たけうちんぐ最新情報


■ はじめまして、たけうちんぐと申します。文章を書いたりイラストを描いたりライブを撮影したり霊能者パフォーマンスをやってます 【たけうちんぐプロフィール】
■ WEBフリーペーパー・メランコフにて『たけうちんぐライブレポッポ』を不定期更新中/YOUTUBE・たけうちゃんねるにて撮影した250本以上のライブ動画を公開中です
■ 笹口騒音ハーモニカ×竹内道宏監督作品『新しい戦争を始めよう』がMOOSIC LAB2012にて劇場公開しております 【特報(6本立て)】
■ 神聖かまってちゃんについてのライブレポート(59本)撮影したライブ動画(81本)2008年~2012年事件史(約3万字)をそれぞれのページにまとめてあります
■ 笹口騒音ハーモニカのPVを作りました。カタカタカタカタ敵味方!【NEW WAR(IN THE NEW WORLD)】

2011年12月31日土曜日

うみのて@新宿Motion

年の瀬の新宿の街はふやけていた。

街がいつもの狂気を一旦お休みしていた。シャッターに貼り紙をするように、ミカンでごまかすように。人通りはいつもより少ない。家でガキの使いや紅白を見ているのだろうか。今年最後の夜には色んな過ごし方を想像する。すれ違う人々の顔がニヤついており、その傍を誰にも名を知られることのない人が横たわっている。どちらも同じ世界に生きているとはとても思えない。

大きなカバンを持って歩く自分はどうなんだろう。気分が浮かれることも沈むこともなく、ライブハウスへ撮影に向かっている。撮影なんて一体何になるんだろう。お金が入るわけでもない。むしろ減る一方だ。最前を確保し、お客さんにとってはジャマだろう。撮影というものは基本的にジャマになる。何度もそれを痛感する。なのに撮る。「俺が撮る」という私利私欲にも見えるだろう。恥ずかしい行為にも思う。小さなライブハウスでムキになって画面に集中し、音に合わせてカメラを振り、ズームする。一時も気を抜く瞬間はない。腕も精神も疲弊する。バカみたいだ。アップロードに2時間費やす。動画を作成したいがために早々と家に帰り、一人で年越しを迎える。再生回数は3桁台。暗い部屋で編集する。誰とも喋らず黙々と。炊飯器がまた壊れた。「ジャー」とお別れの挨拶をしていた。隣の家では男女数人の楽しそうなカウントダウンの声。0時0分になる。「おめでとう!」と共に炊飯器は壊れた。一つもおめでたくない。一枚壁を隔てたコントラストが激しい。パソコンで「お前の頭かち割って」「めった刺しにしてやる」といった歌詞を入力する。自分は一体、何をやってるんだ。

バンドは何のために演奏しているんだろう。なかなかお金にもならないし、世界を変えることだって出来ない。気持ちいいからやり続けてるのか。楽しいから続けられるのか。表現したいのか。だけど、それを続けて一体何になるというんだ。このご時勢、音楽なんてやってる場合なのだろうか。放射能から逃げよう。電気を節約しよう。何を食べていいのかいけないのか。望んでもいない情報がツイッターで流れていく。人は衣食住ができればそれで満足しないのか。ステージと客席の超絶マイノリティな関係性。一部だけの盛り上がり。うんざりする内輪感。形のないものに寄りすがり、才能を食い物にしていく大人たちが目をギラつかせる。後ろのほうで腕を組んでいる。前のほうで拳を上げるのは日々が退屈で仕方のない人々。

時折、何もかもに急激に冷める瞬間がある。
自分のいる世界は、ものすごく狭くて寂しくて、つまらないのではないだろうか。ライブハウスに行く道すがら、葛藤することがある。早くここから抜け出したい。毎日が退屈の消化で繰り返される。
だけど、ライブ中はそれをすっかり忘れる。
うっわーーーーーあああああああすっげえええええええ!!!となる。なんじゃこりゃあああああ!!!!となる。
この世で一番かっこいいものを観てしまった気持ちになってしまう。
これは一体何なんだろう。追求する間もなく、次の音が鳴っていく。日々の退屈と静寂が打ち破かれるかのごとく、精神と時の部屋のごとく、ライブハウスが崇高なものにも感じる。
そうなると、音楽なんてやってる場合だ。衣食住だけでは満足しない。マイノリティにはしたくない。内輪感だけは苦手だ。才能を食い物にしていく大人たちと仲良くしたい。退屈を武器にして衝動に突き動かされる人々は、断然支持する。
とはいえ、葛藤が終わることはない。いつだって自分のやっていることに疑問を感じる。これでいいのか、ダメなのか。炊飯器だって壊れたままだ。
だけど、うみのての『東京駅』なんて聴いてしまうと、バンドも音楽も、それを伝えることも、とても意味のあることだと自信が漲る。すべての人がこの体験をするべきだと勘違いする。その勘は自分だけではなく、たくさんの人が判断していく。やがて巨大な力を持った人の勘に委ねられ、バンドの名は知られていくのだろう。
今、この音楽を知らない人たちが損しているとしか思えなくなる。
「お前らなんか不自由だ!!」
まるで自分たちだけが自由であるかのように勘違いする。だけど、間違いも正しくなり、嘘も本当になる瞬間が、音楽が鳴る空間にはあると思っている。それを撮影し、伝えることは、それほどバカなことではないと信じている。動画を再生する人は一部なのかも知れない。だけど、ライブハウスに来る人なんてごく僅かだ。インターネットの海に飛び込むと何千、何万、何十万の人の目に入る可能性はゼロではない。リアルとネットの境界線で時間を費やすことは、意味のあることだと思っている。

年の瀬、小さなライブハウスで、こじんまりとした空気感の中、一部にしか知られていないバンドが、とてつもなく大きな感情を揺るがす音楽を鳴らしていた。それは、とてもかっこよかった。

「年末だからって浮かれてんじゃねぇぞっ!」
『New war(in the new world)』のイントロが始まると、ボーカル・笹口が叫ぶ。無機質に上から下へとスクロールされていく現代を絶叫する。熱のこもったリズムの中、「新しい戦争を始めよう」とは、誰との戦争なのだろう。争うことで何を得るのだろう。相手が不確かであることの虚しさが歌われている。
そのまま『RAINBOW TOKYO』へ。「青から赤え」がまるで合図のように、終盤の盛り上がりはドラマチック。ギターのメロディがとにかく泣ける。『東京駅』では演奏が静かになる部分、笹口がスピーカー付近によじ登り、「年末だからって浮かれていいのは俺!と、あなたがただけです!」と宣言。そして「あと20秒くらいで年が明けますね。カウントダウンいきたいと思います。俺が2011年を終わらせてやるー!」と煽る。ちなみに時刻は18時30分。戸惑いつつも、世界のどこよりも早いカウントダウンに呼応する観客。「皆さんで、10、9、8、7…」そして「1、」と言った途端に高野のギターが空間を切り裂くように鳴り、キクイのドラムソロへ。一年の総決算とも言える。全体的に演奏が微妙にズレていたようにも感じたけど、それがライブ感であるかどうかが重要。たまに粗いほうが感情的に思う。演奏が終わる頃に「あけましておめでとうございまーす!」とさっそく新年の挨拶をする笹口。新宿Motionだけが笹口によって時空を歪ませられた。
もはや平和ではない』はイントロで高野のギターがうまく鳴らず、笹口が「がんばってー!高野くんを応援してあげて!プレッシャーに弱いです!」と煽って仕切りなおし。「そうですねー!」というコーラスがリキんでいて気持ちよかった。

「今年もう終わりですけど、高野くん今年どうでしたか?」
「今年、は頑張りました」
「何を頑張ったんですか」
「ずっと高野とバンド組むなんてとか言われてたけど、笹口くんが拾ってくれて嬉しかったです」
「この人はステージ上ではこういうことばっか言ってね、裏では美味しいとこだけ持っていくそういう人なんですよ!」
「愛してるよ笹口くん」
「俺も俺も!」
笹口と高野のステージ上での相思相愛。投げキッスをする二人。ツンデレの展開。ちなみに後にキクイがツイッターで「高野くんをうみのてに誘ったのは私」とつぶやいていた。笑いに包まれた雰囲気のまま、それにミスマッチな心中する男女の歌『スーサイダルシーサイド』へ。
そして最後はお決まりの『正常異常』。すべてをなぎ倒すかのごとくギターを振り回し、暴れまくる高野。彼が動くごとにフラッシュウニ(ギターに付けているオモチャ)はピカピカと光ってかわいいことになる。その後ろでマナがニコニコしながら鉄琴を叩く。冷静に周囲を見渡す早瀬。顔をくしゃくしゃにしてすべてを吐き出すかのように叫ぶ笹口。
うみのてのクライマックスはいつも炎上。終演後のステージには煙が残るような余韻がある。フラッシュウニの光が消え、単なるオモチャに寂しささえ感じさせてくれる。

メンバー全員分の写真を載せるスペースを作るため、前振りを長く書いてしまったけど、簡単に言えば、うみのてかっこいいよマジで!ということです。
終演後の高野くんの手にはところどころに血がついていた。血が似合う演奏だった。うんざりするほど何度も書いているが、この人の高音ギターには愛嬌がある。大胆な動きをするのに繊細な音色に感じる。この音は下から目線で世間を睨みつかせる歌詞とのバランス感覚の上で成り立っているように思う。上からマリコではなく、下から笹口。鋭い言葉が放たれる。尖ったドリルが地下から出てくる。グレンラガン。
来年もうみのて、爆発するに違いない。
撮影後、急いで家に帰ってアップロードしました。パソコンをパチパチパチパチ、正常異常イジョージョージョージョーしながら。

昆虫キッズ@下北沢シェルター

久しぶりの昆虫キッズのライブ。なにげに半年ぶりになります。下北沢インディーファンクラブ以来、またもや下北沢にて。場所はシェルターです。

Talking Headsの『Born Under Punches』を登場SEにメンバーが登場。男女混成バンドとしてはTalking Headsと同じだ。以前はゲイシャガールズなどを使用していたのに。

登場するとボーカル・高橋翔が高圧的な態度で「よう!」と観客に呼びかける。「あけましておめでとう!おい!おい!!」と、年は明けていないしなぜか挑発的な言い方で笑いを誘う。しかもサングラスみたいなものをかけている。メガネなのか。どうでもいい。キャシー塚本みたいだ。他のメンバーはまさにどうでもいいといった様子で高橋に気に留めず黙々と楽器を手に持ち、相変わらずの昆虫キッズの姿がそこにあった。「おーけー。いこうか」と高橋がメンバーに呼びかけると、冷牟田敬がギターを掻き鳴らして1曲目の『シンデレラ』へ。
ベース・のもとなつよの掛け声とともにメンバー全員がコーラスする場面がいい。「始発を待ってる 年老いたシンデレラ」「東京にはもう王子様はいない 終電でいこう ハリボテの王国へ」という歌詞にグッとくる。冷牟田王子(愛称)が歌うのがまた。最後ののもとの「For Youは嘘」が切ない。
間髪入れず、『ブルー ブルー』へ。この疾走感、師走って感じだ。

「どうも昆虫キッズです。大晦日なのに来てくれてありがとうございます。バカヤローどもに」
高橋の礼儀正しい挨拶の後は、しっとりと『わいわいワールド』。これほどタイトルと裏腹の曲調もないだろう。ファミコン世代にはこの哀愁が分かる。
「悪いけど、そんなに盛り上がる曲はないです。そんなドドスコドドスコ(ドラムを叩く仕草)して、早い曲ないです。それでもいいなら、聴いてけ」
高橋はキザに告げて曲に入ろうとするが、カウントする佐久間に「ちょっと待って」と準備をする。「あんだけかっこつけたのにー…慣れないことするからだよ」と佐久間が嘆く。
『いつだって』へ。いつの間にか高橋のサングラスは取れていた。そのまま『S.O.R』へ。情感のある終盤のベースラインがドラマチック。
「冷牟田くんは2011年の抱負、何だったの?」
「抱負?…抱負………。………」
高橋の振りに冷牟田が戸惑い、沈黙が流れる。「もう無いでしょそれ」と佐久間。「どんな年だった?」と質問を変えると、「大変な年だったね」と。高橋が「大変な年だったんじゃ」と返す。「みんなそうだったと思うんですけど」「みんなそうじゃ」「よくみんな我慢したなあ、と」「みんな我慢したんじゃ」「お疲れさまです」といった2011年の感慨を吹き飛ばすような会話を経て、『アメリカ』へ。テンポが少し遅くなっていたように思う。高橋の「ピッ」といったギターも「ジャカジャッ」に変わっていた。『まちのひかり』は高橋のギターのトラブルにより、演奏中断。「ごめんやで!」と言って仕切りなおし。後半のコーラスからの盛り上がり。キーボードのメロディが美しい。今年発売されたシングル『裸足の兵隊』へ。ところどころでPVの海辺の風景を思い出す。

「108つの煩悩を鐘の音に合わせて振り払って、いい新年を迎えようっていう日本のね…」と言って佐久間が場を繋げるも、まだチューニングできていない高橋。「何かインフォーメーションを」と高橋が振るが、「言うことが一つもない」と佐久間。「何か言えよ」とのもとにも振るが、無視するのもと。
最後は発売されたばかりのシングル『ASTRA』。ガスガスガスッ!と鳴るドラムが気持ちいい。強弱、静と動といった両極端がころころと散りばめられ、そのまま突き進むと思ったらのもとのコーラスと冷牟田のギターで落ち着き、佐久間がドドスコ!とドラムを叩くと、また突き進む。曲の展開がいちいちかっこいい。
最後はメンバー全員でジャッジャッジャッジャッと一発一発音を合わせて、次第にそのテンポが遅くなっていく。バランスを崩して倒れた高橋が「アニョハセヨ」と挨拶し、ライブが終わる。

高橋が風邪を引いていたのもあって『裸足の兵隊』では声があまり出ていないといったところなど、少し不調もあったけど、生で聴く『ASTRA』の迫力が体験できてよかった。終末感溢れるお祭り感というか、相反する二つが見え隠れするのがいい。
のもとさんの新髪型にも初めて出くわしたが、これ、他の人がやったらお笑い芸人になりかねないだろう。それが様になっているのはやっぱりスゴイんだろうな。一方、冷牟田さんの髪型だけは変わらない。今年、約1年間に渡って撮影してきた昆虫キッズのライブDVDを作り、映像を観て1年を振り返ったけど、世の中は諸行無常なのに冷牟田さんの髪型だけは安心するほど変わらない。それは田舎のおばあちゃんの優しさにも通じる。

高橋くんがiMovieで編集したという『ASTRA』のPV。ところどころに趣味・趣向が見え隠れしているのがいい。混沌としており、まさに108つの煩悩だ。終盤のほんの一瞬、岩淵弘樹さんが映っている。そこも高橋くんの趣味の一つなのだろう。

2011年12月30日金曜日

2011たけうちんぐ的ベスト10



今年も暮れていきます。

この時期には決まって「ことしをふりかえる」というコマンドが発生し、「たたかう」「じゅもん」「どうぐ」「にげる」よりも選択してしまいがち。「にげる」に程近いのかも知れない。1月1日にはフッと忘れてしまうからこそ、記録に残しておきたい。そんな気持ちが無駄に働きました。
振り返るほど音楽を聴いていないし映画も観ていないのですが、何年後かにここを見ると「あー、こんな年だったんだな」と思い出せたら一番です。どんな年なのかいまいち分からないですが。

ここで2011年たけうちんぐ的ベスト10を発表します。すみません。


よく聴いた曲onYOUTUBE
2011年に結構再生した動画ベスト10です

Noriaki『SU・BE・TE』
ひきこもりミュージシャン・ノリアキには毎度勇気しかもらってません。
PVも秀逸。危険な匂いしかしない。外国人女性は全力で逃げるべきです。
YUKI『COSMIC BOX』
このYUKIは妖精。マリオネットみたいな動きがヤバイです。
YUKIのDVDは顔のアップがないのでいつも悔しい思いをしています。
コトリンゴ『こどものせかい』
映画『マイマイ新子と千年の魔法』で涙ながらに聴きました。
田舎の風景。水、砂、草、空すべてが美しく感じられて聴いてると心が安らぎます。
AKB48『竹内先輩』
今年最も振り向いた曲です。
自分の名字が曲名になるなんて珍しいことなのでニヤニヤしました。
Peter Auty『Walking In The Air』
幼い頃に好きだったスノーマン。問答無用に励まされます。
寂しくも楽しくも聴こえる不思議な楽曲に思います。
あらかじめ決められた恋人たちへ『Back』
中盤でタイトルが入るタイミングとセンス。海外でも評価されるべきです。
言葉がなく、抽象的なのになぜか何かが伝わる映像。勝手に物語を妄想してしまう。
斉藤和義(with BOSE)『いたいけな秋』
日比谷野音で観て、それ以来かなり虜になりました。BOSEかっこよすぎです。
ロックスターの寿命をヨウ素やストロンチウムなどの放射性物質の半減期に替え歌していた。
Emmy The Great『Edward is Deadward』
洋楽で唯一何度も聴いていたのがこの人の音楽。耳にすんなり入ってくる。
遊んでいる子どもたちをバックに。日常の中に音楽があるような、こういう映像が撮りたいです。
うみのて『もはや平和ではない』
もはや平和ではない一年にぴったり。うみのてはガチです。
映画評論家の森直人さんがこの映像を今年のベストワンに選んでくれて嬉しかった。
神聖かまってちゃん『花ちゃんはリスかっ!』
10代の頃に聴いていたら危なかった。後半の攻撃的なテロップに鳥肌が立つ。
最後の実写シーンに妙な優しさを感じてグッときます。


観た映画
今年公開ではない映画もありますが観た映画ベスト10です

マシュー・ヴォーン監督『X-MEN ファースト・ジェネレーション』
悪の考え方にも善の考え方にも納得。こうやって争いは起きるものかと学びました。
『アバウト・ア・ボーイ』の主人公の男の子が成長していたのに時の流れを感じました。
トニー・スコット監督『アンストッパブル』
最後の「登場人物のその後」が最高。キャラクターが分かりやすい。
デンゼル・ワシントンの深みのあるセリフにグッとくる。暴走する電車でこれが言えるのかと。
井上剛監督『その街のこども』
公園からマンションを見上げるシーンでは鼻水がたくさん出てしまいました。
阪神大震災を経験した身として、というより「はみご」という言葉が懐かしくて印象的でした。
J・J・エイブラムス監督『SUPER8/スーパーエイト』
太っちょの男の子の恋心に感情移入しました。
電車事故の後、乗用車に乗っていた先生が生きていたのに一番驚きました。
片渕須直監督『マイマイ新子と千年の魔法』
田舎の美しくて清いものだけでなく、自殺や社会の暗部なども描いていたのが良かったです。
新子がワンちゃんを「おーよしよしよし」と撫でるシーンが可愛かったです。
ミシェル・ゴンドリー監督『グリーン・ホーネット』
クリストフ・ヴァルツだけでもお腹いっぱい。こんなに魅力的な悪役ができる人はいない。
ケンカのシーンが無駄に長くて笑いが止まりませんでした。
トッド・フィリップス監督『ハングオーバー!! 史上最悪の二日酔い、国境を越える』
笑えないくらいの事態でしたが、前作と絡めた部分が見事すぎます。
ケン・チョンがまた閉じ込められていたのが良かった。
チャーリー・カウフマン監督『脳内ニューヨーク』
半分以上理解できなかったけど、理解できないと余計に印象に残ります。
ジョン・ブライオンの『Little Person』の歌詞がたまらなかった。
寺本幸代監督『ドラえもん 新・のび太と鉄人兵団 はばたけ天使たち』
旧作と違い、ピッポとリルルの関係性からまた新たな感慨が生まれていた。
総作画監督の浅野直之さんにお会いできたのも嬉しかったです。
ルパート・ワイアット監督『猿の惑星: 創世記』
昔、「ありえない」と思いながら観ていたシリーズがますます現実味を帯びてきている。
一番身体のデカイ猿の最期がかっこよすぎて笑いながら泣きそうになりました。


