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2008年6月22日日曜日

銀杏BOYZ@ZEPP TOKYO

銀杏BOYZとYUKIのツーマンライブ。

HOT STUFF PROMOTIONの設立30周年記念イベント『BLACK AND BLUE』。この組み合わせを夢見た人は多いだろう。『駆け抜けて性春』が遂に実現する。会場にいる誰もがこの日まで毎晩イメージトレーニングし、その夢の実現に何度頬をつねったことだろう。
それは峯田和伸だって同じ気持ちだったかも知れないし、もちろん、YUKIだって。3年前の京都磔磔での銀杏BOYZは忘れられない。YUKIを想う誰もが3年前のことを忘れたくても忘れられないし、忘れたくはないだろう。

雨のお台場、傘と傘がぶつかり合う会場の前では、『チケットを譲ってください』と段ボールに書いて掲げる人たち。このライブの人気を物語っていた。外見から明らかにこのライブのお客さんだろうとバレバレの人でごった返し。銀杏BOYZのTシャツ姿の男の子女の子はもちろんのこと、なんとYUKIの『JOY』のPVに出てくるバックダンサーのコスプレイヤーもいた。気合いを感じた。写真を撮らしてもらった。


ステージのセッティングからして、まずはYUKIからライブが始まる予感。登場を心待ちにしている会場では、「YUKIー!」という声援が男女問わず聞こえてくる。そして照明が落とされ、歓声が巻き起こる。
テテテテとギターの音が鳴ると、客席からは悲鳴にも似た絶叫が。

『ふがいないや』でYUKIのライブがスタート。
可憐にボブヘアーが揺れ、小さい身体で縦横無尽にステージを走り回り、歓声に応えるかのように歌い続ける。キラキラしていた。あれで30代とは思えない。あれは10代だろう。年齢を偽ってるとしか思えない。詐欺だ。逆詐欺だ。そのまま『ビスケット』『ハローグッバイ』でもYUKIは年齢を偽り続ける。騙されるのは気持ちいい。
しかし、単に可愛いだけではないのは誰もが知っていることだろう。
その歌唱力は、あの小さな身体から発されるとは思えないくらい。動き回っても途切れることなく、息を切らすこともなく歌い続けるのは魂以外の何者でもない。YUKIはアイドルでもアーティストでもある。そのふり幅にただただ驚かされる。
『長い夢』は4曲目にして「ばいばい」という歌詞。誰もがばいばいしたくないだろう。そのキラキラと美しさをどう受け止めるべきか、会議したい。

「このあとは、私の大好きなバンドが出るので体力を温存してくださいね」

温存なんてできないだろうが、「はーーい」「おおおー」と返事する客席。嘘をついた。YUKIを目の前にできるはずがないだろう。といっても『プリズム』『汽車に乗って』『66db』と、落ち着いた曲が立て続けに披露されていく。温存タイムではあった。内部でふつふつと熱いものがこみ上げ、これは確かに温存だ。『66db』は雨の日に似合う。あらゆる雨の日に聴いたことを思い出させる。

「このイベントは2万通もの応募があったそうです。みんなはその中の3000人です。とてもラッキーなんです」

「昔、私がこっちに出てきて音楽活動をやり始めた頃、HOT STUFFの皆さんとライブ後のボーリングに行って。その頃私はお金がなくて、何も食べられずにいると、HOT STUFFの方がアイスを買ってくれたんです。その方は現在、偉くなって副社長になりました。だから今日、私はそのアイスのお礼をしに来ました!」

むしろアイスのお礼を受け取ってしまったのは観客だろう。そして始まる『JOY』では「運命は偶然という必然でできてる」と歌われてるのだから、その頃のお金のなかったYUKIも必然だったのだろう。『ワンダーライン』『Rainbow st.』へと続き、メンバー紹介のときにYUKIが手に持った"ゆきんこテルミン"の操作する仕草がとにかくかわいいとしか思えず、それもすべて必然のように思う。
音楽活動して何年もの間、色んなことがあっただろう。それもすべて楽しい、可愛い、かっこいいに消化して言葉を紡いでいく姿には憧れる。だから会場にはせめて髪型だけでもYUKIに近づこうとしたのか、ボブヘアーの女の子が多い。ボブヘアーの男の子がいなくて本当によかったと思っている。

