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2013年2月1日金曜日

それは突然炎のごとく。 - BABYMETAL『I,D,Z〜LEGEND “Z”』 2013.2.1 at Zepp Tokyo

 (BABYMETALオフィシャルTwitterより


完全に撃ち抜かれた。

その犯行現場は赤と黒に染まった。頭の中でずっと「まーだだよ」が鳴り響く。アリバイは見つからない。ただ、その"かくれんぼ"は完全に見つかった。BABYMETALという存在を見つけてしまった。
彼女らはその遊びの中で、いまだかつて味わったことのない衝撃を残して去っていった。

元々はなめていた。バカにしていた。もっと言えば、鼻で笑っていた。

「イジメ、ダメ!」「キツネ、トベ!」なんなんだ、この歌は。まーた変なアイドルが出てきたのか。テレビで彼女たちを初めて観た時、完全になめていた。近づくと事案が発生しそうな年頃の女の子と、それに反してブルータル なサウンド。決して交わることのない二つの融合に、思わず食あたりを起こしそうになった。
「イジメを何だと思ってやがるんだ……」
飛び跳ねているこの子たちの年の頃、僕はイジメを経験した。クラスメイトの無視は「ダメ!」なんかで無くなるものではない。イジメはそう甘くない。音は重い だろうが、メッセージはあまりに軽い。ところで「キツネ」って何なんだ。これは一瞬で消え去る。良い思い出になるといいね。フッと鼻で笑いながら無視し、 そっとチャンネルを変えた。
アイドルもメタルも通っていない。かわいい女の子の営業スマイルは、作り笑いでその場を凌いだ10代の頃を思い 出す。ロン毛のお兄さんが奏でる音楽はどれも同じに聴こえて、『タモリ倶楽部』の空耳アワーの替え歌でしか認識していない。二つとも自分には縁のないもの だろうと思っていたのに、その後予想だにしない展開が待ち構えていた。

「最初はそうだったんです。でも、初めてライブを生で体験してから抜け出せなくなってしまって……」
もはや音声を変えてもらってもいい。薬物依存者の証言みたいに聞こえるだろうか。
まるで怪獣のようだった。子どもの頃に観たSF映画のように壮大なスケールで、初めてライブハウスを体験した時のように重低音が心臓を揺らす。ギターが怪獣の鳴き声に、ベースが地震に、ドラムがマシンガンに感じる。撃ち殺される恐怖すら感じた。そんな殺伐とした音に負けない美しく伸びた歌唱力と、その爆音の波形を体現するかのような激しいダンス。すべてが初体験だった。頭をガツンと殴られ、稲妻が脳天を貫く。ここ数年間で完全に忘れていた感覚が蘇った。友人から誘われて軽い気持ちで観に行ったライブは炎のように熱を帯び、全身に浴びた。テレビサイズには収まらない。実際にこの目で、耳で、身体で体験するとそのクオリティを肌で感じることができる。バカにしていたあの頃の自分を今すぐここに呼び込んで、この炎の中へ蹴落としてやりたい。
「うわ、こいつやっぱロリコン野郎だ……」
幻聴が聞こえる。やはり僕は薬物依存者なのだろうか。事実、友人から「遠くに行ってしまったね」と言われ続けた。「大丈夫?」と心配された。幼い女の子に熱狂することにおいて、ロリコンか否かという葛藤は余儀なくされる。ただ、彼女たちが訴えかける"イジメ"の本質を知り、それに抵抗する物語を知ってしまったら、このスペクタクル超大作を無視するわけにはいかない。
メロイックサインについて「キツネさんみたい!」というメンバーの感想から"フォックスサイン"が生まれ、思わぬ形で命を授かったBABYMETALのメタルを司る神・キツネ様。子どもの発想から物語が生まれ、振り付けや歌詞に彼女たちのアイデアが盛り込まれているとなると、そこには大人が思い付かない表現が数多く生まれる。

終わりを迎えたとされる3人の少女たちが姿を消し、巨大スクリーンに「00:00:00」とすべての時間の停止を告げるテロップが浮かび上がる。それが突然「ドクンッ!」と鼓動が鳴るとともに、再び動き出す。
幕が開かれると、そこには白い衣装を着た女の子とバンドが立っていた。観客の一人が叫ぶ。
「だまされたーーーっ!!!」
そう、まさにだまされた。キツネにつままれるように、まんまと引っかかった。少女3人の戦いと、死と、再生。次々と繰り出される光景に目がテンになった。今、僕は一体何を観ているんだ? これは一体何なんだ? 壮大なストーリーとパフォーマンスに度肝を抜かされ、この日から彼女らの虜になってしまった。

