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2009年9月27日日曜日

神聖かまってちゃん@渋谷LUSH

前回の流血ライブから1週間も経っていない。
の子さんの額がずっと気になっていた。セットリストよりも額が気になった。かさぶたとかどうなっているんだろうかと思っていた。だけど蓋を開けてみると、きれいな額だった。どういうことなのか。そしてこの日、セットリストも見事なものだった。
なぜか開場して間もない頃に着き、イベント出演バンドをほぼ網羅した。
住所不定無職というバンドは名前に似合わず、ガールズバンド。以前FMおだわらに出演したときにパーソナリティの成川くんがこのバンドのビートルズっぽい音源を流していて、ずっと気になっていた。終盤に演奏した『住所不定無職のテーマ』が切ないラブソング。住所が不定なのも無職なのも、勿体ないと思った。
話題のOKAMOTO'Sも観れた。
ベースの大きな眼鏡をかけた怪しい雰囲気の人、どうやら某有名タレントの息子さんのようで。それとは全く関係なく、妙なオーラがあった。素人の僕から見ても感嘆するほどのベース。8割方、彼に見とれっぱなしだった。

神聖かまってちゃんの出番はトリ前。

恐らく自分で持ってきたであろうビートルズのリマスター盤CDを流しながらセッティングするの子。『I Want to Hold Your Hand』をBGMに神聖かまってちゃんとは、これいかに。やがてセッティングが終わり、オアシスの『DON'T LOOK BACK IN ANGER』のイントロが流れてきたときに、の子がマイクで喋る。

「今日はまったりとして、いいですね。僕は今日まったりとライブをやるつもりです。はじめての人もいるかも知れませんが、それは知ったこっちゃありません。とりあえずライブを…(大音量で流れるオアシスの曲に)うるせえよ!!!」

大好きなオアシスにさえパンク精神を。(たぶん違う)

そしてまさかの「ぺんてるって曲からやりますー」という発言。
何かの配信で『ぺんてる』はもうライブで演奏しないと言っていた。ファンの間でもそれは知られていたので、常連のお客さんからどよめきが走る。の子の宅録音源のトラックが流れ、「まあまあまあ」と動揺する客席をなだめるの子。とにかく嬉しい。1曲目は『ぺんてる』
monoがギターを弾いている。前回はの子の流血で完全にmonoのギター姿へ驚きが薄くなってしまったけど、キーボード2台に囲まれてギターを弾く姿はマルチプレイヤーの雰囲気を漂わせる。小室みたいなもんである。
イントロのギターのメロディが気持ちよく、「1つ、2つ、3つ」と歌詞に合わせて指を出すの子の姿が印象的。後半のキラキラとした幻想的なムードがたまらない。最後は「あの日のことを~」と繰り返し歌い、歌詞がライブならではにアレンジされていた。

の子「(『ぺんてる』を)ライブでやるのは2回目なんですけどね、まあ、良かったのか悪かったのかよく分からない反応だけど」
客「よかった!」
の子「…よかったってのが2人聞こえたから、残りの人はそうでもないんだ…見てろよ!!次の曲でお前らのアゴが外れる!」

まったりとさせるはずだったライブが突如、アゴを外すためのライブに。monoが自分が呼ばれたかのように一瞬機敏に反応した姿を見逃さなかった。
そしてアゴを外すために『23才の夏休み』へ。
「夏ですねー。サマーバケイションがやってきましたー」とフラフラした様子のの子が言い、みさこがドラムを鳴らしてスタート。いつも思うけど、の子の様子を伺ってドラムやシンバルを叩く機会を狙うみさこの笑顔がグッとくる。「いまだ!」という表情をたまにしている気がする。その通り、「そうさ今すぐにー」とはこのことを言う。最後は「そうさ今すぐにー」との子とちばぎんがコーラスの掛け合い。