行ったライブ
鑑賞・撮影を含めて印象的だったライブ10本です

神聖かまってちゃん@六本木ニコファーレ 10月2日
彼らにとって一つの到達点だったように思う。360度ニコ生映像は特別な体験でした。
「たくさん笑ってたくさん泣いて精一杯生きてくれ」ってコメントが流れたのに感動しました。
うみのて@渋谷O-nest 11月24日
とにかく今年一番の収穫と言ってしまえるほどのバンド。
敵対心燃やしまくりのライブ。ヒリヒリしていて痺れた。うみのてはマジでヤバイです。
YUKI@WORLD HAPPINESS2011 8月7日
ギターを弾くYUKIの残像を目に焼き付けるのに必死でした。ボブ界の巨匠。
『ワンダーライン』は楽しいはずなのに、どこか寂しげにも聴こえるのがよかった。
透明雑誌@早稲田ZONE-B 8月28日
お客さんのノリが激しく、撮影しながら脛から血が出ました。
「台湾のナンバーガール」とキャッチコピーがあったけど全然そんな感じじゃなかった。
チッツ@渋谷-nest 5月12日
この日観ていたスチャダラパーのBOSEが褒めたらしい。全員褒めるべきです。
『熱血硬派くびおくん』の哀愁はたまらない。ベース列車強盗の顔はこのバンドの宝。
ガール椿@下北沢CAVE-BE 10月15日
愛くるしいメロディと日常を切り取った歌詞。ようやく観れて撮影できて感激しました。
『テーブル』の群像を綴る合唱には思わず涙が出ました。
斉藤和義@日比谷野外音楽堂 4月17日
この人がこれほどまで評価されてずっと活動できている理由が一目瞭然のライブでした。
夜の都会のど真ん中での『いたいけな秋』には鳥肌が立ちました。
大森靖子@高円寺無力無善寺 10月16日
感情剥き出しの歌い方に鳥肌。すべての芸術にありがとうって言えるのを信じたい。
痛くて鋭いものが飛び込んできました。こういう人は、いなくてはならない。
ももいろクローバー@渋谷AX 2月25日
初めて観た感動は計り知れず。隣で観ていた大阪の友人が泣いて動揺した。
『走れ!』のフォーメーションがとにかくかっこよかった。
太平洋不知火楽団@新宿Motion 3月17日
震災後、中止されずに行なわれたイベントにて。ライブをやり続ける意義を感じさせられた。
『たとえば僕が売れたら』の歌詞にある「津波」も「地震」も必然に感じられた。


みんなのツイート
Twitterでのお気に入りのつぶやき10本です

「アイホンで写真撮ろうとして、カメラ立ち上げたら、自分側のカメラになってて、まぁ、いつものように死んだ魚のような目をした自分が画面いっぱいに映し出され、ありとあらゆるやる気を失いそうになったぞい!あぶぬわぃ(◉□◉)!」 by __hisako(田渕ひさ子)
田渕ひさ子さんのツイートは可愛すぎる。顔文字が特にヤバイです。
「「芦田愛菜 薬で小さく」の検索結果 約 150,000 件」 by takuya(Takuya.OHYAMA )
とにかく芦田愛菜の存在に脅かされた一年でした。
「ATMでお金おろしたら血まみれの一万円札が出てきた!シャレにならん!」 by ohuchi_rider(太平洋不知火楽団/Ba大内)
これは本当にシャレにならん。
「「最高の波がやってきたぞ、みんなサーフィンに出かけよう。あの波をつかまえるんだ」的なサマーソングで有名なあのビーチボーイズが、日本の被災者支援に新曲を発表するというニュースがブラックジョークとしてハイレベルすぎてもう何も突っ込めない。でも乗るしかない、このビッグウェーブに。」 by NeDu_Baian(バイアンZ)
不謹慎なものを受け入れようとしない風潮の最中、このツイートには勇気をもらいました。
「男たるもの嬉しい事や楽しい事があった時こそ黙って独り心の中でその喜びを噛み締めるべきだ、と常々思っている俺だが今日だけは言わせて下さい。さっき夜の江戸川見たいな、と思い河川敷に行ったらカニ缶拾ったー!!!!カニ缶!拾ったー!!!!」 by taka_yoshida(タカ吉田)
カニ缶には確かにこうなってしまう。
「そういや神聖かまってちゃん肯定したら微妙にフォロワー減ってたわー。まあでも大丈夫、俺には大切なマイミクさんたちがいるから。」 by kobayashi4000(kobayashi4000)
これはリアルな事象だと思いました。
「おめでたい!」 by tombomono(mono)
の子さんの誕生日に。monoくんの絶妙な距離感が伝わるツイートでした。
「どうみても笹口 RT @aoyagifumiko 笹口騒音ハーモニカさん、よかったです。ライブを初めて観たのですが面白かったです。笹口さん×竹内道宏さんの映画楽しみです。はぁー、面白かった、最後の方はもう加瀬亮さんにしか見えなかったです。」 by ork_house202(はやせ)
本当にどうみても笹口くんでした。
「明日のライブに向けてハッピーを注入しておこうとスタジオ練習の帰り道に『魔法にかけられて』を借りて、部屋で取り出してみたら何の間違いか「殺戮島」と書かれた謎の真っ赤なディスクが入っていたので泣きながら返しにむかってる。」 by summer724timer(のもとなつよ)
似たような経験はある。これはタイトルが壮絶でした。
「上位装備揃えたったwwwwww http://ow.ly/i/nNa2」 by SKCchibagin(ちばぎん)
騒動の最中、モンハンに関するツイート。一気に温まりました。


たけうちんぐのツイート
2011年で結構ふぁぼっていただいたつぶやき10本です

「新聞を取ってないので久しぶりにテレビ欄というものを見た。「ユースケサンタマリア」の名前の長さは脅威だ。他の出演者の名前が省かれてしまう。その点「要潤」はどんだけ優しいんだ。「照英」も優しい。「瑛太」も。「白竜」も優しいけどテレビ欄に載ってない。」
春名風花ちゃん(はるかぜちゃん)になぜかリツイートしてもらってやたら広まった。
「18才の頃、難波BEARSで「大名行列」という20人くらいがケンカするだけのノイズバンドの撮影をしていたとき、最後メンバーの一人が「現実に戻るぞー!」と叫んだ後に客席中央に炊飯器が置かれた。開いてみると美味しそうなご飯が炊き上がっていた。これが現実かと思った。」
100人以上にリツイートされたけど、当時大名行列のライブには100人も客がいなかった。
「ARB48総選挙 結果発表→1位 KEITH、2位 石橋凌、3位 EBI、4位 内藤幸也、5位 白浜久、6位 KEITH、7位 田中一郎、8位 斉藤光浩、9位 浅田孟、10位 宮城伸一郎、11位 ジャン=ジャック・バーネル、12位 KEITH、13位 サンジ、14位 KEITH」
KEITH推しであることがバレたかも知れない。
「マルマルモリモリウンコモリモリッ♪」
個人的にはとても気に入っております。
「意味もなく樹海の動画を漁っていたら「青木ヶ原樹海って物々しい名前にするから、自殺者が集まってくる­­んちゃうか?“青木ヶ原ピョコピョコワールド”とか“ダッフンダーファミリー­­樹海”って名前に変えたら、自分の命を絶つ場所に選らばへんの­ん­ちゃうか」というコメントが高評価だった。」
どうして樹海の動画を漁っていたのかが一番恐い。
「駅の改札前で後ろから走ってきた女性にタックルされ、突き飛ばされた。痛かった。女性は前にいた彼氏らしき男性の背中に抱きついた。チャオズみたいに爆発すればいいのに。」
かなり黒い考え方だけどこのときは本気でそう思った。
「神聖かまってちゃんは友達バンドがいない。仲の良いバンドが一つもない孤立感は2年半前から全く変わらない。だけど孤立してるからこそリスナーと一対一になれる。の子さんが「配信見てる人は大体一人で見てるんだぜ。だからこっちがワイワイやってたらムカつくだろ!」といった発言は大いに納得。」
神聖かまってちゃんについてずっと言い表したかったことです。
「ずっとドアを開けたまま。とても寒い。一人暮らしは心細い。神ヘルメットを被っている。お隣さんとバッタリ会った。「神ですか?」と聞かれた。「神です」と答えた。僕は結構テンパっているのかも知れない。」
震災の頃のムードが色濃く。神聖かまってちゃんのライブに手に入れたヘルメットの効果。
「『モテキ』観て、地元でくるり好きな可愛い女の子がいて、くるり嫌いなくせに突然くるり好きになった男の子がいた。僕は元々くるりが好きだったけど、その男の子はやがて女の子と付き合うことになった。僕は元々その女の子が好きだった。くるりが聴けなくなった。そんなことを思い出した。」
なんでこんな暗いこと書いたんだろう。
「学生時代のあだ名って残酷ですよね。中学1年の頃、体育で足の速い男の子が「はやお」って呼ばれていた。やがて「はやお」から「みやざき」と呼ばれるようになり、2年生の頃には「ジブリ」になっていた。そして3年生で同じクラスになったとき、「スタジオ」と呼ばれていた。そうきたか。」
スタジオってかっこいい響きでした。


2ちゃんねるの(>_<)書き込み
ちょっと悲しくなったベスト10です

・「ちんぐ前歯2本だけチロっと出ててウケる」
・「はっきり言って竹内の文章ウンコでしょ」
・「竹内!!!!頭皮大丈夫か???????????????」
・「竹内ひげ濃くてキモイ」
・「ちんぐってホモなん?」
・「竹内はかまってちゃんか笹口、どっちかにしてくれねーかな、もう」
・「竹内死ね」
・「竹内はマーライオンとかいうガキに目をつける節穴野朗」
・「竹内のシャッ、シャッて切り替え撮影、イラッとくる」
・「竹内のまとわりつきは異常 アイツこそ真の売名野郎」


2ちゃんねるの(^o^)書き込み
励まされたり勇気づけられたベスト10です

・「ちんぐのyoutubeでチッツと笹口騒音が好きになった」
・「そろそろ竹内んぐの良いところ語ろう!」
・「ちんぐの誕生日だよ!!おめ!おめっおめでつおおおおおおおおおおうう!!」
・「竹内が撮った映像かっこいいよなあ画質も音質もしょぼいのに最高だよ」
・「ちんぐの奴、いったい何があったんだ?大丈夫かな、、」
・「ちんぐさんは、いい文章書きますね♪」
・「竹内がうみのてのライブ動画大量にpしたありがとう、めっちゃ嬉しい」
・「俺は自分のバンドのライブをちんぐに撮ってもらうのをとりあえずの目標にしているんだから」
・「竹内のイラストのステッカー欲しい」
・「竹内さん、おれぁアンタのこと好きだぜ」


かわいい人
2012年もこの世界にいてほしい10人です

長澤まさみ
ショートヘアになって熱が再燃。ドロンなんてせずに世界にあと10人くらいいてほしい。
『クレイジーハニー』の赤い髪の毛もやばかった。これからも男心を弄んでください。
本田翼
ボブ界の新生。『non-no』を買うためなら女の子になってもいい。
この人がモテない役なんてやってしまったら世界の法則がすべて崩れてしまうだろう。
玉井詩織(ももいろクローバーZ)
元々黄色いものが好きなのに、このショートヘアときたらもう降参するしかない。
「ロックファンの皆さん目を覚ましてください」と言われたら全然覚まします。
ファンタジスタさくらだ(あやまんJAPAN)
ボブは逃さない。下ネタとか不謹慎だとか関係なく、ボブは誤魔化せない。
「ちょっと待て!この人かわいいぞ?」と思った人は少なくはないはずだ。
大亀あすか
神聖かまってちゃんを通じて知った。スキューバダイビングに挑戦する動画がこれまたヤバイ。
一見キーホルダーみたいだけどずっと見ているとなぜか笑えてくるほど可愛らしい。
平沢唯(『けいおん!』)
ベタかも知れないけど、このアニメをリアルタイムで観ていた頃から気持ちは変わらない。
とにかくボブだ。それだけは免れない。こういう性格は得をする。
市川美織
手をパーにしてニコニコしていてどこからどう見てもアイドル的仕草に葛藤を覚えた。
だけどどうだろう。カエルを持ちながら逃げ惑うメンバーを追いかける姿に黙っていられない。
中川翔子
この人は可愛いだけではなくて、精神がかっこいいのだ。
暗闇から光を掴み、ここまで来た。生まれつき可愛いのも大きいかも知れないが。
夢眠ねむ(でんぱ組.inc)
アイドルの聖地・秋葉原ディアステージでライブを観た。
その後は4階で普通に接客をしていたがジュースを飲む僕の手が震えるほどのボブだった。


以上、2011年たけうちんぐ的ベスト10でした。すみませんでした。

来年もたけうちんぐダイアリーをどうか宜しくお願い致します。


たけうちんぐ

2011年12月24日土曜日

俺と芯のクリスマスイブ



トイレットペーパーの芯の数がまたもや深刻化していた。

あのとき芯に書かれた『毎度ありがとうございます』という文字を見なければ、こんなことにはならなかっただろう。芯がトイレに溜まっていき、それらを並べて『人生』『未来』『希望』『要潤』などといった文字を作ることもなかっただろう。芯に感謝の気持ちがある限り、捨てることはできなかった。
昨年、僕は彼女ができたことで芯を捨ててしまった。
芯を見つけたときの彼女の一言で、ハッとなったのだ。
「みっちゃんはこれだけうんこしてきたんだね」
恥ずかしくなった。これをどうにかしなければ、変質者だと思われる。そうだ。暮らしに役立つものにしよう。気づけば芯でイスを作っていた。長時間の作業だったので、完成後、疲れたのでイスに腰掛けた。すると音も立てずに静かに崩れ落ちた。そっとゴミ袋で包んでしまった。
結局、バチがあたったのか、その後彼女と別れた。
だけど、一年以上の月日が流れた今、芯とは別れられない。
おびただしい数の芯がトイレにあり、一年間の排泄を物語っていた。ますます増えていく芯に別れを告げるとなると、僕は一体、何十、何百もの別れを経験しなければならないのだ。さよならだけが人生だなんて、僕には辛すぎる事実なのだ。
出会ったことが間違いだった。
だが、出会わなければうんこがついたままだ。

だからこそ、今一度、芯と真剣に向き合いたいと思った。





クリスマスイブなのでベンチを作った。

これは憩える。
昨年のイスとは違い、今回は二人掛け。孤独への反逆だ。相手と向かい合うのではなく、同じ方向を向くことで未来を掴める。彼女と別れた理由を考える。同じ未来を見ていなかったからだ。そうだ。未来は僕らの目の前にある。一緒にベンチに腰を掛け、明日を目指そうではないか。芯もきっと、同じ気持ちだろう。

だからこそ、未来を見つめるために行なった。





ドラえもんを座らせた。

これは憩っている。
スペースを十分に使い、自由を欲しいままにしている。相手がいないだとかはどうでもいい。彼女ではないが、かわいい。本当にかわいい。彼女よりもかわいいかも知れない。共に腰掛ける人がいないからといって、くよくよしていたって何も始まらない。ドラえもんは未来のロボット。未来を見つめることで、夢や希望を抱くことができる。僕らには明日がある。ドラえもんも笑顔だ。こちらも笑顔になる。ミラー効果だ。ありがとう。

彼と一緒に未来に目を向けたいと思い、ベンチにそっと腰掛けた。





潰れた。





捨てるわ。

2011年12月23日金曜日

たけうちんぐライブ撮影の2011年

今年はたくさんライブを撮影しました。

2011年、YOUTUBEにアップロードした動画は119本。撮影したときのことを振る返ると今年の出来事や季節なんかを思い出すことができ、感慨深くもなる。震災や放射能、加護ちゃんの結婚、その他様々な事件がある中、ライブが世の中の出来事に多少左右されることもあった。地震によって中止になったライブもたくさんあるし、こういう世の中だからこそ響く歌もある。

ライブハウスに行く人なんて限られている。間違いなく少数派だ。だからこそ、ライブハウスと外の世界を少しでも繋げられたら。魅力的なバンドに興味を持ってもらえたら。かっこいいバンドや表現が日の目を見ずに埋もれていくなんて絶対に許せない。1台のビデオカメラで伝えられることはたくさんある。そういった気持ちで撮影し、アップロードしています。

ネットは即時性こそが醍醐味。伝達のつもりで撮影していたものが、時が経てばアーカイブになる。そのバンドの歴史にもなる。遠く離れた人にも一瞬で見せられる。だけど、元々好きな人が観るだけでは何も起こらない。何よりもそのバンドのお客さんを一人でも多く増やす。それを為さなければまったく意味がないと思っています。あと最近よく思うのが、スーパーサイヤ人が肩につけてるダンゴ虫みたいなやつって何て名前なんだろう。昔、地元にすごい不良の金髪のにーちゃんがいて、300円カツアゲされたことがある。こっそり「スーパーサイヤク人」って呼んでいたことを思い出す。

2011年を時の瓦礫に埋もれさせたくはないので、今一度、気に入っている動画を紹介していきたいと思います。


スカート【3と33】2011/3/6 三軒茶屋グレープフルーツムーン
ポップモンスター・澤部渡のスカート。FMラジオのDJの粋な紹介が聞こえてきそうなほど、世間一般の日常に流れるべき音楽だと思った。高校時代の友人がCD屋で流れてるのを聴き、何の情報を得ぬまま購入したというほど。疾走感がたまらない。

シャムキャッツ【シンパシー】2011/4/16 新宿タワーレコード
4年前、東京で初めて知り合ったバンド・シャムキャッツ。気だるい憂鬱もほんのひと時の楽しみも、シャムキャッツの音楽が似合う。夏目知幸の歌詞は一つのフレーズがずっと耳にこびりつく。「シンパシッ」という掛け声がかわいい。

バンドじゃないもん!【歌うMUSIC】2011/5/7 原宿アストロホール
神聖かまってちゃんのドラマー・みさこと女優のかっちゃんのツインドラムユニット・バンドじゃないもん!笑顔と可愛らしさに溢れているけど、曲によってはみさこの腐女子ワールドも全開。曲が超絶POPで今後化ける予感がプンプンします。

透明雑誌(from台湾)【性的地獄】2011/8/28 早稲田ZONE-B
台湾のバンド・透明雑誌。「台湾のナンバーガール」というキャッチコピーで偏見したことを深く反省。実際にライブを体験すると今の日本のバンドにはないようなテンションがダイレクトに伝わる。観客のノリに圧倒されて撮影中に脛から血が出た。

チッツ【熱血硬派くびおくん】2011/5/12 渋谷O-nest
大阪のバンド・チッツ。マンガみたいに見た目で分かる個性。これほどまで人間臭い歌をうたう人はいるだろうか。直情的な歌詞は情けなくも愛おしく、胸に突き刺さる。「バイトをクビになっちゃった」と気づけば口ずさんでしまう。

MAHOΩ【しかけの恋】2011/8/28 早稲田ZONE-B
突如として現れた乙女ファンタスティックバンド・MAHOΩ。マホーと呼ぶ。その名の通り魔法にかけられたようなキーボード3台の音の絡まりがドリーミー。なのに歌詞がどこかシュール。可愛くてズルいドラマチックな振り付けはクセになる。

太平洋不知火楽団【Dancing Hell~can't help fallin'~】2011/9/17 新宿MARZ
魂のスリーピース、轟音のトライアングル・太平洋不知火楽団。殺しにかかるのはピストルのようなシャウト、マシンガンみたいなドラム、異常なまで暴れまくるベーシスト。その姿はヒーローそのものだ。この日は特に凄まじかった。

昆虫キッズ【アメリカ】2011/5/6 渋谷O-nest
昆虫キッズ。メンバーの立ち姿がかっこよくて美しいはずなのに、どこか粘々している。それはボーカル高橋翔のせいなのか。『わいわいワールド』『魔王』などファミコン世代は原風景の中で踊ってしまう。キーボードのメロディがとにかく美しい。

toddle【Gulp It Down】2011/5/13 渋谷O-nest
おかっぱ女子シンメトリー・極太リズム隊のtoddle。MCのゆるゆるさは特許モノ。だけど演奏になると容赦ない。涼しい風が大きな音のかたまりと共に押し寄せてくる。田渕ひさ子のギターソロにはいつも鳥肌が立ちます。

撃鉄【ヨルテツ】2011/6/26 下北沢SHELTER
シティパンクロック集団、撃鉄。ボーカル・天野ジョージが豹柄のタイツから世界各国の国旗を取り出し、最後に出てきたのはパンティー。鮮やかな赤だった。最後は国旗を飾りつけ、その上を飛び越えてダイブする。いつも、かっこいいはずなのに笑えることを保証している。

ガール椿【テーブル】2011/10/15 下北沢CAVE-BE
広島のバンド・ガール椿。地方にこんないいバンドがいるなんて全ての地方を回って確認したくなる。東京が音楽の中心ではない。親しみあるメロディ、フレーズがキュンとさせる。気持ちが豊かになる。小節ごとに群像を描くこの合唱には涙が出ます。

はこモーフ【村に平和が戻ったよ】2011/10/7 新宿Motion
女子スリーピースバンド・はこモーフ。売れなければおかしいほどのキャッチーなメロディ。ラジオで流れることが容易に想像できる。平和ではないこのご時勢だけど、たまには開き直ってこの歌を聴きながらニヤニヤしてみたい。

笹口騒音ハーモニカ / おんがくのじかん (プロモーションビデオ)
今、最もヒリヒリした歌をぶちかますのは笹口騒音ハーモニカ。今の時代にピッタリ。ひょっとするといつの時代にも通用するのかも。このPVは制作依頼があった4日後にはアップ。衝動とスピードはライブを撮る感覚に近いです。

ピックアップゴールド【グレートエスケーパー】2011/12/8 渋谷WWW
神聖かまってちゃんのベース・ちばぎんがフロントマンのピックアップゴールド。まさかの一夜限りの再結成。ちばぎん曰く「黒歴史」だがこれは白歴史だ。サビのメロディは脅威の中毒性。その通り、吐き捨ててすべて壊せばいいのだ!

