観るのは3度目になる神聖かまってちゃんのライブ。
下北沢屋根裏とはようやく違う場所で観ることになるけど、渋谷屋根裏は同じ系列。今回もライブハウスのブッキングライブ。だけど今回、初めてのトリを務めることになった。
の子宅録音源を公式サイト・子供ノノ聖域からmp3で拾い、それを自分の好き勝手なセンスで曲順を決めてCD-Rに焼き、色んな人に配った。勝手な布教活動がありがたい事に、この日友人が10人くらい観に来てくれることになった。それだけ神聖かまってちゃんの音楽は受け入れやすく、人を虜にさせる力があるのだろう。
最近Perfect Musicという音楽レーベルに所属した劒さんが観に来ることになった。地下なので電波が届かないのにも関わらず、対バンのライブを観ている間、ものすごい着信の量があった。
FASHIONという名のソロの人が気になった。一人でエレキギターを奏で、そのテンションはCLASHばり。孤独感が伝わり、逆に突き抜けたかっこよさがあった。それを間近で観ている女の子がいた。みさこさんだ。
みさこさんがニコニコして近づいてきた。会うのはFMおだわらの番組収録以来。今日、友人をたくさん連れてきたことを伝えると、思わぬ返答が。
「そうなんですか!竹内さんのお友だちってみんな病んでるんですね!竹内さんも病んでるんですね!」
屈託のない笑顔だったので、反論することもできず。確かにそういう部分があるからこそ、神聖かまってちゃんが好きなのかも知れない。だけど、だけど。肯定も否定もできず、泣き寝入りした。
トリの前のバンドが終わり、遂に神聖かまってちゃんの出番。
この日のライブは持ち時間が30分間なのに、まさかの55分間ライブ。なのに演奏したのはたった4曲という。曲自体は4分とかそのくらいなのに、なぜ?と誰もが首を傾げるそのライブの真相をお伝えします。
冒頭から飛ばしっ気味のの子。テンションが異常だ。酒で酔っ払っているのか、はたまた。ピンク色のワンピースを着ていた。
「なんだ? 宇宙人を見るかのような、そういう感覚か!?」
反応がなく、キョトンとしているお客さんに対して問う。
「どうせなら今日みんな民族音楽みたいに踊ればいいんじゃない?ワッピャピャッピャーピャピャピャッピャー」
この日のライブは終始、このような言動が続く。
前回同様、個人的に撮影してアップロードしたいがために後方からビデオカメラで撮影。お客さんの数もまばらなので、後ろからでも楽器を扱う手元がしっかり映るので助かる。
ライブハウスのスタッフに『アラレちゃん音頭』を流してもらって踊り始めるの子。そのリズムに合わせて静かにドラムを叩くみさこ。
「ペンギン村にいられないっ♪ いつまでもニートだっからぁ~♪ ああぁ~ 犯罪おかすさ犯罪おかすさ~」
「1曲目は『ゆーれい未満』です」
暴走気味のの子を制止するかのように、ちばぎんがライブを進行させようとする。
1曲目は『ゆーれい未満』。だけど、の子は歌う気がない。演奏が中断される。
「とりあえずー!僕らがトリをつとめているわけですがインターネットから来た方もいるかも知れない誰、だか、わか、らな、い!まあそのへんは、アイコンタクトでやっていただければいいんじゃないかと!まあトリでこんなに客が集まったことは今までにナッシング!ナッシング!…霧が見えてる…人生の霧が見えてる…」
monoが「いい加減止めなきゃ!」といった焦り様でみさこに指示を出し、ドラムが叩かれて「うーっゆれいっ!」というちばぎんのコーラスが入る。無事、演奏がスタート。
「日に照らされたとき、そこには椅子だけじゃなんとなく寂しいけど、仕方ないですよね、ですよね」の後の盛り上がりには鳥肌が立つ。初めてライブで聴いた。ちばぎんの「そんざーい」という高音コーラス、monoのキーボードのメロディ、見かけによらず図太いドラムを叩くみさこ。
