジョニー はやくお前を殺したい 死ねーーーーーー!!!!」
終盤、更にちばぎんもコーラスで「死ねーよジョニー! 死ねーよジョニー!!」と叫んでいた。そして更にみさこまでもがマイクを使って「死ねーよジョニー!!」と。
全員グルだ。monoだけがマイクがないためか、淡々とピアノを弾き続けている。誕生日に死ね死ね死ねの連続攻撃。ある意味、忘れられない誕生日になるのだろう。"誕生日に「死ね」と言われた回数"でギネスに挑戦できるかも知れない。
「精神病院に隔離されろジョニー」
の子、最後にキメセリフ。もうほんと、あまりにもひどいバースデイソングです。

終演後のステージで、翌日のニコニコ生放送でのライブについて告知するの子。
「ニコ生なんて知ってるやつなんていないだろ」と言うの子。そしてなぜか、ここでアンケート。「知ってる奴、いるか、否か!!」と突然大声を上げる。「アンケート取ろう。1は『いる』、2は『いない』、3は『あんたらなんてもう見ないです』。はい、いっせーのーせーでっ!!」
お客さんは無反応。まず、どうすればいいのか分からない。いっせいのーせって。
反応がなく、怒ってマイクを床に投げつけるの子。
そのマイクが最前列にいたニット帽を被った女性客の足元に当たってしまったそうで、の子は反省するように「…痛かった?」と尋ね、その後、「すみませんでしたー!」と土下座。女性客に「"お前らなんかもう見ねえぞ"って言ってください!」と頼むの子。すると本当に「お前らなんかもう見ねえぞ!!」という返答が。ドスのきいた声で言う女性だが、の子の反応は「足がつった…」と、なぜか完全に無視。

そんなこんなでライブが終了。
水中、それは苦しいのセッティング中も、の子が容赦なくCDの宣伝をステージ上で開始。monoと一緒に。後で水中、それは苦しいのMCでジョニーさんに「時間の有効活用」と評価されていた。

イベント終了後、友人と談笑しているとみさこさんが駆け寄ってきて、ちばぎんと一緒に僕の乳と尻を揉んできた。集団レイプだ。monoくんに「早く帰ってください!」と言われるし、ライブを観に来ていた相対性理論のベース・真部脩一さんとの子さんがいて、話しかけるとの子さんに「早く帰ってください!」と言われる。ひどい扱いだけど、翌日のクリスマス・イブも神聖かまってちゃんに時間を捧げたい。捧げる人がいないので。

2009年12月23日 吉祥寺MANDA-LA2
〈セットリスト〉
1、ロックンロールは鳴り止まないっ
2、芋虫さん
3、学校に行きたくない
4、23才の夏休み
5、ぺんてる
6、夕方のピアノ

2009年12月11日金曜日

神聖かまってちゃん@恵比寿LIQUID ROOM

神聖かまってちゃん、初リキッドルーム。遂にやってきました、大舞台が。

何百人も余裕で入るデカい会場がスカスカにならないかどうか少し心配した。杞憂だった。後で聞くと、400人以上のお客さんが入っていたらしい。
客席とステージの間へ。さすがにステージが高い。ドラムが遠い。表情を捉えるにはカメラが少しブレてしまう距離だけど、有名になるにつれてこういうことになっていくのだろうと納得。なんなら、もっともっと映りにくいほどの大きい会場でやってほしい。武道館とか。
ステージ後方にはVJによるかっこいい映像が流れている。この日は、今をときめくMASS OF THE FERMENTING DREGS(通称・マスドレ)がトリを務める"public-image.org"というイベント。客席にはマスドレのTシャツを着た人ばかり。アウェイだ。でも、こういう状態のほうがの子さんが躍起になり、上へ登ろうとする気持ちが高まる気がする。11月の"クソガキチェルシー"と"トリケラトプス"を思い出す。
神聖かまってちゃんはオープニングアクト。セッティングはすでに開場前に出来ている。