の子がメンバー3人に「お前ら、3人でコントやって」と突然ムシャぶり。
「えーっと…えーっと…えーっと……」完全に困り果てている様子のちばぎん。の子に「あの、必死な俺の顔見て」と救いを求め、の子がマイクをスタンドから取り出し、お手本を見せる。
「イギーーポップだヨォオオオオオ!!!」と言いながら客席に突っ込んでいく。笑いが起きる。
「はい、これで苦笑い」との子。「でもね、ニューヨークでのイギー・ポップはこんな感じなの」と説明するの子に対し、monoが可愛げに「知らないよっ!そんなのっ」と返事したのが気になった。

「今日はあんまりやらない曲やります」との子が言い、『スピード』。この日のセットリストはかなりグッとくる。
『スピード』は8月のサマソニ後の渋谷LUSH以降、2回目。あのときよりもキレが鋭く、遥かにかっこよくなっていた。ブレイクするときのみさこのドッダンドッダンドッダンドダダダ!と叩くドラムがかっこいい。静と動のメリハリがある。それなのに、沈黙する部分での子が肝心の歌詞を間違える。
「誰にも見えないヒチメンマ~」
ちゃんと歌えず、メンバー3人が苦笑いしながら演奏。3人ともいい笑顔だった。
それにしても「ひとりぼっちが好きだったら 走れ走れスピードで」といった歌詞である。これはの子自身を歌っている曲だ。もはや神聖かまってちゃんは目に見えないほどの早さで、多くの人の心を掴んでいる。これからもそれが続くのだろう。

その後は珍しく間髪入れずに、すぐ『ロックンロールは鳴り止まないっ』の演奏へ。
演奏後にの子が「もっかいやらしてください!僕今ダメだったな…」と後悔。だけど、今まで一番だった気がする。ライブで演奏するごとにかっこよくなってきている。アウトロのmonoのキーボードの余韻がたまらないのだ。

『天使じゃ地上じゃちっそく死』も、まったりしたライブを宣言しただけあって、の子が丁寧にギターを弾いているといちいち感動してしまう。
そして「お前らのアゴを外してやる!」と宣言しただけあって、monoがギターからキーボードに切り替える瞬間にアゴが外れそうになる。PVで言うと、映像がバババッと素早く移り変わる瞬間。
前回のライブでは血まみれで赤く染まった顔で歌っていたけど、今回はつるっつるの白い顔で「死にたいー!」と何度も絶叫するの子。リズムを無視して「死にたい!死にたい!」と何度も叫ぶ姿は、初見の人にとっては新鮮すぎる光景だろう。
今回、みさこのドラムがやたらとかっこいい。どうしたの?というくらい、みさこのドラムが凛々しい。ハンサムだ。いつもと違う白熱の演奏にドキッとする。

それが最も表れていたのは、最後に演奏された『夕方のピアノ』
「今日はこのくらいしかできませんが、わざわざ来てくださった5人のお客さま…」との子が言った後に始まる。中盤、monoのキーボードから音が出なくなる。monoが修復にしている間、『夕方のピアノ』なのにピアノがない状態でただの『夕方』になっていたが、みさこのドラムがなぜかここで大迫力に。夕方が一気に燃えた。赤く染まった。ある意味、の子がカミソリで額を切ったとき以上に赤い。精神的な夕暮れの赤が見えた気がした。
ズダダダダダ!!
低音で鳴り響くドラム。最後にの子が何度も「佐藤ーーー!!」と叫ぶところで、ドラムの重い音が耳に突き刺さる。身体で感じる。ちばぎんも激しくアクションし、気がつけばメガネを落下させるほどアグレッシブに。monoのキーボードが復旧した頃にはピアノがしっかりと鳴り、『夕方のピアノ』になった。
の子は鬼のような形相で、マイクスタンドを何度も床に叩き付ける。
まったりとはせずに、アゴが外れそうになったライブになった。