の子は「僕はいつまでもゆーれい未満僕はいつまでもゆーれい未満僕はいつまでもゆーれい未満僕はいつまでもゆーれい未満!!」と延々と叫び続け、転がるようにステージを歩き回りながらマイクで自分の頭を殴る。
monoが「こんばんわー、神聖かまってちゃんというバンドでーす」と言うとお客さんからぽつぽつと拍手が。
「なんだ? レスポンスがあるのか?」
お客さんの存在に反応したの子がボーカルエフェクターで高い声に。神の声のような、神聖な声になる。「しんせーかまってちゃ~ん」とコールすることでレスポンスを促すが、お客さんは戸惑い気味で、無反応。更にの子は「きんせいかまってちゃん」と言い間違えていた。
なぜかそのままステージから落下して、「ああぅ!」という悲鳴を上げるの子。その声も神の声みたいになっていた。「助けてアゴ…」も神の声。の子のマイクを借りたmonoの「早く曲やるよ」という声も神の声に。
「ロックンロール(は鳴り止まないっ)をやろう。じゃあ、学校に行きたくないをやろう」とメンバーに言うの子に「どっちやるんだよ…」とため息まじりのmono。
「どっちやるかって…ドッヂ弾平だろおお!!」
会話になっていない。
の子のギターのストラップが外れているのでちばぎんが直してあげると、その親切心になぜか「なんだよ!!」とエフェクトがかかった声で刃向かうの子。
「いまだ!」とみさこがmonoに促し、『ロックンロールは鳴り止まないっ』のイントロが始まる。
「ロックンロールは!…鳴り止まないっ」と叫んだ後、の子が何かしら訴えかけることを言うが、瞳孔がカッパァと開いていた。その目からはなぜか逃れられない強烈なものを感じ、まるでその迫力と態度は何千人、何万人もの聴衆を目の前にしているかのようなものだ。そして突然ステージを転げ、ワンピースの下には何も履いていないことが明らかとなった。丸出しだった。
この人、かっこいいのかかっこ悪いのか、どっちなんだ。
の子がチューニングをしている間を埋めようと、ちばぎんが「最近どうすか?」とmonoに問う。「最近どうって、彼女募集中だよ!」と返し、の子の提案によって「monoと付き合うことが可能である人、挙手」というお客さんへの質問コーナーが。
一人も手が上がらず、「これさ…オチ無くね?」と落ち込むmono。
「じゃあ笑えるラップをやったらいいんじゃないの?」との子が強引に促し、ここから無理矢理フリースタイルラップバトルが始まる。みさことちばぎんが奏でるビートに乗っかり、アドリブ感満載のラップがスタートする。
mono「神聖かまってちゃんのmomoだよフランスパンマンじゃないよー!」
の子「ああーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
の子の突然の絶叫によりmonoラップが強制終了。
そしてmonoに対するラップをの子が披露。バトル開始だ。「フランスパンマンみたいな顔」「お前いらない」「お前と仕事してると鬱になるんだよ」と、とにかく酷いdisが続く。その間、みさこが笑顔でノリノリ。の子がmonoのアゴに手を置いて挑発すると、monoがラップが再スタート。
「やんのかよ!」「お前やんのかよ!」
ラップ対決というか、ほぼ口ケンカ。これが23才のリアルファイトというやつか。
そしての子がマイクを奪って反論する。
「やんのかよ? お前は結局何をやる? 23年間生きてきて、結局お前に何ができる? 人生が中途半端! 人生が中途半端!」
これまた酷い言い様で、monoが立ち尽くして何も返答できない様子で自然に終了。
の子、お客さんに弁解するような発言をする。
「まあ、今のがジャズだ!!」
客席は爆笑の渦に。
「ジャジャッジャジャッ!…まあ、ジャズだ!!」
先ほどまでの空気では一切頭に浮かばなかった言葉に、戸惑いまじりの笑いが。
「やってない曲って何だっけ? ロックンロールは?」
