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2007年3月29日木曜日

ミドリ@なんばHatch

ミドリの晴れ舞台。関西では過去最大級の大きさの会場で、ぶちかましていた。

しかも対バンがグループ魂とTHE BIRTHDAY。宮藤官九郎、阿部サダヲ、チバユウスケ、そして後藤まりこである。この面子にいてもおかしくはない存在だと思っていたので、自分にとってはなんら違和感はない。が、小さなライブハウスで観ていた身としては遠くのステージで小さく見えるメンバーの姿は、何かしら感慨深くもある。
そして、近頃ミドリという存在があらゆるメディアで「事件」と書かれるだけあり、ライブでもちょっとした事件が起きた。

小銭のドラムにより、ミドリのライブはスタート。ハジメのキーボードが不穏なムードを醸し出し、身振り手振りで観客を煽ろうとする。原田のベースがデーーンと深く渋く響き渡る。
そしてステージ脇から後藤まりこが登場。
「はじめまして、後藤まりこです。今日は、THE BIRTHDAYとグループ魂の前座です。前座って何や!?」
ゴンッ。
「前座って何や!?」
ゴンッ。
「ゴンッ」とは、後藤が自分の頭をマイクで殴る音。その音は鈍く、痛そうに響き渡る。
「前座やからってなめとったら承知せえへんぞ!!」
ゴンッ。ゴンッ。
何度も何度も殴り続ける。10回以上は殴っていた。鬼気迫るオープニングとなった。
「グループ魂、THE BIRTHDAY目当ての奴は観んでええ!出ていけ!外出ろ!!」
ゴンッ。ゴンッ。ゴンッ。
頭がへっこむくらいに力強く殴る。観ている場所からはステージは遠く、メンバーは小さく見える。だが、すぐ傍にいるかのような迫力が伝わってくる。やっぱり大きな会場でもミドリはミドリなのだ。

『愛のうた』の終盤では、ブレイクするところで「あかん、コミュニケーションが足らん」とステージを降り、客席前方に近づく。そして客席に水を吹きかける。すると客席から反撃の水しぶきがペットボトルが放たれ、面白がったのか笑顔でまた反撃し、ペットボトルで直接水をぶっかける後藤。

「一番前に立ってグループ魂とTHE BIRTHDAYだけ観るとか、観たいバンドだけ観て帰るんてアホとちゃうか。根性腐っとんのかい。アホみたいな顔しやがって」

ますます観客にケンカ腰で投げかけ、完全に戦闘モード。グループ魂とTHE BIRTHDAYのお客さんをここまで挑発するボーカリストはいない。ここまでするとは思わなかった。それでも、そのケンカを買うかのように拳を上げて反応する人は少なくはなかった。確実に「なんや?」と思った人はいるだろうが、この賛否両論のせめぎ合いはミドリならではの刺激だ。

そして事件は起きた。
最後の『POP』の演奏がスタートし、キーボードが美しいメロディを奏でている最中、その温かみのある演奏とは裏腹の怒鳴り声が後藤のマイクから聴こえた。

「今さっき"はよ帰れ"って言った奴誰や!!手あげてみい!ボケカスアホンダラァ!!」

いつも通り、ヤクザのような怒鳴り口調で攻める。どうやら客席前方から野次が飛んできたようで、短い導火線に火がついたというより、すぐ傍で爆弾が爆発してしまったかのような出来事が起きてしまった。
野次を飛ばしたお客さんは律儀にも手をあげ、「おう。お前か。ここまで来い。話しようや」と低い声で後藤が反応し、自らそのお客さんに近づく。あらゆるお客さんの肩の上を歩きながら。

「あんたは何目当てで来たんや?THE BIRTHDAYか?グループ魂か?あんな、僕ら一生懸命やっとんねん。上から物言うとんちゃうしな」

会話が始まる。正確には聞き取れないが、お客さんも叫び声で応戦していたようだ。あとで近くにいた人から話を伺うと、どうやら「少なくともあんたを観に来たんちゃうわ!」「自分の音楽を押し付けんな!」と怒鳴っていたようだ。
しばらく言い合いが続き、なんばHatchは異様なムードに包まれた。周囲のスタッフが慌て出し、ステージ上のメンバーも動揺している様子。 後藤とお客さんがやりあう間も、『POP』の演奏は続いている。緊迫感漂うシーンであるが、美しいメロディとのギャップがちょっと面白くもある。

「あんたがそう思ったんなら、そうなんやろう。
間違いやないと思うわ。
せやけど、ただな、ここでこう言ってきたあんたと僕は対等や。
せやろ?あんたと僕は対等や。
でも、ほんまに僕らのことをええと思ってくれてる人もいるかも知れへん。
いたら、ほんまにごめんなさい」

後藤は泣き声になり、そのまま『POP』を歌う。ほとんど泣きながら歌い、頬をつたう涙はステージから遠い場所からも薄っすら見えた。
先ほどまでの怒号とはうって変わり、可愛い声で泣きじゃくるように歌う。このギャップと、感情の起伏。ここまでステージですべてを現せる人なんて世界中どこを探してもいないじゃないかと思うくらい、唯一無二の表現者だった。感情、歌、存在、すべて。
単なるケンカでもあったが、ここぞという晴れ舞台で容赦なく挑発する後藤まりこの気合いを感じ、感動してしまった。

最後はドラムセットで蹴ったりはたいたり、殴ったりぶん投げたり。めちゃくちゃに破壊し、ステージを一目散に去っていく。
嫌いな人も、むかついた人もいるかも知れない。だけど、これだけは言えるだろう。そのとき、後藤まりこという人に釘付けにはなったに違いない。
これが存在を叩きつけるということだろう。
伝わらない人には伝わらない。少し悔しい気持ちにもなったが、音楽という土俵と演奏の上で、自分の実体験や心情を歌にして赤裸々にぶちかます姿は、勇気づけられるものがある。
ただならぬ余韻を残していた。

その後、グループ魂のライブではボーカルの阿部サダヲが後藤の真似をしていた。
「なんで俺たちがミドリとTHE BIRTHDAYのトリなんだよ!」
ゴンッ。
「うわ何これすごく痛い!」
さすが、見事に笑いに消化していた。優しささえ感じ、グッときてしまいました。しかもマイクで殴った後、阿部サダヲの頭部からは若干血が出ていたらしい。それほどこのパフォーマンスは覚悟がなければできないことなのだろう。

関西で観た最後のミドリは、ケンカも含めて特別に思った。今後、このバンドがどうなっていくのか。どのバンドにもないスリルと、刺激的な体験であることは間違いない。

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