終演後は、薄暗くなったステージの上での子とmonoが「最後に笑点の物真似やれよ!」「できねえよ!」と仲良さそうにじゃれ合い、微笑ましい光景が。
大胆なアクションのあるライブもいいけど、演奏重視でまったりとした雰囲気のライブもいい。いや、みさこのドラムはまったりしていなかったな。あれは凄かった。神聖かまってちゃんの演奏で、初めて痺れたかも知れない。

この日はみさこさんの大学時代に一緒にバンドをやっていたという杉山さんが、初めて神聖かまってちゃんのライブを観に来ていた。なんとなくだが、みさこさんがこの日素晴らしいドラミングだったのは、杉山さんが観に来ていたからかも知れない。「私、こんなにドラム叩けるようになったよ!」という気合いが見えた。杉山さんとは、僕が以前勤めていた会社と繋がりがあったり、学生時代に僕のホームページを見ていたりなど、縁を感じた。

また、この日はDaredevilという渋谷の服屋のスタイリスト・スエタカヨーコがライブを観に来ていたようだ。ユーミンやベッキーなどの著名人のスタイリングを手がけている方だそうだ。ライブ後、『子供ノノ聖域』にはの子の日記でこのことについて書かれていた。

2009年9月27日 渋谷LUSH
〈セットリスト〉
1、ぺんてる
2、23才の夏休み
3、スピード
4、ロックンロールは鳴り止まないっ
5、天使じゃ地上じゃちっそく死
6、夕方のピアノ

2009年9月21日月曜日

神聖かまってちゃん@高円寺UFO CLUB

まさかの流血ライブ。
いや、まさかと言ったら嘘になる。の子さんはこのイベントの出演をずっと迷っていたらしい。オシリペンペンズとの共演だ。関西アングラの頂点とも呼べる彼らとの共演には覚悟が必要だったようだ。それほど、彼は一つ一つのライブに懸けていた。
今回のイベント『チーム変態』の企画者である友人が「一つバンドが出れなくなったんですが、竹内さん、何かいいバンドいないですかね」と相談を持ちかけてきたとき、迷わず出した名前が神聖かまってちゃん。こうしてこの日、彼らが出演することになった。

リハーサルから、神聖かまってちゃんはピリピリしたムードだった。
ドラムをミスったみさこさんに、の子さんが怒鳴る。それでもリハーサル後に楽屋に挨拶に向かうと、ニコニコと笑うみさこさんに強さを感じた。の子さんは相当精神的に追い詰めている様子で、呼びかけても2秒くらい気付かなかった。顔色が悪く、どんよりとした雰囲気なのは外見からも伝わる。そしてこの日、ライブ前に朝から自宅で単独で配信し、メンバーへの愚痴を呟いていた。
「僕、最近病んでますわ」
見るからに重たい病気を抱えているような彼の状態。この日の共演者である関西の友人バンド・チッツのボーカルも「思うてた以上にやばそうな人やわ」と言うほど。
シャムキャッツ、チッツのライブが終わり、神聖かまってちゃんは3バンド目の登場。UFO CLUBはステージにカーテンがあり、ライブが始まると幕が開くようになっている。チケットが売り切れ、会場はぎゅうぎゅう詰め。酸素が薄くなったライブハウスだが、この後、ますます二酸化炭素を感じさせる光景が広がってしまう。

幕が開き、神聖かまってちゃんのライブがスタート。
たくさんのお客さんの数に、それなりに「んんっ」といった表情でリアクションするの子。表情は死んでいる。ファンからの「の子ー!」「monoくーん!」といった歓声が聞こえ、monoは手を振って応えるが、の子は「うるせー!」と叫ぶ。「…ごめん、じゃあ初めに『ゆーれい未満』という曲をやります」と無気力に笑い、演奏へ。
「うーっ、ゆれい!」から始まる『ゆーれい未満』。まさにゆーれいと人間の狭間をいくようなの子のこの日の雰囲気は、いまだかつて観たことのないものだった。ビデオカメラで彼の顔面をズームすると、額には妙な血の塊が。何だこれ。そして着ている長袖のシャツ、腕の部分には血が滲んでいる。何だこれ。UFO CLUBの内装は真っ赤だから、それに合わせているのか。いや、でも血だ。
などと緊張感を覚えつつも、「ですよね」の後のmonoのキーボードがますます壮大な感じになっており、そのかっこよさに血を忘れる。いや、でもあれは血だ。