「ロックンロールはね、やったよ。」
もはや記憶障害があるとしか思えないの子の言動に、お子さんをあやすかのように優しいトーンで返すちばぎんのやり取りにほっこりする。
「夏ですね!暑いですね、インターネットに入っちゃいますね、外なんか出ていきたくない、職場探しもしなきゃいけない、でも職場探しする前に猫の世話をしたりしなきゃいけない~♪ 親父はもう終わっている~♪ 親父は3ヶ月後死んでる~♪」
の子の語りから即興歌へと変貌するMCに、ちばぎんが「養ってもらってるんでしょ?ニート」と冷静に返す。
の子がチューニングを直している間を埋めようと、ちばぎんが「ショートコント、溺れるたけしの物真似」という振りをmonoに。
「ううっ!ううっ!溺れるよダンカン!溺れるよ!カンヌだよ!」
monoがあまり似てない物真似を披露し、ライブハウスに静かな時間が流れていく。
「たけしの万物創世記!」と突然叫び、そこでは笑いが起きる。
お客さんの反応に対し、「俺、芸人かよ!顔だけが芸人かよ」と言うmono。の子は「は? どういう意味で言ってんの? 泥にしか見えない」と、恐らくmonoが着ている茶色い服を見て「泥」と表現。「…Tシャツのことかな?」とちばぎん。そして「錆!」とみさこ。「さりげなくヒドイこと言うよね、みさこさん」とmono。
そんな感じで、この日のライブは演奏がなかなか始まらないのだ。
みさこが「顔が足の裏みたい」とmonoをいじり、「バイトの後輩に言われたよ。monoさん、ナン売ってますよ!ナン食ったら共食いですね!って」とmonoが開き直る。
ますます演奏がまったく始まらない。
考えてみれば、この時点で演奏されたのはたった2曲。時間はすでに40分近く。このグダグダ感。逆に大物の予感さえする。いまだにの子のギターのチューニングは直らず、更に『アラレちゃん音頭』をSEで流してもらい、ちばぎんがチューニングを代わりに直してあげている間に踊りまくるの子。
練習スタジオでもこんなことはないだろうと誰もが思える空気に、弁解するかのようにみさこがドラムから立ち上がって前でマイクで喋り始める。
「皆さん、すいません!えー…」と話し始めると、の子がまた叫ぶ。
「みんな、どうせ夏祭りなんか行くやついねーだろ!じゃあここで踊ろう!そういう雰囲気が嫌いなやつ、加藤(おそらく秋葉原で無差別殺人を犯した加藤のこと)みたいなやつはいいから!」
誰も反応しないことについて、の子は寂しそうに「あれ、、これ聴いたことない人いるんですかね?」と聞く。そして脈絡もなくお客さんをものすごい眼光で睨む。その不可解さに笑いが起きる。
もうほんと、演奏が始まらない。
ちばぎんのおかげでようやくチューニングが終わり、演奏モードに入る。「僕のギターおかしいんですよ~」と言い訳するの子に、ちばぎんが「頭おかしいのはお前だ!」とつっこむ。誰もが「ようやく演奏が始まる!」と安心したかと思いきや、の子の衝撃発言が。
「じゃあこのままロックンロールは鳴り止まないっを…」
「それはやった!!」
ちばぎんが素早くつっこむ。これ、ちばぎんがいなければ2時間くらいはライブやったのかも、と不安になるくらいです。
こうして無事に演奏された3曲目は『死にたい季節』。
だけど演奏はすぐ中断。曲に入るタイミングがずれたのか、「この2人(monoとみさこ)が緊張してたから…」との子の判断で仕切り直し。
「死にたい」だなんて、タイトルが露骨。だけど歌詞が繊細で、うまく聞き取れない部分はあるけど歌い出しの「桜、咲いて、春の風が吹いた~」が印象に残る。この日、ライブで初披露。音源にあるギターの単音メロディは、ライブではキーボードで弾いている。終盤、曲のスピードが速まって混沌とする場面が素晴らしい。
「ライブでやるのは初めてなんですけどね。どうだった? あんま良くなかった?…次は何やる? ロックンロール(は鳴り止まないっ)を…」
