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2011年10月21日金曜日

笹口騒音ハーモニカ@渋谷駅近く路上 雨

「笹口騒音ハーモニカさんの『おんがくのじかん』のPVを上映したいと思いまして」

『ネナシネマ』という路上上映イベントを企画しているチームの上村さんから連絡があり、『おんがくのじかん』のPVを渋谷駅近くの路上の壁に映し、流してもらえることになった。偶然にも、岩淵弘樹監督による笹口氏の『うるう年に生まれて』も上映ということで、「じゃあ」と笹口氏の弾き語りも決定。
そんなわけで雨の降りしきる秋の一日。22時過ぎに渋谷駅前のモヤイ像付近で人だからができ、ゲリラ上映が行なわれました。

ところが最初壁に映し出された映像はフォーカスが合っておらず、試行錯誤した様子で閉まったシャッターに映し出されることになった。どうやらフォーカスは機材が原因らしい。予定より少し遅れて上映が始まったが、程なくして背中に「警視庁」と書かれた方々が歩み寄り、上映は中止となった。笹口氏も中止と同時期に現れ、『おんがくのじかん』のPVは冒頭のシーンでストップ。
上村さんがお客さんに謝罪し、「上映されなかったので登場してきても関連性があるのかどうか」という存在の塊となってしまったギターを背負った笹口騒音ハーモニカは「どうしよう…やりますか」とギターを降ろし、先ほどまで上映していたシャッターの前に立ち、路上で弾き語ることになった。

夏あたりから笹口騒音ハーモニカのライブを撮影してきたけど、路上ライブは初めて。本人にとっても珍しいらしい。
上映は残念だったけど、この貴重な機会に遭遇できてよかった。

雨の音がチッチッと鳥の鳴き声のように聞こえ、車が雨に濡れた路上の水分を引きずる音が遠くから何度も聞こえる。その中で、都会の片隅で小さく笹口騒音ハーモニカの音が鳴っていた。僕は小さなビデオカメラで撮影を始めた。

「笹口騒音ハーモニカっていいまーす。上映がちょっとストップしちゃったので、せっかくなので流れるはずだった音楽をやりまーす」
上映が中断した『おんがくのじかん』を演奏。
ライブではお面をつけたり、お客さんに踊りを促したりとパフォーマンスを施す曲であるが、このときは最初から最後まで特に何もせずに歌い切っていた。

「このPVはそちらでカメラ撮ってくれている竹内くんと一緒に作ったものでして、YOUTUBEとかに上がってるんでよかったら見てください。すごい楽しそうに歌ったり踊ったりしてるんで。次はこれも流してもらう予定だった、岩淵さんという人と一緒に作ったもので、岩淵さんの地元が被災地でして、そこで自転車乗りながらカメラで撮ったものでして」

そして『うるう年に生まれて』。淡々と歌い続けているように思えるけど、元々曲の歌詞のひとつひとつが力強く、何を訴えているわけでもないのに、メッセージとして耳に飛び込んでくる。街の喧騒とセットで聴くと、より一層曲の孤独感が際立ってくる。死んだ人、生まれた人、本当、嘘。すべてが入り乱れ、時間だけが瓦礫に埋もれていく。だけど今、笹口が歌っている時間は埋もれることがない。これは音楽の特権なんだろう。

「渋谷…何やろうかな。朝までやりましょうか?『東京駅』って曲やりまーす」
渋谷駅で東京駅。やっぱり『東京駅』は東京駅であるべきだ。東京の中心地の象徴でもあり、すべてを繋げている中間地点である。歌詞に登場する男が言うように、東京中の電車を一瞬で止めることができそうな気がする。
「ああっ、こんなこと渋谷で歌ったら…こわい!」
途中、笑いを誘う笹口。東京駅の世界観はそのまま『アレルギー2011ver.』に繋がる。
「僕らはみんなアレルギー 放射能アレルギー マスクでもしないと 外にも出られない 手袋をしないと あなたに触れない」
どこか遠くで鳴っている店のBGM、宣伝カーから流れる流行りの音楽、人々の笑い声と、足音。
そして『もはや平和ではない』の演奏へ。初めて生で聴いた。 今年に入ってからいつの間にかこんな時代になってしまい、演奏を危ぶんでいたという。だけどあえてこれから歌っていきたい、などと言っていた。
「『笑っていいとも』やってる限り 平和だと思ってた」
何が起ころうともいつも通り生活している人々に、人間とはいかに強い生き物なのかと感嘆すると同時に、どこか不気味にも感じる。そこで生じる違和感に『笑っていいとも』というタイトルを持ってくるところが、笹口騒音ハーモニカ特有のセンスだと思う。

「あと1曲やって、アンコールで終わろうと思いますー。でもやっぱり2曲やろうかな」
最後は『New Music,New Life』『SAYONARA BABY BLUE』をたて続けに披露。「今夜雨は毒を含み 太陽は凍りつく」と、雨の中で聴けたのは幸運だ。太陽は地球の裏っ側で、夜の東京を知らない。そこではメガネをかけた、どこにでもいそうな風貌の男が、どこにでも見当たらない言葉で、どこにでも起きているようなことを歌っているのだ。
周囲の店も光を消していく時間帯、23時過ぎは暗い。まさに東京中の電気を消されたような舞台で、光の当たらないシンガーが波打ち際の女の子を歌って終了。

「汚れちゃった私でも"死にたい"なんて思わない おちればおちるほどドキドキが止まんないの 雑巾と呼ばれたって 生きるベイビーブルー 命の限りおちてやる 私ベイビーブルー 100万ドルのベイビーブルー」

僕が地元の兵庫県にいた頃、都会はやっぱり憧れだった。今でもそうだ。見上げるほど高いところもあれば、見過ごしたいほどに小さくて汚れているところもある。
立ち止まる人がいたかいなかったかは分からないけど、笹口騒音ハーモニカを知らない人、ライブハウスに行かない人、音楽を探すこともない人に聴いてほしい。
アンコールを促されているわけでもなく、「じゃあアンコールやりまーす」といつもの調子で太平洋不知火楽団の『たとえば僕が売れたら』の1番のみ披露。
「はい、雨の中ありがとうございましたー」
これにて笹口騒音ハーモニカのゲリラライブは終了。雨、23時、渋谷。ロケーションと状況がライブを盛り上げ、人通りの少なくなった路上だからこそ生まれるものがあったと思います。

笹口騒音ハーモニカ【もはや平和ではない】2011/10/21 渋谷駅前 雨

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