「人が多い!って感じです。こんな、マンタンで。皆さん相当ヒマなんかどうか分かりませんが、まあ、だいたいは僕らのファンじゃないってことは分かってるんで。お前ら全員食ってくってことで」

挑発気味のの子、長袖の服を脱ぎ始める。すると、生々しい腕の傷がズァーッと。その色は赤というより、真っ黒だ。最前列にいた女の子たちの様子が少しおかしくなる。の子はタンバリンを持ち、「じゃあ次は『学校に行きたくない』とか、そんな感じの曲をやります」とフラフラとステージを歩きながら呟く。
戸惑うメンバーたち。次の曲は予定と違っていたようだ。動揺するmonoを、の子が「この人はちょっと記憶障害があるので」とフォロー。ちばぎんが話を無理矢理合わすように、「そうだよ!もともと『学校に行きたくない』の予定だったんだよー。お前が悪いよー。」と、冗談っぽくmonoに言う。monoはギターを抱える。おお、monoギターは初めて観る。

一度イントロに失敗しつつも、『学校に行きたくない』は仕切り直した後に、スタート。
ギターを弾いているmonoを物珍しい目で見つつも、やはり気になるのはの子の腕。壮絶な傷跡だ。つい先ほど切ったばかりな様子で、出来立てほやほや感がある。
いつものようにステージで暴れ回るの子であるが、確実にいつもと違うことが起きている。
タンバリンを持つ手ではなく、もう片方の手に持っているもの。光ってる。 カミソリだ。刃物だ。キラキラと光り、「計算ドリルを返してください!」と叫びながら、僕の持つビデオカメラの目の前で振り回している。あぶねー!
「お前らさぁ!お前らさぁーーー!!」
の子、鬼のような形相で客席に向かって絶叫。怒りとか憎しみとか、そういうレベルではない。人間のあらゆる部分を超越したような迫力のまま、カミソリの刃を頭に掠らせる。グサッ。グサッ。またカミソリを頭に。グサッ。おいおいおい。グサッ。グサッ。
そして歌いながら客席に飛び込んでくる。すぐ横を飛んでいき、落下して倒れたときにまたグサッ。ステージに戻ってもグサッ。何度もカミソリで頭を切り、彼の顔面にズームアップする。
大流血。
血が目に入りそうなほど、口の近くまで垂れている。
「僕の計算ドリルを、、返してーー!!」
気の狂ったような表情で叫び、演奏が終わる。音が終わるのと同時に「あーー!!」と声を出し、そこにはの子の変わり果てた姿が…。
それでもの子は「ありがとうございますー」と穏やかな声で挨拶をする。なんなんだこれは。なんなんですかこれは。

会場の空気が一変する。何かとんでもないことが起きたような雰囲気になり、客席前方には少し空間ができる。最前列にいた女の子たちが逃げたのだ。
「の子ー!」と興奮しているお客さんもいれば、完全に引いて場所を移動したお客さんもいる。笑いが止まらない人もいれば、気分を悪くしている人も。こんな両極端な反応がみれるライブハウス、初めてかも知れない。
「いわば序曲だこれはー! この後、もっともっと凄いものが出てくるからぁー!!」
このとき、オシリペンペンズに対抗したパフォーマンスであることが分かった。
の子は『変態』というキーワードを含んだイベント名を意識してか、自分なりの『変態』を体現していた。威嚇するように客席を見つめるの子であるが、お客さんはそれに対抗する意識は一切見られない。ちばぎんが「この後出るバンドが絶対困るでしょそれ…お客さん、引いてるよ?」とバランスを保とうとする。こういう状況でもバンドにつっこみがいることに、妙な安心感を覚える。
の子以外のメンバー3人がセッションを始め、の子が煽情する。