「それはやりました!」
これはもはや天丼です。
最後は『学校に行きたくない』。
ギターを置いてマイクに徹するの子、ステージ中央で暴れる。遠くから見ると彼のワンピースのピンク色がうねうね動いているようにしか見えない瞬間も。
ヘッドバンキングし、いきなり冷静になったかと思いきや瞳孔がかっ開げて客席を見つめる。
「学校に行きたくない」「計算ドリルを返してください」
その二言ばかり叫んでいるけど、この迫りくる感情。
キィーーンというノイズが残るステージ。の子以外のメンバーが出ていき、の子だけステージ最前に残る。
「なんでここ(ライブハウス)まで来た?」
今更感バリバリの質問をお客さんに投げかけるの子。ただでさえ予定の枠からはみだしすぎた演奏時間であるからして、ちばぎんとmonoがの子を強制的にステージ脇に連れ出す。両腕を掴まれて連行されるの子。捕らえられた宇宙人にしか見えない。
「違うんだ!」
の子は不可解な供述をしながら2人の制止を振り払い、またステージに出てくる。
そしてまたもや、ちばぎんとmonoに抱えられて連れていかれる。
「違う…もっと、触れ合いたかったんだよ…」
寂し気なの子の声だけがステージに残り、笑いが。
「マイク出るんでろ? マイク…マイクーー!!」
ステージ脇から姿の見えないの子の声が空しく響き渡り、客席からは笑いが止まらない。なんなんだ、このライブは。
無事、の子を連行した後にmonoがステージ中央に現れ、客席に向かって丁寧に土下座。
完璧なオチだった。
これはライブと呼べるのか。ならば、コントなのか。
「ステージの上」という身分を存分に発揮した、何かしらのイベントであることは確かだった。
予定調和が一切ない。すべてはの子の気分によって左右され、しかも彼の言動が全く読めないため、1分先の予想ができない。こんなライブは観たことがない。いや、単にグダグダなだけのライブだったのかも。分からない。だけど、神聖かまってちゃんが余計に気になった一夜だった。の子は『ロックンロールは鳴り止まないっ』を何回やろうとしたのだろうか。
ライブ後、劒さんがPerfect Musicの社員の方々と一緒に神聖かまってちゃんに挨拶をしようとしていた。劒さんにみさこさんを紹介した。の子さんに対し、劒さんが「お友だちになりましょう!」と言っていた。の子さんは「僕、メール返すの遅いしミクシィもやってないし…」と返していた。
Perfect Musicの増本さんは、かつてポリシックスやレミオロメンを発掘した人だと聞いていた。
「いやあ、これは10年に一度とかそういうレベルじゃないですね…あんなに瞳孔開いた人は初めて。ネットでも口コミでも、すぐにでも飛び火する才能ですよ」
増本さんが大絶賛。
このライブ、まともに演奏していた曲は全く無かった気がするけど、存在感が炸裂していたのは確か。飛び火、していくのだろうか。
ちばぎんとみさこさんと話し、メンバーのそれぞれのポジションを聞いて納得。
ちばぎん→お父さん
mono→お母さん
みさこ→娘
の子→赤ちゃん
赤ちゃんだから下半身丸出しだったのか。これは納得。
最近彼らを知った身分としては、みさこさんは母性があり、母親的存在だと思っていた。ところがその真相は全く違うものらしい。ライブハウスに向かう車中の構成も伺うと、それが分かる。
ちばぎん→運転席
mono→助手席
みさこ&の子→後部座席で熟睡
ちばぎん、お疲れ様です。
2009年6月25日 渋谷屋根裏
〈セットリスト〉
1、ゆーれい未満
2、ロックンロールは鳴り止まないっ
3、(フリースタイルラップ対決)
4、死にたい季節
5、学校に行きたくない
ゆかいなMC集
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