ドリーミーなステージをみせたYUKIが「次は銀杏BOYZでーす!」と言い、去っていく。
客席では大移動が始まる。危険を察知して後方に向かう女性客。反対に、前方に意気揚々と向かっていくタオルを首に巻いた10代の男の子たち。
そしてボーカルの峯田和伸がステージに姿を現すと、地鳴りにも似た歓声が響き渡る。ものすごい迫力だ。

「この会場の人たちに、この曲を捧げます。この会場に来れなかった人たちに、この曲を捧げます。秋葉原でたくさんの人を殺した加藤君に、この曲を捧げます。秋葉原で亡くなった人たちに、この曲を捧げます。これは、鎮魂歌です。すべての人に捧げる、鎮魂歌です」

『人間』が始まる。峯田はハーモニカを吹きながら、アコースティックギターを鳴らす。「戦争反対、戦争反対、戦争反対、戦争反対、戦争反対、とりあえず、戦争反対って言ってりゃいいんだろ!」と、叫びながら歌う。他のメンバーが演奏に入り、盛り上がる後半では観客が"鎮魂歌"を合唱し、人間によって『人間』が人間へと捧げられていく。
『NO FUTURE NO CRY』ではドラムの村井守がドラムセットから飛び出し、客席に突っ込んでいく。峯田がドラムを暴力的に叩き、衝動が充満したステージに。『SEXTEEN』でもそのパワーは衰えることなく、客席もその暴動に参加しているかのような熱気。「村井!村井!」というコールが巻き起こる。

「10年前、俺はCD屋でCDの裏っかわの曲名見て想像して楽しんでた。今はそれがないのか。みんな、インターネットで曲買うのか。CDが売れないというこんな時代になるなんて、誰も想像できなかった。今想像できないようなことが、今後起きるかもしれない。ライブハウスだって無くなってしまうかもしれない。だけど俺は俺の家の前で歌うから、みんな来い」

峯田はなんと自分の住所を暴露。3000人も入りきれるのだろうか。そしてビデオカメラに目がけて言い放つ。
「俺は今日このライブに来ていない人たちに言いたい。 今日のライブ放送するんだっけな。カメラあっか。よし言うぞ。 俺はお前らを絶対にライブに来させてやる」

こうして始まったのが『トラッシュ』。歌詞の一部をずっと「YUKIちゃん」と言い換えていた。終わると、「クラッシュ・キル・デストローーーイ!!」と絶叫。『SKOOL KILL』へ。ステージも客席も暴動状態。ペットボトルが宙を舞い、水しぶきがあちこちで巻き起こっている。もはやライブなのか分からない、とはいえ、やっぱりライブでしかない光景が目の前に広がっていた。

峯田は「家に帰ったら知らない女の人がいて、怖くなったから引っ越した」と言う。いやいや、さきほど住所教えたでしょう。今度は女の人に限らず、男の人もおっさんもおばあちゃんも家に入ってくるだろうに。
少し前の『せんそうはんたいツアー』 をDVDにして売ると宣言し、タイトルは『新興宗教 銀杏BOYZ』にするという。
最近結婚したギターのチン中村。峯田はそれを元彼女である"ちひろちゃん"にメールしたところ、「私も入籍しました」と返事があったらしい。そんなちひろちゃんに昔、『銀河鉄道の夜』を聴かせてあげたところ反応がなくて気まずくなった、という話から『銀河鉄道の夜 第2章』の演奏へ。
ミラーボールが無数の光を散りばめ、ステージ後方には三日月の照明が。光の演出が曲の世界観をより魅力的なものにしていた。