友人から「行けなくなったのでチケットが余った」と催促され、軽い気持ちでOKした。
いや、軽い気持ちというのは嘘になる。テレビで正直ピンと来なくて距離を置いていたが、ある時YouTubeで関連動画に上がってきた『いいね!』のライブ映像を何気なく再生し、その映像のクオリティと知られざる世界に驚いた。
テレビと全然違う。大きな野望を感じた。映像を作っている身分として、そのライブ映像はアイドルらしかぬ映し方だった。顔の寄りが少ない。会場全体を余す所なく映し、臨場感を優先している。かわいさを犠牲にし、かっこよさを強調している。次々と別の動画を再生した。『イジメ、ダメ、ゼッタイ』の前奏から始まるダイジェスト風の動画に辿り着く。英語のテロップが飛び交い、ハードコアバンドの映像のように編集がズバ抜けてクールで新鮮だった。少女たちがステージの端から端へ全速力で駆け抜ける映像は、テレビの映像の何十倍もの威力を感じた。初めて観た時のイメージを覆すところに目を見開き、彼女たちが気になりだした。ダンスがキレキレでフォーメーションが美しい。アイドルというよりバンドの映像を観ている気分になった。まさか数本の動画で、これほど意識が変わってしまうとは。
とはいえ、これはただの好奇心なのかも知れない。ただ、軽い気持ちにちょっと何kgか重さが増した気持ちになっていた。ステージの端から端まで本当に走るのか、ダンスのキレは実際に凄いのか。映像の中へ飛び込み、この目で確認したくなった。ポニーテール×1、ツインテール×2という認識しかなく、YUIMETALとMOAMETALの区別もついていない。彼女たちが何を目的とし、活動しているのか全く知らない。正直、バンドにマンネリを少し感じていた。だからアイドルという新しい世界に踏み入れたいという欲求と、新鮮な刺激を得たいという願望があった。
それは見事、叶えられた。想像を遥かに越えていた。そしてそこにいたのはアイドルというより、バンドだった。

会場のZepp Tokyoに着くと、辺り一面が赤と黒を基調としたグッズTシャツ姿で統一されている。僕は場違いだろうか、普通の薄青いシャツ姿なので入り口で止められる気がした。それは「コルセット祭り」「BABYMETAL DEATH」といった激しめの文字を背負った人々で溢れ返っていたせいか。
年齢層は高い。白髪混じりのオジさんもいれば、土方のようなガタイのいいニイちゃんもいる。全体的に力の強そうな人が多く、僕のような貧弱な体つきの男は少ない。男性が圧倒的な割合を占め、女性の姿は目立たない。
満員の会場は少し不安そうな面持ちの大人たちで埋め尽くされた。なんで不安なんだろう、初めてライブに参戦するこっちのほうが不安なのに。といった疑問はやがて解消される。「すーちゃんがさくら学院を卒業するから~」「BABYMETALは部活動だから~」などといった会話に聞き耳を立てると、どうやらSU-METALこと中元すず香が3月にさくら学院を卒業するため、その部活動であるBABYMETALの終了が予想されている。観客の多くは「BABYMETALを観るのが今日で最後か」と覚悟を決めているようだ。その寂しさが初見の僕にまで伝わったせいで、ほんの好奇心であるはずの軽い気持ちが、初めてのくせに「今絶対に観ておかなければ」という重い気持ちに切り替わっていた。

幕が上がると観客が一斉に雄叫びを上げ、まるで野獣の檻に閉じ込められたような錯覚に陥る。ワンマンライブ『LEGEND "Z"』は"LEGEND"も"Z"も一体何なのかよく分からない認識で始まるが、オープニングで上映される映像から一気にその世界観にのめり込む。

「むかしむかし、そのむかし。巨大勢力アイドルに立ち向かい、勇敢に戦った少女がいた。”紅の七日間”ーー戦いの末、少女の魂は”紅の炎”となり、七日間に渡って燃え続けたのであった。」

なんなんだ、これは。ナレーションは終末的なストーリーを語り、イラストは『マッドマックス』のように退廃的に描かれている。十字架に磔にされた少女と、それを取り囲む大きな影。『ナウシカ・レクイエム』らしき音楽をバックに、ハリウッドの映画のように壮大な設定が用意されていた。