「でも、こういう感覚を持つ人が集まる場所だと僕は思っていますー!! これが、UFOクラブの…『変態まつり』なのでありますー!!」

の子、イベント名を忘れて思い出したように叫んだが、全然間違えていた。マイクを頭にガンッ!とぶつけ、ますます威嚇。もう十分なくらい、一番の『変態』になっている。
「これで、やりたいことはやりましたっ!」
おどけた様子で笑顔になり、血まみれでひょこひょこと舞うの子。恐ろしい光景なのに平然としている姿はシュールだ。「僕はこのタンバリンを持って、リアム・ギャラガーみたいにやりたかっただけなんですけどね。」と言い、後ろで手を組んでちょっとだけオアシスのリアムの物真似を。
ちばぎんが「じゃあ新曲やりまーす」と進行させると、の子が「ちょちょ、ちょっと待ってくれっ!お茶を、用意してくれっ!」と突拍子もないことを言って止める。ちばぎんが「お茶!お茶をー!」とステージ脇に向かって叫ぶが、「嘘だよ!」との子。

「次は新曲で、死にたいなー。死にたいなー。あっ、『天使じゃ地上じゃちっそく死』という曲をやりますー」
の子による曲紹介で、『天使じゃ地上じゃちっそく死』をライブ初披露。
この曲が血まみれの状態で披露されるのは、かなり似合っている。顔面流血で「死にたいなー。死にたいなー」と、すごくタイムリーな話題だ。妙に説得力を持たせてしまっている。の子の顔面にズームすると、地獄絵図。プロレスを観に行ったこともないので、こんなに人が血を流しているのを生で観たのは初めて。しかも歌っているという状況。
撮影していると、いきなり背中に衝撃が。
振り返ると、女の子が倒れたようだ。後ろにいた僕の友人が慌てて抱きかかえている。なにこの状況。後で話を聞くと、どうやら血を見たせいか女の子が2人、ライブ中に失神したらしい。怖くて泣いた女の子もいたらしい。
なにそれ。すごい。そんなライブ観たことがない。失神した女の子らが無事でよかったので言わせてもらうけど、失神者が出るライブなんて観たことがない。すいません、貴重に感じてしまいます。とにかく音にも歌詞にも説得力がこれほどまで持つとは。ちっそく死とは、まさにこのこと。
「死にたい季節があるとすれば、死にたい季節がお前にもあるはずさぁーー!!」と、これまた物凄い形相で絶叫し、演奏は終了。
その後、「血を、流したことは、ずるい!」の子がかわいげに言う。何人かが大爆笑する。

なんとなく、の子は「やりすぎたか…」と思ったように見えた。本人としてはこれくらいやるのが『変態』イベントとして当たり前だと思ったのではないだろうか。オシリペンペンズにとってはこれくらい、なんてことはない。それを熟知してるからこその流血。彼なりに考えたパフォーマンスが、狂気の沙汰に捉えられていることの焦りをの子の言動から感じた。
「血を流したことはずるい」なんて、優しい解説だ。ちょっと、彼の身体を犠牲にした根性に感動してしまった。