大森靖子【PINK】2011/10/16 高円寺無力無善寺
シンガーソングライター・大森靖子。胸ぐら掴まれたような衝撃が走る。激情、人生劇場。「私ごときの人間がすべての人にすべての愛にすべての音楽にすべての芸術にありがとうって言うことができるって信じてるから」という言葉が好きだ。

うみのて【東京駅】2011/11/24 渋谷O-nest
うみのて【もはや平和ではない】2011/11/13 秋葉原GOODMAN
うみのて【RAINBOW TOKYO】2011/10/12 新宿Motion
うみのて【正常異常】2011/11/24 渋谷O-nest
うみのて【四角い部屋】2011/11/13 秋葉原GOODMAN
うみのて【ぐるぐる回る】2011/10/18 高円寺無力無善寺
うみのて【Suicidal Seaside】2011/9/24 新宿NINE SPICES
今、とにかく観てほしいバンド。2011年の大収穫。突き刺さる歌詞、優しくも鋭い高音ギター、不気味にも可愛くも受け取れる鉄琴。これは来年、化けるかも知れません。笹口騒音ハーモニカのバンドバージョンだが、単なるバンド化と侮っていると痛い目にあいます。


うみのてうみのてうみのてうみのてうみのてうみのてうみのてってしつこく書いてごめんなさい。大好きなんです。というより、観てほしい。間違いないから。
他、アップロードした動画はこちらでご覧いただけます。
YOUTUBE【たけうちゃんねる】

ライブ映像は、生のライブには匹敵しないのかも知れない。だけど、カメラにはズームがある。パンができる。ライブの良い部分だけを切り取り、伝えることができる。生とはまた別の良さがあると確信している。そしてパソコンからライブハウスへの道筋を作ることが、最も意味のあるアップロードだと思っています。スーパーサイヤ人が肩につけてるやつは何なのでしょうか。

また、これまでに撮影させていただいたバンドを集めて、いつか何かしら大きなイベントができたらと思っています。とても楽しいはずです。僕が。

2011年12月22日木曜日

【連載】神聖かまってちゃん物語~第4話「こんなの全然ロックじゃねえよ!!」~

神聖かまってちゃんがサマソニに?

平均集客数7、8人のバンドなのに?ボーカルが警官に補導されたりするのに?ライブで『アラレちゃん音頭』を歌って踊ったりするのに?
信じられなかった。
『神聖かまってちゃん、サマソニ出演決定!!』
昼ご飯中、友人のmixiでそれを知ったとき、頬張っていた焼きそばを噴出しそうになった。ウソだろ、と。なぜなら数日前、劒さんに『出れんの?!サマソニ?!』オーディション時の話を聞いていたからだ。渋谷O-eastまで劒さんがベーシストのバンド・あらかじめ決められた恋人たちへのライブを客として観に行ったときのこと。
「いやー、の子くんがエフェクター全部家に忘れてきてね…」
うっわあ。なにやってんだ。人生一度あるかないかの勝負時になんでそんなことになるんだ。の子は『夕方のピアノ』をボーカルエフェクター無しで歌ったという。「死ねー!!」と生声で叫ばれるオーディションは一体どのような空気だったのか。こんなので受かるはずがない。投票数を多く獲得し、最終審査まで行けただけでもういいじゃないか。と、半ば諦めていた。それがまさかの。
「みっちー、あなたの目は正しかったね!」
劒さんからメールが届き、サマソニ出演決定という現実をようやく受け止めた。僕の目ではなく、審査員の目がぶっ飛んでいるのだろう。ライブを一ヶ月に一回やるかやらないかのバンドが巨大ロックフェスにいきなり出るなんて、夢のような話だ。
ポップカルチャーのニュースサイト・ナタリーでも取り上げられた。
『サマソニ一般応募枠にEES、神聖かまってちゃんら16組』
最も集客数の少ない無名のバンドが、なぜか記事のタイトルに。これはナタリーの社長・大山卓也さんがツイッターで「神聖かまってちゃんが気になる」と呟いたことが関係しているのだろうか。ナタリーに気に入られると、一気に飛び火しそうな予感がする。
その夜、神聖かまってちゃんは配信をしていた。サマソニ出演決定を告げるニコニコ生放送。そうなんだ。ほんとに出るんだ。うっわあ。リスナーからは「ぶちかませ」「伝説を作れ」「サマソニで脱げ」などと激励されていた。この状況、奇跡としか言い様がない。
みさこからメールが届く。の子がサマソニのライブをどうしても撮影してほしいという。その日、平日だ。出番は夕方頃らしいだけど、間に合うのか。仕事を休めるかどうかも分からない。その後、の子からも連絡があった。
「絶対やらかしますんで俺!!」
もう、仕事を休むしかなかった。その瞬間を見逃すわけにはいかないし、撮らない理由はない。

数日後、柏で再び神聖かまってちゃんのメンバーと会うことになった。
の子は僕の友人が某テレビ番組で取材されているのを偶然見たことがあり、興味を持っていた。その友人2人と僕とメンバーとで『飲み会配信』をしたいと打診され、行なうことに。
いやしかし、の子にとって"飲み会"なんて最も苦手な場じゃないのか。みんなでわいわいとする場なんて耐えられるのだろうか。だけどこの頃、彼は配信のネタを探しに探しまくっていた。ネタの一つとして捉えると、別に心配しなくてもいいのだろうか。
「竹内さん、本名とか働いてる会社の名前とか、配信で言っちゃマズイことってあります?」
千葉へ向かう前、の子から電話があった。配信に出てもいいか尋ねられ、意外な細かい気遣いと、律儀な態度に驚いた。配信やライブなどでは"キチガイ"と形容される行動もあるが、やはり彼は正常な意識を持っているのだろうか。そして「みさこって奴がいきなり喋るかも知れないんで、一応…」と、みさこがなぜか危険人物とされていた。

柏に着き、友人と合流。ちょうどその日、柏駅西口では『柏まつり』が開催されており、多くの家族連れで賑わっていた。大音量で音楽が鳴り、とにかく騒がしい。車道が渋滞しているようで、遅れて神聖かまってちゃんメンバーが到着。みさこだけがまだ少し遅れるという。
もはやサマソニ出演者となった神聖かまってちゃん。だけど、やはり柏の風景に馴染む、どこにでもいる若者たちに見えた。
唯一おかしいのは、開いたノートパソコンを手に持っていること。
そして、の子の腕。
ズタズタに切り刻んだ傷が大量にある。
ビックリした。遠くからでも分かる。畳の模様にも見えるくらいのおびただしい傷だ。木村カエランドで会ったときは一つも無かったのに、一体どうしたんだ。
少なくとも、転んで擦り剥いたような傷ではない。
アームカットというやつだ。
自ら切り刻んだものだと誰が見ても分かる。
以前、アームカットをするような女の子と一瞬だけ付き合っていたことがある。知り合ったのが春先だったので長袖を着ており、付き合うまでは気づかなかった。それはもう大変だった。躁鬱が激しく、1時間のうちに人格がころころと変わる。都合の悪い状況になると、「私、死ぬよ」と自分を人質にする。
早い話、"かまってちゃん"だった。
危険を察知してすぐに別れたが、その後、深夜にかかってきた電話は忘れられない。「竹内さん、月がキレイだよ」「竹内さんの家に包丁がなくて良かったね」と、ロマンチックと狂気を併せ持った内容にいちいち震えた。腕の傷を見たことにより、その恐怖を思い出してしまった。
「今日は飲みましょう!」
の子は笑顔で話しかけてきた。いかにもリア充感溢れる飲み会と腕の傷とのギャップは計り知れない。胸元にも切り傷があった。心の傷を視覚的に訴えかけているように思えた。傷の多さに圧倒され、触れることはできなかった。monoとちばぎんは以前から知っていたのか分からないが、普段通りにの子と接していた。
それにしても気になる。穏やかではない姿だ。見てるこちらがヒリヒリしてしまう傷だ。

ちばぎんがパソコンを設定し、柏駅前での配信が始まる。順番にパソコンを渡され、配信に出ることになった。その様子を少し離れたところで、手を後ろに組んでなぜか紳士的な表情で眺めるの子。授業参観に来た父親のような佇まいだった。
配信ではリスナーからの容赦ないコメントが流れる。の子は「ハゲ」、monoは「アゴ」、ちばぎんは「脱退しろ」、みさこは「黒乳首」と書かれようが、喋り続けなければならない。「新曲、いまいちだった」などと、アーティストがリスナーの正直な意見と向き合うことなんていまだかつてあっただろうか。恐怖も危険性もたくさんあるだろう。ウェブカメラの前に姿を現した瞬間、叩き台となる。僕が映ったときに流れた文字がそれを物語っている。
「いまのところイケメンなし」
本当にごめんなさい。

「今から俺、祭りの中で"あるてぃめっとレイザー!"とか叫んでくるんでちょっと待っててもらえますか?」
の子がノートパソコンを持ち、突如として『祭り配信』がスタート。祭りの中へと消えていく。monoとちばぎんも「すいませんね…」と言い残し、の子を見守るようについていく。子どもから老人までが輪になって踊る中へ向かっていく。「おしっこがー!おしっこがー!」などと楽しい祭りの風景をさぞかし一変させたに違いない。やがて約30分後、の子がなぜか上半身裸になって帰ってくる。思う存分に叫んできたのか、若干疲れている様子。それでも瞳孔は開き切っていた。
その後、大型チェーンの飲み屋に入る。の子はパソコンを手に持ち、上半身裸のままだ。店員さんが「着ていただかないと、ちょっと…」と入店を拒む。そこで、の子とちばぎんの言い争いが始まった。
「服着ろよ!」
「絶対着ねーよ!!」
説得するちばぎん。なぜか頑なに拒むの子。聞き分けのない子どもと、それに振り回される父親。そんな関係にも見えた。祭りの近くの飲み屋だけあり、次々と家族連れが入ってくる。その人々の目には、上半身裸、そして傷だらけの腕でノートパソコンを持っているの子の姿がどう映ったのだろう。あそこまで露骨に「見ちゃダメ!」といった様子で子どもの目を覆い隠す母親を初めて見た。正しいと思う。
店内が忙しいのもあり、やがて上半身裸のまま自然に入店することになる。店員さんに「あとで着るんで…」と小声でお願いし、ようやく本来の目的である『飲み会配信』の場へ。店の個室に入る。
が、電波が届かないのか、突然配信がストップする。戸惑うの子はmonoにパソコンを預け、配信を復帰させようとする。「なんだよこれ、分っかんねー」とmonoが困りながらパソコンをいじっていると、注文した飲み物が届く。
結局、配信は諦めることに。その瞬間、ちばぎんに電話で道案内されていたみさこがようやく駆けつける。なぜかボブのウイッグをつけており、配信に出る気満々だったようだ。見事に空回りしていた。

メンバーも飲み物もすべて揃ったということで、配信は無い、単なる飲み会が始まる。
まずは乾杯。彼らにはちょうど祝いごとがあった。
「サマソニ出演決定、おめでとうございまーーーす!!」
「うぇーーーい!!」
の子は元気いっぱいだった。腕の傷を忘れるくらいの笑顔を見せていた。
個室といっても隣には主婦グループのテーブルがあり、すでにアルコールででき上がっている。横から「おめでとーー!!」となぜか乾杯に参加してきた。
「サマーソニックって知ってるんですか?」
「知らなーーい!」
主婦たちは完全に酔っ払っている。ノリノリだ。旦那や子どもの愚痴などで盛り上がっていたのだろうか、彼女たちのチームワークは半端ない。「B'zとか出るんですよ」と教えると「すごーーい!」と反応。そこでの子が「俺、B'z大好きなんですよ!」とやたら主婦に絡もうとする。
「誰がボーカルなの?」と尋ねられると、「あの人なんですよ!」との子が僕を指差す。信じてしまった主婦の一人が興味津々に絡んでくるので、神聖かまってちゃんがいつの間にかギターボーカル・竹内、ベース・ちばぎん、ドラム・みさこというスリーピースバンドとして認識された。そのまま作り話を盛り上がらせ、ついにはスペイン語で歌うバンドに。「歌ってよー」と言われて困っていると、ちばぎんが助け舟を。
「ま、そんな感じのインストバンドです」
ボーカルはどうした。
「インスタントバンド?」
主婦は聞き間違えていた。

普通に飲み会として、メンバーと楽しいお酒を飲めた。サマソニ出演決定についての話から、昔のライブの話まで。の子は僕の友人と喋り続け、monoはノートパソコンをいじりながら会話に参加し、ちばぎんとみさこはよく笑っていた。

しかし、1時間ほど経過したあたりから、の子の様子が次第におかしくなっていった。

先ほどまで楽しそうにしていたはずなのに、ふと見ると、彼の身体が固まっている。
表情がフリーズしている。
パソコンで言うと砂時計が表れたような姿になっていた。
彼の手元には精神薬があった。楽しそうに喋るメンバーを虚ろな目で観察しており、不穏な空気が漂い始めていた。
メンバーと友人らも僕も、その空気を察知しつつも、どう接すべきなのか分からない様子だ。FMおだわらのラジオ出演同様、見るからに鬱状態。でもこの日は、収録時とは比じゃない。一触即発のムードがあった。導火線の短い爆弾が突然放り込まれたような飲み会になっていた。腫れ物に触れないようにする分、の子が孤立していくように思えた。
みさこはそれを気に留めながらも、笑顔での子に話を振る。
そこで爆発してしまった。

「ああ?なに見てんだ。なんだこのやろー。おい!ああ?!てめーらなんなんだよこのやろー!!ふざけんじゃねーぞこのやろーー!!!」

突然、の子の怒鳴り声が店内に響く。

一瞬で凍りつく空気。
静まる店内。
隣の主婦グループのグラスを持つ手が止まる。後ろの個室の家族連れも一斉に反応する。
それくらいの大きな声で、の子は怒鳴り散らした。
「おめーら、人がどんな気持ちなのかわかってんのかこのやろー!!」
ライブ中、いや、それ以上のシャウトが飲み屋を支配する。その怒りはメンバーに向けたものであるが、真意は掴めない。早く帰りたくなったのか、配信ができなかったことへの不満なのか、この空気が耐えられないのか。一体どうしたのだろうか。
模索する間もなく、の子は何度も怒鳴り続ける。
「なんなんだこれ!つまんねーよこのやろーー!!」
「俺だって早くお開きにしようと思ってたよ!!」
monoが反論する。の子の怒りは収まらず、歯を食いしばる。そしてまた怒鳴る。先ほどまでの表情とはまるで違っていた。monoからノートパソコンを奪い取り、配信していないのにも関わらずそのまま手に持って叫び続ける。
「なんでお前ら人の気持ち何もわかんねーんだよ!!」
「じゃあちゃんと言えよ!!」
ちばぎんも怒鳴って反論する。「言えよって、わかるだろ!!」と、の子は僕と友人の視線を気にしながらメンバーに訴え続けていた。何が言いたいのかは分からないが、苛立っている気持ちは十分伝わる。
その姿は見ていてヒリヒリする。恐さよりも切なさが勝っていた。みんな理解しようと思っているが、誰にも理解できない。本音を一言話せばいいだけなのかも知れないが、それが出来ないでいる。配信などではたくさん喋っているが、彼は実のところ、本当に言いたいことは何一つ言えていないのかも知れない。だから態度で示すが、相手には伝わらない。ただ、溜め込んだ感情が裂け目から沸騰し、ぶちまけられる。求める気持ちから生じる摩擦の火を、一人で起こしている。それが今、激しく燃え上がり、炎上している。メンバーも彼の気持ちを汲み取ろうとしているが、その量があまりも大きく、抱えきれないでいる。
腕の傷もその一つなのだろうか。
怒りでブルブルと震える腕が抱えるものは、ノートパソコンと傷。細い腕一本で、たくさんの表現欲求と大きな痛みをすべて背負っているようにも思えた。
突然の怒鳴り声で凍りつく飲み会。
こんな状況で不謹慎だが、なぜかライブを観ている感覚に陥ってしまった。

「こんなの全然ロックじゃねえよ!!!」

の子は大きな声で怒鳴り、個室を出ていった。

驚いた。
素でこんなことを叫ぶ人なんているのか。絵に描いたようなキャラクター。そしてなぜか胸に響く叫びセリフ。
映画でもライブでもない、日常で、こんな言葉が聞けるとは思わなかった。
まるで物語の中に放り込まれたかのようだ。
こんな状況で言うのもなんだが、痺れてしまった。

しかし、彼は出ていく方向を思いっきり間違えていた。

「出口逆だよ!!」
ちばぎんのツッコミが空しく響いた。これは恥ずかしい。の子は店の奥まで歩いていってしまった。せっかくかっこいいことを叫んだのに、逆方向へ歩いていくの子の姿を再び見ることになるなんて。隣の主婦グループは「なんなのかしら急に。カンジ悪いわ…」と場の空気を悪くさせたの子への愚痴をこぼしつつ、飲みを再開していた。
程なくして、の子の姿が。
なんと、再び個室に戻ってきた。

彼はイライラした様子で「なんなんだ…なんなんだよちくしょう…」と呟きながら、片手でズボンのポケットを弄り始めた。
すると皺くちゃの千円札が二枚出てきた。それをテーブルの上に無造作を置く。
これは会計か。出口を間違えたのをいいことに、律儀にも飲み代をわざわざ払いに戻ってきたのか。

「人生は一度きりしかねえんだよ!!!」

再び大きな声で怒鳴り、個室を出ていった。

が、また出ていく方向を思いっきり間違えていたのだ。

「出口逆だよ!!」
再びちばぎんのツッコミが。
まさかの天丼。
今度はさすがに笑いが生まれ、場の空気が和らいだ。

怒りをぶちまけた熱血人生劇場が、いつの間にかコントに。
これはの子の天然なのか、それとも場の空気を悪くしたせめてもの償いなのか。突然のサービス精神に度肝を抜かれた。せっかく痺れたのに、感動を返してくれ。そして行き止まりに気づいたのか、数秒後に逆方向に歩いていく彼の姿。それはなんとも情けなく、おかしい。そして妙に愛おしかった。
緊張感を覚えた分、同じくらいの安堵感を得た。そして苦い気持ちになった分、同じくらい笑ってしまった。
なんなんだ、この人は。

「すいませんね。俺ら、追っかけないといけない感じなんで…」
ちばぎんが謝り、メンバー3人が席を立つ。ノートパソコンを持ったまま店を出ていったの子を追いかけるという。重たい空気を背負いながら荷物をまとめるmono、ちばぎん、みさこ。の子が置いていった皺くちゃの札に重ね、会計を先に払おうとする。の子のあまりの癇癪が気になり、ちばぎんに尋ねた。
「こういうことって、よくあるんですか?」
「まあ、年に何回かって感じですね…」
ため息まじりに呟いた。monoは「はーー」と落ち込んでいる様子で、みさこは何も言わずにそのまま出ていった。結局、みさこのボブのウイッグは何の役割も果たしていなかった。
こうして、神聖かまってちゃんが嵐のように去っていった。

その後、友人2人と先ほどの出来事を語り合った。
あれは一体何だったのか。何に対して怒ったのか。二度目の出口の間違えはわざとなのか。いや、あれは実は配信が止まっていなくて、作為的なものだった。いやいや、配信はやっぱり止まっていた。天然だろう。いや、計算だろう。というかそもそも、みさこのボブのウイッグは一体何だったのか。
「なんだか、ライブ観てるような感覚だったね」
「怒鳴り声は恐かったけど、なんか、かっこよかった」
話題は尽きなかった。
そんな中、突然、の子が個室に戻ってくる。
ものすごいスピードで歩いてきたが、とてつもなく神妙な面持ちだった。
「さっきはマジですいませんでした…いやほんと、マジですいませんでした…」
傍に座り込み、何度も何度も謝ってくる。「いやいやいや」とこちらもなんとなく謝る。彼の本心に気づかなかったのはメンバーだけでなく、当然僕らにも責任がある。それでも「ほんとすいませんでした…」としきりに謝り続け、こちらが申し訳なくなってくる。
たったの数時間で、の子のあらゆる表情を見てしまった。
不器用だが、自分の感情に素直だ。はつらつとした笑顔と、震えるほど怒りに満ちた顔。飲み会と、腕の傷。あらゆる両極端がそこにあり、バランス感覚さえ感じた。ライブのような迫力だった。生々しい人間模様を見た。神聖かまってちゃんを知って初めて、の子の心の痛みを感じてしまった。
「じゃあ、メンバーが車で待ってるんで…また会いましょう」
の子は後悔と反省に包まれたような表情のまま、個室を出ていった。