「そして少女の魂はキツネリスによって導かれた。メタルの谷に、金月の月と紅の太陽が重なり合う。聖なる炎に包まれた女神が再び蘇るのだ!」

『ナウシカ・レクイエム』がメタルアレンジに変わり、そこには十字架に磔にされたSU-METALのシルエットが中二階に浮かび上がる。目を閉じたその姿が、四方八方から赤いライトで照らされる。
『イジメ、ダメ、ゼッタイ』のイントロが始まるとSU-METALが手をクロスさせ、その姿が鮮明に現れる。そして叫び声が会場を包むとともに、ステージ両サイドからYUIMETALとMOAMETALが全速力で駆け走る。客席はそれに呼応するようにモッシュする。2人はクロスし、両端まで走り込むと再び走り出し、所定の位置に止まると踊り出す。
なんと、これが。まさか、うわあ。かっこよすぎる。
ステージ中央には一階と中二階を繋ぐ階段があり、SU-METALが一階に降りてくる。赤と黒を基調とした衣装と、身長差で凸の形をしたシンメトリーが目に入る。全身が骸骨の柄のタイツを着たエアーバンドが恐ろしくも滑稽に映り、怪しい雰囲気を醸し出す。音は獰猛としているが、形は整然としている。殺伐とした音の中で、気品が確かに存在する。それでも髪を振り乱し、鳴り響くメタルに負けじと少女たちはその存在を叩きつける。

SU-METALは前回のライブの終盤で十字架に磔にされたようだ。それが見事復活し、この世のイジメを撲滅するかのように勇敢にステージに返り咲く。イジメ「ダメ!」キツネ「トベ!」とステージと客席が一体化し、通称・ダメジャンプを一斉に図る。上空で爆竹が鳴り、ステージに炎が噴く。"メタルを世界から取り戻す"という大義名分のもと、SU-METALの歌声も、3人の眼差しも、暴動にも似た客席に一切揺らぐことない。揺れるのは僕の心だった。
驚く。痺れる。心の中が暴れる。ストーリーと演出によって世界観が拡げられ、その登場人物として3人が戦いを繰り広げる。続いて『いいね!』で組んでいた腕は完全に解かれた。メガネが吹っ飛び、すぐさまキャッチした。間奏で歌われる「メガネはずせ♪」が具現化された。『君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You』『おねだり大作戦』と次々と披露し、YUIMETALとMOAMETALが骸骨柄のパーカーでヒップホップ調におねだりする。SU-METALがソロの『紅月-アカツキ-』で暗闇を紅に染める。こんなに楽しい夜は他にない。まだ深夜ではないが、なるほどこれが『ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト』ってやつか。

極めつけは『Catch me if you can』。間違いなく今日のハイライトだ。スティーブン・スピルバーグ監督の同名映画も顔負けの完成度で、ディカプリオとトム・ハンクスも敵わない本気の”かくれんぼ”がそこにあった。イントロから3人が「ワン、ツー、ワンツースリーフォー!」で付けていたキツネのお面を勢いよく外し、ステージ上で隠れたり、顔を出したり、走ったり。まるで子どもの遊びに大人が本気で付き合わされているように、”かくれんぼ”のパフォーマンスに思わず顔がほころぶ。
子どもだからこそ、彼女たちのこの振り付けが生かされるんだろう。「まーだだよ」のメロディにどこか和を感じ、少年時代に空き地で遊んでいた頃の記憶がふっと蘇る。YUIMETALとMOAMETALが振り向く表情は怖いもの無しで、己自身のノスタルジーを探し出すのも束の間重低音にタッチされて我に返る。で、鬼になる。ボーーーーーーーーッ(デス声)。
彼女らはただひたすら微笑みながら、「鬼さんこちらっ♪手の鳴るほうへ♪」と挑発する。目の前には相当数の鬼がいる。Zepp Tokyoってかくれんぼするような場所だったっけ。とはいえ、ステージに手は届かない。彼女らが放つ光にも、成長期のスピードにも。YUIMETALの笑顔は煌めき以外の何物でもなく、その愛くるしい幼顔によってギャップがより一層感じられる。
『ド・キ・ド・キ☆モーニング』が終わると、鳴り止まない「アンコール!」の声。やがてスクリーンにタイムコードが現れて、その残り少ない時間から終わりが近づいていることを告げる。

「メタルレジスタンス、それは聖なる戦い。来るべきハルマゲドンに向けて、最後の聖戦の場となる”フライングVの丘”へと向かうのであった。メタルの神々を司るキツネ様は最後の聖戦に向けて、ギターの神、ベースの神、ドラムの神を降臨させ、最強のメタル楽団を結成し、BABYMETALに更なるパワーを与えるのであった。」