「最近、インターネット活動が低下気味な僕らです。まあ、こう効率のいいMCができるのはちばぎんとmonoくんなんですけどね。みさこさんはあれだよ」とみさこに釘をさす。「まあ、来週にはワンマンバンドをやるんで。そのときは16曲くらいやるんで」との子が言い出すと、ちばぎんが「ワンマンライブね」とつっこむ。最後の曲『ロックンロールは鳴り止まないっ』へ。
「リアル世界でがんばってる神聖かまってちゃんであります」との子が言い、monoがイントロのピアノを始める。
血まみれで歌うこの曲は新鮮だ。「何がいいんだか全然わかりません」の部分でニコッとした笑顔。怖いけど、愛嬌がある。絶妙なバランス感覚がステージにある。
最後はマイクから音が出なくなったの子が、ギターを抱えながら激しく飛び跳ねる。最前列のお客さんが危険を察知したのか、グッと身を引いた。の子はそれに気付いたかのように、突然優しい表情になり、お辞儀する。
monoのピアノが鳴っている間、へこへことお客さんに礼をし続けるの子。
「血が、弱いひとは、すみませんでしたー!!」
まさかの謝罪。ステージ前方で土下座をするの子。
「この後も、オシリペンペンズとか、水中もぐもぐ苦しいとか、もっとすごいバンドが出るので!」
礼儀正しく挨拶をして、終了。
カミソリで自ら頭を切った人とは思えない、紳士的な終わり方だった。大胆なことをした後、謝ったり、冷静さをちゃんと保ったりする。これはバランス感覚だろう。ステージに立つ人なら誰しも必要とする感覚ではないだろうか。

カミソリと流血は、の子なりの『変態』イベントで共演者に対抗するためのパフォーマンスだった。ライブ前の緊張感は強豪・オシリペンペンズとの共演へのプレッシャーにしか思えなかった。
もちろん、バンドは演奏や歌でその実力を発揮するものだろう。だけど、この日の彼には目先にあるパフォーマンス帝王への対抗心がリードしていた。
「最悪」「大嫌い」「二度と観ない」
この日のライブ後、友人も見知らぬ人も、このような感想を述べる人は少なくはなかった。
だけど、それもすべて彼が予測していた反応だろう。どこか変態になり切れず、自分のパフォーマンスを「ずるい!」と評し、「すみませんでした!」と謝る。確実に客観視していた。

神聖かまってちゃんのライブ後の会場は、妙な空気に包まれていた。あんなものを見たら、すぐには現実に戻れない。
幾度となくゴリ推ししていたら、ライブを観に来てくれたライターの九龍ジョーさんは「めちゃくちゃ面白かった!」とCDまで買って大満足。こういう反応の人が頼もしい。面白い以外の何者でもないでしょう。
ロビーにいると、顔面血まみれのの子が登場する。一気に道をあけるお客さん。「オシリペンペンズを観ましょう!」と爽やかに話しかけてきた。ライブ前よりも元気になっていたかも知れない。
の子はこの日の朝、「今日は自分の中のロックというものを叩きつけます」となぜか僕に決意表明のようなメールを送ってくれた。だからこそ、ジーーンと感動するものがあった。このパフォーマンスが何の意味があるのかは分からないけど、彼の異常なまでの表現根性は、誰も真似できないだろう。
この日、『変態』を守ったのは神聖かまってちゃん、の子だけだった。

そもそも、あんなに流血しているのに会場を笑わせて、和ませるのが見事すぎる。動揺することなくライブを進行させることができたちばぎんも、大きな存在だと思う。

2009年9月21日 東高円寺UFO CLUB
〈セットリスト〉
1、ゆーれい未満
2、学校に行きたくない
3、天使じゃ地上じゃちっそく死
4、ロックンロールは鳴り止まないっ

2009年9月4日金曜日

神聖かまってちゃん@下北沢屋根裏

下北沢屋根裏でのライブは4ヶ月ぶり。
あの頃とは違い、大勢のお客さんが詰め掛けていた。この日はSPACE SHOWER TVが撮影に来ていたようで、大きな機材を抱えたカメラマンが客席前方にいた。
レコード会社の方も何人かいたようで、神聖かまってちゃんの注目度がサマーソニック後に一気に高まっている。
今回、下北沢屋根裏の普通のブッキングライブだったようだけど、この日でそれに出るのも終わりかも知れない。