そして『あいどんわなだい』。「杏仁豆腐食べたい」「手裏剣投げたい」などを歌いながらジェスチャーで表現する峯田。そのまま『BABY BABY』と続け、最後は『僕たちは世界を変えることができない』。世界を変えることはできなくても、銀杏BOYZは一人一人の気持ちや感情を変えることができるかも知れない。
「愛がジャマしてる こんなもの捨ててしまおう 愛してるのに こんなにも こんなにも」
この歌詞が印象的だ。
愛について、人々はある一定の距離を保つように生活しているように思う。大きすぎても誰かの負担になるし、自分だけでは抱えきれない。愛しすぎても結果として悪い方向に行くことはある。人に優しくするのも、憎むのも、殺すのも、愛が関わっていることが多い。峯田がライブ冒頭で口にした通り魔の加藤にだって、愛があれば。誰かがいれば。ひょっとすると、銀杏BOYZの歌があれば。彼らはすべての暴力衝動を歌にし、消化している。愛も同じようにある程度は消化すれば、人と上手いこと付き合っていけるかも知れない。
愛がジャマなときは当然あるはずだ。「愛は大切 愛こそはすべて」ばかり歌っていても何も変わらない。それを根本とし、逆説的な意味で愛を考えると、この曲のタイトルだって「ひょっとすると世界だって変えられるかも知れない」という希望になるかも知れない。

ライブ本編が終了する。眩いライトで照らされたステージは、目を瞑ってしまいたいくらいに光が強い。
「やるなら今しかねーーっぜ!」というアンコールの掛け声。メンバーが再登場する。

「今日、妹が山形からこのライブを観に来てくれてるの。妹とは歳が離れていて、山形の実家にいたときによく、 "ジュディアンドマリーがものすごくかっこいいの"と言ってきた。 妹にとってはひどいもんだよ。 だってYUKIちゃんのあとに、兄貴が出てくんだもん」

峯田が会場を笑わせると、 遂に兄貴とYUKIちゃんが同じステージに立つ曲が始まる。『駆け抜けて性春』はこの日のラストスパートでもかけているかのように、会場全体が狂乱の渦に。
「僕は、ここに呼ばなきゃいけない人がいます。YUKIちゃん!YUKIちゃん!」
こうしてYUKIがステージに呼ばれ、歌うことになる。

「私はまぼろしなの。あなたの夢の中にいるの。触れれば消えてしまうの。それでも私を抱きしめてほしいの」

触れると消えてしまう夢のような光景が目の前に。
3年前の京都磔磔を思い出さずにはいられなかった。あの日、峯田が「キミが泣いてる夢を見たよ 僕は何にもしてあげられず」と歌っていたことは嘘になった。キミは泣かずにステージに立っており、たくさんの人を楽しませ、峯田は一緒にライブをし、人々を熱狂させている。何もしてあげられないわけがない。
YUKIは歌うとステージから姿を消し、銀杏BOYZはあらゆる感情を巻き込み、誰かの片想いが一瞬かなったかのようなテンションで突っ走っていく。
3000人もの観客。大きなステージ。有名なミュージシャン。
規模は大きいが、その中で繰り広げられたのはとても小さな人間同士の絆の物語だった。ステージは遠く、メンバーはみんな小さく見えた。名声も名誉も、何でもない。唾と汗でびっしょり濡れた峯田は自らのプライドをぶち壊すように、ここにいる、そこらへんにいる普通の何でもない男として歌っているように思えた。
だから、多くのファンが彼に自分自身を投影し、熱狂できるのだろう。そんな彼が一つの夢をかなえた気がした。YUKIと同じステージに立ち、一緒に歌った。YUKIがかつて言った言葉は、この会場で証明されたのかも知れない。

「音楽は人を救う力がある」

これは、この言葉を信じた男のドラマだ。
誰かが救われたかも知れない。「宗教みたいだ」と指摘する人もいる。その通りだ。むしろ、音楽は健康的な宗教だろう。信じる力もほどほどに設定できる。身を投じるパワーは人それぞれだ。音楽を聴いてそのときの気分が安らいだり、週末の楽しみが増えるのは、いけないことなのだろうか。
新興宗教・銀杏BOYZには人を救う力がある。
いけないことではないだろう。ちょっとバカバカしくて、おもしろい。そしてかっこいい。それだけで十分だ。

そして、YUKIは銀杏BOYZを確実に救っていた。この人がいなければ、今の峯田は存在しなかったのだろう。同じく、銀杏BOYZがいなければ存在しなかったバンド・人なんて無数にいる。
感動はいつも連鎖していく。負の感情よりも、そのスピードは確実だ。それを伝えるのも必要だ。だから、自分は日記をこうして書いている。

ライブが終わると、雨はまだ降り続けていた。たまには傘もささず、濡れながら帰っても気持ちがいいもんです。
そんな気分にさせてくれる音楽は、この世にあるのです。

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