前回に引き続き、登場SEは『クレヨンしんちゃん』の二代目オープニング曲『夢のENDはいつも目覚まし!』だ。メンバーがぞろぞろと登場する。
一番最後に現れたの子はアルコールを片手にしている。その腕は血まみれ。無数の数から出血していた。アルコールとアームカットという、浮かれてるのか沈んでるのかよく分からないビジュアル。今年9月の流血ライブを思い出す血だ。

「オープニングを務める千葉県からやってきました神聖かまってちゃんです!えーと、マスドレだかドラクエだか何だか知らないけど、僕らはもういわばスライムです、4人とも。けど、レベルが違うんです。もっと経験値を積んできたスライムなのです僕らは。メタルスライムくらいの経験値はあると思うので、メタルスライムくらいの経験値をみなさんが得たら、僕はいいと思ってます。貴様らの脳天にな!貴様らの脳天にな!別に観に来た奴なんてそんないねーだろ。さっき1人いたけど」

マスドレをドラクエ呼ばわり。さっそく臨戦状態だ。一人のお客さんが「の子ー!」と叫ぶ。すると「うっせえ!もっと、呼べっ!」「の子ーー!」「よしっ!もっと、呼べっ!」「の子ーーー!!」「そして、もっと、呼べっ!!」「の子ーーーーー!!!」というやり取りが。次第に大きくなっていく歓声。そこに「みさこー」「ちばぎんー」という声も。monoは?
「誕生日おめでとうー」という声援も。この日はちばぎんの24才の誕生日。両手を上げて「ありがとうー!」と返事する。
誕生日にふさわしい、記念すべきライブになったのは言うまでもない。後に語り継がれる、伝説のライブになった。

と言いつつも1曲目の『ぺんてる』から、いつもの神聖かまってちゃんの光景が。イントロが始まったにも関わらず、の子のピックが無い様子。monoにピックを借り、そして更にmonoはちばぎんにピックを借りる。そして無事にジャカジャーン!と音が鳴らされて、ライブがスタートする。このギリギリのスリル。いつも通りの彼らの姿だった。
だけど、この日は何かがいつもと違っていた。
会場の大きさがそうさせているのか、派手なライティングが関係しているのかも知らないけど、何かが起こる予感はあった。大きい会場が似合うバンドなのだろう。そして考えてみれば、の子が普通にライブを終わらせて帰るはずがないのだ。
「僕は大人になりました」のくだり、照明がステージを橙色に染め、の子がシルエットになる。感動的な光景だった。下北沢屋根裏でこつこつとノルマを払いながらライブをやっていた頃、こんな姿は想像できただろうか。
同じ神聖かまってちゃんを撮るにしても、ビデオカメラも彼らの状況の変化に驚いているはずだ。の子からパンする。monoがなぜか首にタオルを巻いている。パンする。ちばぎんが「ぺんてるに!」とコーラスする。パンする。みさこ、残念ながらシンバルで顔が隠れている。そしてまたパンする。の子が叫んでいる。
このバンド、かっこいいな。純粋にそう思えるステージだ。

「次はmonoくんというこの変な顔した奴がラップを始めるのでー」
ムチャ振りをするの子。終始ビールを飲んでて大物感が抜群だ。「俺が売れたら勝手に1人でやるから!」とmonoが場を逃れる。「俺が売れたら」ってどういうことなのか。
「ちょっと話してて。ラップしてて」との子がメンバーに指示。みさこがドラムを叩き、ちばぎんがベースを弾き始め、セッションへ。の子がリズムに乗っかって歌いだす。
「お前は転職何もできないアゴ頭!アゴだけで売ってる人間!何もできない、いざというときにいざというときに!いざというときにいざというときに、何もできない! アゴ、、イヤッハーーイ!!」
いきなりひどい。6月の渋谷屋根裏でのラップバトルを彷彿とさせる。

