2000年11月29日水曜日

NUMBER GIRL@心斎橋クラブクアトロ

「本日は、我々ナンバーガールの新曲の発売日でございます。新曲を既に購入しました本日ご来場頂いた方には、わたし自身からCD価格の2倍の、2000円を差し上げたいぐらいの、気持ちでございます」

気持ちだけかよ!
新曲とは、『鉄風 鋭くなって』のこと。発売されたばかりのCD。心斎橋クラブクアトロに着くまで、電車や心斎橋を歩く中、ずっとこのCDの3曲をリピートして爆音でした。嘘です。電車の中では小さな音です。音漏れ迷惑なのです。もはや心斎橋=INAZAWA CHIANSAWとなってしまうほど、通称・イナチェンが心斎橋のイメージにこびり付いてしまった。特に田渕ひさ子さんのギターが。

人生初めてのナンバーガール。そして初めてのライブハウス。しかも一人。
恐いったらありゃしない。刺青の入った男が入り乱れ、トイレでは乱闘騒ぎ。そんなイメージしかなかった。黒っぽいTシャツを着た女の子は、脱いだら絶対刺青。でも脱いでほしい。そんなエロ妄想も取り入れつつ、クラブクアトロでは少し後方に場をとったたけうちんぐ。
テロテロテロテロリン、テロテロテロテロリン。
といっても別にテロ事件が起きたわけではなく、TELEVISIONの『マーキームーン』が流れたわけ。登場SEなわけ。これでナンバーガール全員が出てくるわけ。お客さんが一斉に前に詰めかけ、歓声が響くわけ。もう、十分なテロ事件です。
田渕ひさ子を見ようとするが、お互い小さいのでなかなか見えない。ようやく初めて見た向井秀徳。なんていうか、大きかった。恐らく、自分の心が彼をそんな姿にさせているのだろう。自分にとってビッグな人だ。生で観ると、これほど存在感があるのか。顔が大きい気がした。
そしてそのギターの音。テレキャスターという名のギターは、最初テレビキャスターかと思った。赤いボディのその六弦は、砂が混じったようなサウンドをクアトロに轟かせる。ジャリーンと鳴る。耳を鋭く突き刺すような、向井秀徳がよく言う「鋭角サウンド」がそこにあった。

 1曲目から『鉄風 鋭くなって』。中尾憲太郎のベースが腹に響く。何この音。お腹痛い。すげえ。で、合唱?すげえ、ナンバーガールのライブってみんな合唱?というか、みんな早くも歌詞覚えてる。そこに驚く。とか言ってる自分も完全に覚えており、「かぜぇえあ!かぜぇぇあ!するどくなってぇ!」てな感じでみんな合唱してました。風について叫ぶ日が来るなんて思ってもみなかった。

2曲目、なに?あれ?この曲なに?新曲?と思ったら、「片目つぶって朝歩く~」と。なるほど、『PIXIE DU』。ハスカードゥ?ピクシードゥ?向井秀徳の憧れが詰まったようなタイトルだけど、二人のバンドの面影を感じさせない究極のオリジナリティ溢れる歌詞。坂口安吾まで出てくる。こんな、轟音と衝動の空気の中で作家の名前。やばくない?演奏するのはなかなか珍しいそうだ。すごく得した気分。音源で何度も聴いたのに、初めて聴いたように新鮮だった。

そして『ZEGEN VS UNDERCOVER』。おおい、あなた。そこのあなた。「やばい、さらにやばい。ばりやばい」なんて歌っておりますけど、あなたが一番やばいですよ。絶叫、シンバルの突き刺す音、お腹が痛い重低音、ひさ子さんの凛々さ。俺は一体どこに目を向け、意識を傾ければベストなのだ。教えてくれ。「おととしの事件を~」と急にメロディ アスになる瞬間、鳥肌で暑さを忘れ、熱さだけがそこにあった。

で、きました。『omoide in my head』

リアル17才だったりするたけうちんぐにとって、向井秀徳が叫ぶ「俺」はリアルタイム。電車通学ではないので制服の少女と普段出くわすこともない悲しい日々を送っているけど、映画のように架空のストーリーとして楽しめる。お酒飲んだことないけど、眠らずに朝が来てふらつきながら帰る二日酔いの景色ってそんな感じなんだろうと想像する。

驚いたことに、アヒト・イナザワの息を止めさせる灼熱のドラミングで始まるオープニング。それが打ち鳴らされた直後、僕の近くにいたカップルらしき二人組みの男性の方が女性の方を置き去りにし、前方に飛び込んだのだ。これがダイブというやつか。初めて見た。感激した。こんなものなのか。こんな、彼女が途方に暮れるものなのか。
彼氏さんは笑顔で帰ってきて「この曲を聴きに行くために来た」と彼女に告げた。
なんで僕、このとき「かっこいい」なんて思っちゃったんだろう。
そんな具合に快感のオモイデ。楽しい。なんたって楽しい。人生で一番楽しいのかも知れない。

