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2006年9月17日日曜日

ミドリ@新世界ブリッジ

新世界で『SUGOI!!』というイベントが開催された。
日本最大のドヤ街・新今宮のあいりん地区がすぐ傍にあるフェスティバルゲートにはcocoroomとブリッジというライブスペースがあり、そこに関西が誇るアングラ・ポップ・ロック・ノイズ・パフォーマンスグループが一堂に会し、2日間に渡って狂った夜を提供してくれた。
cocoroomで働いているミドリの劒樹人、後藤まりこ、ブリッジで働いているneco眠るの森雄大が企画したイベント。
出演者は疎外感幸子、モーモールルギャバン、オシリペンペンズ、ワッツーシゾンビ、neco眠るから、ストロベリーソングオーケストラ、ドラびでお、佐伯誠之助、クリトリック・リス、アウトドアホームレス、赤犬、54-71まで。
ミドリは1日目に登場。cocoroomで疎外感幸子がたった10分でライブを終わらせるというライブを見せ、ライブに飛び入り参加する予定だったチッツのボーカル・ひっしーは出番がないまま控え室で上半身裸の状態で途方に暮れていた。それを見て、ミドリの後藤まりこが「かわいそう…」と言いような、変態気味のバンドばかりが出てはいるが、割とアットホームなイベントだった。

だけど、ミドリのライブは壮絶を極めるものだった。

今まではお客さんも少なく、微動に小刻みにノる人ばかりで観客の盛り上がりは無いに等しいライブだったが、この日は違った。やはりイベント主催者だけあって、場を盛り上げる責任感もある。しかし盛り上がりすぎていた。客同士が乱闘を起こす瞬間もあり、キーボードのハジメがますます観客を煽るため、いつもは後藤まりこの狂気一本で突っ走るライブばかりだったが、この日は会場全体が狂乱の渦に巻き込まれていた。
『お猿』ではお客さんの上を歩いていく後藤まりこ。いつも以上に激しく動き回り、観客をそれを求めるように歓声を上げていた。これまでにステージダイブしても床にビターンと衝突していたことが嘘に思うくらい、受け止める観客が現れ始めていた。
『パヤツパ』という未発表曲も披露。意味不明な言葉を叫び散らした後、急に我に返るように「あなたに少女マンガみたいな結末を期待していた」と呟く瞬間がいい。
MCでは来年3月くらいにアルバムを出すと発表。ミドリはいつか売れる、と色んな人から聞いていたので、これからのストーリーが気になるところだ。

『あんたは誰や』では後藤が泣きながら客席の床に這い蹲り、訴えかけていた。

「やめよう思うた。昨日も、やめよう思ってたけど、手首切ってもうた。
でも今めっちゃ気持ちいい。セックスより気持ちいい。
音楽やってる人、絶対やめんといてな。
絶対やめんといてな。
いつか、いつか絶対、絶対な。
絶対な、報われるから。
ほんまに報われるから。音楽やめんといてな。
いつか、なんかしら報われるから。
もし報われんかったら、あやまるわ。
ごめんなさいってあやまるから、絶対続けといてほしい。
でもな、死ぬ気でやって。
死ぬ気で音楽やれよ」

客席には対バンのバンドマンが大勢いて、バンドをやっていない普通の客もいる。
なんとなく、その語りのときだけが時が止まったかのような感覚だった。後藤の言っていることがすぐ傍にある現実であり、出来事のようにタイムリーに思い、切実だった。言葉さえ覚えれば誰にでも言えることではあるし、ありふれた文句なのかも知れない。だけど、後藤まりこというボーカリストの存在と、ミドリというバンドの演奏の中では、特別になっていた。
気が付けば、後藤の腕には無数の傷があった。
この人は死ぬ気で自分を表現している。
これだけは間違いないだろう。
それがいつか、報われる日が来るのだろうか。
後藤まりこをはじめ、ミドリのメンバー3人も。

イベント開場前、劒樹人に会うと顔が土色になっており、今にも死にそうな表情だった。彼もこの台風のようなバンドに所属し、死ぬ気というか死にそうな目に遭っているのかも知れない。報われる日は遠いかも知れないけど、ミドリはこの日、パフォーマンスも演奏も、間違いなく心に迫るものだった。

最後は『POP』。「ありがとうございました!ありがとうございました!」と後藤が泣きそうな声で挨拶をし、ライブは終了。

フェスティバルゲートの下の階では佐伯誠之助がまったりと友人たちと談笑しており、終始まったりと穏やかな雰囲気でイベント1日目は終わった。
2日目も行ったが、主催者であるはずの劒樹人の姿はなかった。体調不良なのだろうか。友人に聞いても「知らない」と答えられ、後藤まりこは普通にスタッフとして働いていた。
この日、ミドリの劒樹人を見たのは最後となった。

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