その後はの子が「ちょっと待って」と言い、ゲップを1発してから、monoの弾く美しいメロディが鳴る。『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。
の子の表情が勢いでみなぎっており、400人どころか何千人を相手にしているような歌い方。その目線は完全にお客さんと向き合っている。「鳴り止まないっ」と言った後、の子がステージにふにゃふにゃと倒れ込む。そしてステージ最前に歩み寄り、客席の目の前でギターを弾く。真っ直ぐと何かを見つめ、微動だにしないお客さんとの子の構図が印象的だ。
「あの帰り道に聴いた、ロックンロールの僕の記憶の中までに蘇ってくるMDを聴いたあの瞬間が蘇る、このステージに、僕はそれをここに、ロックというものを、叩きつけるだけです」
の子の呟きがキマリ、今までに聴いた『ロックンロールは鳴り止まないっ』で一番の演奏になった。

の子「今日は客が多くて、まあ僕らの客じゃないですけどね、全員敵なんですけどね」
mono「お前いっつも悲観的だな。あれだよ、俺らオープニングアクトっだけでこんなだけいるってことは、俺らを観に来てくれている可能性も」
みさこ「無きにしもあらず」
の子「そんなのドラクエ観に来てるに決まってるじゃねえか!」
ちばぎん「なんだよドラクエって…」

次は『学校に行きたくない』
「学校に行きたくないって想いをただ単にぶつけた、そんだけ」との子が曲紹介し、ドラムが激しく打ち鳴らされて演奏がスタート。「学校に行きたくない」「計算ドリルを返してください」の二言を延々と叫ぶ。なぜかmonoがキーボードを放棄し、タンバリンを叩きながらステージをふらふらと歩いている。もっと前に来ればいいのに、恥ずかしいのかいい具合にちょっと中途半端な位置に。だが、そこがいい。それでこそmonoなのだ。
ステージ後方にはVJの映像がチカチカと光を瞬かせ、ライブを演出していた。映像と組み合わされた神聖かまってちゃんは新鮮。息をつぐ間もないサブリミナルな映像は、誰かの危険な精神状態を表しているかのようで切迫感がある。
中盤、ちばぎんのベースがデーーン、デーンデンデンデーーーンと鳴り始めたら、の子暴走の合図。少し助走をつけながら客席にダイブ。その後は客席で飛び跳ねながら歌い、お客さんが笑顔での子を取り囲む。「おかーーーさーーーん!!」と客席の中で何度も絶叫。ステージに戻る途中で「うぁあああーーー!!えええええぇ!!」とステージと客席の間で絶叫。かなりカオスなムードを客席に届け、ステージに戻ってくる。
演奏が終わると、すぐさまMCへ。

「俺の親父が来ているらしい。初めて。だから、俺を憎むなら、親父を殺せ!」

ダイブしたことへの反省であるだろうけど、なぜかお父さんが犠牲に。笑いが起きる。

「次は静かな曲、アンビエントミュージックを」との子が言い、『夜空の虫とどこまでも』
「もっとお前らアピールをしたら」とメンバーに促し、の子はステージ最前でビールを持って体育座り。ちばぎんがベースを弾き始め、の子が「曲紹介、曲紹介、よう、へいよう、アイム悪ガキヒップホッパー、東京生まれ、悪いやつは友だち」とラップのように呟き、みさこが笑い、演奏へ。
キーボードを弾くの子。その手元をカメラでズームアップするたびに、大量の腕の切り傷が目につく。かなりグロテスクだが、その傷からなぜかの子のこの日の気合いが伺える。溜め込んだものを解放しようとする気持ち。なぜか、そんなものを感じた。
「らーらーらーらー」とボーカルエフェクトかかりまくりの高い声で歌うの子。キーボードにしがみつくように弾き、その横でmonoが緩やかにキーボードを弾き続け、ちばぎんとみさこが正確なビートを刻んでいる。本当に夜空の虫がどこまでも飛んでいきそうなステージで、独特な浮遊感を覚えた。