ほどなくして、向井秀徳が語り始める。
 「なんでもかんでも、なんでもかんでも~、過剰になることがあります」
もうバレバレ。ナンバーガールフリークのたけうちんぐにはバレバレだぜ、向井さん。曲は『センチメンタル過剰』。なんて過剰なタイトルなんだ。曲の持つ感傷は感動に変わりつつある。

『U-REI』はネット上の噂通り、田渕ひさ子のギターのイントロがやたら長い。トリップ感溢れるメロディ。もはや狂気さえ感じる。おとなしそうな雰囲気なのに狂っているなんて、ATG映画です。よく分からないけど。後ろで向井秀徳が不気味なブレイクダンスをしている。これはロボットダンスとも呼べる。新ジャンルを築き上げている。

『TRANPOLINE GIRL』が終わり、田渕ひさ子のテロテロテロテロというイントロ。当然、テロ事件ではない。だけどテロみたいなものだ。ライブアルバム『シブヤ ROCKTRANSFORMED状態』を聴いたときから鳴り止まなかった『SUPER YOUNG』なのだから。アルバムに収録されている通りの向井の語りはなかったけど、語りは聞こえた気がする。中尾憲太郎のベース、ブンブンいってる。彼らより若い自分が言うのもなんですが、若さみなぎる元気ハツラツオロナミンCな演奏。直訳すると「めっちゃ若い」のです。

その後、『YARUSE NAKIOのBEAT』『EIGHT BEATER』『タッチ』とたて続けに演奏。『タッチ』こそが青春パンクだと思わないだろうか。世の「青春パンク」は、青春を受け入れている。素晴らしい青春を手に入れているのだ。それに反し、この『タッチ』はひどい。
「それでも奴ら笑い合う!それでも奴ら信じ合う!」
完全に青春を謳歌できていない。どこか客観的で冷めているが、叫んでいる。その心の奥底では満たされない感情が爆発しており、熱い。臆病風吹かすアイツ。嘘笑いをする少女。曲の登場人物が頭の中でモッシュ&ダイブを繰り広げていた。ここにいるアイツも少女も、みんなそんな感じなのか。だとしたら、具現化されているね。ダイブの嵐は視覚効果として、ライブを盛り上げていた。
そして「乾杯!」と向井が言い、メンバー全員がステージから去る。
もちろん、「アンコール!アンコール!アンコール!」と客席からは鳴り止まない歓声が。


メンバーが再び登場。向井が渋々した表情で言う。
 「さきほどまで弦2本でやってましたね…」 
自分からの距離では確認できなかったが、どうやらこの日は4本ギターの弦をひきちぎったらしい。それは弾いてると呼ぶのだろうか。だけど、かっこいい。なんでちぎるのがかっこいいのか。契るとかだとかっこいいかも知れないけど、実際、たけうちんぐはこの日、ナンバーガールとの契りをかわされた気がした。「一生ついていきます」とは僕のセリフ。僕は花嫁か。

そして、今回のツアーの主役であろうアヒト・イナザワが大きく取り上げられたINAZAWA CHAINSAW』。心斎橋はMDウォークマンからもライブハウスでもイナチェンが響き渡る。アヒトの撃ちまくりのドラム。鬼ってます。聴いているだけでも息を継ぐヒマがない。
おいおい。どんだけ最高なんだ、ナンバーガール。


初めてナンバーガールを観に行き、最も印象的だったのは向井秀徳の眼光。雰囲気。存在感。 人一人殺しそうな眼差しだした。そして中尾憲太郎のぶっ飛びそうなほど上下に振られる首。お腹が痛くなるほど地底から響くベース。残念だったのは、田渕ひさ子が遠かったこと。今度こそ、客席前方に行ってそのお姿を拝みたい。ロックが鳴る現場とは思えないアイドル視点の感想になってしまったけど、紅一点の為せるワザはここにあり。遠くても近くても、ひさ子さんのギターサウンドは両耳を貫き、頭の中でぐるぐる回っていた。


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セットリスト(曖昧です)
1. 鉄風鋭くなって
2. PIXIE DU
3. SASU-YOU
4. ABSTRACT TRUTH
5. ZEGEN VS UNDERCOVER
6. TATOOあり
7. omoide in my head
8. センチメンタル過剰
9. U-REI
10. TRAMPOLINE GIRL
11. SUPER YOUNG
12. YARUSE NAKIOのBEAT
13. EIGHT BEATER
14. タッチ
[ アンコール ]
15. INAZAWA CHAINSAW

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