ナレーションとともにイラストがスクリーンに映し出され、そこにフライングVのギターの形をした丘でBABYMETALと白装束の神々の姿が浮かび上がる。

「残された時間はあと僅か。神の降臨に"永遠"はない。いよいよ、聖なる戦いの最終章が始まる。」

残された時間とは、最終章とは、一体何か。始まりからずっと終末を予感させるナレーションに、初見からしたら何のことかさっぱり分からない。ただ、観客が不安そうな表情をしていた理由は分かってくる。
「終わらないでーーーっ!」という声が響く。
そうか、今日はBABYMETALが終わるかも知れないのか。
それは勿体ない。やめてほしい。初めて観ているくせに、たった何十分が何百、何千分もの思い入れに変わり、「えええ……」とため息をつく周りの人同様に不安そうな面持ちになった。きっと誰もがそう感じるはずだ。この衝動と興奮を得てしまったら、ずっと手を離したくない。

ステージになんと白装束で顔面白塗りのバンド=通称・神バンドが文字通り降臨し、『ヘドバンギャー!!』を少女3人とともに繰り出す。驚くべきテクニカルなギター、ベース、ドラムの生の音がたまらなく心地よく、感情が高ぶる。まさか生バンドの演奏が聴けると思ってもみなくて、生だからこそ緊張感が増す。
曲の終盤でSU-METALが階段を上がっていき、銅羅を両腕で思いっきり叩く。その途端にスクリーンの時間は「00:00:00」で止まり、その背景のBABYMETALのロゴが崩れ去る。悲鳴にも似た歓声が轟き、場内が明るくなる。今日で終わってしまうのか、初めて観たのに。客席では悲壮感が漂う中で破れかぶれで「BABYMETAL!BABYMETAL!BABYMETAL!」のコールが起こる。もちろんこれに参加し、BABYMETALの終わりに対して必死にレジスタンスする。

もう終わりかと思った。諦めかけていた。だが、やがて突然場内が暗くなる。物語には続きがあったのだ。
明るい歓声が沸き立つ中、「ドクンッ!」と音ともに時間が次第に戻り始め、「We are!」とSU-METALと思しき声が響き渡る。それに応じるように、客席は「BABYMETAL!!!」と声を揃える。
するとキツネのシルエットから光が放たれるムービーが流れ、瞬く間にその光が会場全体を白く包み込む。そして"BABYMETAL"と巨大なロゴが浮かび上がるとともに、爆撃音のように演奏が鳴り出す。『BABYMETAL DEATH』で3人は復活を遂げ、白装束でステージに舞い戻ったのだ。
「DEATH!DEATH!DEATH!DEATH!」と漆黒の中で身に纏う白が映え、再び燃料が投下されて会場はまるで引火したかのように盛り上がりを取り戻す。戦場のように激しさを増す。その中で唯一煌めくのは3人の姿。中二階から正面に指差しながら一階に降り、先ほどまでの悲壮感を反転するように観客の手をクロスさせて楽しませる。メロイックサインがフォックスサインに変わるように、舞台は黒から白に変わった。暗闇から光へ誘うが、叫んでいるのは「DEATH(死)」。このギャップがメタル×アイドルのギャップにも似ている。
やがて悲しげなピアノが鳴り、SU-METALのナレーションが始まる。

「私たちは新たな命を手に入れた。だけど、永遠には続かない命。今、この瞬間を忘れないために、私たちは歌い続ける。悲しそうな君の泣き顔はもう見たくないよ。君の心の中に、私たちはいつもいるよ。だから一緒に歌うんだ。イジメ、ダメ、ゼッタイ。」

暗転の中、言葉の数々が胸に響く。これはかりそめの復活なのかも知れない。彼女らはいつ終わってもおかしくない宿命を抱いているのか。「永遠には続かない命」は今生きている我々全員に言えることで、だからこそこの瞬間を忘れたくない。
この日2回目になる『イジメ、ダメ、ゼッタイ』が始まると、イントロから中二階で炎が噴き出し、ライブ冒頭と同じようにYUIMETALとMOAMETALが両サイドからステージを全速力で駆け抜ける。その声は、音は、ダンスは、イジメっ子を皆殺しにするかのようなエネルギーで目に飛び込んでくる。これは『キャリー』だ。クロエ・グレース・モレッツだ。時間を遡ると、『キック・アス』のヒットガールだ。小さな身体に似つかぬパフォーマンスは、小さいものが大きいものに立ち向かう勇ましさを感じる。これはドラマの伝統でもある。『ドラゴンボール』だって、『名探偵コナン』だって、我々はいつだって小さなヒーローの活躍に奮い立ってきた。
その伝統は今日、BABYMETALによって更新される。なぜなら、子どもは無敵だからだ。失うものが何かも知らない、すべてが始まりでしかない。現実も、天国も、地獄も、一本の線で繋がっている。子どもたちはその境界線を無視し、ひたすら遊ぶ。もちろん、”かくれんぼ”で。