あっという間に過ぎていくすべての出来事に、ただただ圧倒された。
音楽とは関係ないところなのかも知れない。
単なるワガママなのかも知れない。
だけど、あそこまで人との摩擦を肌で感じさせる人を見るのは初めてだ。それほど自我があり、求めていることが大きいのだろう。それが音楽に繋がっている。『いかれたNeet』で歌われている通り、の子の音楽は日記そのものだ。人間性や精神、記憶や想像すべてが直結しているように思う。
ますます、神聖かまってちゃん、そしての子という人が気になった。追求したくなった。
僕と友人らは見事に終電を逃し、ネットカフェで一夜を過ごす。ネットの神聖かまってちゃん関連の掲示板で見る限り、やはり配信は個室に入った時点でストップしていたようだ。
「こんなの全然ロックじゃねえよ!!!」
「人生は一度きりしかねえんだよ!!!」
あれは演技でも何でもなかった。
の子は本当にロックを求めていた。そして、誰にだって人生は一度きりしかない。どちらも間違いではないのだ。
あの叫び声を、きっと忘れることはないだろう。

やがて朝になる。
始発で帰ろうと、外に出た。昨晩の祭りの賑やかさとは打って変わり、柏駅周辺は静寂に包まれていた。そこら中にゴミが散らばり、空は青く、夏の朝日が光り輝く。日光により、一瞬で退色したかのような駅の看板。荒れてはいるが、どこか清々しい。
まるで台風が去った後のようであり、神聖かまってちゃんが去った後のようだった。

その台風はやがて巨大な暗雲と嵐を引き連れ、千葉県の幕張に到達する。

サマーソニック2009の当日がやって来た。


~続く~

2011年12月13日火曜日

神聖かまってちゃん@新木場STUDIO COAST




神聖かまってちゃん『26才の夏休みTOUR』の追加公演。場所は新木場STUDIO COAST。

巨大LED画面を使用し、彼らにとって4度目のニコニコ生放送ライブ。東京でのライブはこれが見納め。
今年も神聖かまってちゃんには色んな出来事があった。
の子さんが怒って打ち上げ会場を飛び出した"お米ぱくぱくはいはい"事件や、配信でみさこさんが精神的不安による血尿を打ち明けたり、monoくんがちばぎんに不満をぶちまけてなぜか相撲対決するなど、メンバー間の亀裂や悩みを自らネット上に晒すこともしばしば。ハラハラする展開も少なくはなかった。それでも2度の『カミスン!』出演、配信では坂本龍一との共演桑田佳祐がラジオで絶賛するなど、いいニュースもたくさんあった。
この日、その集大成のライブとなるのか。過去最大級のキャパのライブハウスでそれが観れるのか。来年の更なる飛躍を予感させる、素晴らしいものが観れるのだろうか。

これが、まさかの大波乱のライブとなりました。
お米ぱくぱくはいはいどころではありませんでした。お米すらなかったです。

会場に着くと、STUDIO COASTの看板を写真に収めている人がいた。カメラマンの佐藤さんだ。看板には『SHINSEI KAMATTECHAN』と書かれてあり、まるで来日したかのようなバンドに。
要塞のような巨大なライブハウスを眺め、神聖かまってちゃんがついにここまで来たんだと感慨に耽る。何度感慨に耽ってるのか。感慨も安くなりそうだ。
だけど、更に感慨に耽ってしまう光景を目の当たりにした。
monoくんに会うと「ちばぎんが風邪でダウンしてるんで、励ましてあげてください」と楽屋に案内される。入ると、なんとVIPルーム。王室のようだ。エレガントな鏡、ソファ、そして部屋がとにかく広い。二階建てだ。神聖かまってちゃんは王にでもなったのかと感慨に耽った。どこでどう時間を過ごしても優雅にしかならない楽屋。それでもの子さんとみさこさんが配信をしており、いつもの神聖かまってちゃんのライブ前の風景があった。
二階に上がると、ちばぎんが倒れていた。マスク姿で、目は半開き。それもハート型のベッドの上で。奥にはなんとプールがある。瀕死の状態のちばぎんとその優雅な部屋とのギャップは計り知れない。ベッドの上にはちばぎんが書いたであろうセットリストが散らばっており、曲名がもはやダイイングメッセージにも見えた。"美ちなる方へ"が別の意味に思えた。そっちの方に行かないで!
先日の『謎の日』のピックアップゴールドのライブ映像をDVDにまとめたものを渡す。音をちゃんと合わせて作ったので、なにげに作業中は何時間もピックアップゴールドの曲を聴き、ちばぎんワールドに浸りまくることになった。
「ありがとうございます頑張ります…」
あのときスーツ姿でビシッとキメていた"大作"はゴホンゴホン!と大きな咳をする。明らかにまともにライブできる状態ではない。どうにか持ちこたえてほしい。そうだ。吐き捨てて、すべて壊せばいい。爆音とともに。明日に矢を放て!ピックアップゴールドの歌詞を引用し、彼の健康を願うしかない。

オープニングアクトはNATSUMEN。
これがもう、圧巻のステージ。オーケストラのように楕円形に中央を取り囲む配置で、言葉を必要としない音の数々が容赦なく攻めてくる。会場は神聖かまってちゃんファンばかりという完全にどアウェイな空気。それでも、ひたすら鳴り続ける山本達久さんのバスドラが服を揺らす。音が振動を与えてくる。AxSxEさんは終盤、ギターを叩き割るかのような激しいアクション。鋭く尖りまくっていた。とにかくかっこいい。
「俺らもニコ生配信したかったんやけど、髪切る時間がなかって…」
親しみのある関西弁で話すAxSxEさん。山本達久さんに「かまってちゃんの録音した人だよ」と紹介されつつ、最後の曲は『AKIRAMUJINA』。BOaTの『RORO』の2曲目。大学時代、研究室で助教授がなにげなく流していて、「竹内くんはBOaTとか聴かないの?めっちゃええで」と教えてくれた。懐かしい気持ちにもなり、そしてホインさんがボブでギターで完璧だった。

NATSUMENが終わると、客席でくるみちゃん(5才)を見かけた。の子さんのことが大好きなお子さんだ。ツイッターでお母さんのつぶやきを何度も見かけ、あらゆる評論家のかまってちゃん論を凌駕する発言に感銘を受けていた。
「あのね、くんちゃんは、の子が、女の子になったり、男の子になったり、するのが、すごくいいとおもう」
かわいいし、的確に"の子"を捉えている。最高だ。こっそりファンなので、見かけて嬉しかった。『なりきり"の子"』の写真がかわいすぎます。いつか、この子が書いた神聖かまってちゃんに関する作文を見たいです。

神聖かまってちゃんの出番になる。

もはや恒例となった劒マネージャーの挨拶、通称・TRGがスタート。禁止事項や諸注意などを告げるが、なぜかマイクを何度も持ち替え、挙動不審な動きをし、「あのー」を連発する。
「皆さんで助け合って…あのー、えーと、セルフプロデュース」
真剣に語っているのにも関わらず、時折笑いを起こしていた。
やがて『夢のENDはいつも目覚まし!』が流れ、巨大LEDに映像が映し出される。ニコニコ生放送のコメントが流れ、最前列のお客さんが映し出されると"女大杉""サンタがいるwww"などといった書き込みが。
曲が2番のサビに差し迫る頃、メンバーが登場。大きなリボンを髪に付けたみさこが「うわー、めっちゃおる!人がゴミのようだ!」とムスカに。ちばぎんはやはり動きが鈍く、"ちばぎん大丈夫か…"と心配するコメントも。monoがゆっくり歩きながらステージに現れ、の子だけがいない。登場SEが流れ切ってしまい、「うわっ、曲終わった!」とみさこ。
遅れての子が登場。配信中のノートパソコンを持っており、目をかっ広げている。ちばぎんにノートパソコンを渡し、なぜかちばぎんのマイクで話し始める。
「で、あぁっとぅえぃす僕はまたヒストリーを起こす」
まったく呂律が回っていない様子。観客が歓声を上げる。LED画面を見上げ、「見づれー!"の子かわいい"うっせーこのやろーさっき聞いたよ!」といつもの配信の調子で喋り、「やっぱ今日来てよかったっしょ?」とまだLED画面とメンバーが登場しただけなのに観客に尋ねる。ずっとちばぎんのマイクスタンドの前にいるの子に、ちばぎんが「の子さん、向こうです」と小声で呟く。
自分のマイクスタンドに向かうの子に、客席から可愛らしいぬいぐるみが投げ込まれる。「なんだこれ?」と拾うmono。「"アイマスおもしれえ"関係ねーだろこのやろー。俺はな、ここで雑談配信するからな。それ観るだけでも3000円払う価値はあるだろ」との子が喋り続け、ちばぎんが「そんな感じで神聖かまってちゃんです!」と無理矢理進行させてデーーーーン!といつも通りベースとドラムだけが鳴り、ようやくライブがスタートする。

「1曲目、ライブでは初めてで配信でもやったことないんですけど、『雨宮せつな』という曲を」
ちばぎんが告げると、客席から歓声が。CD化もされていない上に、YOUTUBEにもPVとして上げられてはいない。公式サイト『子供ノノ聖域』でmp3でアップされているだけなのに、認知度はやはり高い。
「ちょ、ちばぎん早い!全然準備できてねーんだよ。もっとなんか冬っぽい感じにしてくださいよ」との子が照明を注文しつつ、"アニコレきた"などとAnimal Collectiveの楽曲のパクリだというコメントに対し、「アニマルコレクションとか聴いたけどあんなもん全然似てねーじゃねーかよこのやろー!」と反論。あれ?名前が可愛らしいことになってないか?「アニマルコレクションって何の曲だか全然わかんない」と更にmonoが可愛らしいことに。"動物集めてどうすんだよ"といったコメントが流れる。
「お前らペットボトル投げんじゃねえ。チバさんだったらいいけどな、このなんかグリコのオマケみたいなもの投げると俺死んでしまうからな」
かの有名なミッシェル・ガン・エレファントのチバ・ユウスケがペットボトルをぶつけられて倒れるという『ペットボトル事件』を引き合いに、先ほどのぬいぐるみなんかで死んでしまうらしいの子。まだ喋り続ける。メンバーが演奏を促そうとするも、「この曲はもっとゆっくりゆっくり始めたいんだよ」と訴える。

の子の要望通り、照明が"冬っぽく"青みがかる。ようやく『雨宮せつな』の演奏が始まる。の子の好きなAV女優の名前が曲名になっているが、AVとはまるで関係ないように、もしくはAVを見た後の賢者タイムのように、幻想的でセンチメンタルなメロディだ。
途中、キィーンと大きな音が何度も鳴り、ニコ生のコメントには"!?""うるせー!""なんだこの音は!?"などと批判が飛び交う。メンバーの後ろには正直な感想が次々と流れていき、リアルタイムでライブが批評されていく感覚。曲に素直に感動しづらい環境でもある。
カメラがの子を映すと何重にもの子が画面に映り、何度もエンドレスの子の光景があった。それがなぜか壮大にも不気味にも思えてくる。

「これ、良かったろ?(歓声に対し)お前らうわべだけで良かったつーけどな、こいつらだよ!(画面に向かって)お前ら良かったのかよこのやろー!」
演奏後、感想を求めるの子。"いいに決まってんだろ!""よくはない""ふつう"などとコメントが流れる中、"さんま御殿みてた"というコメントも。たしかに、客席の反応よりも配信のコメントのほうが正直だ。その分、恐い。ヒリヒリしたムードも与えてくる。配信のコメントのほうがリアルな意見なのかも知れない。会場で体験するほうが明らかにリアルなのだろうけど、神聖かまってちゃんを見ていると、ネットのほうが現実に感じる瞬間がある。容赦ないからだ。
この日、冒頭からの子はどこか調子が掴めない様子だった。表情のバリエーションも少なく、喋り方もいつも以上にケンカ腰。monoとの会話も微妙にかみ合っていないように見えた。
「じゃ、『あるてぃめっとレイザー!』いきまーす」
無表情のまま告げ、突然ギターをかき鳴らす。『あるてぃめっとレイザー!』では恒例のmonoダンスが始まる。中央でただひたすらシャドウボクシングのような動きをし、だんだん動きのバリエーションが無くなっていくのが見所の一つだ。
途中、の子の歌がリズムに追いついていない瞬間もあるが、何度も「あるてぃめっとレイザー!」と叫んではギターを掻き鳴らす姿はやはりかっこいい。そして巨大LEDに流れる多くの"あるてぃめっとレイザー!"というコメントが視覚効果にも感じる。神聖かまってちゃんのライブでしか味わえない、特別な空間だ。

「"声大丈夫?"うるっせー心配するなこのやろー。今日は時間が限られてるようだけど、どんどんやっちゃうぞ」
の子の宣言にちばぎんも「はい、どんどんやりましょう!」と促すが、の子はなぜかビートルズの『Free as a Bird』を歌い出すなどとやはり自由。「じゃ、『ねこらじ』いきまーす」とちばぎんが強引に進行すると、「なんだよ…」と不満そうなの子。
「やだ!」
の子の一言。ちばぎんとみさこが収拾をつけるように「はい!」と言い、やる気のない声で「ひぃふぅみぃよぉ」との子がカウントして『ねこらじ』へ。演奏が始まると先ほどまでの悪態がウソのように、生き生きと「上へ、上へ、かけのぼってくー」と歌いながら両手の拳を突き上げるの子。が、どこか無理矢理テンションを上げているようにも見える。サポートバイオリンの柴さんが奏でる音色が後半の展開を盛り上げ、"柴さんに助けられた""バイオリンいいね"といったコメントも。
間髪入れずにちばぎんが『レッツゴー武道館っ!☆』のベースを弾き、の子は「はえー!」と言いながらもリズムに合わせて歌い始める。客席からは「やーねー!」という掛け声、"やーねー!"というコメントが乱れ撃たれていた。

「"面白いこと言えよ"?面白いこと、言ってもらいたい?」
の子が観客に尋ねると、大きな歓声が。「これから重大発表があるんですよ」と、この日ナタリーでニュースになった神聖かまってちゃんの重大発表へのカウントダウンの話題に。「とりあえず解散するんですよー」と言うと、少し戸惑い気味の反応が。普通ならその唐突さに笑いが起きるかも知れないが、若干リアルに受け取れてしまうのだろうか、遅れ気味の「えーーっ!」という声が会場を包んだ。「しないしない!」とmonoが否定する。
「今日は追加公演だからね。すっごいなんか、人には見せられない感じのことをしたいって僕は思っていますー」
の子の宣言に、歓声が上がる。恐らく「普段では見せられない」と言いたかったのだろう。人は目の前にたくさんいる。「人には見せられないことをしちゃうの?」とちばぎんがつっこむ。コメントの少なさに「お前ら過疎ってんのかこのやろー!」との子が画面を見上げる。この日、ニコニコ公式放送だけでなく、神聖かまってちゃんも自身のチャンネルでいつも通り配信をやっている。コメントが分散しているからか、それほどコメントが多いようには感じられなかった。

「お前ら、テンションこのままで!君も維持して俺も維持してそのままいくぜ!ベイビーレイニー」
みさこが「ちゃららちゃららー!」と甲高い掛け声を発し、『ベイビーレイニーデイリー』へ。monoのキーボードが美しく鳴る中、なぜかの子が履いていたズボン(スカート)がポーーンと脱げる。すかさずスタッフ・成田くんが受け取り、ステージ脇がささっと織り畳んで保管。パンツ姿になったの子は演奏後、ステージ前で両手を広げて無言で「脱げました」アピール。
「の子さん、いつの間に脱いだんすか?」
「すっごいなんかもう、トランクスらしいトランクス履いてますね」
ちばぎんとみさこがコメントする。の子は成田くんからズボンを受け取り、履く。「脱げー!」といった歓声が飛び交う中、「だろ?ああ?お前らがやったらいいんじゃねえの?ああ?」との子が返答するが、どこか空回りしている様子。何を言いたいのか誰にも分からない、コミュニケーション不能の状態。まともに会話のキャッチボールができないまま、の子の発言が放置されるかのように演奏に向かう。
ちばぎんが『自分らしく』のベースを弾き始め、みさこがバスドラでリズムを取る。monoが「おい!おい!おい!」と両手を振り上げながら叫び、「このリズムに!ついて来れるかな!」といった具合に慣れないアジテーションを展開。そしてmonoがポンポコポンとパーカッションを軽快に鳴らし、の子が『るーるる村のがんばりどころ』を歌いながら曲に突入する。
後半のmonoのキーボードに移行する瞬間には、毎度お馴染みの高揚感が。この曲では叩いたり踊ったり弾いたり、マルチプレーヤー・monoがとにかく輝いている。
そしてまた、の子のズボンが脱げる。

「衝撃的なことにドラムのところにセトリが無いんで、毎回教えてください!よろしゃす!」
みさこ、セットリスト無しでライブをやっていたことを告白。といっても、セットリスト通りにいくとは限らない神聖かまってちゃんのライブではそれほど焦ることではないのかも。
の子はまだコメントの少なさを気にしている様子。「"脱げ"?脱がねーよ!」と答え、monoが「脱いだらBANになっちゃうからね」と。昨年9月の渋谷AXを思い出す。あの日は下半身が露出したことで、LEDの画面が青くなった。の子は再びズボンを履き、ちばぎんが「次の曲いきましょう。『制服b少年』を」と進行させていく。
「ピョンピョン、あれなんか、隣の奴ぶん殴れ!社会人の奴なんていっぱいいるんだから、復讐しろ!俺はぶん殴るな!」
の子の過激な発言に、monoが「隣の人関係ないよ!」、みさこが「私、隣の人いないから殴られずに済むぜ」と言うと、「うるせー、つまんねえ。どうでもいいんだよ。とりあえず『制服b少年』いくぜ!」との子が一蹴し、演奏へ。
キーボードの音について"かわいい"とコメントが流れる。の子の歌う歌詞がところどころ曖昧で、"ちょw歌詞www"といったコメントがたくさん流れる。

『制服b少年』が終わると、ちばぎんが『夜空の虫とどこまでも』のベースを弾き始める。ちばぎん、弾き始めることで進行を促そうとする無言の働きかけが、もはや定番になってきている。風邪もあってか、顕著に表れている。の子は「はえーよ!もっとMCさせろ!」と言いつつも、観客の手拍子が鳴る中、キーボードの前に向かう。なぜか帽子を被って。
の子がmonoを手で指図し、マイクを取るmono。「おい!このリズムが鳴ったら、何が始まるか分かるだろ?お前ら頼むぜー?」とまたもや慣れないアジテーションを。だが、の子にマイクをぶん取
られて「こんなドキュンなノリじゃねーんだよ!」と一蹴される。

「もっと俺は一人になりたい。孤独になりたい。別に関係ねえ、客がいようがそんなことはよー。これは一人で作った曲なんだ。家で。ほんとに心が荒んでいるときに。そんなんお前らには関係ねー。俺はそれをここで表現するだけ」

『夜空の虫とどこまでも』は鬱状態のときに作った曲であると、本人の口から聞いたことがある。たしかに、この曲から感じるものは孤独そのものだ。一人のちっぽけな影が夜の巨大な闇に包み込まれるような。だけどそれが悲しいというより美しい描写に見えるような。当然だろうけど、神聖かまってちゃんの楽曲は彼が一人で作ったものばかりだ。そこには観客もメンバーも知人の顔もない。大きなライブ会場でも、まるで一人部屋にこもっているように、ひたすらキーボードを見つめて演奏するの子の姿が印象的だ。
「俺は、深夜徘徊、俺は深夜徘徊をする、深夜徘徊していた頃に作った」などと冒頭は即興ラップを披露していた。毎回、ここで放たれる思い付きの言葉が見事だ。
コメントでは星マークが右から左へたくさん飛んでいき、会場で回転するミラーボールにも似た演出になっていた。数々の感嘆の言葉が流れる中、なぜか"バイト受かりますように""みんなが幸せでいられますように""笑える日が来ますように"など、願いを込めたものも。短冊のようなLEDだ。匿名の願いが次々と飛び交い、音楽も相俟って、なぜか感動的な光景に見えた。それでも、帽子を被っているの子について"給食当番みたい"といった気の抜けたコメントも。