ちばぎん「いやー、今日はほんとお客さんいっぱいですね」
mono「夢いっぱいだね。学校ではほんと、こういうことなかったからね」
みさこ「学校ではひとりぼっち」
mono「うるせーバカ!」
女性客「かわいいー」
の子「かわいいー」
みさこ「monoくん"かわいい"って言われてるよ」
ちばぎん「"かわいい"ってー!」
mono「えっ、俺…?」
の子「こんなもんどこがかわいいんだよ。眼科行けよマジで。頭おかしいんじゃねえの?」
mono「いや、俺も一度くらい"かわいい"って言われたいよ」
ちばぎん「気持ちわり」
の子「こいつ、生まれたときですら"かわいい"って言われたことないからね」

安定のmonoいじり。3方向からいじられるmonoは学校でもいじられていたのだろう。

「みなさん、今日は夜が長い。えーとまず、神聖かまってちゃんが出て、それから、神聖かまってちゃんが出て、そして神聖かまってちゃんを観て、みなさんは家帰ってみなさんは神聖かまってちゃんが気になるから、インターネットで検索する。その流れ。で、今日は終わり」

の子がこの日のお客さんの予定を告げつつ、monoの曲紹介で『天使じゃ地上じゃちっそく死』へ。
流れているVJ映像が、ズームアップとアウトを繰り返す猫の顔。なぜか曲にマッチしており、まるでの子の世界観に沿うような映像だった。激しく点滅する画面とリズムの息が合っていた。VJだからか。
終盤、の子は倒れ込んでギターを弾く。ゆっくり起き上がり、「天使が落ちる!天使が落ちる!」と繰り返し叫ぶ。

の子「いよいよ、次が最後っちゅー話。まだ俺は3分くらいにしか感じていないんだけど」
ちばぎん「それ長いの?短いの?」
お客さん「短い!!もっとやれ!!」
の子「ん?短いよね?もっとやれ?圧力をかけろ!」
お客さん「もっとやれー!」「もっとやってー!!」
の子「そう、圧力をかけて、俺は、スライムから進化するからな。スライムからスライムベスへ…」

またもやドラクエやらスライムに例えるの子。とにかくRPG、冒険、レベルアップという意識なのかも知れない。最終的にはバラモスを倒すために。『怒鳴るゆめ』だってまるで冒険モノの少年漫画を想像させる。の子は外見も少年のようで、説得力がある。
そして極めつけのMCを。

「えーと今日は、マスドレか。マスドレファンのみなさま、これからの熱いフィーバーした夜を楽しんでください。その、なんか火付け役 ダイナマイトの火付け役になれたら良かったと思います。うん、マスドレなんか爆発しちまえ」

マスドレファンばかりの会場であるにも関わらず、この発言。笑いと緊張感に包まれながら、『夕方のピアノ』のイントロが始まる。
真っ赤な夕焼けのような照明を浴び、monoのキーボードのメロディが映える。いつかの下校時、夕暮れ時間に音楽室からピアノが聞こえていたような記憶が蘇る。そのとき、何を思った。どういうことを考えていたか。「死ねよ佐藤」との子は思っていたのだろうか。腕の血、照明、夕暮れ。すべてが赤に照らされ、その中に埋もれながらの子が「死ねーーー!!」と何度も叫ぶ。
そしての子がギターを抱えたまま、勢いよく客席にダイブ。
の子は痛そうに頭を押さえながら柵にひょっこり顔を出す。どこかに激突してしまったようだ。かなり苦痛をしており、言うなればダイブ失敗。ステージに戻るも、ギターの音が出ない。ギターを降ろし、スタッフが急いで対応し、演奏は続く。ギターを再び持ったの子は「お願いだから僕のためにさぁああ!!」と絶叫。バシバシと激しく叩かれるドラム。鈍い音を轟かせるベース。一定の感情をそのまま続けるように淡々と切ないメロディを鳴らすキーボード。そして感情のままに掻き鳴らされるギター。
そのギターが次の瞬間、床に叩きつけられる。
ガッシャーーーーーン!!!!
アンプからは弦の音なのか破壊音なのか分からない音が鳴り、ギターが粉々に砕け散る。ピンク色の破片を客席にぶん投げる。ボディの部分が完全に大破したギターを、更に床に叩きつけるの子。
「の子!!」「の子ーー!!」
客席からは何度も歓声が上がる。ずっと使い続けていたギターが突然破壊されて驚く。だけど、確実に痛快だ。大舞台だからこそ、死に場所にふさわしいのだろうか。見事に粉々になったギターの破片は、誰がなんといおうと"ロック"な壊れ方だった。何かを打ち破るようなパフォーマンスだった。
最後は壊れたギターを槍のようにかまえ、みさこのドラムセットに走って突っ込んでいく。ガシャーーーンと漫画のような音が響き、神聖かまってちゃんのライブが終わる。