音が鳴り止むと、3人は満面の笑みでステージ中央に立つ。SU-METALが「Take care of your neck.」と呼びかけ、YUIMETALとMOAMETALとともに「See You!」と一言を残して去っていく。
なんと華麗な去り際なのか。ここまで客席を荒らして、ろくにMCすることなく軽やかにステージから姿を消す。

3人が去った後、スクリーンの映像は日本地図を映し、そのカメラはグンと引いて宇宙に辿り着く。
「LEGEND “Z”。それはZEROから始まる”誕生”とZEROへと向かう終焉が時空を超え、時を同じくして動き出す物語。”メタルレジスタンス”の使命を果たすため、BABYMETALは新たな生命を手に入れたのだ。」
ナレーションとともにDNAを思わせる螺旋状の球体が描かれ、やがて巨大な塊となる。

「金色の月と紅の太陽が重なり合い、この世に漆黒の闇が訪れる時、すべては終わるのだ。黙示録に記された、来るべきその日まで、残された時間はあと僅か。カウントダウンは始まった。そう、破滅に向かって……」

残された時間は幾つあるのか。カウントダウンはいつまでなのか。その時まで、この超一流のエンターテイメントを見届けなければならない。
歌、ダンス、演奏はもちろんのこと、映像、音響、美術、衣装まで隅から隅まで一つの世界観で統一されている。これが一部の人の楽しみだと? もういっぺん言ってみろ。ロリコンだと? それはちょっと当たってる。でも、人を熱狂させ、感情を高ぶらせる文化は、そう容易く作られていない。僕はロリコンと言われてもいい。だが、これは決してロリコンと簡単に片付けられない。絶対に無視できない光景だ。この衝撃を素通りすることこそが「ダメ、ゼッタイ」だし、YUIMETALが「カワイイ、ゼッタイ」なのだ。
Zepp Tokyoのキャパは2000人ほど。それだけでこの世界が収まってはいけない。この何倍、何十倍、いや何百倍の人々がフォックスサインを掲げ、”かくれんぼ”をするべきだろう。
メタルを通っていない身分として、今までのメタルのイメージがRPGゲームのラスボス戦のBGMだった。戦いを奮い立たせる音楽であることは間違いなく、BABYMETALは少年心をくすぐる。彼女らにとってラスボスとは一体何なのか。そして、終わりはいつ訪れるのか。
スクリーンには6月30日、NHKホールでのワンマンライブを告げる文字が。
いやー、すごい。この胸の高まりは収まりそうにない。これはもはや、取り返しがつかないことになりそうだ。YUIMETALの可愛さに気づいてしまい、僕は大丈夫なのかと不安になった。でも、なぜかアイドルのライブを観たという感覚が薄い。バンドにマンネリを感じていたはずが、結局またバンドに熱を覚えてしまったような気分だ。生の爆音がそうさせているのか、世界観のせいかは分からない。少女たちにただ一瞬の輝きを感じるわけでもなく、まだまだ物語が続いていくように明確な目的と方向を示していた。それが一体何なのか、この情報量は今日だけでは簡単に飲め込めない。今後も身を乗り出して、その全貌をこの目で確かめたくなった。
いや、単純にこの衝撃を再び味わいたいだけだろうか。YUIMETALが観たいだけだろうか。いまだ判然としない気持ちのまま、汗だくの全身に吹きかかる夜風に凍えながらZepp Tokyoをあとにした。

BABYMETAL、それは突然炎のようだった。
テレビで初めて観た時の”抵抗”は、いつの間か別の意味の”抵抗”に変わっていた。その通り、この日から”メタルレジスタンス”が始まった。

BABYMETAL『I,D,Z〜LEGEND “Z”』 2013.2.1 at Zepp Tokyo
《セットリスト》
01:イジメ、ダメ、ゼッタイ
02
いいね!
03
君とアニメが見たい ~Answer for Animation With You
04
おねだり大作戦
05
紅月-アカツキ-
06
ウ・キ・ウ・キ★ミッドナイト
07
Catch me if you can
08
ド・キ・ド・キ☆モーニング
〈アンコール〉
09ヘドバンギャー!!
10
BABY METAL DEATH
11
イジメ、ダメ、ゼッタイ

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