演奏後、の子は「こんだけ人いるのに、もっと盛り上がれよ!」と観客のノリに不満そうな様子。「いや、そういう曲じゃないでしょ」とちばぎんがなだめるが、「俺が盛り上がらせるんじゃなくて、お前らが盛り上がらせろよ」と注文。「"客のノリが悪い"?言ってやれよこいつらに!」との子が現場の観客をアジテーションし、パソコンの向こう側の観客に大きな歓声を見せつける。
「今日は時間がねーんだよ」との子が喋り続ける中、monoが「ちばぎんは正しいことやってるよ」と。ちばぎんがベースを弾きながら、ボイスチェンジャーで「はーい先生ー」と一人でひたすらコーラスしている。
「じゃ、次はリスナーと目の前のお客さんとうちらと一体で曲を作っていこうと思うんですけど、協力してくれますかー?よろしくお願いしますー」
みさこが案内をする中、ちばぎんがひたすら「はーい先生ー」と続けていてちょっと面白い。とにかくサクサク進めたい気持ちが伝わる。「ちばぎん誕生日おめでとー!」と歓声が上がり、「風邪大丈夫ー?」と心配する声も。「大丈夫じゃないっ!」ときっぱり返答。
「ギター低くね?」と尋ねるの子。「低い」という表現が誰にも伝わらず、会場内はシーンとする。「小さい」という意味であると分かると、ようやく反応が。「"低いのはテンション"じゃねえよ!闘志満々だよバカヤロー!」との子が画面を見上げて反論する。「の子ー!」といったたくさんの歓声に「うるせえ!死ね!」と悪態をつく。

こうして『算数の先生』が始まる。未発表の楽曲。現メンバーになる以前、3年以上前にライブハウスで演奏した動画がニコニコ動画に上がっている。の子が「1時間目は、算数よ!はーい先生ー」と言いながら、カミソリで頭を何度も切り、大量に流血するという衝撃的な映像だ。
この日は流血することもなく、時折なぜか満面の笑みを浮かべたりと、表情が豊か。どこか陰鬱なフォークのにおいを漂わせ、まるで三上寛の小学生バージョン。「はーい先生ー」といった声が客席から聴こえ、LEDの画面でも大量に流れていく。不気味な一体感があった。1時間目から10時間目まで歌い、そしてそのまま何時間目も歌うことで「いつ終わるのか」と不安を募らせるが、20時間目あたりからメンバーが本格的に演奏に入ってきて、曲のスケールが拡大。の子の歌もシャウトになる。の子が舌で時計の針の音を表現し、ジャーーン!と音が打ち鳴らされる瞬間がかっこいい。
「算数ができるのかい、算数ができるのかい、"はい先生"とかぬかすけども、そんなことは私の人生に、関係ない」
ぶつぶつ呟いた後、「私の人生、算数よー」という何重にも聴こえる心の声のような響きが、次第に激しい演奏に乗っかっていく。みさこの息継ぐ間もなく叩き続けるドラムがたまらない。突然のアングラ感。この曲だけ、セットリストでは明らかに浮いている。
演奏後、の子が「どうだった?」と画面を見上げてパソコンの前の観客に尋ねる。比較的、絶賛の嵐。「"落ち込んだ"って?」などと読み上げていく。

「ということで、残り2曲なんですが…」
これを言うのは毎度、ちばぎんの役割。「えーーーーっ!!」とお決まりの反応。「そういうもんなんですよー」とみさこがニコニコして応えるが、「俺、まだ5曲しかやってねーぞ!」との子はまだまだやり足りない様子。「5曲しかやってないことはない!」とちばぎんがつっこみ、「『ゆーれいみマン』いきます!」とさくさくと演奏を進めようとする。客席からは「もっとやってー!」という声。
mono「しょうがないでしょー!」
の子「しょうがなくねーよ!金払ってんだよこっちはよー!精神払ってんだよ!」
mono「俺だって払ってんだよほんとによ!」
の子「てか前回よりコメント少ないのはなんでだ?」
mono「NGコメントとかあるんじゃないの?」
の子「NGコメントも来いよ全部!!」
相変わらず、配信の刺激を求めている。しかし、時間は迫ってきている。まだまだ雑談をしたがっているの子であるが、他のメンバーは次々に演奏を促し、そのたびにの子が「ちょ!待てよ!」といったリアクションをする。どちらの気持ちも十分に分かるが、仕方ないことだ。
「前回の骨折がトラウマでぶん殴れないっていうね」との子がmonoの拳について触れる。「もう、の子すらぶん殴れないよ」と言うmonoに、「ああ?ぶん殴れよ」との子。
しかしこれが、後の展開の伏線になるとは。

『ゆーれいみマン』は心なしか、少しテンポが早い気がした。話し足りないことに不満そうな顔をしていたの子であるが、演奏になると表情にも気合いが入る。しかし、入りすぎていたのか、口元から逃げ、言うことをきかないマイクスタンドに腹を立てる。スタンドを直しに来た劒マネージャーの活躍もむなしく、怒りのあまりマイクスタンドを思いっきりステージに叩きつけるの子。
マイクを失ったの子はステージ前でギターを掻き鳴らしながら、両手を上げて観客を煽情。そして「うーっゆれい!」というみさこのふんわりとした声に合わせ、手を浣腸のような形にして垂直に飛ぶという振り付けをする。
間奏はどこかかみ合わず、最後の語りもズレズレのまま歌ってしまっている。それでもなんとか突っ走り、無事に演奏が終了する。
間髪入れずにちばぎんが『いかれたNEET』のベースを始め、その潔い進行に"ちばぎんwww"とコメントが流れていく。monoがマイクを握り、リズムに合わせて即興ラップを披露。「ニートっ。ラップもできねークズニートだけど俺はっ」と言いかけると、の子が強引に入ってくる。「お前はニートじゃねえ。この先結婚する。俺はそんなの興味ねえ。貯金もあと500万もある」と、さりげなく自分の貯金を暴露。黒い笑い声を放ちつつ、「なんだかんだでニートになっていくかも知れないです」と呟き、『いかれたNEET』へ。
monoが「ほーいほーい」といったひょうきんな動きで軽やかにステージを歩き回りつつ、の子の「にぃぃいいとぉおおお!!」という絶叫が会場全体を包む。狂気にも爽やかにも見えるの子の表情がLEDの画面に映し出され、一緒に歌うかのように、その上に"にーーーーとぉおおお!!!"といった文字がたくさん流れていく。
この曲の最後はいつも、ギターを叩きつけるような動きでステージ脇のスタッフの緊張感を漂わせるが、この日は大人しくマイクスタンドの前に立ったままのの子。「ありがとう」と挨拶し、演奏が終わる。大量に"88888888(拍手)"といったコメントが流れる中、メンバーがステージを去っていく。が、の子だけはやはり居座っている。
「まだ6曲しかやっていない!てめーら、生主!生主じゃねえ!聞け!全然やってねえよな?"いい解散ライブだった""限界までやれ"当たり前だよバカヤローほんとに!」
歓声が上がり、の子は満面の笑み。「なんのためにスタジオコーストに来たと思ってんだよ!」と更に観客を盛り上げる。

「俺はここで言いたい!まじで。お客さんがわざわざここに来てくれたってことは、それなりのものをちゃんと還元する、そう、熱い魂、熱い魂のぶつかり合い、摩擦です!そっから生まれるメラゾーマが欲しいんです僕は!まだメラゾーマじゃねーだろてめーらーー!!まだメラゾーマじゃねーだろてめーらーー!!はーびゃびゃびゃーーー!!!」

一人きりになったステージで、中央のパーカッション機材を置いてある台に上って煽情するの子。劒マネージャーが「捌けるように」と背中を叩いて伝えるが、まったく気に留めない様子だ。「延長してー!」という観客の声。やがてノートパソコンを手に持ち、「こっちのほうがコメント多いな」などと呟く。
の子が一人で喋り続ける中、メンバーがステージに戻ってくる。
「の子が引っ込まないせいか、アンコールかなんなのか分かんない感じになってますよ」とちばぎん。「一応アンコールでーす!」とみさこが笑顔で挨拶する。

ちばぎんが「よし!『メモライザ』いきましょう!」と促し、「の子さん、この画面見ながら歌うんだっけ?」とみさこが尋ねると「うるせー!」の一言。「うるせー頂きました!」と破れかぶれに喜ぶみさこ。
『夕暮れメモライザ』は配信のコメントでリスナーに歌詞を打ってもらい、完全カンニングスタイル。これが新時代のライブなのだろうか。
の子がチューニングしている間、monoが「ちばぎん、誕生日プレゼントで一番嬉しかったのは何?」と場を繋げる。「ま、そんなクソみたいな話は抜きにして」との子が話をぶった切る。「なんでだよー!」と言うmonoに対し、「あたりめーだろ。そんな祝いごとは全部死ねよ。ぶっちゃけ俺から言わせてみれば、クリスマスとか正月とかさ、全部死ね!知ったこっちゃねーよ」と答える。
コメントを読み続けるの子。「時間がやばいっす!」とちばぎんが焦るが、「時間なんか関係ねーんだよ!時間なんて存在しねーんだよ!」と不機嫌そうに叫び、歓声が上がる。
こうして『夕暮れメモライザ』へ。
マイクスタンドの方向を変え、LEDの画面に向かって歌うの子。観客に完全に背を向けており、流れていく歌詞を追いながら歌っていく姿が印象的だ。歌い出しから歌詞を間違えており、本気で歌詞を見ないと分からないのが伝わってくる。「ふぁっきゅー」ではカメラ目線をキメていた。しかし、思ったよりもコメントが少なく、若干のタイムラグも関係しているのか、歌詞がほとんど追いついていない。

「コメントの人ありがとうございます。全然歌詞読めなかったけどな」
しかし、歌詞を打つのも相当大変だ。少なくとも、コピペしないと間に合わないものだろう。ニコニコしながら画面を見上げているの子であるが、「ほんとに、残りがあと2曲になってしまいました」とちばぎんが告げ、ライブの終了時間が刻一刻と迫ってきている。客席からは「もっとやってー」といった声。
ちばぎん「終電が無くなるんだよ終電が!」
の子「終電なんかどうでもいいじゃん!」
ちばぎん「どうでもいいの?みんな大丈夫なの?」
の子「え?終電、どうでもよくね?」

相変わらず、の子は時間を全く気にしない。の子が喋り続けるたびにステージには不穏な空気が流れ、「早くしなければ」といった焦りがメンバーから幾度となく感じられる。それでもの子は自由気ままに観客と画面に話し続け、「セットリストの紙見せて」などとゆったりと過ごす。
「あの、時間があれなんで、決まってなかったら決めちゃっていいすか?」
ちばぎんの問いに、の子は「時間なんかどうでもいい」とやはり同じ返答。「正直、俺はどうでもいいんだけどね、時間なんて」とちばぎんが返すと、「バンドとしてどうでもいいなら、どうでもいいじゃないかー!」との子が嬉しそうに叫び、歓声が上がる。そこで「『ロックンロール~』とかどうすか?」と尋ねると、の子が「なに?」と明らかに不満そうな表情でちばぎんを見つめる。そこでmonoがの子の空気を察知したのか、言葉にならない訴えをちばぎんに見せる。すると、の子の機嫌がここから急激に悪くなったように思う。
「クソ腹立つわちくしょー。(LEDを)ぶち壊してえわこれ」
突然、怒りを表すために悪態をつく。「ちなみに、LEDを壊すと会社が潰れるそうです」とちばぎんが説明すると、ボイスチェンジャーで高い声になったままの子が不機嫌そうにぶつぶつ呟く。の子の不機嫌を感じたmonoがなんとかフォローしようとする中、「お前ら、地球人みたいな顔してんじゃねーよ。とりあえずいきます」との子が自ら演奏を促す。
すると『友達なんていらない死ね』のイントロへ。の子は戸惑い、ギターを弾かずに立ち尽くす。そして演奏がストップ。観客の「えーーーーっ!?」という反応。
「ちげーだろこのやろー!」
の子が怒鳴る。「分かったっしょ?今。客のが分かってるってどういうこと?地球人みたいな顔してんじゃねーよっていう後のノリ、『Os-宇宙人』いくじゃん?」
「わかんねーよ!」と若干キレ気味にmonoが訴える。それに立ち向かうように、「はあ?分かるだろーがこのやろー!」と同じ調子でキレるの子。「わかるかわかんないかいいから、早くやろ!」「宇宙人やろ!」とちばぎんとみさこが促すが、まだの子が怒り気味。それに対してやはりmonoも怒るが、そこでの子が「アニメの話よこせよーー!」と笑いに変える。

急ぎ足で『Os-宇宙人』へ。
演奏後、「くっそーーーー!!」と叫ぶの子。画面を見上げて「"88888"ってうるせー!真実、リアルを言え!"最高だよ"ほんと?うそ?ほんと?アイドンノウ、不完全燃焼」と呟き、舌打ちをする。
「"次枠とれ"?」に対し、「とれないよーほんと。ありがとうございました」とmonoが言うと、の子に「締めんなそこで!反逆精神というものがないのか!」と叱られる。「ふぇい」とみさこが掛け声を上げると、「お前もだよ!」と更に叱られる。「そういえば重大発表って何だったっけ?」とみさこが話を振ったことで、メンバーすら誰も把握していない重大発表の話に。ぼんやりとした会話に、の子が「お前らの話聞いてるんだったら家で『パイの実』食ってたほうがマシだよ!」と不機嫌そうに叫ぶと、スタッフ・成田くんがその隣で笑っていた。
「言ったら、これがまだ第一部なんだよ」
の子の思いがけない言葉に、戸惑うメンバー。「みんなでストライキするんだよ!"やらせろやらせろー"って」と続けると、「うんわかった。もう1曲やってからそれやろう」「奇跡が起こるかも知れないから」とちばぎんとみさこがとりあえず1曲演奏するように仕向ける。
客席からの「やってよー!」「ベルセウス!」「グロい花ー!」といった声にゆっくり応えながら、セットリストの紙を眺めるの子。時折笑顔を見せる。「とりあえずお前らの意見は全員死ね!」と、またもや思いがけない言葉が。
「ね、これで分かるでしょ?」
ボイスチェンジャーで高くなった声で尋ねるの子。「全然わかんないす…」とちばぎん。「『夕方のピアノ』!」という客席の声に、の子は「ね、分かってないのはてめーらだけだよ」とメンバーに言い放つ。「もっとねー…お前、何人いるか分かる?」とmonoに尋ねるの子だが、ちばぎんが「分かったから!早くやらないと、1曲もできないっていう空気に今なってるから!」と再び仕向けるも、「えー、やだ」とごねるの子。突然、「僕が旅に出る理由は~」とくるりの『ハイウェイ』を歌い始め、「この曲だけ好きなんです」と。
「関係ねーよ。では、いきます。『友達なんていらない死ね』」
ええっ!『夕方のピアノ』じゃないの?

キンキンに高くなった声で『友達なんていらない死ね』へ。終盤、ボコーダーのマイクで歌う箇所があるが、スタッフがそのために使用するマイクを設置するのに間に合わず、の子がうまいこと場をつなげるように両手を上げていた。設置されたマイクで歌うも、音が出ず。不思議そうに歌い続けるの子。
「ボコーダーどうしたんだよおっ!!」
演奏後、さっそく指摘。それでも、設置されるまでちゃんと大人しく待機する彼の姿に若干の優しさが感じられた。
「あの、めちゃくちゃすぐにやったら、あと2曲やっていいそうです」
ちばぎんの案内に、歓声が上がる。みさこも両手を合わせて「ありがとうございます~!」といった表情。の子は気に留めず、「ボコーダーどうしたんだよおおっ!!」とまだ言い続ける。「の子さん、そんな時間ないっす!」とちばぎんが進行を促し、「『ロックンロール~』やろっか?」と提案。の子は不機嫌そうに「くっそー!」と言いながら地面のエフェクターを見つめ、無反応。「とりあえず終電とかもあるだろうから、ちゃっちゃといくぜ!」とmonoが言うが、「関係ねー」と一蹴する。

「くっそ。まじでよー。なんなんだほんとによー。金返せこのやろちくしょー。全然わかんねえ俺、ちくしょー。"怒ってる?"怒ってるに決まってんだろーが完璧主義者のの子さんがよーー!あー!?くそー!!」

延々と舌打ちを続けるの子。「の子さん、そんな時間ないっす!」と再びちばぎんが進めようとするが、の子の苛立ちは収まらない。沈黙が流れ、「ああ?」と不機嫌そうに尋ねると、monoが「『ロックンロール~』だよ」と。「そんなんアンコールでやりゃいいじゃん」と答えるが、今まさにアンコール中だ。笑いが起きる。
「アンコールでやればいいの!今は、他の曲を3曲くらい4曲くらいやって、その後『ロックンロール~』やるの!」
「もうアンコールなんだってこれ!」とmonoが落ち着かせようとするが、「お前らさあ、死んだらこんなもんどうだっていいんだよ?こういった時間は二度とないんだよ?多少怒られようが知ったこっちゃねーんだよ」と、の子の意志は堅いようだ。歓声が起きると、「別に俺はかっこつけてるわけじゃねーんだよ!」と反発する。
mono「俺だってそうだよ!」
の子「えらそう?」
mono「いや、俺だってそう!」
の子「…何言ってんのか分かんね」
こんなときでも、相変わらずのディスコミュニケーション。

画面を見上げ、「コメントが読みやすくなってきた」と呟くの子に対し、ちばぎんが「とりあえず、あと何曲やってもいいけどこの時間は無いです」と急かす。「お客さんに曲聴かせましょ?」とみさこが提案すると、素直に「そうですね。僕も怒ってばっかじゃダメですね」と納得し、成田くんが耳打ちすると「あと4曲?」と笑いながらボケる。
「『ロックンロール~』じゃなくていいから、何をやるか決めましょう」とちばぎん。セットリストの紙を見て、「コタツ」と呟く。
「ほんとによ。反逆精神…ていうかなんだ。守りに入ってんじゃねーぞ。全員敵だからな、会社も。そう、攻めろ攻めろ!お前らも攻めろ!それこそストライキだからな!延長!延長!延長!」
の子のアジテーションにより、客席から「延長!」「延長!」といった掛け声が。「はやくやれー!」という野次の中、『コタツから眺める世界地図』へ。
演奏後、すぐさま「このまま『天使』いくぞ」と言うの子だが、マイクの調子がおかしいのか「あー、あー、あー、」と何度も繰り返す。「やる気あるの?」という観客の声に、「なんだてめーこのやろー!俺が逆にやる気あるじゃねーか!俺にやる気がなかったらどうなんだ?会場全体?え?そういうことだろ?」と突っかかり、しつこく「やる気あるのか聞きたいね」と尋ねるの子に「じゃ曲いきましょう!」「いっちゃっていいですか?」とみさことちばぎんが促すも、「話してんだよーー!!」と反発するの子。「話さなくていいから曲やるぞー!」とみさこ。「はい、いきまーす!」とちばぎんが合図するが、の子は不満そうに「なんだよ、淡白だなあ」と呟く。

みさこがドラムを鳴らし、『天使じゃ地上じゃちっそく死』が始まる。
が、の子はギターを弾く気が全く起きない様子。歌いだしの「いやだー」もやる気なく歌い、本当にいやな気持ちが伝わってくる。リズムを完全に無視するかのように「しにたいなー」を繰り返し、ギターもなんだかめちゃくちゃだ。メンバー、観客、あらゆるものに反発しているように見えた。
だけど、この曲にはそういった空気が合っているのかも知れない。すべてを断絶しようとする気持ちが「しにたいなー」に集約され、その叫び声が次第に大きくなっていく。とてつもなくリアルな「いやだー」「しにたいなー」がそこにあった。
最後はギターを叩きつけようとし、成田くんが止めに入る。それでもギターが手からスルリと抜け、地面に落ちる。

メンバーがステージを去り、の子はやはりまだ残っている。意味不明な歌を歌い続け、ステージ上をうろうろしている。場内BGMが流れ、客電がつく。
ステージ中央の台に上がり、その上で画面上に流れるコメントを読む。「"もう終わりかい"ほんとだよマジでな。"楽しそう"楽しくねーよこんなんな。こんなんで納得できるかこのやろー!」と喚き散らす中、劒マネージャーが駆け寄り、指で「あと1曲できる」と伝えるが、「1曲じゃ足りねー!!」と怒鳴る。
まだまだやり足りないの子は「短けーんだよ!なんでこんなに短いんだよ!」と不満を吐き散らす。「延長!延長!」と歓声が上がり、メンバーが戻ってくる。
「の子さんの子さん、ラス1だったらやっていいって」
ちばぎんが伝えるも、「ラス1でいいわけねーじゃねーかこのやろー」とまたもや反発。「じゃあ終わろう。ラス1でダメだったら終わろう」と返されると、戸惑い気味に「終わろう?終わんねーよこのやろー」と諦めない。