神聖かまってちゃんの出番はトリ。お客さんの多さに反比例するかのように、の子のテンションはかなり低い。
「はいこんばんわ。神聖かまってちゃんです。久々に下北沢の屋根裏でライブやることになりました。なんで人がいっぱいいるのかよく分かりません。なんでこんなにいっぱい…幻を見ているかのようだ。今までは、4人とか5人とか、対バンとか。これは、たぶんうちらのファンじゃないですね、はい」
表情を一切変えることなく、感情というものがどこか別の惑星にでもあるかのようなテンションで語り始める。
「次は『ちりとり』って曲をやります。こんな夜遅くにすみませんね」
1曲目なのに「次は」と言ったことに笑うお客さんも。

『ちりとり』は終盤、「奥まで!奥までー!」と叫ぶときのの子の目が飛び出そうなくらい、ひんずり剥かれていた。
髪の毛を切ってちびまる子ちゃんのような髪型になったの子。ゴリラ柄のシャツを着たmono。ネクタイファッションのちばぎん。みさこはいつもより服装が華やかで、これはちょっとSPACE SHOWER TVのカメラを意識したものではないかと憶測が。
そしてステージのフォーメーションが変わっていた。monoが中央でキーボードを弾く構図となり、みさこがmonoに隠れる。一つの絵にメンバー全員が収まりにくい、少しカメラマン泣かせな立ち位置である。

「今日はこれを使ってね。きれいな、夏になったからね。夏の曲を…」
の子には夏がそろそろ終わってしまうことも関係なく、頭にヘッドマイクを付けようとする。まだ付けられていないのにみさこがドカドカドカドッドッダン!とドラムを始めてしまい、メンバーもの子に気付かずに演奏をスタートさせる。
「ちょっと、はえーよバカ!俺がいまコレ付けていただろうがよ!付けてこれをクリックリッとしていたのに…いつも練習でやってるのに!バカかお前!これなんかそういう番組的なノリ?…つまんねえぞ!」
演奏を止めたの子が、みさこを叱責。これは仕方ない。
ちばぎんが「じゃあ、『23才の夏休み』を!」と進行させるように促し、やり直しで再び『23才の夏休み』を。
「サンサン太陽がーむかつくぜ、むかつくぜ」のときのの子の目がまたまた凄いことに。瞳孔開きっぱなし。本当に太陽にムカついているような顔をしていた。ちばぎんがサビでコーラスをしたり、みさこの最初のドラムなど、この曲はライブで聴くたびにちょこちょこ変わっている気がする。試行錯誤しているのだろうか。

「まあ僕は23才じゃなくてもう24才で、おっさん化していってるんですけどね!でも精神年齢はまだまだ若くて、みなさんも年取ってる人いると思うんですけど、まだ30なっても40なっても忌野清志郎モードで来てるんじゃないかと僕は思ってるんですけどね、ロック少年たちはね。うん。ガンバレロック少年!!」

バシャーンとシンバルが鳴る。
の子やmonoが何かしら印象的なことを言った後、みさこがシンバルを叩いて更に印象づけることが多い。「ここ、ポイント!」といった感じで。

「自殺したいって曲です」というの子の紹介で、『ゆーれい未満』へ。
「そんざーい」のちばぎんのコーラス、スタンドマイクじゃなくてヘッドマイクで歌っている。「ですよね」の後のmonoのキーボードが6月の渋谷屋根裏のときとは全然違っており、壮大な音になっていた。ライブで観るたびに細かいところでアレンジされていて、曲がどんどん成長していく過程が伺える。