こんなライブ、いまだかつて観たことがあるだろうか。神聖かまってちゃんはこの日、その存在を多くの人の目に叩きつけた。ギターを床に叩きつけるように。
歓声は鳴り止まない。
メンバーがステージから去る。monoが粉々の破片を客席に渡すように投げる。の子がお客さん、スタッフにお辞儀をしながら、再びマイクスタンドの前へ。

「まだまだロックは終わらないのです」

キマった。
なにこれすごくかっこいい。
痺れた。ここまで気合いの入ったライブは観たことがない。神聖かまってちゃんを知らない人にはどう映ったのだろう。多くのマスドレファンを魅了したのではないだろうか。その証拠に、マスドレのボーカル・宮本菜津子もブログでこの日のかまってちゃんのライブを絶賛。ダイナマイトの火付け役は、今後もあらゆる方向に飛び火してしくに違いない。
間違いなく、今までに観た神聖かまってちゃんのライブでベスト。セットリストも演奏も、MCもパフォーマンスも、どれもが胸を張って「これが神聖かまってちゃんだ!」と言えるものだった。

終演後はロビーでメンバーや知り合いと談笑。誰もが唖然としながらライブの余韻に浸っていた。こんな感覚、いつぶりだろうか。
物販では神聖かまってちゃん特製バッジが売られていた。monoくんの顔が写った缶バッジ。付けろ、というのだろうか。CDはライブ後に物凄い勢いで売れていたらしい。ファンにサインを求められるメンバー。どんどん遠い存在になっていく。それはいいことなのだろう。
この日、ギターの破片が足元に落ちていたので記念品として頂いてしまった。の子さんのサイン列にさりげなく並び、自分の番になると「うわっああっ」とリアクションされる。身体のテンションが収まりきらないのか、の子さんの手はずっと震えていた。左利きの手でマジックを握り、「なんだよ、またサインかよ…俺はキムタクかよ」となぜか照れながらサインを書いてくれた。
他のファンの方が"ギターが壊れてロックが生まれる"という、思いつきとは思えないキメセリフを書いてもらっていたので、ワクワクしていた。だが、書いてもらったサインはこれだ。
"ギターが壊れてロックンクンクン"
なんだこれは。意味が分からない。
それでも、相当疲れた様子で応じてくれたの子さん。女の子のイラストも描いてくれて、ステージでもそれ以外でもサービス精神旺盛だった。

雨の恵比寿。帰り道、乗る電車の方向を間違えるほど、まだ興奮が収まり切っていなかった。
血と破壊のライブ。
"衝撃的"と形容するのは簡単だ。それだけで済ましたくはない。というのも、かっこいいライブといっても実はmonoが酔っ払い、の子がスライムだのドラクエだの言いまくっていたライブなんだもの。一概に"かっこよかった!"とはいえない、どこかマヌケで人間くさく、隙のあるステージだからこそ神聖かまってちゃんは面白い。
だけど、の子という人生そのものが表現である人の生き様を垣間見れた気がする、そんな凄まじいライブであることは間違いない。
ライブ映像をさっそくアップすると、かつてないほどのリアクションがあった。劒マネージャーも職場でみんなで一緒に観たらしい。それほど、誰もが心を奪われるライブだったのだろう。
ちばぎんにとって素晴らしい誕生日となりました。

2009年12月11日 恵比寿LIQUID ROOM
〈セットリスト〉
1、ぺんてる
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、学校に行きたくない
4、夜空の虫とどこまでも
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、夕方のピアノ