「逆に俺は問いたいんだが、こんなことでいいの?今、この瞬間だよ!今この瞬間に、集まってきてくれている人のために!イラつくだろ!?」

もはや会場全体がの子の気持ちに左右されている。だけど、ライブハウスには時間がある。それもの子には関係ない。ステージが独裁状態だ。もはやここはスタジオコーストではなくホロコーストだ。
それでも歯向かうのが、「何がイラつくって?」との子に駆け寄るmono。「分かるだろこのやろー。私たちプロですよ?お金払ってるんですよ?私たちプロですよ?大切なことだから二回言った。お客さんが満足するものを、いや俺は客のこと考えてないけども、そこは期待を裏切りつつもっていう精神はさー、そんなものはあるだろ?こんだけ人が集まってて!」との子が訴え続ける。
「だったら曲やろうよ?」「そうだよ!」
monoとみさこが正論で立ち向かうが、「そんなもんやんねーよ!」との子。「あと4曲やるんだよ!」と相変わらず4曲にこだわるの子に、ついにmonoの堪忍袋の緒が切れた。「うるせーんだよバカヤロー!」と怒鳴っての子に近づき、「うるせーてめー!おめー分かってねーだろ!」と言い合いに。

「できねーっつってんだろーがこのやろー!」
「じゃあ何だお前?結婚して何だ?親思いかお前?」

顔を近づけて怒鳴るmonoの導火線に更に火をつけるかのごとく、の子がケンカを売る。「関係ねーよ!」とマイクを奪って反論するmono。「おめーそれでもロックかこのやろー。ポップロッカーかこのやろー」との子も止めない。LEDの画面にはうずくまりながら二人の様子を見つめているちばぎんの姿が映し出され、彼の言葉にならない訴えが一つの絵で十分に伝わってくる。心の声が聞こえてくる。吐き捨てーて!と元気よく歌っている数日前の彼がウソのようだ。とにかく、早く終わらせて帰さないとちばぎんの体調も危険だ。かわいそうだ。あと1曲演奏すれば済む話のはずが、まさかのケンカ勃発。この展開には、ちばぎんに同情せざるを得ない。
の子とmonoが顔面を近づける様は、昨年の2度の殴り合いのケンカを思い出さずにはいられない。

「お前茶番だと思われるだろーがよー!くそったれ!」との子が叫ぶと、monoがの子に体当たりをぶちかます。
すると、の子が身体にパンチして応戦。monoはの子の顔面を思いっきり殴る。

バトルが始まってしまった。
昨年11月の渋谷WWWと同じ光景。デジャブを感じずにはいられない構図がステージに。の子、monoを取り押さえるスタッフ。まだ言い争いを続ける二人。
「痛くねーよばかやろー!お前わかってねーんだよ!全然痛くねーよ!またなんか茶番みたいに言われるんだよこれ!」

突然、の子が泣き出す。monoに言われたくないことでも言われたのか、子どものように顔をくしゃくしゃにして泣いてしまった。
まさかの展開に、どよめきにも似た笑い声と心配する声の両方が客席から飛び交う。

慰めるようにの子の肩を撫でる劒マネージャー。歯を食いしばり、怒りと悲しみが入り混じった表情でブルブルと震えるの子。今年5月に放送されたNHKのドキュメンタリー番組『ETV特集』を彷彿とさせる絵に、コメントには"減らせるよ"と番組内での劒マネージャーの言葉が流れる。減らせる予感のない状況で、の子は更に訴え続ける。

しかし、その訴えが途中からよく分からないものになってきている。お客さんを満足させるためにたくさん曲をやりたい気持ちは分かるが、それを訴える分、時間が無くなっている。矛盾しているのだ。もはや、の子に時間という概念が存在しないことになっている。「瞬間、瞬間」なのだろうが、現実とかみ合っていない。気持ちは十分伝わるのに、その不器用さに対応できるのは誰もいない。
「時間とか関係ねーだろーがそんなもんよー!」
ちばぎんが「の子さん、の子さん」と呼びかける。このムードで、最も心配していたことがあった。ちばぎんがブチ切れることだ。いまだかつて、ステージ上で彼がの子に切れたことは無い。ある意味、そこは破ってはいけない危険な領域。ちばぎんが感情をぶちまけると、あらゆるバランスが一気に崩れる。その恐怖を感じていた。

そこで、思わぬ人が声を荒げた。

の子が「関わってるとか関係ねー!俺はバンドのほうを大切にしてんだよー!!」とマイクを床に叩きつけると、みさこが上ずった声で怒鳴ってしまった。

「ここでライブできるために何人の人が関わってると思ってんだよクソヤロー!!」

バシーン!!

感情を表すように、思いっきりドラムを叩く。『ちりとり』の演奏中のような、迫力のある動きだ。突然の出来事に、会場の空気が凍りつく。
の子が怒りのあまり、ドラムセットに突っ込む。猫のような素早さだ。みさこも怯むことなく立ち向かおうと応戦するが、の子はドラムセットの前でmonoとスタッフ・まきおくんに取り押さえられ、みさこもスタッフに取り押さえられる。
そのとき、みさこのおっぱいが完全に鷲掴みされていた。
「むんず」といった具合の鷲掴みだ。
怒りが収まらないみさこは取り押さえられながらも抵抗し、ドラムセットが崩壊する音がガシャーン!と鳴り、ステージ中央にはスタッフが集まり、騒然とした光景に。
LEDの画面に映し出されたみさこの表情は、髪の毛に隠れていた。リボンが空しく揺れていた。の子はそのままスタッフとちばぎんに抱きかかえられ、ステージ脇へと運ばれていく。みさこもスタッフになだめられ、去っていく。
最後、一人残ったmonoがやり切れない様子で去っていくみさこを眺め、「合掌」にも似た形で両手を合わせて客席にお辞儀し、無言のまま去っていく。

なんていう終わり方だ…

唖然とした様子の会場。
場内BGMが鳴り出し、LEDの画面には"こんな終わり方かw""みさこ、大丈夫か?""大戦争だな""解散だな"などといったコメントが流れ続けている。

その後、劒マネージャーが一人ステージに戻り、謝罪する。どうやら、かなり野次を飛ばされている様子だ。「本当に、ごめんなさい。…お気持ちは、はい。今日はありがとうございました」とマイクを使って言い、去っていく。

しばらくすると、ちばぎんもよろよろと歩きながらステージに戻ってくる。
「お客さんにいいもの見せたいっていうのはの子だけじゃなく、メンバー全員そう思ってるんで…これがかまってちゃんのライブだからって許してもらえるとは思ってないんで、配信でもなんでも、また来てください」
力はなく、だけど心のこもった挨拶。「ちばぎーーん」「ありがとーーー」という声援と拍手が響く中、神聖かまってちゃんのライブは終了する。

まさかこんなライブになるとは。

異様なムードに包まれたまま、会場をあとにするお客さん。戸惑いを隠しきれず、暗い顔でうつむいている人も少なくはない。

なぜ、こんな終わり方になったのか。
特別なライブにしたいの子さんの気持ちと、その気持ちを十分汲み取りながらも迷惑をかけずに無事にライブをしたいメンバーの気持ちとの摩擦。どちらも間違えていないことだ。この摩擦がまさか、の子さんの言う"メラゾーマ"となってパンチと怒鳴り声と鷲掴みになるとは。
とにかく早く演奏すれば済む話なのに、とは言っても、の子さんの思惑はなかなか分からない。ゆったりと間を取り、演奏をするのはいつものことだ。彼の言っている"反逆精神"というものは、この日ばかりは状況、メンバー、スタッフ、観客にも向けられていたのかも知れない。
「早くやれ!」と言われると、「言われた通りにやるのも、なんだかなあ」と。
そんな気持ちも少しあったように思えた。それに、神聖かまってちゃんのニコニコ生放送ライブとなると当然、雑談することも醍醐味の一つである。の子さんとしては、『雨宮せつな』『算数の先生』という初披露の楽曲を2つも用意するほど、この日のライブを特別に思っていたとは思う。「今日来てよかったっしょ?」なんて冒頭から尋ねるくらいだ。その気持ちは伝わるし、メンバーの彼の気持ちを尊重しつつも進行させなければならない状況も分かるし、なんとも言えない後味の悪さを残してしまった。

でも、どこかライブのオチをつけようとケンカに持ち込んだようにも見える。みさこさんの怒りは想定外だったかも知れないけど、の子さんとmonoくんのケンカは、このライブを特別なものにしようとしたの子さんのせめてもの演出にも受け取れた。彼は相手を苛立たせることが上手い。真相は分からない。すべてが想像だ。
間違いないのは、みさこさんに襲いかかるの子さんを必死で食い止めるmonoくん。そしてゆっくりと止めに入ったちばぎん。とにかく大変な思いをしているスタッフ。お客さんの罵声も歓声も、すべてが正しいように思える。

ツイッターなど、ネットを覗くと「誰が悪い」「誰も悪くない」「ロックだ」「ロックとかじゃない」「最低なライブ」「最高だった」「茶番だろ」「刺激的だった」などと感想は様々。どの感想も間違えていないだろうし、その人がそこで感じたことがすべてだと思う。
僕もこのライブでたくさんの誤解をしているだろう。だけど、の子さんの考えていることがすべて理解できるようであれば、あれほどの楽曲は作られないし、神聖かまってちゃんというものが面白くはならないはずだ。

終演後、恐る恐る楽屋に入る。
あの後だ。どれほど気まずい空気になっているのか恐かった。王室のような部屋のドアを開けると、思いもよらぬ光景が目に飛び込んできた。
の子さんが担架の上でタバコを吸っていた。
担架?
ケガ?
で、タバコ?
優雅にタバコをすっぱすぱ吸っており、大変なのか余裕なのか分からない光景がそこにあった。
「骨折っすわ…」
え?
「複雑骨折っすわ…」
の子さんは片足を上げていた。どうやら、ドラムセットに突っ込んだときに右足の脛を直撃させ、激痛を覚えたようだ。
「マジで骨折っすわ…」とは、いつかの新代田FEVERでの「88万円っすわ…」を彷彿とさせる哀愁を感じざるをえない。
その傍ではmonoくんが座り込み、片手にタオルを巻いている。Daredevilのスエタカさんが「monoくんも手、やっちゃったみたいなんだよ」と。まさか。あのときのように楽屋の壁ではなく、今日は顔面を殴ったのに。以前骨折した方の手で殴ってしまったようだ。それほど本気だったんだろう。
てか、骨折ってマジ?
えっ、マジ?
うっそでしょ?
まさかのケガ人二人。そして、ちばぎんという病人一人。みさこさんの姿はなかった。
緊張感のある空気であるにも関わらず、カメラマンの佐藤さんが「竹内くん、そこにしゃがんで。はい、こっち向いて」と、なぜか担架に乗ったの子さんとの記念写真を撮ろうとする。この人は僕の親父なのか。いつも通りの佐藤さんに「ちょwww」といった笑い声が。空気が少し和らいだ。

余裕でタバコを吸っている様子のの子さんだが、バランスを保っているように思えた。単に担架に乗っているとなんだか可哀相にしか見えないが、すっぱすぱと余裕でタバコを吸っていると同情心も薄まってしまう。
「竹内さん、今日のライブどうでした?」
一番聞いてほしくない質問だ。
の子さんは若干、いじわるな笑顔をしていた。「『算数の先生』が良かったです…」としか言えない。そもそも、彼が「どうでした?」と尋ねる日は、だいたいが返答しにくいライブの後。でも、この日の場合、最後はとにかく悲しい展開になったけど、僕としてはところどころグッとくる場面はいくつもあった。
しかし、うわべの意見を言ってしまった気になった。
「これ、良かったろ?(歓声に対し)お前らうわべだけで良かったつーけどな、こいつらだよ!(画面に向かって)お前ら良かったのかよこのやろー!」
この日のライブでも言っていたように、彼がかねてからネット上で言っている刺激的なものとは、リアルな意見だ。それは配信のコメントで流れてくる。現実だと、対面すると良い部分だけを伝えがちだ。誰でも、嫌われたくはない。そして自分が言える身分であるのか考えてしまう。匿名にはそれがない。批判も中傷もあって、ようやくライブが成り立つ。なんとなく、の子さんが求めている"ライブ"はそこにあるのだと思っている。
だけど、今、の子さんに直接面と面向かって意見を言えるような人はどれくらいいるのだろうか。
そういう意味では、みさこさんの怒鳴り声は刺激的だった。

楽屋の外に出ると、みさこさんが廊下で「うわーーん」と言いながら近づいてくる。「恥ずかしい…」と嘆いていたが、なぜかベレー帽を被っており、美大生っぽい。「『天使じゃ地上』からずっとイライラしていて…」と、あのやる気のない歌い方やギターに思うことはあったようだ。だからあれほどドラムが力強かったのかと納得。めちゃくちゃなボーカルと、やたら強烈なドラミング。あれはあれで良かったと思ってしまう僕は、ダメなんだろうか。あのへんの摩擦がメラゾーマな演奏にも感じられてしまったけどなあ。
あのときのみさこさんは、吐き捨てて、すべて壊してしまうかのようだった。しかし、爆音とともにすべてを捨てて踊れるわけにもいかず、明日に矢は放たれない。さぞかしグレートエスケープしたかったことだろう。
ちばぎんは力のない声で「お疲れ様でした…」と精一杯の笑顔だった。

やがて担架で運ばれていくの子さん。
神聖かまってちゃんに携わっている大人たちが一丸となって、の子さんが乗っている担架を持つ。協力し合って彼を持ち運んでいくその姿は、ひょっとすると神聖かまってちゃんを取り巻く現状を表しているのかも知れない。
「竹内くん、タバコ取ってあげて!」
ワーナーの野村さんに言われ、の子さんの口元を見る。すると、くわえられたタバコの火がそろそろ口にまで到達しそうな勢い。頭にタオルを被せられたの子さんはそれに気づいていない。
これはまずい。
手で掴める面積が少なくなったタバコを、動きながら取るという一つのチャレンジが始まった。火の輪っかをくぐり抜けるようにタバコを掴み、の子さんの口元から離した。が、熱っ!後で気づいたが、そのとき指を思いっきりジュッとやってしまった。帰り道に指の色が変わっていることに気づき、急いで缶ジュースで冷やした。
タバコの火はとにかく熱かった。ライブと同じくらい熱かった。
そのまま車の中まで運んでいく。monoくんも担架に乗ったの子さんと一緒に車に乗り込み、二人を乗せた車が23時過ぎの新木場を走っていく。
見送るスタッフと、出待ちのファンの方々。

静まり返ったスタジオコーストの会場前。
来るときに看板に貼られてあった『SHINSEI KAMATTECHAN』が一文字ずつ撤去されつつあり、一日の終わりを告げていた。来るときと同じように写真を撮るカメラマンの佐藤さん。文字を左から順に撤去していく様に『AMATTECHAN(余ってちゃん)』になる瞬間を待ち望んでいたが、スタッフが順番を飛ばして撤去してしまい、『K M TTECHAN』に。「そっからいくかー…」と嘆く佐藤さん。
こうして、神聖かまってちゃんの今年最後の東京公演が暮れていく。

なんとも言えない余韻。それでも、ケンカについてはネット上で神聖かまってちゃんをあまり知らない人も反応していた。嫌悪も含め、興味を示す人も少なくはなかった。
感想をたくさん綴る人、心配する人、怒りを覚える人、感動する人。メンバーを含め、神聖かまってちゃんを想う人々が刺激的な言葉を発していた。
結果的には、の子さんがあらゆる人の"本気"を誘発させているように思った。意識はしていないだろうし、天然だろうけど、「クソ」とまで言わせることは意外に少ない。人間臭く、ありのままの感情をぶつけられた。口の中のデキモノのように、気になって仕方がないライブにはなったように思う。
monoくんもみさこさんも、お客さんにもバンドにも本気だからこそのケンカに思えた。
これがやがて笑い話になる日は来るのだろうか。今までもそうだったように。
の子さんの足、monoくんの手、ちばぎんの体調、みさこさんのおっぱい。それだけが気がかりです。

(結果、の子さんの足もmonoくんの手も折れてなく、ちばぎんは回復に向かい、みさこさんは宇宙刑事ギャバンが好きなようです)

関連リンク : みさこ『装苑』BLOG劒マネージャーBLOG

2011年12月13日 新木場STUDIO COAST
<セットリスト>
1、雨宮せつな
2、あるてぃめっとレイザー!
3、ねこらじ
4、ベイビーレイニーデイリー
5、自分らしく
6、制服b少年
7、夜空の虫とどこまでも
8、算数の先生
9、ゆーれいみマン
10、いかれたNEET
(アンコール)
1、夕暮れメモライザ
2、Os-宇宙人
3、友達なんていらない死ね
4、コタツなら眺める世界地図
5、天使じゃ地上じゃちっそく死

2011年12月12日月曜日

うみのて@高円寺UFO CLUB

2011年度の最大の収穫。それはうみのてというバンドです。

あらゆるところで「うみのてヤバイ」と呪文のように唱えている。誰を回復させるわけでもなく、攻撃するわけでもない呪文だ。だけど意味があると思っている。
この日のライブを観に来ていたコウノさん(元カワサキ・ティーンズ・プロジェクト)が「こういうバンドがいて、ホッとした。希望的観測を語らないっていうのが」とおっしゃっていた。たしかに、笹口聡吾の歌詞は極めてシリアスで、リアルだ。輝かしい未来がまったく掴めないこのご時勢、はっきりと物事を言うバンドがいてくれることは頼もしい。クソみたいなものをクソだと言ってほしいのだ。
簡単に言えば"暗い"とも受け取れる世界観であるにも関わらず、ギターの高音がとにかく美しく、繊細なメロディを奏でる。鉄琴と鍵盤ハーモニカの音が可愛くも不気味に聴こえてくる。
アクションにもホラーにもサスペンスにもラブストーリーにもなる、変幻自在な映画のようにうみのてが物語を綴っていく。なんなら、この現実世界の腐れきったストーリーも書き換えてほしいものだ。

東高円寺UFO CLUBで観るうみのては初めて。この日はトリ。
開演を告げるカーテンが開く前から早瀬のベースが鳴り、笹口のエコーがかかりまくった掛け声、高野のギュワーーンと鳴るギターが野蛮に聴こえてくる。新曲の『New war(in the new world)』だ。「新しい戦争を始めよう それは現代の戦争」と繰り返される。
現代の戦争は殺し合いなんて時代遅れ。パソコンの前で血を流すことなく、誰かの心をぶっ殺していく。匿名で書き込まれる時代は終わったのかも知れない。いまやすべての人がアカウントを持つ時代。現実に生きるよりもリアルなものが上から下へスクロールされていく。
笹口騒音ハーモニカのソロ音源からアレンジされたこの楽曲には、更に終末感が付け加えられているように感じた。ぜひ、世界が終わる頃に流れていてほしいものだ。
「いいか?俺の大事な人に指一本触れてみろ。お前の脳髄引っぱりだして神経一本一本ピンセット的な物でむしむしむしむしむしってやる。いいか?俺の大切な家族に指一本触れてみろ。お前の頭かち割って、脳みそアイスピックで、アイスピックのようなもので、めためためためためった刺しにしてやる」
大切な家族が殺される事件なんて幾らでもある。いつだって死ぬ可能性はゼロではない。幸せはいつも幸せなだけ不幸に脅えている。フッと誰かが吹けば一瞬で崩れてしまう平和と、ボタン一つで簡単に始まっている戦争が歌われている。

次に演奏される『RAINBOW TOKYO』の鍵盤ハーモニカの切なさといったら。東京を"焼け野原"と言ってくれるのは、この曲だけだ。ここで歌われる東京のように、どこだっていつでもグラウンド・ゼロなのだ。何かが終わって何かが始まるのを繰り返している。『東京駅』は最初のドラムからドキドキさせてくれる。中盤では「高円寺にいる女の子は昔いじめられてたから僕にも優しいー!」と、高野P介の曲を引用。高円寺ではこれを歌っていくつもりなのだろう。キクイのドラムソロはとにかくやばすぎる。あーーってなる。相変わらず見所がありすぎる曲だ。『もはや平和ではない』は笹口のギターの音が鳴らず、仕切りなおし。いつも以上にブチ切れた表情で絶叫する笹口。「だがのぐーーーん!!」と叫んで始まる高野ギターソロの高揚感といったら、何にも代えがたい。

笹口「あの、僕ツイッターで"右翼っぽい"って言われたんですが、どちらかというと東向きです」
高野「左と右分かるの?」
笹口「いや、東向きです」
間取りかいな。もはや会話になってない。
そのまま『四角い部屋』に入ろうとする。イントロに導入されるのは秋葉原GOODMANでみせた『カントリーロード』ではなく、この日は『君をのせて』だった。先日『天空の城ラピュタ』が放送されたからだろう。時事ネタを持ってきた。笹口と高野が熱唱する。ジブリはある種、日本人の共通言語だ。きっと四角い部屋に住む女の子も、幼い頃は『ラピュタ』を観たことがあるだろう。
「私の中を通り過ぎる 知らない誰かが通り過ぎる」
好きでもない男と関係を持つことを、このように表現するセンスが見事。風俗嬢の女の子が主人公。『東京駅』にも登場する四角い部屋に住む女の子だ。最大限の悪意をこめて、最大級のキッスをこめて、窓から眺める街の人々を見下ろす描写が切ない。自分のことばかりではなく、街の描写があるところに、どこかしら空虚な現代すら描かれているように思う。「すべてが四角で区切られて すべてが四角でできている」だなんて、恐ろしい閉塞感だ。でも、残念ながらこれが都会の暮らしなのだ。