の子は遅い時間にライブをやるのが苦手な様子。といっても、先月のLUSHは23時過ぎだったのに。
monoに対していきなり、「彼女募集してんじゃねーバカヤロー!調子に乗んな!」と叱責するの子。ちばぎんの「してんの?」という問いに、「してますよー」と穏やかな声で返答するmono。「いや、興味ないけど」と聞いたわけには冷たく返すちばぎん。
「次は学校に行きたくないを、練習してないのにやります」との子が言い、『学校に行きたくない』へ。「やるんですかー?大丈夫ですかー?」とメンバーに確認するの子。ダダッダッダッダダ!というドラムが始まり、曲へ。
演奏中、の子は上着を脱いで動きやすい格好になる。「計算ドリルを返してください!」と何度も叫ぶ。客席に飛び込み、「お前らさぁ!お前らさぁああ!!」と壮絶な眼力で客に向かって叫ぶ。人一人殺してしまいそうなほどの狂気の目だ。
音がずっとピーピーと悲鳴を上げ、これはハウリングなのか、ノイズなのか。渾沌としたステージに。荒っぽいサウンドのほうがこの曲は映える。の子、最後は客席でストン!と倒れ、お客さんに起こしてもらう。
動きも激しく、目の力も凄い。だけど、どこか魂の抜けた人のようで、人形みたいだ。の子はこの日、本当に気分が優れていなかったのだろう。それでもの子は叫ぶ。
「まあ、めちゃくちゃでした。パンダ見るよりはマシだろ!!」
突然繰り出された予想外のキーワードに、「ぱっ、パンダ…?」と爆笑する女性客。
「ピックがもう無い。一円玉しかない。一円でやるか!」
の子、一円玉でギターを弾こうとする。

「キーボードのコンセントが抜けたよ全く…データ読み込みし直しだよ!」とmono。「お前、酒飲んでっから間違えちゃったんじゃないの?」との子。の子はそのまま「monoくんは説明すると、あれなんだ…まあ…バカ。2文字で済むの」と客に端的に説明し、笑いを誘う。
monoの扱いがひどい。
「夏休みってもう終わったの?」とmonoがちばぎんに尋ねると、「はあ?」と冷たい反応。「俺たちこれからイカダ(配信)やるのに、寒いじゃん」と続け、どうやらmonoはイカダ作って、川に浮かばせて、乗って、海賊王になりたいらしい。ちばぎんが「バカじゃねえの?」と冷たくあしらう。
monoの扱いがひどい。
「みんなインターネットやってるかわかんないから、配信とかそういうこと言っても知らないんじゃないの?ちょうどお前、難民みたいな顔してるからいいけど。」
とにかくmonoの扱いがひどい。

「じゃあ、こうしよう。ロックンロールは鳴り止まないっ!!」

の子がこの流れを抑えるために突然威勢よく叫び、『ロックンロールは鳴り止まないっ』がスタート。
曲の途中、の子が歌わずに前方にいるカメラマンに向かっていきなり「撮るなバカ!」と怒鳴る。僕も後ろから撮っているので、なんとなく、自分が言われなくてよかったと思ってしまった。
「すいません、調子乗りすぎました!ケガした人とかいたら、後で土下座します!ありがとうごさまいしたー!!」
の子が『学校に行きたくない』で客席に飛び込んだことをなぜか謝り、ライブ終了。
今回のライブは終わるのがあっという間だった。しっかりと30分の枠で収めて演奏したからか、どうなのか。演奏中はそうでもないが、表情からしての子の不調な様子が印象的だった。

終演後、の子が人からもらった服をその場で着ていた。サービス精神に満ち溢れている反面、その表情は微動だにせず。鬱状態のときは表情が完全に静止するのだろうか。楽屋ではSPACE SHOWER TVの取材が始まったようで、ちゃんと受け応えできるか心配に思った。
神聖かまってちゃんにとって初のCD音源も、すでに完成していたようだ。
過去の下北沢屋根裏では想像もできないことが、これから起きる予感がする。ライブハウスの客席後方では業界人同士が名刺交換をし、大人の世界になりつつある。

神聖かまってちゃん、いよいよ凄いことになりつつある。

2009年9月4日 下北沢屋根裏
〈セットリスト〉
1、ちりとり
2、23才の夏休み
3、ゆーれい未満
4、学校に行きたくない
5、ロックンロールは鳴り止まないっ