間髪入れず、『正常異常』。高野ギターソロ→笹口ギターソロは毎回圧巻。ほんま、あかん、圧巻だ。鈍く轟く笹口ギター。鋭く切り裂く高野ギター。あなたはどちらが好みかしら。大暴れする二人と、それを低位置で取り囲む三人。この構図がいつもクールなのだ。
演奏後、すぐに「アンコールありがとうございます」とサクサクと進める笹口。アンコールは久しぶりに『FUNADE』。壮大なバラード。うみのてだけあって、海にちなんだ楽曲があるのはいいことだ。他には『スーサイダルシーサイド』くらいしか思い浮かばないが。5人しかいないのにオーケストラのように聴こえるのは、歪んだギターの音のせいか。はたまた、自分の心がそうさせているのか。こういったマジックは、うみのてでしか体験できない。

1曲1曲が終わるごとに3分間くらい余韻が欲しいくらい、殺傷力のある楽曲ばかり。うみのてはガチだ。間違いない。今のうちに言っておこう。この日もUFO CLUBの赤い内装に負けじと轟々と燃え滾っていた。早いところ、リキッドルームやAXでやってほしい。広いところで鳴る高野くんのギターが聴きたいのです。
うみのての魅力は、来年以降も語り継がれていくことでしょう。

2011年12月11日日曜日

うみのて@秋葉原GOODMAN


ダウンロードはこちらです

【連載】神聖かまってちゃん物語~第3話「なんで俺だけグラサンかけてんの!?」~

劒さんは神聖かまってちゃんにかまおうとしていた。

今度、会社をやるらしい。マネージメントの仕事を始めるそうで、名刺を貰う。そこには『恋愛研究会。』と書かれていた。これは劒さんが大阪時代から所属していた集団の名前でもある。あの頃から絶対恋愛を研究する気ないだろうと思えるイベントばかりやっていたけど、まさか会社名になるとは。
劒さんとは、お互いが上京する前からの知り合いだ。いつの日か、東京の街で自転車を二人乗りしたことがある。
「マーちゃん、俺たちもう終わっちゃったのかなあ」「バカヤロー、まだ始まっちゃいねえよ」
金子賢にも安藤政信にも程遠いビジュアルの二人だが、渋谷から下北沢までの道すがら、映画『キッズリターン』のセリフを呟いてみた。
「もう終わっちまった…とかだっけ?」「始まっちゃいねー。とかでしたっけ?」
二人ともうろ覚えだった。終わっても始まってもいないストーリー。それは都会に出てきた二人にも言えることだし、下北沢・渋谷屋根裏でしかライブをやらない神聖かまってちゃんにも言えることなのかも知れない。
スーツをビシッと着込んだ大人が携わるより、劒さんのようなクセ毛の人が関わるほうがきっと面白い。そして才能を見抜く人だ。また、ステージ映えするベーシストでもある。
「仕事として、面白い人たちをマネージメントしていこうと思っててね」
劒さんが神聖かまってちゃんに興味を持ったことが何よりも嬉しかった。僕は、上京するときの深夜バスの車中、彼が「都会でも頑張ってね。」と一言メールを送ってくれたことを忘れていない。
渋谷LUSHのカウンターで、僕が勝手に作った"神聖かまってちゃん宅録音源CD-R"を渡した。1曲目が『雨宮せつな』という、こだわりの選曲だ。ここに神聖かまってちゃんの魅力が詰まっている。
後日、劒さんからあのときのように一言メールが送られてきた。
「23才の夏休み、最高。」
こんなメール、いまどき高校生でも送らないだろう。どれだけ分かりやすい反応なんだ。それほど、気に入ったということなのだろう。

その頃、サマーソニック2009の一般公募枠のイベント『出れんの!?サマソニ!?』に神聖かまってちゃんが出演の応募していた。ある程度の順位まで上りつめると、次の審査にいけるらしい。
だが、応募のプロフィールにはなぜか『ガールズバンド』と書かれていた。ガールは一人しかいないだろ。しかも『平均集客数…7、8人』とはバカ正直すぎる。
この人ら、本気でサマソニに出る気あるのか?
それでも、mixi日記で投票を促した。それはもう、強引だ。お節介そのものだ。
「"投票する"を押すのです。押すだけでいいのです。押しましたか?おっ、いいですね!最高です!あなたとは一生関係が続きそうです!よろしくお願いします!」
胡散臭い業者のようなことをした。なぜなら、とにかく大舞台で彼らを見たかったのだ。しかし、いまだ知る人はほとんどいないバンド。7、8人しかお客さんが来ないバンドがサマソニに出るなんて絵空事だ。

6月25日、渋谷屋根裏で神聖かまってちゃんのライブがあった。
前回以上に興味を示してくれた人が多く、CD-Rを配った甲斐あってか、10人くらいの友人がライブを観に来てくれた。みさこに自慢げにそれを言うと、「竹内さんのお友達って病んでるんですね!竹内さんも病んでるんですね!」とまさかの反応を満面の笑みで言われた。
客席には劒さんの姿もあった。Perfect Musicという会社の社員の方を2人連れていた。僕は前回同様、ビデオカメラを後方から回し、神聖かまってちゃんのライブを撮影した。
これがもう、ある意味歴史に残るようなライブになった。
彼らは30分の枠であるにも関わらず、55分間もライブをした。しかし、演奏したのはたった4曲。の子が『アラレちゃん音頭』を踊ったり、monoとフリーラップバトルしたりと、とにかく自由気ままなライブだ。
の子はmonoに対し、「人生が中途半端!」「23年間生きてきて、お前は一体何をした?」と挑発。ラップバトルというより、単なる口ゲンカみたいだ。そして最終的にの子が放った言葉に、会場が笑いに包まれた。
「これが…ジャズだ!!」
なんかもう、めちゃくちゃだ。そのとき、劒さんの笑い声も聞こえた。

ただでさえ時間をオーバーしたライブをしているのに、ライブ後もずっとステージに居座ろうとするの子。彼をmonoとちばぎんが必死に取り押さえ、楽屋に連れていく。
「違う…もっと…触れ合いたかったんだよぉ…」
ステージ脇から聞こえるの子の声が切ない。ライブハウスは終始笑い声に包まれた。今までに見たことのない、グダグダなライブ。いや、これはライブなのだろうか。かっこよく言えば既成概念をぶち壊され、かっこ悪く言えばいい加減なコント。それでも、の子の個性がガンガン発揮されていたのは間違いない。これこそが、神聖かまってちゃんのライブの真髄でもあった。
最後はmonoがステージの中央で土下座し、謝罪。素晴らしいオチだった。

終演後、劒さんにみさこを紹介する。Perfect Musicの方々が神聖かまってちゃんと接触していた。
「これは10年に1度とか、そういうレベルではない才能。すぐに飛び火しますよ」
社員の方が言っていた。その方はポリシックスやレミオロメンを発掘した人と聞いていた。そういったグループと同じように、神聖かまってちゃんの名前が今後広まっていくのだろうか。
劒さんとの子のやり取りは印象的だった。
「君と友達になりたい」
「でも僕メール返事するの遅いし…mixiやってないし…」
なんなんだこの会話。

やがて、劒さんは本格的にかまい始めるようになった。"友達"になるための第一歩として。
千葉県の柏まで神聖かまってちゃんに会いに行くという。電話でそれを聞いた僕も、なぜか同行させてもらうことになった。
神奈川県からはるばる千葉県へ。電車に揺られて辿り着いた柏駅。
そこには神聖かまってちゃんのメンバー全員が集っていた。駅前の風景に馴染んでおり、普通の若者に見えた。
みんなで近場の居酒屋に入る。ラジオ収録以来、神聖かまってちゃんのメンバーと何もイベントがないところで会うのは初めてだった。みさこ以外の男性メンバーが全員喫煙者で、タバコの煙が遠慮なく充満していた。みさこが少しかわいそうに思えた。
2軒ハシゴして合計4時間ほど、ゆっくりと食事をし、お酒を飲んだ。
「この人は信頼できる人なんで…」
メンバーに劒さんを紹介した。劒さんとつながりのあるバンドとしてオシリペンペンズなどの関西のバンドの名をあげると、の子は大きく反応していた。世代が近いせいか、聴いてきた日本のバンドが似ているように思った。
劒さんは彼らのマネージャーになる第一歩として、まずは仲良くなろうとしていた。仕事の話というよりも、趣味や世間話を中心に話していた。対バンしたいバンドや、お互いの歴史など。なんでもない話だが、神聖かまってちゃんが好きな僕にとってはどれも興味深い話ばかりだ。
神聖かまってちゃんにはニートもいればフリーターもいて、会社員もいる。なんとなく、現代の若者がそこに集約されている気がした。monoはおとなしく、みさこはよく笑い、ちばぎんは気遣いができ、の子はバンドの舵取りをしていた。それぞれの役割とキャラクターがはっきりしているようにも思えた。
「撮ってくれた映像、あれ、めちゃくちゃ良かったっす。マジでありがとうございます」
YOUTUBEにアップした6月25日のライブ映像について、の子は律儀にお礼を言ってくれた。好きで撮ってるだけなので、まさか気に入ってもらえるとは思っていなかった。
の子はあれほどまでの魅力的な楽曲を、無料でネットにアップしている。「5000円くらい払いたいですよ」との子に言うと、「ええっ!うえっ!そんなこと言われたん初めてですよ…」と必要以上に顔を赤らめ、隣にいたちばぎんに助けを求めていた。結局、お金がなかったので払わなかった。

全員がリラックスして、色々な話をした。
の子がちばぎんにキラカードを借りパクしたまま再会した頃の話や、僕が以前ナンバーガール時代の田渕ひさ子のギターソロの映像を編集してアップした動画を、出会う前からの子とみさこがYOUTUBEで見ていた話まで。
そして、いつしか未来の展望の話になった。
劒さんが「いつか、ひきこもりの人をライブに来させましょう!」と語っていた。
ラジオの収録のときのような不穏な空気はなく、終始、和やかでいいお酒が飲めた。
神聖かまってちゃんにとって、良い夜になったのだろうか。そして、劒さんはの子と"友達"になれたのだろうか。
帰り道の電車内、劒さんが「どういうバンドと対バンしたらいいかな?」と尋ねてきた。
「toddleとか、前野健太とか、チッツとか…」「全部あなたの好きな人たちじゃないですか!」「でも、ロックフェスとかバンバン出れたらいいですね」
未知数の可能性を秘めたバンドの物語は、まだ始まったばかりだ。

その夜、神聖かまってちゃんの男性メンバー3人がの子の家で配信をしていた。みさこは翌日の仕事のため、欠席していた。
彼らは最近、配信媒体をPeercastからニコニコ生放送に移行した。そのせいか、Peercastのリスナーからは「戻ってきてほしい」「裏切り者」といったコメントが沢山寄せられていた。先日のみさこの単独配信は、合計来場者数が初めて1000人を突破していた。
配信はとても楽しそうな雰囲気で、柏での飲み会のことを伝えていた。の子は酒に酔ったのか、異常なほどハイテンションで「テカチュー(恐らく『ポケモン』のピカチューのこと)」と何度も叫んでいた。
その様子を見る限り、彼らにとって楽しい夜になったように思えた。神聖かまってちゃんにとって、新しい展開が生まれた。それを伝えるような配信だった。

一週間後。の子とmonoが、晴れて神聖かまってちゃんのマネージャーとなった劒さんに誘われて、横浜赤レンガパーク野外特設ステージで行なわれる木村カエラの野外イベント『GO!5!カエランド』に足を運ぶことになった。
ちばぎんとみさこは仕事の都合により行けなかった。劒さんの人脈により、ゲスト入場に。劒さんは「音楽をやっていて他のミュージシャンと繋がると、こうやってゲストとして入場することもある」ことを神聖かまってちゃんに伝えたい気持ちと、あと普通に木村カエラのライブを楽しみたかったようだ。ありがたいことに、これまた同行させてもらうことになった。
桜木町駅に待ち合わせの時間を守ってやって来たのは、monoと僕だけだった。
の子は一番遅れてやって来た。なぜかサングラスをかけており、海外の来日スターのような佇まい。一方で、遠足をずっと楽しみにしていた少年のようでもあった。避暑地に向かう観光スタイルにも見える彼の第一声は、半ば期待通り。
「おせーよ!!」
こっちのセリフだ。
「なんで俺だけグラサンかけてんの?!」
それもこっちのセリフだ。

何万人もの観客が一つの会場を目指して歩いていた。行き先は"カエランド"。その入口はなぜか口の形をしていた。そうなると出口は肛門なんだろうか。
大勢の聴衆に紛れて、の子とmonoが広大な会場を眺めている。
やがて木村カエラのライブが始まった。
自分たちはCブロックにいたが、木村カエラが「Aブロックの人ー!」と呼びかけると「わーーー!」との子が叫ぶ。違うよ。「Bブロックの人ー!」と呼びかけても「わーーー!」と叫ぶ。違うって。完全に浮いていた。そして肝心の「Cブロックの人ー!」と呼びかけると、叫ばず。無表情で固まっていた。なんなんだこの人は。

ライブは夕方から夜まで続いた。途中、の子らと離れ離れになったが、最終的には同じ場所に合流して落ち合うことに。の子は知らぬ間にメガネを着用しており、「いやー、あまりにもライブが良かったんでそのへんでメガネ買ってきましたわ」と。物販で売ってるわけがない。
その後は会場外に設置されていた"誰でも木村カエラになれる"といった顔ハメ看板で、monoが顔をはめた。残念ながら木村カエラにはなれなかった。
テントで食事し、神聖かまってちゃんの配信や音楽についてゆっくり語り合った。劒さんに「今度お金払うから、二人にビールおごってやって」と頼まれたので、おごった。その後、劒さんからお金を払われることはなかった。
monoは、話しかけなければ一切言葉を発しないほどのシャイボーイだ。の子は必要以上に気を遣う人のように思えた。配信は、時折言葉が刃のように飛び込んでくる。それを自ら受けて立ち、やり抜くのは勇気でしかないのだろう。 木村カエラのライブ会場にいる観客の中で、誰よりも普通に見える二人だが、他の人には出来ないようなことをやっている。危険な思いをした配信や、これまでの活動のこと、そして木村カエラのライブの感想を話し合った。
この日のライブは当然、木村カエラが目当ての人ばかりだ。
だけど、僕にとっては神聖かまってちゃんが一番のスターだ。誰にも信じてもらえないだろうが、この中学生のような青年と、アゴが長い青年が、スターなのだ。横から見ると二人とも三日月に似てるとかではない。
彼らがいつか、あのステージに立つべきなのだ。
木村カエラのライブ中、ここで神聖かまってちゃんが演奏する姿を想像していた。
『いくつになったら』の歌詞を思い出す。

「僕はいつか 東京のど真ん中で 何千人の前で 存在をみせてやる」

いつか、それが現実になる日が来るのだろうか。
の子とmonoは「横浜の街をもう少し楽しみたい。あと、バーで飲みたい」とムーディーなことを言っていたので、そのままお別れする。時間は22時過ぎ。二人とも千葉に帰る気はあるのだろうか。

数日後、仕事の昼休み。
会社でご飯を食べながらボーッとmixiを覗いていると、友人の書き込みに思わず噴出しそうになった。
待ち望んでいたことなのに、思わず目を疑った。

『神聖かまってちゃん、サマソニ出演決定!!』


~続く~

2011年12月8日木曜日

『謎の日』は謎だった

ライブ当日間近まで出演者すら発表されないという、謎に包まれた『謎の日』の当日がやってきました。

3日前の12月5日、神聖かまってちゃんのスタッフ・成田くん司会のパーフェクトミュージックのUstreamで情報を小出しにしていた。大方予想通りのバンドじゃないもん!の出演と、アンアミンの出演だけが明言されたが、他の出演者はみさこ、かっちゃん(バンドじゃないもん!)、アンアミンといった女性陣によってイラストでヒントを出された。
そこに描かれたのは、金。
金?ゴールド?いや、まさか。いやいや、まさかそんなことは。フッと湧き出た想像を誰もが疑ったに違いない。まさかゴールドだなんて。ピックしてアップするゴールドが出るわけがない。
しかし現実は、時折、想像を凌ぐことがある。
そのまさかだった。

会場のWWWに着くと、神聖かまってちゃんのメンバー3人はいつもと違う緊張感を漂わせていた。の子さんの姿はない。昨年に新宿LOFTで行なわれた『謎の日』とは違い、彼はこの日は完全欠席のようだ。
楽屋に入ると、ちばぎんがスーツを着ていた。成人式の帰りだろうか。そして向かいには同じくスーツ姿のギタリスト。いやいや、まさか。まだ信じられなかった。これは成人式の帰りなんだろう。イスに座ったちばぎんがギブソン・SGのギターをシャンシャン鳴らしていても、俄かに信じられない。
風邪なのかマスク姿だった。何かが起ころうとするこの日、伝説の予感を覚えながら、ちばぎんに話しかけた。
「今日の意気込みを…」
「うっさいわ!」
ロックだ。ビックリした。すっごいロックだ。これはもはや成人式の帰りではない。すでに大人だ。まさにステージに立つロックミュージシャン。インタビュアーの質問も一蹴するアグレッシブなアティテュードを目の当たりにした。
「ステージに立ったら風邪を吹き飛ばす感じですか?」
「…風邪は吹き飛ばないっす」
かわいそうだ。

やがてイベントが始まる。柵にもたれかかって観ているのは、神聖かまってちゃんのライブでよく見かける方々。かまってちゃんメンバーのいつもと違う姿を観るのは、この日しか無い。
場内BGMが消え、薄暗くなったステージに現れたのは成田くんと、白いフードをかぶった男。「誰?」とざわつく会場。
monoだ。
近くにいたお子さんが「白いのがmonoくん?」とお母さんに尋ねていた。その通り、白いのがmonoなのだ。中に『NEU』と書かれたTシャツを着ており、近未来系のサングラスみたいなものをかけている。ポリシックスのつもりだろうか。
二人ともMac bookを操作し、音楽が鳴っている。恐らくは再生ボタンを押しただけで、あとはやることがない。手持ち無沙汰のmonoはいつも通りウィスキーを飲み、自ら作曲した音楽を流しながらフラフラしている。
「えーと、やることがないんでmonoくんがマジックやりまーす」
成田くんの案内のもと、monoが無言で客席に指をさし、「いいか?見てろよ?」と言わんばかりの態度で耳に手を置き、耳が突然大きくなる。マギー審司のつもりか。微妙なズレたタイミングの笑い声と拍手が起き、それは正しい反応にも思えた。その後も青い光を華麗に出したりとマジックを展開する。戸惑いまじりの笑い声に包まれるが、真っ暗なステージで小さな光が細々と動くその光景が、音楽と相俟って、若干神秘的に見えたのが悔しい。
「もう限界です…」
monoが成田くんに助けを求め、もう一度耳を大きくするマジックを。「こっち(耳)は420円だったんだけど、こっち(光)は1200円もしたんだからね!ほんとに」と事情を観客に訴えかけ、「なんなんだよって感じだよ。これでどうせまた2ちゃんで叩かれるわ」と嘆く。

「これから皆さん期待しているバンドも出ると思うんで、僕らでちょっとあったまってもらおうかなと思います。改めまして、ユニット名、"PKトモダチ"です!」

ゲーム『MOTHER』の必殺技から取ったであろうネーミング。PKトモダチのライブが幕を開けた。名前を告げた直後に音楽がちょうど終盤を迎え、「いいところで終わりましたね」と成田くん。
近くで観ていたお子さんが「がんばってー」と言っていた。

「皆さん、手品見て"たいしたことねーなコイツ"って思ってんだろうけど。タネもバレバレだからね…酔っ払ってるのにパソコンってきついっすね」
monoが「いきますよー」と言うと、再び音楽が鳴り、2曲目へ。するとステージに正体不明の人物が現れる。手に『スターウォーズ』のライトセーバーを持ち、そして顔にはやはり『スターウォーズ』のダースベイダーのマスクを。明らかにパーティーグッズだが、その音楽が単なるお遊びではないことを証明していた。マスクを少し上げて口元だけが見えたまま、正体不明の人物が歌い始める。女性だ。耳にすんなりと入るロリータボイスと、気取らない歌い方。そこに切ないとも怖いとも受け取れるメロディが乗っかり、緑や橙の照明に包まれたステージは宇宙的だった。
演奏(ほとんど再生しただけだろうけど)が終わると、場内は拍手に包まれる。

「monoくん、のっけからダウナーな曲ばかりなんだけど…」
「いやいや、ここからはアゲアゲでしょ?"このバンド暗っ!"と思わせといて…」
二人が会話し、中央にいる人物がいまだ謎のままだ。「これ、誰ですか?」と成田くんが振ると、「ゆり?」という声が客席からチラホラ。
「俺のフィアンセだよ!」
まさかの恋人出演。昨年から付き合っているmonoの恋人、通称・ゆりちゃんがダースベイダーだったのだ。
「フゥーーー!!」という歓声が巻き起こる。
「歌い手がいなかったから呼んだ…ってことにしといて」
monoが照れながら応える。
「monoくん、最近なんか謎なことはなかったですか?」
「謎といえばね、この日のために練習することが謎だったよ!大変…いやいや、大変じゃなかった。楽しかった。お客さんの前で僕が作った曲とか、成田さんが作った曲とかを披露してるってのは嬉しいことですよ。これ(サングラス)あるから全然見えない…」

次の曲へ。ドンッドンッと打ち込みのリズムが心地良く、アップテンポだけど揺らぎなく、落ち着きを保ち続けるボーカルのテンション。直立不動ではあるけど、どこか躍動感のある声質。ピコピコと鳴る電子の音のメロディがポップ。PKトモダチは全編打ち込みの電子音楽だけど、どこか温かみのあるメロディ。これがかなり癒されるのだ。
成田くんはパソコンを操作するフリをして、携帯をいじっていた。終盤では通称・ゆりちゃんが光るライトセーバーを大きく回し、まるで交通整備のようだった。

成田「monoくん酔っ払ってるでしょ?」
mono「酔っ払ってます!酔っ払ってないと、こんなステージに立てません!」
成田「すごい練習したのにね」
mono「え、良くなかったですか?」
成田「お客さんに聞いてみたらどうでしょう?」
大きな拍手が鳴る。
mono「これは同情ですよ…」
お客さん「もう終わっちゃうの…?」
mono「うるせーんだよバカヤロー!」

「monoくん、大丈夫ですか?ラップやんなくて」と成田くんが促すと、「ラップ、俺はできないよ!」と拒むが、お客さんから「やれー!」と声援が。「うるせーバカヤロー!」と応えつつも、ちゃんと披露してくれた。客席が手拍子をする。
「俺らPKトモダチー!トモダチいないけど一人立ち!だけど俺にはこの仲間がいる!今すぐにこの仲間とデビュー!」
拍手と声援に包まれ、monoも満足気味の表情。そんな彼の姿をジッと見つめているダースベイダーがまた印象的だった。
「これからツワモノのバンドが出るんで。俺らはポケモンでいうとコラッタくらいなんで。ひっかきとたいあたりくらいしかできないんです!」
monoが嘆きつつも、最後は成田くんがベースを鳴らし、まるで『MOTHER』の必殺技のような音から始まる最後の曲へ。

monoがリズムに合わせて踊り、時折ノートパソコンをいじる仕草をする。成田くんがひたすらベースに専念し、黙々と低音を鳴らし続ける。中央ではキュンとさせるような声で歌うボーカル。ダースベイダーが机の上に置いたライトセーバーが点滅し続けており、妙な視覚効果をもたらしている。
終盤の打ち込みの高い音が宮崎駿アニメの音楽を彷彿とさせ、なぜか幼少の頃の記憶を呼び覚ます感覚さえ与えていた。この日、WWWでどのバンドよりも久石に近づいていた。他のバンドにはその要素がないだけだろうが。
曲が終わる頃、ダースベイダーが机の上のMac bookを閉じ、それを抱えてお辞儀。そのままステージから去っていく。続いて成田とmonoが笑顔で挨拶し、PKトモダチの出番が終了。

ライブが終わった後のmonoくんは開放感に満ち溢れていた。
ビデオカメラを向けると、頼んでもいないのに先ほど披露したラップをぶちかましてくれた。「いやー、終わってホッとした!」と、本番前よりも元気になっていた。

続いては宇宙人のライブ。
神聖かまってちゃんと同じパーフェクトミュージック所属のバンド。宇宙人という名前で高知出身というのがシュールだ。音源で聴くよりも生で観るとドラムが力強く聴こえ、ふんわりとした印象だったのがビシッと固まった。捉えどころのない歌詞と、MCを一切入れないストイックなライブ。パフォーマンスに頼らず、音楽一本で勝負しようとする堂々とした態度が見えた。
最後はドラマーがそそくさとステージを去り、テレビ番組でのやしきたかじんのように誰よりも先に帰っていく姿が印象的だった。

そして、ついにやって来た。
伝説のバンドの一夜限りの復活ライブが始まる。

そのボーカリストは、ステージ近くの階段でギターをしゃんしゃん鳴らしていた。緊張感が漂う。先ほどは「うっさいわ!」と言われたのもあり、もう一度意気込みを尋ねてみた。
「…やり切ることですね」
ハードルがだいぶ低い。
ステージが薄暗くなり、場内BGMが止む。するとなぜか大黒摩季の曲が流れ始め、一瞬鳴り止み、そしてまた再開する。
神聖かまってちゃんのスタッフでお馴染みのまきおくんが最初にステージに登場し、中央のマイクスタンドを掴む。そしてライトを浴びながら、こう告げる。

「待たせたな!俺たちが、ピックアップゴールドだ!!」

「まきおー!」という歓声。戸惑い気味のメンバー。嬉しそうな劒マネージャー。ちばぎんも照れ笑いしながら「どうしたんですか、まきおさん」と尋ねる。
「こんばんわ、ピックアップゴールドです」
こうして、伝説のロックバンド・ピックアップゴールドのライブが始まる。
ちばぎんが神聖かまってちゃん以前に活動していたバンド。一般的にはそれほど知られていないが、コアな神聖かまってちゃんファンの中では知らない人はいない存在だった。彼らが過去に音楽配信サイトに掲載したページを2ちゃんねるで誰かが発掘し、ページを開くと容赦なく『グレートエスケーパー』という楽曲が再生され、「吐き捨てーて!」というちばぎんのボーカルを何度聴いただろうか。
待ち望んでいたファンも多いことだろう。それがこの日、遂に再結成したのだ。
「といっても、オリジナルメンバーはギターしか来なくて。ベースは劒さんで、ドラムはまきおさんで…」
メンバーの半分がいつものスタッフという結果。これはもう、ライブ前の意気込み通り、やり切るしかない。
「もっと喋ることない?」「逸話的なものを」
劒さんとまきおくんが促し、ちばぎんがピックアップゴールドの解説をする。「僕、神聖かまってちゃんというバンドのベースを弾いているちばぎんという者なんですけど、事務所のムチャ振りによって、急遽出演することになりました。緊張しますね、どセンターで…」と、照れ笑いをしながら話すちばぎん。その通り、この日はいつもと違ってセンター。しかもボーカル。そしてギター。神聖かまってちゃんのライブとはあらゆる意味で状況が違う。

「では、1曲目やります。『グレートエスケーパー』
それはちばぎんのギターから始まった。
その瞬間、彼は神聖かまってちゃんのちばぎんではなく、ピックアップゴールドの"大作"になっていた。いや、大作どころかスペクタクル超大作だ。スーツ姿でギターを掻き鳴らし、「すべて壊せばいい 爆音とともに」だなんて、やっぱり超大作映画なのだ。
「吐き捨てーて!」
一緒に叫びたいくらいだった。彼は本当に吐き捨てていた。さらけ出していた。その姿が気持ちよく、劒さんの痙攣のような演奏スタイルもまた気持ちよかった。

「疲れ切りましたね…どんどんいきましょう」とちばぎんがため息まじりに呟きつつ、次の曲へ。英語の歌詞だ。神聖かまってちゃんでは考えられないことだろう。サビでちばぎんが高い声で入り、このライブが改めてピックアップゴールドのライブであることを痛感する。切ないメロディだ。夜景でも見ているかのようにウットリする女性客も多いことだろう。ちばぎんが成人式というよりも新米ホストにも見えてくる。

「まさかね、ピックアップゴールドとして舞台に立つことがあるとはね…」
ちばぎんがまたもやため息まじりに呟き、「ギターのひろっすぃーです」と唯一のオリジナルメンバーを紹介。イケメンだ。礼儀正しくお辞儀するひろっすぃー。「あれ?楽屋ではもっとなんか"おちんちんビローンとかやるわー!"とか言ってなかったっけ?」とちばぎんが話しかけると、「えろぎーん!」という野次が。「俺じゃねえよ!」とちばぎん。
「どうしたんですか?二人」と劒さんとまきおくんに振るも、「いや、なんか喋り慣れてるなあ、と」と劒さんは完全にお客さん視点だ。「この感じをみんなで乗り切ろうって話してたのに!」とちばぎんが訴えかける。
「こんな感じで柏ALIVEでやっていたそうなんですよ」
劒さんが解説する。「ドラムとベースの人はどうしたんですか?」と尋ねると、「"お前らとはバンドやりたくない"って断られました」と。ベーシストは郵便局員をやっているそうで、ドラマーは消息不明だそうだ。
「バンドってこういうことあるんですよ、皆さん」
劒さんが再び解説する。「まきおさんは何年ぶりに叩くんですか?」と尋ねると、10年ぶりとのこと。この日は上半身裸になるようで、パラパラと拍手が起こっていた。あらかじめみんなでスーツでキメようとしたところ、劒さんとまきおくんがいつもの格好だったことが話題に。「僕らはスーツ持ってないんですよ。着ない仕事なんでね」と。

そして『さよならドラえもん~Good Bye Blue~』へ。この曲も2ちゃんねるなどで話題になっていた。タイトルがやはり印象的だからだ。
途中のギターソロが切ない。サビの「グッバーーーイ」というちばぎんのボーカルが物悲しい。Blueだけあって青く照らされたステージ。ちばぎんもこのときばかりはのび太の気持ちになり、去りゆく友人に別れを告げていただろうか。(オリジナルメンバーのベーシストとドラマーに)

「昔、ライブのときにこのタイトルを言うとかなりの確率で笑いが起きてたんですけど…」
『さよならドラえもん~Good Bye Blue~』の解説を始める。反応が薄かったせいか、「あの、『さよならドラえもん』って映画があったんですよ」とちばぎんが劒さんに話しかけると、「知ってます知ってます!」と。「どんな映画?」とまきおくんが尋ね、「あの、ドラえもんが未来に帰らなきゃいけないって話で」とちばぎん。「ぉーん…」とまきおくんの普通の返事に笑いが起きる。

「昔ピックアップゴールドのライブは、今の20分の1くらいのお客さんだったんだよね。こんなね、こんな状況ないですよ。すごいしみじみ思った、今。でも右の奴も左の奴も愛想笑いしかないんだけど、どうすればいいのこの感じ!」
ちばぎんが訴えかけるも、劒さんは「僕は愛想笑いじゃないですよ」と、ひろっすぃーも「俺は本気で笑ってる」と答え、その間、なぜかまきおくんがドラムから立ってウロウロしている。「なんで立ってるんですか?」「脱ぐんですか?」ということで、歓声が上がり、脱ぐ。だが、「あーぁ…」というお客さんの反応。
「まきおさん、昔B'zの稲葉さんに憧れてイレズミを入れたんですよね」
ちばぎんの案内のもと、イレズミを入れたまきおくんの腹部に注目が集まる。「なんか、病気になった人みたいですね」「微生物が拡大したみたいですね」と劒さんが容赦なく斬り込む。「もう、着ていいですか…」と犯された人のようにか細い声で訴えるまきおくん。お客さんの反対の声と、「えっ!そのままやるんじゃないの!?」とちばぎん。「でも、そういうバンドじゃないよね…」と劒さんのごもっともな意見が。
ちばぎんがギターを置く。「えっ!脱ぐの?」とまきおくんが言い、客席から「おーっ!」と歓声が。「上着だけな!」とちばぎんはシャツ姿になり、腕を捲る。
「神聖かまってちゃんみたいにMC長くなくて、全体的に疾走感のあるライブにしたかったけど、結局こんな感じになってる…」
安定のMCの長さだった。

「次の曲は、僕が短大1年生の頃に『BABY PINK』っていうアダルトサイトを見て、"すげーサイト見つけたー!"って思って5分くらいで作った曲です」
ちばぎんの紹介により、「えろぎーん!」という歓声もありつつ次の曲へ。疾走感溢れる楽曲だ。アダルトサイトを見つけたときのちばぎんの心情を表しているのだろうか。「ベイビーピンクベイビーピンクベイビーピンク」と何度も繰り返すサビ。どんだけそのサイトを見てたんだ。このときばかりはやはり、ちばぎんぎんになっていたのだろうか。
ぎんぎんのテンションのまま演奏は終わり、間髪入れずにそのまま次の曲へ。ちばぎんが手元をくねくねと忙しなく動かしてギターを弾き、これまた疾走感あふれる楽曲。10年ぶりにドラムをやったとは思えない落ち着いたまきおくんのドラムプレイが見ものだ。

「なんか、バテちゃってる人が…」
まきおくんが疲れ果ててドラムセットの横でしゃがんでいる。「映さないで!」と言っていたが、アンプの奥に隠れて誰のカメラにも映らない。「ちょっと続け過ぎましたね…」とドラムに戻るが、「そんなに続けてないですけどね」とちばぎん。
ちばぎん「これ、時間ってもうそろそろ30分くらい経つんですかね?」
まきお「いつもそういうの気にしてますもんね」
ちばぎん「はい!」
劒「僕も気にしています…」

最後の曲はなんと新曲。「お客さんにとっては新曲でも何でも分からないと思うんですけど、最近作った曲っていうことをお伝えできればなと」とちばぎん。「盛り上がっていきましょう!」と威勢よく告げるまきおくんだが、「そういう曲じゃないです」とちばぎん。

劒「今日来てるお客さんの中でも、昔ピックアップゴールド観てた人いるかも知れませんね」
ちばぎん「絶対いないでしょ!じゃ一応聞いてみます。観てた方?」
静まる客席。
ちばぎん「いないじゃないですか」
劒「でも曲を聴いたことがある人はいるんじゃないですかね」
ちばぎん「一応ネットとかで1、2曲上がってますからね」
劒「うちの会社の人も聴いたことがあるらしいですよ」
ちばぎん「なんでそんな恥ずかしいことを!」
劒「でも、歌お上手ですよね」
ちばぎん「そういうの、終わってからでよくないですか…?」

最後の曲はしっとりとしたバラード。ズレつつあるメガネを何度もかけ直すちばぎんの仕草、この日何度見たことだろう。彼の最新の作詞・作曲というのはレア感満載だ。グレートにエスケープする曲もあれば、ドラえもんに別れを告げる曲、アダルトサイトの曲だってある。ピックアップゴールドの引き出しは豊富だ。
演奏が終わり、照れ笑いしながら「ありがとうございました」と言う。思えば、神聖かまってちゃんのライブでも演奏後は毎回のように「ありがとうございました」とちばぎんが言っている。
ステージから去っていくちばぎん。今までで最もかっこいい彼の姿を見てしまった気がする。成人式の帰りだったはずのスーツが、最終的にはステージ用のスーツに見えてしまった。それはまるで金を拾ってしまったのような、夢の中へグレートにエスケープしてしまったような感覚だった。

だが、一人のお客さんの一言ですべてが現実に引き戻される。

「ちばぎーん!クリーニングのタグついてるよー!」

そんなわけで伝説のバンド、ピックアップゴールドのライブが終了した。

その後、アンアミンのライブ。
クールビューティな台湾生まれのボーカル、アンアミンが直立不動で歌っている。そのメロディといい、日本語歌詞がとにかく愛くるしい。一発でキュンとなった。ライブハウスというよりも、AMラジオで不意に流れてきてハッとさせられるような楽曲ばかりだ。FMではなく、AM。気取らず、どこか1990年代の親しみやすい雰囲気があるのだ。雑音の中で流れる名曲だと思った。
台湾の言葉でMCをするが、当然何を喋っているのか分からなかった。「ミサコチャン」「チバギンクン」「モノクン」「ノコクン」という言葉だけが聞き取れ、神聖かまってちゃんのメンバーの名前がインターナショナルな響きになるのには思わず笑ってしまう。

最後はバンドじゃないもん!。
いまだ4回しかライブをしていないのにも関わらず、この日出た神聖かまってちゃんのメンバーの中では最も貫禄を感じさせるステージだった。
ドラムセットが二台置いてあるステージに、みさことかっちゃんが走りながら登場。t.A.T.uの登場SEが流れる中、『バンもん!のテーマ』からライブがスタート。「こちら第三惑星~」と歌いながらドラムから立ち、今回のライブはいつもと違って動作がとても多い。片方がドラムを叩いている間、もう片方が叩かずに自由な動きをする。その分、アイドルにより一層近づくパフォーマンスになっている。
曲の途中、ドラムから立ち上がってステージ前方に来て、踊れながらラップのようなものを披露する。そしてお決まりの「"バンバンバン!"と言ったら、"バンドじゃないもーん!"と言ってくださーい!」といったコールアンドレスポンスを要求。思わずニヤニヤしてしまう展開だが、最もニヤニヤしているのはみさこの後ろ、ステージ脇で見守る神聖かまってちゃんスタッフ・阿修羅くんだ。暗闇の中でニヤニヤしている彼の表情が常にカメラに映りこみ、みさこにカメラを向けるたびにずっと同じ笑顔でいるので何度噴出しそうになったことか。

この日、バンもん!はなんとそれぞれの挨拶を考えてきていた。みさこは「ホクロは恋のブラックホール!」と、かっちゃんは「ロングロンガーロンゲストヘアー!闇のパープルアイ!」と。なんだこれは。
「今日は色んなバンド出て楽しかったですね!PKアゴとか、アンアミンミンとか、地球人とかね。謎ばっかりが深まるわけですけども…」
みさこがいつもの調子のMC。そしてそのまま2曲連続披露。『ショコラ・ラブ』『愛の世界』へ。常に叩いてわけではなく、ちゃんと歌に専念している部分もあって、今までに観た中で最も余裕をもって歌っているように思えた。「メガネ萌え♪メガネ萌え♪」という歌詞が相変わらず印象的だ。思えばPKトモダチにもピックアップゴールドにもメガネがいた。そして阿修羅くんがニヤニヤしている。「受け止めーて♪」の部分では二人が立ち、ドラムスティックを前に掲げ、まるで想いを捧げるかのような動きを見せる。阿修羅くんはニヤニヤしていた。

MCではなぜか『家政婦のミタ』のミタが声だけで登場したり、言葉をカミまくりのみさこが「ねーこんなカミカミでーかわいいでしょー?」と言い始め、会場は不思議な笑いに包まれる。
『32th(パヒパヒ☆)』へ。
「パヒパヒ!」の部分では立ちながら叩くというアクションを。後半のドラム対決は相変わらず急にかっこよくなり、最後のまた「パヒパヒ!」に戻るところが気持ちいい。と思ったらドラムから立ち上がり、ステージ最前で思いっきり踊りまくる。なんなんだこれは。
最後はみさことかっちゃんが手を握り合い、ポーズを決めるがかっちゃんだけが去っていく。みさこが「えっ…かっちゃん、怒った?」と尋ねると、かっちゃんが「なーーんちゃって☆」と笑顔で指さし、走って戻り、「ありがとうございました!バンドじゃないもん!でしたー!」と挨拶して締める。
なんともいえない笑いが会場に。
そしてやっぱり阿修羅くんはずっとニヤニヤしていた。

「かわいいー」という声に包まれ、アンコールへ。
最後は『歌うMUSIC』へ。一度聴くと忘れられないメロディ。途中、ドラムを置いて手を叩く場面もあり、妙にあたたかい雰囲気のまま、イベントは終了する。
最終的に、阿修羅くんの表情がすべてを物語っていたように思う。

最後までの子さんは現れなかった。みさこさんは更に進化をしたバンドじゃないもん!でお客さんをブラックホールに投げ込み、monoくんはまさかのフィアンセボーカルのユニット、そしてピックアップゴールドはこの日、無事に一夜限りの復活を遂げた。
『謎の日』の謎はこうして解かれていったわけだけど、結果としてたしかに謎っぽいイベントのまま終了した。

終演後、撮影したライブ映像のアップロードができるかを尋ねると、ちばぎんはかなり渋っていた。「思い出用のDVDにしてほしい」と言っていた。だけどこれはたくさんの人が観たいだろう。僕も観たかった。観ると、誰もが「吐き捨てーて!」を口ずさむだろう。それも吐き捨てるように言うのではなく、愛をこめて。
そんな気持ちを抱きつつ、後日、ちばぎんの誕生日マジックにあやかった。
ちばぎんのGOサインが出て、無事、アップロードしました。


吐き捨てーて!!